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レ・ミゼラブル
少女コゼット  原作

原作本の紹介 レ・ミゼラブル
原本 Les Miserables
発行年 1862年
原作者 ヴィクトル・ユーゴー
フランス人(1802年〜1885年)
訳書名 ああ無情
出版社 新潮社 他
翻訳者 佐藤朔 他

アニメとのストーリーの違い
 アニメはフランスの有名な文学小説「レ・ミゼラブル」をベースとして、子供達にもわかりやすいように色々と構成を変えている。アニメでは序盤はコゼットとファンティーヌを取り巻く不幸な物語が続くが、原作ではまずミリエル司教の生い立ちや人柄から始まり、そのすばらしさが延々と語られる。次にジャン・ヴァルジャンの生い立ちと投獄されたいきさつ、徒刑囚として虐げられるうちに人格まで変わり、ミリエル司教と出会うまでが書かれている。このあたりはアニメより原作の方が少し詳しい程度で内容はほとんど変わらない。次にアニメでは一切語られていなかったファンティーヌの過去の記述がある。ファンティーヌはパリで女工をするうちに、金持ちだが風貌の冴えない老学生のトロミエスに初恋をする。しかし彼女はトロミエスに遊ばれたあげくに捨てられ、彼女の初恋は破れただけでなく、彼女は既にトロミエスとの間の子供であるコゼットを連れていたのだ。彼女は金持ちのトロミエスと付き合ううちに働く事も止めていたので生活に困るようになり、持ち物を全部売り払って生まれ故郷のモントルイユ・シュル・メール目指して子供を連れて旅をする。そしてその途中のモンフェルメイユでテナルディエ夫婦と出会うところからアニメはスタートする。
 コゼットがテナルディエ夫婦やその子供達からいじめられ、こき使われるのはアニメも原作も同じだが、原作はあまりその事にページを割いておらず、アニメではコゼットが主人公なのでコゼットの生活をかなり追加・脚色している。原作には神父のリシャールやクラスメートのトロン、犬のシュシュなどは登場せず、ガヴローシュすらほとんど登場しない。アニメの第2話〜第7話あたりは、そのほとんどがアニメオリジナルだ。テナルディエの罠にはまってファンティーヌはますます養育費を請求されるようになり、子供がいる事がばれて女工を首になるところはアニメも原作も同じですが、原作ではアニメ以上にファンティーヌは落ちぶれてしまい、原作ではアニメになかった前歯を売ったり、売春婦になるという設定がある。  ここからようやくマドレーヌやジャヴェールが登場する。ファンティーヌと出会った後のマドレーヌの人柄や行動は原作もアニメも同じだが、シャン・マチウの事件をジャヴェールが伝えてからのマドレーヌの行動はアニメと原作とでは少しばかり異なり、アニメでは一晩悩んだ末に決心して裁判所で自分がジャン・ヴァルジャンだと名乗り出るが、原作では裁判所に着いても名乗り出る事をためらっていたが、最後の最後でアニメと同様に名乗り出ている。
 その後、ジャン・ヴァルジャンはモントルイユ・シュル・メールに戻るが、原作もアニメ同様に、ジャヴェールに逮捕されファンティーヌは亡くなり、ジャン・ヴァルジャンは脱獄してファンティーヌと約束したコゼットを迎えにモンフェルメイユに向かう。ここまでが第一巻のあらすじである。
 第二巻ではいきなりナポレオンが敗北したワーテルローの戦いから始まり、その戦いの詳細が80ページ近くも続く。その中でテナルディエが戦いの済んだ戦場で戦死者から金品を盗み取るが、そこでポンメルシーという名の重傷を負った将校から指輪や時計や財布を盗んでいた時、ポンメルシーは自分を助けてくれているものだと思い、テナルディエの名前を聞いて、恩人だと思い込んでしまう。
 一方、ジャン・ヴァルジャンはコゼットを迎えにモンフェルメイユに向かうが、その途中の馬車で再び警察に捕まってしまい、裁判所に送られて死刑を宣告されるが、国王の恩赦で無期徒刑となり、再びトゥーロンの徒刑場に送り込まれる。このあたりのストーリーはアニメと原作では大きく異なる。またストーリーが異なる点として、アニメではマドレーヌ市長がジャン・ヴァルジャンだとわかり、彼が逃亡してしまった後も彼の意志を引き継いだ人々が町を発展させ、人々はいつまでもマドレーヌ市長を尊敬していたが、原作ではマドレーヌ市長がジャン・ヴァルジャンだとわかった途端に、彼のこれまでの功績をすべて忘れてしまい、これまで彼に救われた多くの市民は彼をけなし、部下は私利に走って彼の持っていた地位を奪おうとして争いが起き、やがて工場は荒れ放題となって破産し、工員もバラバラになって町は荒廃してしまう。
 ジャン・ヴァルジャンはトゥーロンの徒刑場で徒刑囚として服役していたが、軍艦オリオン号の上で労働していた時、水夫がマストから落ちそうになったのをジャン・ヴァルジャンが命がけで助けるが、代わりに彼が海に落ちてしまい行方不明となってしまう。誰もがジャン・ヴァルジャンは死んだと思っていたが、実はこれはジャン・ヴァルジャンの計画的な脱獄で、その後、彼はコゼットを迎えにモンフェルメイユに行く。ジャン・ヴァルジャンがコゼットと出会い、テナルディエからコゼットを取り戻すところは原作もアニメもほとんど同じだが、アニメではコゼットを取り戻すのに1フランも使わなかったが、原作ではテナルディエに1500フランを渡している。
 コゼットを取り戻したジャン・ヴァルジャンはパリで暮らすようになるが、原作にはコゼットがファンティーヌを想い出したり、想い出のリュクサンブール公園に行くエピソードはない。よってアニメの第14〜16話あたりはアニメオリジナルとなる。原作ではアニメ同様にジャヴェール警部に嗅ぎつけられ、ジャン・ヴァルジャンは逃走を図り修道院に逃げ込み、昔世話をしたフォーシルヴァンの協力もあってジャン・ヴァルジャンは修道院で働くことになる。原作では修道院について70ページ近くも長々と解説しているが、それを除けばアニメも原作もほとんど同じである。
 第三巻はパリの浮浪児の話から始まる。パリの浮浪児を長々と説明した後、パリで浮浪児をしているガヴローシュやゴルボー屋敷に住み着いたテナルディエ一家、そしてその隣に住むマリウスが登場する。原作のマリウスは登場した時から貧乏だったが、すぐにマリウスの過去の話に戻る。そこでジルノルマンやポンメルシーの人柄、マリウスが父を憎むようになったいきさつ、そして父の死を通じてマブーフと出逢ううちに父の人柄を知るようになり、やがてマリウスは王党派から革命派に衣替えする。このあたりは原作もアニメもほとんど同じである。
 次にマリウスはABCの友の仲間と出会う。出会いのいきさつはアニメと原作では大きく異なり、また原作ではアニメのようにいきなり仲間になるわけではない。17才でジルノルマンの家を飛び出したマリウスは貧乏になってその日の生活にも困るようになる。弁護士の資格を取るが弁護士にはならず、英語とドイツ語を勉強して翻訳や出版の仕事をするようになり、20才になる頃にはようやくその日の暮らしに困らないくらいの収入を得るようになる。その頃マリウスはリュクサンブール公園に毎日やって来るジャン・ヴァルジャンとコゼットに気付いていたが、ほとんど気にとめる事もなかった。このあたりは原作と一目惚れしていたアニメでは少しばかり異なる。
 それからさらに数年が経過したころ、ふとした事からリュクサンブール公園に毎日来ているコゼットが不器量だった少女から美しい女性に変化しているのに気付き、マリウスはコゼットに恋をする。最初のうちは遠くから見ているだけだったが、やがてその行動は大胆になり、ジャン・ヴァルジャンに気付かれてジャン・ヴァルジャンとコゼットは引っ越してしまう。このあたりのストーリーの大筋は原作もアニメも同じだが、ポーレットは登場せず、マリーゴールドの花などのストーリーはアニメのオリジナルである。
 そして話はパトロン・ミネットへと飛び、メンバーの紹介の後、テナルディエの住むゴルボー屋敷へジャン・ヴァルジャンが訪れ、パトロン・ミネットとの騒動がありテナルディエ達はジャヴェール警部に逮捕されジャン・ヴァルジャンは逃走する。このあたりもアニメと原作はほとんど同じだが、アニメではジャン・ヴァルジャン達がゴルボー屋敷を訪れた時、コゼットだけはテナルディエだと気付いていたが、原作ではコゼットもジャン・ヴァルジャンも気付かず、気付いていたのはテナルディエだけだった。
 第四巻はフランスの革命前の様子が延々と紹介され、そして失恋したマリウス、そのマリウスに近づきコゼットの住所を教えるエポニーヌなどが書かれている。そして時間を戻してジャン・ヴァルジャンが修道院を出た後の行動が詳しく書かれている。これによるとフォーシルヴァンが亡くなった事もあり、修道院を出たジャン・ヴァルジャンは、アニメのようなウエスト通りのアパートではなく、ブリュメ通りの古い一軒家に住む事になる。しかし用心深いジャン・ヴァルジャンはこの家以外にも他に二軒の家を借りており、何ヶ月か毎に住処を変えていた。そのうちの一つがウエスト通りのアパートだった。
 修道院を出た頃のコゼットはまだ14才で、決して美人ではなく不器量だった。しかし年月と共にコゼットは美人になり、自分でもそれに気がついておしゃれにも気を使うようになる。そんな時にリュクサンブール公園でコゼットはマリウスと再会し、二人の恋は一気に燃え上がる。二人はお互いを意識しながらも声もかけられずにただ見ているだけだったが、そんな二人の様子を見ていたジャン・ヴァルジャンは嫉妬し、マリウスがコゼットをアパートまで尾行した事から、ジャン・ヴァルジャンはウエスト通りのアパートを引き払ってブリュメ通りの古い一軒家に戻る事になる。
 その後しばらくの間、コゼットはリュクサンブール公園に行けなくなってしまったため、二人は深い失恋の痛手を負う。コゼットにリュクサンブール公園に行かせないようにしてマリウスとの仲を引き裂いたジャン・ヴァルジャンはコゼットとの親子の関係も冷めてしまう。そんな時、ジャン・ヴァルジャンはテナルディエに監禁される事件があり、火傷で何ヶ月も体調を崩したジャン・ヴァルジャンをコゼットは献身的に介抱し、ジャン・ヴァルジャンとコゼットの親子の関係も元に戻り、コゼットは失恋から立ち直る。
 一方のマリウスはコゼットに逢う手かがりを失ってしまった事でいつまでも立ち直る事ができなかった。マリウスはそんな時、エポニーヌが強盗目的で下調べしていた屋敷の住人がコゼットだと知り、エポニーヌはコゼットの住所をマリウスに教え、マリウスとコゼットは再会を果たす。そしてマリウスとコゼットはブリュメ通りの古い一軒家の庭で毎夜のようにこっそり逢って愛を育む。
 次にブレソールとユーグがガヴローシュと出逢って一緒に公園の象の中で生活するようになる。アニメと違って原作ではブレソールとユーグ、そしてガウローシュは兄弟という設定だが、それ以外はアニメと原作はほとんど同じである。そしてパトロン=ミネットのメンバーがフォルス監獄から脱獄する。この時、ガウローシュも脱獄に加担するが、アニメと違って原作では自分の父親が脱獄するとは聞かされておらず、助ける時になって初めて父親だと気づき、しかもその父親であるテナルディエは自分の息子に助けられたことさえ気付かない。
 パトロン=ミネットは脱獄後に、そこがジャン・ヴァルジャンの屋敷とは知らずにブリュメ通りの古い一軒家に強盗に入ろうとする。その屋敷の偵察を命じられたエポニーヌはその屋敷がジャン・ヴァルジャンやコゼットの住む屋敷と知り、お金持ちではないとパトロン=ミネットのメンバーに言う。しかしそれを信じなかったメンバーはブリュメ通りの一軒家に強盗に入ろうとするが、再びエポニーヌに邪魔されてしまい、断念してしまう。アニメのエポニーヌはコゼットが憎くて強盗に入るように仕向けたこともあったが、原作では一貫して強盗に入らないように言っている。
 その頃、パリの情勢が不穏になり始めた事からジャン・ヴァルジャンはイギリスに行こうと考える。それを知ったコゼットはその事をマリウスに告げると、マリウスはジルノルマンの元を訪れ、コゼットとの結婚を認めてほしいと申し出たが断られてしまい、コゼットまで再びいなくなった事で絶望に追い込まれてしまう。このあたりはアニメも原作もほとんど同じである。
 原作ではここから革命が始まる。アニメではずいぶん前からマリウスがクールフェラックなどのアベセ友の会のメンバーに感化されていく様子が描かれているが、原作ではマリウスは革命にはほとんど興味がなく、革命の時にバリケードにやって来たのもコゼットを失った絶望の中で、仲間がバリケードにいると聞かされてやって来ただけで、実際にはバリケードを見て足がすくんでしまい、引き返そうかとも考えているほどだ。
 戦いの中でエポニーヌはマリウスをかばって撃たれてしまう。コゼットは予定よりも早くに引っ越すことになったとき、自分の居所を知らせるためにエポニーヌとは知らずに引越し先の住所を書いた手紙を託していた。しかしマリウスのことが好きだったエポニーヌはコゼットの手紙をマリウスには渡さず、マリウスをバリケードに向かわせてマリウスを死なせてコゼットとは逢えないようにしようと企む。しかし結局自分がマリウスをかばって死んでしまい、死ぬ直前にエポニーヌはコゼットからの手紙をマリウスに渡す。マリウスはコゼットがいなくなったのは自分が嫌いになったからだと思い込んでいたが、手紙を読んでマリウスはまだコゼットが自分のことを愛してくれていたことを知る。しかしジルノルマンには結婚を認めてもらえず、コゼットはイギリスに行ってしまうので絶望は変わることがなく、マリウスは自分がバリケードで死を選ぶことをコゼットに手紙を書き、それをガヴローシュに届けさせる。その頃ジャン・ヴァルジャンはコゼットの手紙からコゼットが恋をしていたことを知る。そんな時にマリウスからの手紙をジャン・ヴァルジャンが読むことになり、ジャン・ヴァルジャンもバリケードに向かう。
 バリケードの中での戦いの様子はアニメと原作では似ているが、アニメではガウローシュは銃に撃たれたところをコゼットに助けられるのに対し、原作ではコゼットは家に閉じこもったままで、ガウローシュは撃たれて命を落としている。ここだけが原作とアニメでは異なる。バリケードの中でジャン・ヴァルジャンはジャヴェールを解放し、傷ついたマリウスを担いでジャン・ヴァルジャンはパリの下水道を歩き、テナルディエに強請られながらも地上の世界に出たところをジャヴェールに見つかり、傷ついたマリウスをジルノルマンの屋敷に届けた後、ジャン・ヴァルジャンはジャヴェールから解放される。ここまではアニメも原作もほとんど同じだが、この後、原作のジャヴェールは法の番人である自分が自ら法を犯してしまい、しかも自分が生涯間違っていないと思い込んでいたことが間違いだったと気付かされ、セーヌ川に身投げして自殺している。
 そしてマリウスの治療が長く続き、コゼットとの再びの出会いとなるが、このあたりからアニメと原作では再び異なる。アニメでは毎日コゼットがガーゼを渡しに屋敷を訪れるが、原作ではコゼットではなくジャン・ヴァルジャンが届けている。そしてアニメではマリウスが意識を取り戻した後、すぐにコゼットと再会し、コゼットに結婚を申し込んでいるが、原作ではマリウスはコゼットとしばらく会えず、ジルノルマンに結婚の許しを得てようやくコゼットと再会を果たしている。そこからはアニメと原作はさらに異なる。
 アニメでは結婚式の後、ジャン・ヴァルジャンはコゼットの幸せを願ってコゼットをマリウスに渡し、マリウスに自分の真相を話して姿を隠してしまう。そして遠く離れた農村で暮らす。しかし原作では真相を話すところまでは同じだか、原作ではジャン・ヴァルジャンは自分の過去のすべてを話さず、自分にとって都合の悪い部分だけを話す。それを聞いたマリウスはジャン・ヴァルジャンが徒刑囚で今も警察から追われており、ジャヴェール警部を撃ち殺し、60万フランはもらったが、このお金も後ろ暗いお金だと考え、ジャン・ヴァルジャンに対して不快感を示す。ジャン・ヴァルジャンはコゼットと別れて住むと決心したが、どうしてもコゼットを忘れられず、毎日ジルノルマンの屋敷を訪れてはコゼットに逢うのを繰り返していた。しかしジャン・ヴァルジャンはコゼットと別れるためにコゼットにはお父さんとは呼ばせず冷たく装ったことから父娘の関係も次第に冷めていき、マリウスもジャン・ヴァルジャンの訪問を疎ましく思っていたことから、次第にジャン・ヴァルジャンは阻害されていく。マリウスはコゼットをジャン・ヴァルジャンから遠ざけ、コゼットもそれとは気付かぬまま従った。やがてジャン・ヴァルジャンは屋敷に来なくなり、コゼットという希望を失ったジャン・ヴァルジャンは絶望から食事も取らなくなって病になる。
 その頃、マリウスの元をテナルディエが訪れ、ジャン・ヴァルジャンの後ろ暗い過去を高値で売りつけようとする。テナルディエの語るいずれの話もマリウスは既にジャン・ヴァルジャンから聞いていたが、ジャン・ヴァルジャンがマリウスに語らなかった真実、つまりコゼットに託した60万フランはガラス工場で稼いだまっとうな金であること、ジャン・ヴァルジャンはジャヴェール警部を殺したりはせず、ジャヴェール警部は自殺したこと、そしてマリウスをバリケードから救い出したのがジャン・ヴァルジャンだと知り、マリウスは驚喜してテナルディエにその場で4500フランを渡し、テナルディエを二度と自分の前に現れないようアメリカに行かせてニューヨーク払いの2万フランの手形を握らせる。
 アニメではテナルディエはジャヴェール警部に捕まり、おかみとアゼルマはまっとうな生活に戻るが、原作ではおかみは獄中で亡くなり、テナルディエとアゼルマはマリウスから大金をせしめ、その金を元手にアメリカで奴隷商人を行う事になる。
 ジャン・ヴァルジャンの真実を知ったマリウスは慌ててコゼットを連れてジャン・ヴァルジャンの元を訪れるが、既にジャン・ヴァルジャンは病で死の淵をさまよっており、コゼットとマリウスの訪問を歓迎し、二人が自分を許してくれたことを喜ぶが、ジャン・ヴァルジャンは二人の前で息を引き取ってしまう。これが原作とアニメのストーリーの違いだ。
アニメとのキャラクターの違い
 アニメと原作ではファンティーヌが少しばかり違った印象に描かれている。アニメでのファンティーヌは美しくて清らかで天使のような人で、ファンティーヌの過去はは一切語られていない。しかし原作では彼女は親も兄弟も知らずに捨て子として育ち、ファンティーヌという名前も名前がないと不便だからと通りかかった人に付けてもらった名前で、もちろん姓はない。彼女はモントルイユ・シュル・メールの農家で働き、やがてパリに女工として働きに出る。そこで彼女は金持ちだが風貌の冴えない老学生のトロミエスに初恋をする。そこで彼女は贅沢を覚え、やがて女工も止めてしまった。しかし彼女はトロミエスに遊ばれたあげくに捨てられ、彼女の初恋は破れただけでなく、彼女は既にトロミエスとの間の子供であるコゼットを連れていたのだ。生活に困ったファンティーヌはパリを離れて生まれ故郷のモントルイユ・シュル・メールに戻る途中、テナルディエ夫婦にコゼットを預ける。ファンティーヌはモントルイユ・シュル・メールに戻ると、そこでマドレーヌの経営する黒ガラス工場に女工として雇われる。しかし彼女はパリで贅沢な生活をしていたのが抜けられず、かなりの借金までして部屋に家具を一式購入した。彼女は女工として一生懸命働いたが、私生児がいるのがバレてしまい、わずか1年で黒ガラス工場を首になる。ここからファンティーヌの悲劇が始まる。それまではコゼットへの養育費も順調に払われていたが、女工を首になった時にもまだ家具の借金は多く残っており、コゼットの養育費もテナルディエの陰謀でどんどん高額になりファンティーヌはお金に困るようになる。借金してまで買った家具をすべて売ってしまったがそれでも部屋代が払えなくなり、暗く狭い屋根裏部屋で1日17時間働いて9スーという過酷な労働を余儀なくされる。さらにテナルディエに騙されて寒い冬に備えてコゼットのスカートを買う為に、美しかった髪の毛を10フランで売ってしまうのはアニメも原作も同じだが、原作ではさらに加えてテナルディエは「コゼットが粟粒疹熱にかかった」と嘘をついて40フラン請求し、ファンティーヌは40フラン用意する為にきれいな前歯を2本抜いて売ってしまった。この頃からファンティーヌは羞恥心をなくしてあつかましくなり、身だしなみも忘れて精神的にもおかしくなり、自分のまわりのすべてのものを憎み始める。それだけでなく、テナルディエからこれまでの未払いの養育費も含めて100フランを今すぐに払わないとコゼットを寒空に放り出すと脅され、とうとうファンティーヌはお金を稼ぐ為に売春婦になり、夜の町に繰り出すようになる。そんな時に酔っぱらった田舎紳士から背中に雪を入れられて喧嘩になり、ファンティーヌはジャヴェールに逮捕される。このようにアニメのファンティーヌはコゼットと別れた頃は美しくて清らかで天使のような人に描かれており、それがジャヴェールに逮捕される頃には見る影もないほど堕落していたが、原作ではそれ以上に落ちぶれている。
 またマドレーヌと名乗ってからのジャン・ヴァルジャンはアニメでは人格者のように描かれているが、原作ではアニメほどではなかったようだ。例えばアニメでは自分の身代わりでシャン・マチウがジャン・ヴァルジャンとして終身刑になろうとしているのを聞き、一時はこれで自分がジャン・ヴァルジャンとして疑われる事もなく平穏に暮らす事ができるようになると安心し、自分がジャン・ヴァルジャンである証拠の銀の燭台を暖炉に投げ込んでしまおうとするが、ミリエル司教との約束をどうしても忘れる事ができず、結局一晩悩んだ末に決意し、アラスの法廷で自分がジャン・ヴァルジャンだと名乗り出る。原作では一晩かかって悩むところまではアニメと同じだが、原作では一晩かかっても結論は出ない。ジャン・ヴァルジャンはミリエル司教との約束を守って、自分が名乗り出なければならないという良心と、今自分が多くの人に幸せを分け与えている事ができなくなってしまう事の間で結論が出せず、シャン・マチウという一人の不幸な男と多くの人の幸せを天秤にかけ、自分が名乗り出るのを止めようとさえ思ってしまう。それでもジャン・ヴァルジャンはシャン・マチウを一目見る為に馬車を駆ってアラスの町に向かうが、途中で馬車の車輪が壊れてしまい、代わりの馬車もなくアラスの町に行く事ができなくなってしまう。ジャン・ヴァルジャンはここまで努力してアラスの町に着こうとしているのにそれができないのは神の御意志だ、自分はできるところまでやったのだからあきらめようと決心するが、偶然にも馬車は手配でき、その日の夜になってようやくアラスの町に到着する。もうとっくに裁判は終わっているだろうと思っていたが、いざ裁判所に行くと、まさに裁判の真っ最中だった。ジャン・ヴァルジャンは傍聴室に入るのをずいぶんとためらったが、それでも勇気を出して中に入り、裁判の成り行きを聞いているうちにアニメと同様に名乗り出た事になっている。このようにアニメとは違って、最後まで名乗り出て現在の地位や他の多くの人の幸せを失う事を恐れていた。さらにマリウスと出会ってからも、コゼットがマリウスに取られてしまうのではないかとマリウスを避け、2度までも引越しし、どうにかして自分とコゼットとの平和な日々がいつまでも続き、コゼットをマリウスに取られないようにしている。アニメにも少しばかりはそういった描写があるが、アニメのジャン・ヴァルジャンは何度もミリエル司教との回想シーンが登場し、ほとんど聖人のように描かれている。しかし原作のジャン・ヴァルジャンはミリエル司教の回想シーンなどほとんど登場することなくコゼットを独占しようとしたり、マリウスから逃げ回ったりと、アニメとは違ってかなり人間味あふれる姿に描かれている。そしてコゼットとマリウスの結婚後、アニメではジャン・ヴァルジャンは忽然と姿を消すが、原作ではコゼット逢いたさに毎日のようにジルノルマンの屋敷を訪れ、マリウスに疎まれてコゼットに逢うことができなくなり、ジャン・ヴァルジャンは絶望から食事を取らなくなって病となり亡くなってしまう。
 また、コゼットの容姿もアニメと原作では異なる。アニメでは美人に描かれているが、原作ではかわいいとは書かれているが美しいとは書かれておらず、逆に修道院の院長からは醜いとまで言われている。しかしその醜さゆえに院長に気に入られ、コゼットは修道院に置いてもらえることになる。しかしそれも年齢と共にコゼットは美しくなり、そして自分の美しさに気付いたコゼットは人並み以上のおしゃれを楽しむようになる。アニメではせいぜい日傘を持つくらいだったが、原作ではかなりおしゃれに着飾り、できるだけブリュメ通りの古い一軒家の表通りに面した庭に出て、通行人に自分の着飾った姿を見てもらうのを楽しみにしていたくらいで、ずいぶん異なる。コゼットの性格的なところはアニメも原作もほとんど同じだ。
 テナルディエも性格の陰湿さやねたみ深さはアニメも原作も同じだが、原作のテナルディエはジャン・ヴァルジャンを金儲けの道具とは考えてはいるようだが、アニメのように個人的な復讐心に燃えるようなことはなかった。同様にエポニーヌも小さい頃からずっとコゼットに対して嫉妬していたが、原作ではそのような記述はない。どちらかというと、コゼットとエポニーヌ、アゼルマ、ガウローシュは子供の頃一緒に暮らしていた事を知らずにいたようだ。これらのジャン・ヴァルジャン一家に対するテナルディエ一家の嫉妬やねたみはアニメ化でかなり脚色されている。またおかみも原作では小説好きのロマンチストであったりと、多少アニメとは異なり、しかもパトロン=ミメットの脱獄後、おかみは獄中死している。
 テナルディエの子供達もアニメと原作では異なる。アニメではエポニーヌとアゼルマ、そしてガヴローシュしか登場しない。エポニーヌとアゼルマはアニメも原作もほとんど同じだが、原作ではガヴローシュはモンフェルメイユのワーテルロー亭で暮らしていた頃、コゼットとの接点はほとんどない。そればかりか原作ではガヴローシュの下にも2人の弟がおり、その弟たちはガヴローシュ同様おかみに邪険にされ売り飛ばされる。かつてジルノルマン家で女中として働いていたマニョンはジルノルマンを騙して月80フランという大金を子供達の養育費としてせしめていたが、子供達は病気で亡くなってしまい、養育費をもらい続けるためにテナルディエから2人の子供を買い取り育てていた。しかしパトロンミネットのメンバーだったこのマニョンも警察に逮捕され、子供達は家を失ってパリの町を徘徊しているところを、自分の兄弟とは知らないガヴローシュに拾われる。これがアニメでも登場するブレソールとユーグである。よってアニメでは両親は死んだことになっていたが、実際にはテナルディエとそのおかみとして生きている。そしてアニメではその後ガウローシュ、ブレソール、ユーグの3人は一緒に生活するようになるが、原作では一晩一緒に象の中で寝ただけで、それ以降は離れ離れになる。さらにそのガウローシュはバリケードの戦いで命を落とす。またアニメでのアゼルマは、最後に監獄を出た後、おかみと一緒にまっとうな生活を送ろうとするが、原作ではおかみは獄中死し、アゼルマはテナルディエと共に再び悪事に手を染め、マリウスから24500フランせしめてアメリカに渡って奴隷商人となる。
 ジャヴェール警部の人柄はアニメも原作もほとんど同じだが、ジャヴェール警部の最期だけ大きく異なる。アニメでは自分を助けてくれたジャン・ヴァルジャンを解放した後、ジャヴェールは葛藤を続け、とうとう心を入れ替えて人間味の溢れた人に生まれ変わるが、原作では葛藤の末にセーヌ川に飛び込み、自殺の道を選んでしまう。
まとめ
 アニメの「少女コゼット」は、フランスの文学小説「レ・ミゼラブル」を比較的忠実に再現している。全く同じというわけではないが、数多い世界名作劇場の作品の中では比較的忠実な方だろう。しかしこの原作は非常に読みにくく、19世紀前半のフランスの王政や革命などの情勢や時代背景、そして地理や人々の暮らしを知っていないとなかなか理解しにくいところがある。アニメではこのあたりの難しい話をバッサリと割愛し、わかりやすくまとめられている。さらにアニメ化にあたってはコゼットの虐げられていた話や、ジャン・ヴァルジャンと一緒にフランスに行ってから母親との想い出の話、そしてジャン・ヴァルジャンにとってミリエル司教との回想録等、アニメでは要所要所に脚色がなされており、アニメを面白いものにしている。特にアニメではジャン・ヴァルジャンの聖人化を強調している。
 また原作は作品中の時間の流れが頻繁に入れ替わり、特にジャン・ヴァルジャンとコゼットが修道院を出てからのストーリーは、ジャン・ヴァルジャンからの視点やマリウスからの視点、そしてテナルディエ達からの視点など、同じ事件や事柄を色々な視点から何度も説明されており、全体を把握するのがなかなか難しい。その点アニメは原作を噛み砕いてわかりやすくしているので、原作の「レ・ミゼラブル」を理解する上でもアニメは非常に役に立つ。原作は全5巻もありなかなか読むのは大変だが、アニメが面白いと思ったのなら読んで損はないだろう。

評価
 項目 5段階評価 コメント
アニメとの類似性 ☆☆☆☆ アニメと原作では若干異なるが大筋では同じ
入手の容易度 ☆☆☆☆☆ 有名な作品なのでほとんどの本屋にある事でしょう
お薦め度 ☆☆☆ 内容は面白いが読むのが大変
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