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自転車旅行の薦め

 私の場合、リフレッシュ休暇から始まった。私の会社では10年勤続すると10日の休暇、つまり2週間会社を休めるのだ。あと1年もすればそのリフレッシュ休暇がもらえる。この2週間をどう有効利用するか? 家でぼけっとしていてもいいのだが、それでは芸がないし何より想い出に残らない。そこで最初は今まで一度も訪れた事のない北海道を車で走り回ろうと考えた。車中泊をメインとして時々ユースや民宿を利用する。車だけでは面白くないだろうから、どこかの民宿で連泊して登山やトレッキングするのもよいだろう。そんな旅を考えていたのだが、いまいちパッと来ない。10年に1回のイベントなのだから、もっと苦労を積み重ねて想い出に残るような旅にしたい。
 ちょうどその頃、自転車でのツーリングや登山を始めたばかりだったので、いっその事、自転車で北海道を走ってみようと考えるようになった。当時は2週間も休みがあれば北海道1周などすぐだろうと甘く考えていた。しかしよくよく調べてみると北海道を海岸線沿いに1周すると2500km以上あるのだ。これでは2週間で1周するなどとうてい不可能だ。そこでどうせ北海道に行くのは夏なのだから、夏期休暇の1週間を合わせて3週間あれば北海道1周できるのではないかと考えた。行き帰りを除く20日間で毎日120〜130km走れば1周できる。今にして思えば無謀な計画だった。なぜならキャンプ場がそんな都合よく120kmおきにあるわけではないし、果たして毎日重い荷物を積んでそれだけの距離が走れるのかどうか。
 結局、1周の夢は断念し、それでも自転車を走らせて景色を楽しんできたが、これか結構おもしろいのだ。まず景色が美しい。雨が降ると最悪だが、晴れていれば北海道はどこも美しいし、自転車はどこででも止める事ができるので、好きな場所で写真が撮れるのだ。これは車で観光地をまわるドライバーには味わえないだろう。さらに自転車という乗り物は視界を一切遮らないので景色を思う存分楽しめるし、海沿いを走れば波の音、山の中を走れば鳥の鳴き声をのどかに聞きながらのんびりと走る。これは素晴らしい体験だった。
 さらに夏の北海道、特に道東はチャリダーも多く、道で擦れ違うと必ず挨拶するし、キャンプ場で出会えばもう仲間だ。しかもチャリダーに国籍、年齢、性別は関係ない。坂を登る時や逆風の中を走る時はみんな苦しいし、登り切った時には誰もが達成感を味わえる。何でこんなバカな事をしているのだろうと思わないでもないが、だからこそそんなバカな事をしている仲間を見かけると嬉しくなってしまい、思わず声をかけて夕食を共にするのだ。これが北海道のキャンプ生活を楽しくしてくれる。これを一度経験するとなかなかやめられなくなるから不思議だ。
 この旅行記を読んで自分も自転車旅行をしてみたいと思った人もいるだろう。そういう人へのアドバイスを少しばかり書いてみる。まず1にも2にも体力だ。30kg近くの荷物を装備して1日100km以上、さらに坂も登らなければならない。そこそこの体力、特に持久力が必要となる。まったく運動しない人がいきなりフル装備で100km以上走るのは辛いだろうから、ある程度訓練してからの方がいいだろう。私の場合、片道8kmの距離を自転車で通勤した。8kmといっても坂道もそこそこあって、のんびり走るのではなく、ある程度、心臓に負荷をかける状態で30分走る。この30分というのはマフェトン理論に基づいて心拍数を管理してやれば有酸素運動にはちょうどよく、おかげで1年ほどの自転車通勤で持久力は飛躍的に向上し、心拍数は40を下まわるようになった。まあここまでする必要があるかどうかはともかく、事前に何らかの持久力を高める運動はしておいた方がよいだろう。
 次に丸1日自転車で走る練習もしておいた方がよい。1日100km走るとなると6時間程度、自転車に乗っていてなければならない。近所へ買い物に行くのとはわけが違い、サドルがお尻に合っていないと、お尻が痛くて自転車に乗っていられなくなる。そこで旅行前に最低でも1回は自転車で長距離を走った方がよいだろう。いきなり100kmは辛いだろうから、最初は30kmくらいから始める。30kmなら2時間もかからないので、それほど辛くもないだろう。30kmで問題なければ60km、100kmと距離を延ばしていく。できる事なら雨の日にも自転車に乗ってレインスーツの具合を確かめた方がよい。私の場合、レインスーツを着て30分程度なら何度も走っていたが、雨の中を何時間も連続で走ったことは一度もなく、丸1日、雨の中をレインスーツを着て自転車で走ると雨が次第に染み込んでくるのと汗とでレインスーツの中はずぶ濡れになってしまうし、レインスーツにかかる雨はほとんどが下に流れて靴の中まで濡れてしまうという事に北海道に来てから判明した。このような失敗をしない為にも一度は試した方がよいだろう。
 100km走れるようになれば、最後の仕上げは坂道だ。北海道の海岸線沿いは比較的差かは少ないものの、知床峠など避けて通れない峠もある。そこで最低でも1回は峠にチャレンジしておきたい。できる事なら20kg程度の荷物を積んで坂を登るとさらによい。実際に走る時には大量のキャンプ道具を積んで走るのだから、空荷とはわけが違う。しかしこれができるようになれば、もう訓練は卒業で、あとは美しい北の大地が待っているのだ。
 自転車で坂を走る時など、時々辛くなる事がある。そういった時、私は2つの事を考えるようにしている。1つはペダルをまわしていれば目的地にたどり着く事ができると考える事。こんな坂を登るのは無理だと思ってしまったらそれまでだ。とにかくゆっくりでもいいからペダルをまわせばいつかは目的地に到着するのだ。そう思えば一時の苦労などそれほど苦にならなくなってくる。もう1つは何より景色を楽しむこと。北海道は自転車を走らせていてもまわりの景色は美しく、鳥のさえずりを聞きながら自転車を走らせるのは格別である。苦しい時でもまわりの景色を楽しみながら走るのは楽しいものだ。
 さらに1日100kmも走ろうとすると自転車を選ぶ必要もある。ママチャリは論外として、ダートは走らずアスファルト路面しか走らないのならタイヤはスリックの細い方が楽に走れる。しかしだからと言ってロードの自転車を選ぶとキャリアの取り付けができずに荷物を自転車に積む事ができない。やはりこういったツーリングにはランドナーが向いている。そしてキャンプ道具や自炊道具なんかもホームセンターで売っているような安いものではなく、山登りの装備を扱っているアウトドアショップに行けば、値段ははるかに高いが軽くて小さい道具が売っている。これらを使えば荷物も軽くなるので登り坂でも楽ができる。
 しかし本当に必要なのはやる気だろう。私のように金をかけていい装備で挑むのではなく、ママチャリに乗って、金がないから家からかき集めてきたような鍋とカセットコンロを持って1ヶ月ほど旅をしている高校生もいたし、バイトして買ったばかりの自転車とサイドバック、テントで楽しそうに走っている大学生もいた。彼らに共通して言えるのはやる気だろう。装備などは二の次で、自転車と最低限の装備さえあればツーリングは可能だ。ぜひともこの旅行記を読んだ人にも未知の世界へ旅立ってもらいたい。
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