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ペリーヌ物語  ストーリー詳細

第1話 旅立ち
 1870年代の後半、フランスのマロクールに7000人以上もの労働者を抱えた大きな織物工場を経営するビルフラン・パンダボアヌという名の大金持ちがいました。ビルフランにはエドモンという名の一人息子がおり、ビルフランは当然エドモンに工場を継がせようと考えておりました。しかし何度となくエドモンと意見の衝突があり、今から15年前、言い争いがもとでビルフランはエドモンを綿の買い付けにインドまで行かせてしまいます。ビルフランはエドモンの結婚相手を決めており、2人が生活する為の屋敷まで建てていたのですが、エドモンはビルフランの許可なくインドで別の女性でインド育ちのイギリス人のマリと結婚してしまったのです。ビルフランはエドモンに結婚をやめてフランスに帰って来るよう何度も手紙を出しましたがエドモンの決意は固く、カンカンに怒ったビルフランはエドモンや結婚相手のマリを憎み親子の縁を切ってしまうのでした。そして2年後、2人の間に1人の女の子が生まれます。それがペリーヌだったのです。
 エドモンとマリ、ペリーヌの3人はインドで幸せに生活していましたが、しだいに仕事がうまくいかなくなり経済的に苦しくなったのでペリーヌが13才の時にビルフランを頼って一家3人で故郷のフランスに旅立ちます。ようやくスエズまでたどり着きましたが、そこからフランスまでの船賃が足りなかったので、一家3人はギリシャまで船で渡り、そこから馬車を買い陸路でギリシャからフランスのマロクールまで2000キロ以上の旅を始めたのです。旅は容易なものではなく旅の疲れからエドモンは風邪をこじらせて肺炎になり、旅の途中ボスニアでエドモンは亡くなってしまうのでした。エドモンのお葬式を終えた1878年3月の末のある晴れた日、ここからペリーヌ物語は始まるのです。
 「お母さん、もう行きましょう」ペリーヌはお父さんのお墓の前で泣き崩れているお母さんを優しく抱き起こしました。ペリーヌはまだ13才です。お父さんと過ごした楽しかった想い出。あの優しいお父さんがこの世にいないなんて。ペリーヌもお母さんと同じようにいつまでもお父さんのお墓の前で泣いていたい気持ちでした。でもフランスまではまだまだ遠いのです。「私がしっかりしてお母さんを助けなければ」ペリーヌは自分に言い聞かせてお母さんに声をかけたのでした。
 お父さんが亡くなってから数日後、ペリーヌとお母さんはお父さんの死ぬ間際の言葉どおりフランスのマロクールにいるおじいさんを訪ねて残り千数百キロの旅を再開し、お父さんのお墓を後にするのでした。ペリーヌはお父さんを亡くしたお母さんの悲しみがどんなに大きいかをよく知っていました。そして自分が頑張らなければと思っていました。しかしペリーヌだってお父さんの死はとても悲しかったのです。
 ペリーヌのお父さんは写真を写す仕事をしていました。その仕事を手伝っていたお母さんもいつのまにか写真を撮れるようになっていました。ペリーヌとお母さんは旅の途中の町や村で写真屋をする事にしました。「お母さん、試しに私を写してみて」ペリーヌは馬車の前で気どったポーズをとりました。お母さんの写真の腕前は大した物でした。「お母さん素晴らしいわ、これなら大丈夫よ」ペリーヌはにっこりしました。やがてペリーヌ達は小さな村に着きます。村の広場に馬車をとめるとペリーヌは大きな声で言いました。「私たちは旅の写真屋です。一生の想い出にお写真を撮ってみませんか?」集まった村の人達は写真を見て感心しましたが誰も写してみようとはしませんでした。その夜ペリーヌは素敵な事を思いつきました。「お母さんがインドにいた時よく着たサリーを着て写真屋をすればいいんだわ、きっとすごく人目を引くわ」次の日ペリーヌはまた村の広場へ行きました。サリーを着たお母さんが馬車の中から出てくると、みんなはあっと驚いて目を見張りました。馬車の周りには大勢の人が集まり次々に写真を撮りました。ペリーヌのアイデアは大成功でした。これからの旅にお金の心配をしないで済む事になってペリーヌたちはほっとしました。お父さんの故郷に行けばそこにはおじいさんがいて、2人を暖かく迎えてくれる。ペリーヌはそう思っていました。しかし2人の目指すフランスのマロクールは遥か遠く千数百キロの彼方にあるのです。
第2話 遠い道
 お母さんの着るインド衣装は行く先々の人々を驚かせました。ある村ではグリゴリッチという名のおじさんに家族全員を一度に写してくれと頼まれ、家族全員でとんだ騒ぎになりましたが、お母さんとペリーヌは写真屋の仕事に自信を持ち始めました。そしてペリーヌはお母さんがお父さんの死を悲しんで病気になってしまったのではないかと心配していたので、お母さんが少しずつ元気になってきたのを感じて嬉しくてたまりませんでした。そんなある日の事、雨に降られて車輪をぬかるみにとられてしまい馬車が立ち往生してしまいます。お母さんとペリーヌは雨の降りしきる中、何とか馬車をぬかるみから引き上げようとしましたが馬車はびくとも動きません。あたりは暗くなってきたのでペリーヌたちは立ち往生した馬車の中で野宿しようと覚悟を決めますが、そこへドランツという名の男の人の乗った馬車が通りかかりました。ペリーヌたちはドランツさんに助けてもらい、馬車を引き上げてもらって近くの農家の庭先で一晩を過ごす事にしました。農家でスープを分けてもらった時、ペリーヌは農家の一家団欒を目撃します。ペリーヌにとってそれは忘れがたいものでした。ペリーヌは自分の家で食事ができる事に憧れ、一刻も早くおじいさんのいるマロクールに行きたいと心から思わずにはいられません。そして自分とお母さんとおじいさんが楽しく食事する姿を思い描いてみました。でもその頭の中のおじいさんの顔は亡くなったお父さんの顔にとても似ているのでした。
第3話 お母さんのちから
 ペリーヌ親子の旅は今日も続きます。このあたりは人家はほとんどなく村と村との間がとても離れているのです。その上もともとあまり丈夫ではない母のマリはこの2〜3日、体の具合を悪くしているのでした。今日もまた人にほとんど出会う事なく馬車は進みました。お母さんは野宿の見張りとして一晩中起きていたのが祟ったのか少し熱を出していました。野宿に懲りたペリーヌたちは今夜は一夜の宿を借りようと、ようやく見つけた農家にお願いに行きました。ところが出てきた農家の旦那のイーリアは、ペリーヌたちが泊まるのは構わないと言いますが、奥さんのミレーナに子供が生まれそうで、それどころではありません。男では出産の手伝いはできないので、お母さんにミレーヌを任せると、母親を呼びに行くと言ってイーリアは遠く離れた村まで馬車で出かけてしまったのです。しかしイーリアが戻ってくる前に陣痛が始まり、お母さんはお産を手伝うことになりました。お母さんのテキパキした行動にペリーヌはとまどいながらも心の中では嬉しく思います。やがてかわいい赤ちゃんが生まれ、その直後にイーリアが母親を連れて戻ってきました。ペリーヌは小さな命の誕生に感動し、お母さんは赤ちゃんを取り上げた喜びで体の調子もすっかりと良くなるのでした。
第4話 泥だらけの伯爵
 父の故郷フランスのマロクールへ向かうペリーヌ親子は、やっとボスニアを出てクロアチアへ入りました。クロアチアも当時オーストリア帝国の支配下にあった国です。フランスはまだ遠くペリーヌ達の旅は今日も続きます。そんなある日ペリーヌ達は後ろから1台の馬車が駆け抜けていくのを目撃しました。その直後にオーストリアの兵隊がペリーヌたちの馬車を取り囲み、馬車の中を調べはじめたのです。兵隊の隊長はお母さんにゴルジモフ家の紋章を付けた馬車を見かけなかったかと問いますが、お母さんにはゴルジモフ家の紋章がどんなものかまったく知らず、馬車が追い抜いていったと言うと、兵隊たちはその馬車を追いかけていきました。ペリーヌたちは突然の出来事にびっくりしていると、しばらくして銃声が聞こえ、道端に馬車が横転しているのを見かけました。そしてそのそばには血の痕が残っていたのです。
 ペリーヌたちは何とか次のガロッジ村までたどり着こうとしますが、森の中で夜になってしまい、再び野宿するしかありませんでした。ペリーヌが薪を集めに行った時、ペリーヌは怪しい男を見かけました。男は兵隊に追われていたゴルジモフ伯爵だったのです。ゴルジモフ伯爵はオーストリアの皇帝に支配されているクロアチアを、皇帝の支配から取り戻そうとしてオーストリアの兵隊に追われていたのです。ペリーヌたちはゴルジモフ伯爵が悪い人には見えませんでした。ペリーヌたちはゴルジモフ伯爵からガロッジ村がここから1キロほどしか離れていないと聞いて、野宿をやめて村まで行こうとしますが、ゴルジモフ伯爵は足をくじいており、とても歩けそうになかったので、馬車の中にかくまってガロッジ村まで行く事にしました。やがて兵隊たちの探索の手はペリーヌ達の身の上にも及んできたのです。しかしペリーヌが機転を利かせたおかげで追求を逃れる事ができました。ペリーヌ達はゴルジモフ伯爵と別れ、ガロッジ村をすぐに立ち去りましたが、兵隊たちが追いかけて来て、隊長がガロッジ村で呼んでいると言うのです。ペリーヌたちはドキドキしながらガロッジ村まで戻ると、隊長はペリーヌたちに写真を撮ってほしくて呼び戻しただけで、ペリーヌたちはほっと胸をなで下ろすのでした。
第5話 おじいさんと孫
 ペリーヌたちはフランスのマロクール目指して旅を続けていました。通りかかった小さな村でペリーヌたちは写真屋を開きますが、誰も集まって来ないばかりかお母さんの着るインドの衣装に興味も示しません。そこへ村の神父さんがやって来ました。神父さんは、この村には半年ほど前から悪い病気が流行り、次々と村人が死んでいったと言うのです。それを聞いたペリーヌは一刻も早く村から離れようと慌てて馬車を走らせました。しかし、道が悪く、岩にぶつかった衝撃で馬車に積んである水樽が壊れてしまい、ペリーヌたちが気付いた時には大切な水がすっかりなくなっておりペリーヌたちは途方に暮れてしまいます。
 次の村まではまだ距離があったので、ペリーヌたちは途中で見つけた1軒の家で水をもらおうと考えます。ちょうど途中で出会ったバルロという名の少年がその家の子供でペリーヌたちを自分のおじいさんの所に連れて行ってくれました。おじいさんはペリーヌたちを泊めさせてくれたばかりか快く水樽を直してくれたのです。おじいさんは村から遠く離れた場所に孫のバルロと2人で住んでいたので、ペリーヌがバルロの話し相手になってくれた事がとても嬉しく思いました。そんなおじいさんを見てペリーヌは、まだ見ぬフランスのおじいさんの事を思うのでした。そしておじいさんは優しい人に違いないと決めてしまいました。でもそのおじいさんのいるフランスのマロクールは、まだまだ遥か彼方にあるのです。ペリーヌ親子は今やっとイタリアに近づきつつあったのでした。
第6話 二人の母
 ペリーヌたちは早くマロクールに着きたい一心でイタリアのトリエステの町への近道を選び、険しい山道を越え、予定より3日も早くトリエステの町に着きました。トリエステの町で宿をとりますが、あいにくの雨で写真屋の商売はできず、ペリーヌは残り少なくなった現像液と種板を買いに町に出かけました。ところが町を歩くペリーヌの姿を見つめていた貴婦人がいたのです。そして貴婦人は召し使いのマリオにペリーヌの後を追わせ、調査させました。
 宿に戻ったペリーヌとお母さんのところへ突然警官がやって来て2人を警察へ連れて行ってしまいました。あれこれと質問されて何事かと不安がる2人の前にボンテンペルリという名の貴婦人が現れ、ペリーヌを見た途端6年前に行方不明になった娘のジーナだと言うのです。しかしペリーヌやお母さんの懸命な説明でペリーヌはジーナでない事を理解してもらいました。それでもボンテンペルリ夫人はジーナの事が忘れられないらしく、ペリーヌを抱きしめるとジーナと言って涙を流すのでした。トリエステの町には写真屋があったので商売はせずペリーヌたちは1泊した後、トリエステの町を旅立ちました。トリエステの町を離れる時、ペリーヌはボンテンペルリ夫人に贈り物を届けました。それはペリーヌの写真だったのです。
 旅では色々な人に出会います。ペリーヌは不幸なボンテンペルリ夫人の事を考えると悲しくなりました。しかしペリーヌとお母さんだって決して幸せとは言えないのです。でもペリーヌは自分のそばにお母さんがいる事が、お母さんもまた自分のそばにペリーヌがいる事がどんなに幸せであるかをつくづくと感じていました。これから先また様々な人に出会うでしょう。2人の旅は長く続くのですから…
第7話 サーカスの少年
 商売道具であるペリーヌの写真をボンテンペルリ夫人に渡してしまったので、お母さんがペリーヌの写真を撮ろうとしていた時、1人の少年に出会いました。その少年は馬車から何か盗むように思えたので、ペリーヌは追い払ってしまいます。ところがペリーヌがパン屋へ買い物に行った時、その少年が泥棒する現場に出くわしたのです。少年はペリーヌにぶつかって盗んだパンをすべて落としてしまい、結局何も捕らずに逃げてしまいました。しかし少年が落としたパンをバロンが盗んでしまい、ペリーヌはバロンが盗んだパンの代金を払わなければなりませんでした。
 ペリーヌたちが馬車を走らせていると道端に先程の少年がいて馬車を呼び止めたのです。そして少年は馬車に乗せてくれないかとお願いするのでした。少年はマルセルという名で、両親がエトワールサーカス団の一行でマルセルはその後を追っていたのです。マルセルはトリエステのおばさんの家に預けられていたのですが、学校に行かされそうになったので、両親の後を追って逃げて来たのでした。しかしお金を一銭も持っていなかったので、お腹がすいたら食べ物を盗むしかなく、先程も泥棒に失敗してお腹がすいて歩けないと言うのです。お母さんはたった1人でお金もなくお腹を空かせていても明るく陽気なマルセルの姿を見て一緒に旅をするようにと薦めるのでした。こうしてペリーヌ親子はマルセルと一緒に旅をするようになります。マルセルは陽気な子供でした。ペリーヌはマルセルが一緒に旅をするようになって良かったと思いました。特にマルセルから聞くフランスの話はペリーヌをわくわくさせました。何だかフランスがとても近くなったように感じたからです。でも実際にはフランスはまだ遠い彼方にあるのです。
第8話 酔っぱらいロバ
 マルセルがペリーヌたちと一緒に旅をするようになって10日程たちましたが、マルセルの両親のいるエトワールサーカス団に追いつく事はできませんでした。ペリーヌとお母さんは途中で商売をしなければならなかったので、あまり先を急ぐ事はできません。でもマルセルはべつだんのその事を気にする様子もなくのんびりしたものです。そしてペリーヌにとって陽気なマルセルと旅をしていると楽しい事がたくさんありました。
 ペリーヌたちが旅を続けていた時、馬車の車軸が折れそうになってしまいました。ペリーヌたちは近くの村外れの鍛冶屋で馬車を修理してもらいますが、修理にはまる1日かかるので、村で一泊する事にしました。ちょうどレオーネの家で結婚式のパーティーが開かれていたので、ペリーヌたちは結婚式の写真を撮ることになりました。ところがロバのパリカールがブドウ酒を飲み干してしまい酔っぱらって逃げ出してしまったのです。散々探したのですがパリカールの行方はわからず、翌日もう一度探す事にしました。翌日ペリーヌ達はパリカールを探しますが、パリカールはどこに行ってしまったかまったくわかりませんでした。ところが偶然にもバロンが酔っぱらって寝ているパリカールを見つけたのです。ペリーヌたちは大喜びでパリカールを馬車の所まで連れて帰りました。もしパリカールが見つからなかったらいったいどういう事になっていたでしょう。ペリーヌ達はフランスまでの長い道のりを歩いて行く事になったかもしれません。とにかく偶然とはいえ今日はバロンの大手柄でした。
第9話 商売がたき
 ペリーヌ達の馬車はベローナの町を後にして一路ミラノへと目指します。途中の町でエトワールサーカスのポスターを見かけたマルセルは、つい先日までエトワールサーカスがここに来ており、ミラノでサーカス団に追いつけると思うと心が弾むのでした。そんな時、急に派手な色の馬車が近づいて来て写真屋のロッコが「我々は写真師だ、次の村で商売をするから邪魔をするな」と意地悪してペリーヌに言うのです。ペリーヌたちは写真師と競合するのを避け次の村まで足を延ばしました。ロッコたちはペリーヌたちが通り過ぎた村で写真屋の商売を開きますが、誰も写真を撮ろうという人はおらず、すぐに店をたたんでしまいます。
 ペリーヌたちは次の村で明日商売を開こうと考えますが、その村にも夜になるとロッコたちは追いついてきました。ペリーヌたちとロッコたちは同じ宿屋に泊まり、お互い明日商売をすると言います。そればかりかお互いミラノを目指して旅をしており、この先、商売の邪魔をしあうことは目に見えていました。ペリーヌたちも旅の資金を得る為に写真屋の商売をしないわけにもいかず、とうとうその村で2組の旅の写真屋が店を開く事になりました。しかしお母さんのインド衣装のおかげで客はみんなペリーヌたちに写真を撮ってもらいたがり、ペリーヌたちの大勝利でした。今日はどうやらペリーヌ達が勝ったようです。しかしロッコたちがこのまま黙って引き下がるでしょうか。偶然にも同じ道を行く事になった2組の旅の写真屋。これからも今日のようにペリーヌたちの商売はうまくいくでしょうか。
第10話 写真機どろぼう
 ロッコとピエトロは行く先々でペリーヌたちの邪魔をしようとしますが、お母さんのインド衣装のおかげでお客さんはペリーヌたちの所へ集まって来ます。ペリーヌたちの所に人が集まるのはマリのインド衣装のおかげで、腕はピエトロの方がいいと言い張るロッコに対し、ペリーヌはお互いの写真を見せ合って、どちらの方が腕がいいか確かめようと言い出します。ペリーヌの持つ写真はペリーヌの姿が奇麗に瓜二つに写っているのに対し、ロッコの持つ写真はどこの誰だかわからない人の姿がピンボケで写っており、ロッコたちはお母さんの方が写真の腕がいい事を認めざるをえませんでした。
 しかしお母さんはペリーヌの行いを意地悪だったととがめるのです。お母さんは「これからも意地悪されたり悪口を言われたりするかもしれないわ、でも私たちは決して意地悪したり悪口を言ったりする事はやめましょ。人には優しくしましょ。そうすれば人からも優しくされるわ。人から愛されるには人を愛さなくては…」と言ってペリーヌを諭すのでした。
 恥をかかされた事を恨みに思ったロッコたちは、深夜こっそりと忍び込んで大切な写真機を盗もうとしました。ロッコたちの企みを知ったマルセルは深夜馬車の屋根で待ち構え、見事写真機泥棒をしようとしたロッコたちを現行犯で捕まえてしまいます。しかしそれを知ったお母さんはロッコたちが自分に会いに来ただけで写真機を盗もうとしたのではないと言い張るのでした。お母さんの親切に助けられたロッコたちは今後ペリーヌたちとは別の道を進む事になりました。ロッコやピエトロにしても心の悪い人達ではありません。お母さんの優しい心づかいに感激して2人は予定を変えたのです。ペリーヌはこんな母をとても偉い人だと思うのでした。
第11話 バロンがんばる
 ペリーヌたちは旅を続け、エトワールサーカスのいるミラノまで、あと2日の所までやって来ました。ペリーヌたちは林の中で野宿する事にしましたが、マルセルはペリーヌたちに遠慮して、馬車の中で寝ようとはしません。そんなマルセルがバロンと一緒に草の上で寝ていた時、湖で鹿の親子を発見しました。マルセルとバロンはゆっくりと忍び寄ると突然飛び出し、子鹿を捕まえてしまいます。騒ぎに気付いてペリーヌたちもやって来ました。マルセルは子鹿をサーカスに連れていって調教しようと考えますが、お母さんは子鹿の様子を遠くからじっと見つめる母鹿がかわいそうで、マルセルに子鹿を解放するように言うのです。マルセルはお母さんに説得されて子鹿を放し、子鹿は母鹿のもとに帰っていくのでした。
 翌日、林の中で銃声を聞きつけたバロンは猛然とその音の方へ走って行きました。やがて小鳥を咥えて帰って来たバロンの後ろから2匹の猟犬が追いかけて来てペリーヌたちに激しく吠えかかります。バロンが拾って来た小鳥は猟に来たプラマ男爵が撃ち落としたものだったのです。ペリーヌたちはプラマ男爵に小鳥を盗みに来たのではないかと疑われますが、疑いが晴れるとおわびにペリーヌ達に写真を撮ってもらう事にしました。大金持の男爵は気前よく写真代をたくさん払ってくれ、みんな大喜びでした。お金を稼ぐ為、ミラノの手前の村で写真屋を開くはずでしたが、運良くお金が手に入ったので写真屋を開く必要がなくなり、今日のうちにミラノに着こうと道を急ぐのでした。
第12話 たった二人の観客
 ペリーヌたちはミラノの町へ着きましたが到着が遅れ為、町外れの宿場に一夜の宿を求める事にしました。宿でペリーヌとお母さんは、どの道を通ってマロクールへ行くかを検討します。南回りで地中海沿いに直接フランスへ抜けた方が道は平坦なのですが、ペリーヌは少しでも早くおじいさんのもとに行きたかったので、道は険しいけど近道であるアルプス越えのルートを薦めました。そして写真屋の商売もお金がなくなった時だけにして、できるだけ宿にも泊まらずに馬車で泊まって町を素通りして、1日でも早くおじいさんいるマロクールに行きたいと言うのです。でもお母さんは野宿を繰り返していたら体を壊してしまいそうで心配でした。そしてペリーヌも体の丈夫でないお母さんが心配でした。しかしお父さんが亡くなった直後はお母さんは今にも病気で倒れそうでしたが、今ではすっかりと元気になっていたのです。お母さんは「お母さんはお前をおじいさまの所に連れて行くまでは絶対に病気などしません」と言うと「ダメよお母さん、おじいさまの所に行った後も病気はしてはいけないわ」と言うのでした。
 宿屋の主人にエトワールサーカスの事を聞いても知っておらず、マルセルはもしかしてエトワールサーカスはミラノに来ていないのではないかと心配になります。マルセルは、いてもたってもいられなくなり、夜中にこっそりと抜けだすと、ミラノの町の中心のエトワールサーカス一座のいる所まで駆け出してしまいました。マルセルが町の中心に行くと、マルセルの期待通りエトワールサーカスはミラノに来ていたのです。朝マルセルがいない事に気付いたペリーヌは、マルセルが1人でエトワールサーカス団を探しに行ったと思い「別れる時はちゃんとさよならを言って別れたかったわ」と言ってアルプスのある北を目指して馬車を走らせはじめました。しばらく走るとマルセルが戻って来たのです。マルセルはやっと両親に逢う事ができて大喜びでした。ペリーヌたちはマルセルが両親に逢えた事を知って安心して馬車を北に走らせようとしますが、マルセルは両親がペリーヌたちに逢いたがっていると言って、少し遠まわりになりますがミラノの町まで案内しました。
 マルセルのお父さんのジャンサンドラとお母さんのシルバーナはマルセルが世話になったお礼にとサーカスを見てもらおうと考えていました。しかしあいにくこの日は夜の公演しかなく、夜まで待つとペリーヌたちはミラノにもう1泊しなければならないので、ペリーヌたちはサーカス見物をあきらめかけていたところ、エトワールサーカスの団長のウルムの計らいでペリーヌたちの為だけに特別なショーを開いてくれました。ペリーヌとお母さんのたった2人の観客でしたが、ペリーヌは初めて見るサーカス一座の美しさに感動するのでした。そしてペリーヌは両親に逢う事のできたマルセルと別れ、アルプスを越えてスイスに入る為に北へ向かって旅を続けるのでした。
第13話 アルプス越え
 ミラノから北へ向かったペリーヌ親子は10日ほど後、イタリアの国境近くへやって来ました。イタリアの北部はこの季節が一番快適な時で旅は順調に進みました。しかしスイスに入る為には険しいアルプス地帯を通っていかなければならないのです。それは目の前に迫って来ました。アルプスの手前の宿場でペリーヌはジョセフと知り合います。ジョセフは自分のお母さんに自分の写真を送りたいので写真を撮ってくれないかと話しかけます。ペリーヌもお母さんも快く引き受けましたが、ジョセフにはお金がありませんでした。事情を知ったペリーヌは写真代をジョセフに貸す事にしたのでした。次の日の朝早くにペリーヌは出発しますが、その時ジョセフは実家に届け物をしてほしいと荷物をペリーヌに託し、アルプスの峠を越える時はペリーヌたちだけでは無理だからジョセフのお父さんに協力してもらうようにと言って別れるのでした。
 険しい坂道を登り長いトンネルを抜けてやっとスイスに入った時には2人ともすっかり疲れ切っていました。けれども山の中腹にある宿場は満室でペリーヌたちは疲れが取れないまま馬車の中で朝を迎えます。翌日ペリーヌはジョセフの実家を訪れますが、あいにくジョセフのお父さんは留守でした。そして頑張って登り続けるペリーヌたちは急な坂道に苦しみながら、とうとう深い霧に包まれてしまいます。前が見えないまま進み続けて車輪を溝に落としてしまい、これ以上進めなくなってしまうのでした。お母さんは馬車を捨ててパリカールに写真機と食料を積んで歩こうと提案します。そこへジョセフのお父さんがやって来ました。ジョセフの手渡した荷物には写真の他に手紙が入っていたのです。その手紙にはペリーヌたちを助けてやってくれと書いてあったのです。もしジョセフのお父さんの助けがなかったらペリーヌたちはこのアルプスの峠を越える事はできなかったでしょう。いえ、ジョセフのお父さんの助けがあってもペリーヌたちにとってこの山道を歩き通す事がどれだけ大変だったでしょう。ジョセフのお父さんは動けなくなっていた馬車を引きあげ、アルプスの山越えを手伝ったのでした。感謝の気持ちに満たされた2人でしたが、いつまでもジョセフのお父さんを見送っている訳にはいきませんでした。まだまだこの先、下りとはいえ山道が続くのです。そして2人がへとへとに疲れ切ってふもとの村にたどり着いたのはそれから2日も後の事でした。
第14話 美しい国で
 アルプスを越えてスイスに入ったペリーヌとお母さんはすっかりと疲れ切ってしまいました。普段は早起きの2人もこの日ばかりは陽が高くなっても目が覚めませんでした。ペリーヌはようやく起きだしましたが、お母さんは少し体の調子が悪いらしく、食事も食べたがりません。ペリーヌは心配になりました。ペリーヌたちは宿屋を後にして旅を続け、途中の川で水汲みをしていた時、アルプス越えで疲れているお母さんの為に花を採ろうとしたペリーヌは岩場から転げ落ちて足をくじいて歩けなくなってしまいます。驚いたお母さんはペリーヌを早く医者に見せようと馬車を急がせるのですが、あいにく近くの村には医者がおらず、医者のいるシェールの町は、まだまだ遠くにあるのでした。疲れているお母さんの事を思うとペリーヌは自分の不注意を腹立たしく思い悲しくて泣き出してしまいます。お母さんはペリーヌの看病をしながら馬車を一生懸命走らせますが、シェールの町は予想以上に遠く、今日のうちにはたどり着けそうもありません。そればかりかペリーヌはケガの為に熱が出てきたのです。お母さんはあきらめて野宿する事にしましたが、ペリーヌは食べたがりません。お母さんはペリーヌが心配でしたが、ペリーヌもまた疲れ切っているお母さんの事が心配でした。ペリーヌは夜中に目覚めると、お母さんの寝顔に向かって「お母さんごめんなさい、私は二度とおっちょこちょいはしませんから。許してね、お母さん。ぐっすり眠って、お母さん」と言うのでした。
 翌日、ようやくペリーヌたちはシェールの町に到着し、ペリーヌは医者に見てもらいました。足の骨には異状のない事を確かめると、さっそく2人は写真の仕事を始めました。ペリーヌは自分の失敗を取り戻そうと大声をあげて口上を言い続けます。でも自分の足で歩けないのは何としてももどかしいものでした。そして2人分の仕事をしなくてはならないお母さんはすっかりと疲れ切っていたのです。
第15話 フランス!フランス!
 ペリーヌはお医者さんから2週間歩いてはいけないと言われていたので、旅をする時は馬車に乗り続け、この10日間というものお母さんは歩き通しで疲れていました。ペリーヌたちはやっとの事でレマン湖の畔の町にたどり着きました。美しい町並み、きれいな湖、見るものすべてがペリーヌを感動させます。今晩ジュネーブに着ければ明日にはフランスに入れると思うとペリーヌは嬉しくて踊りだしてしまうのでした。ところが町で思いもかけない事が起こり警官に写真の商売を禁止されてしまったのです。ペリーヌたちはジュネーブへと急ぐのですが道を間違え暗い森へ迷い込んでしまいました。お母さんは体調がよくなく時々目眩いを感じてしまいます。ペリーヌたちの乗った馬車は真っ暗闇の森の中で狼の群れに襲われ、怯え切ったパリカールは狂ったように走り続けました。お母さんは夢中で手綱を握り続けペリーヌは必死で御者台にしがみついてパリカールがぶつからないよう祈っていました。どのくらい走ったのでしょう、パリカールは疲れ果てたのか突然走るのをやめてしまいました。そこがどこなのか2人にはさっぱりわかりませんでした。朝ペリーヌが土地の人に場所を尋ねると、ここはもうフランスだったのです。ペリーヌは大喜びでお母さんに報告しますが、お母さんは疲れがもとで倒れてしまったのです。額は火のように熱く、そしてお母さんはペリーヌの腕の中で意識を失ってしまいました。目指すマロクールはまだまだ遠いのに、お母さんは病気で倒れてしまったのです。
第16話 お母さんの決意
 お母さんが病に倒れて10日たちました。そして10日たった今も病気はまったく良くなる気配を見せませんでした。ペリーヌは宿屋で寝ているお母さんの代わりに朝早くから写真の商売に出かけます。お金ももうほとんどなくなりかけていました。ペリーヌは今日写真の仕事をしてそれで宿屋代を払おうと考えていたのです。しかしまだまだ幼いペリーヌに誰一人として写真を撮らせてくれる人はいませんでした。ペリーヌがまだ子供なので信用してくれないのです。ペリーヌが一軒一軒家を訪ね歩いて写真を撮らせてもらえるように頼みましたがやはりダメでした。ペリーヌは宿屋に帰ってからお母さんに心配をかけまいと写真の仕事はうまくいっていると嘘をつくのでした。
 何日かたつと宿屋に払うお金もなくなってしまいました。宿屋の主人に宿泊費を催促され、ペリーヌは写真の現像液や種板を買う為に残していた10フランを支払いますが、それでも足りませんでした。そして今日もペリーヌには誰も写真を撮らせてくれず、とうとうペリーヌは泣き出してしまいます。ペリーヌにお金がない事を悟ったお母さんは、お父さんから貰った大切な形見の指輪を宿屋の主人に売って217フランというお金を作りました。「ペリーヌ、明日ここをたちましょう。このお金がなくならないうちにマロクールに着かなければなりません。これだけあればたぶんマロクールに着くまで写真の仕事をしなくても大丈夫でしょう」ペリーヌはお母さんの体が心配でしたが、いつまでもここにいるわけにはいきません。次の日ペリーヌはお母さんを馬車に寝かせてマロクール目指して出発します。しかしマロクールはフランスの首都パリの北約150キロも離れた所にあるのです。そしてそのパリはここからまだ300キロ以上も彼方なのです。
第17話 パリの宿
 途中の村や町でお母さんをお医者に見せたり高い薬を飲ませたりしましたが病気はなおりませんでした。そしてペリーヌたちはパリの入口でマルセルに逢います。マルセルいるエトワールサーカス団はパリで興行する為にこの町に来ていたのです。再会を喜ぶマルセルですがペリーヌのお母さんが病気だと聞いて顔を曇らせるのでした。そしてそのマルセルの紹介でペリーヌたちはお母さんの休養を兼ねて2〜3日、パリの下町のシモン荘という所に馬車を置く事にしました。しかし管理人のシモンじいさんは欲の皮の突っ張った人で馬車を置く金を取るだけでなく、ロバを置く金も取るのです。でも、シモン荘で生活している人たちは飴屋さんを始めとして良さそうな人ばかりでした。
 ペリーヌはお母さんにお医者様に見てもらおうとしますが、ペリーヌ達の手元には10フランも残っていませんでした。ペリーヌはおじいさんに手紙を書いておじいさんにパリまで迎えに来てもらおうとお母さんに提案します。とてもいい考えだと思ったのにお母さんはおじいさんに手紙を出す事を反対しました。そしてその理由も話そうとはしません。ペリーヌは何だかとても落ち着けない気持ちになってしまいました。
第18話 シモンじいさん
 ペリーヌはシモンじいさんに医者を紹介してもらい、さっそくお母さんの病気を見てもらうのですがお母さんは入院しなければならないほど悪くなっていたのです。お医者様は入院できないのならシモンじいさんのアパートを借りる事を薦めるのでした。ペリーヌはお母さんが早く良くなるように願いながら薬屋へ急ぎます。しかし診察料に3フランを取られたうえ、薬代として7フラン50サンチーム(1フラン=100サンチーム)もかかってしまい、ペリーヌは処方通りの薬を買う事すらできませんでした。困ったペリーヌは馬車や写真機をシモンじいさんに売ってアパートを借りる事にしたのです。お母さんは自分の命が長くない事を知っていました。お母さんは「神様、私をもうしばらく生かしておいてください。せめて娘をマロクールに連れて行くまでで結構です。あの子をこのパリで独りぼっちにする事だけはしないで下さい」そう言って神に祈るのでした。シモンじいさんに馬車と写真機とインド衣装をたった28フランで売ったペリーヌは逆に1日40サンチームでアパートを借ります。とうとうペリーヌ達は馬車を売ってしまいました。そしてパリカールもやがては手放してしまうでしょう。でもお母さんが元気になれば… ペリーヌは今、ただそれだけを心から祈っているのでした。
第19話 パリの下町っ子
 シモン荘に移ってもお母さんの病気は少しも良くならず馬車を売って作ったお金も部屋代や薬代に消えていくばかりです。お母さんはせめて自分がマロクールのおじいさんの所までペリーヌを連れて行かなければと考えていましたが、お母さんの病気はとても悪く、立って歩く事すらできません。そして診察に来たサンドリエ先生にも立って歩けるようになるのはまだまだ先の事と言われてしまいます。
 サンドリエ先生の診察代や薬代は決して安いものではなく、パリカールも売らなければなりません。明後日にはパリで馬市が開かれるので、そこでパリカールを売る事に決まっていました。ペリーヌはパリカールを世話しながら「パリカール許してね。私たちお前を売らなければならなくなったの。お母さんあの調子ではすぐには良くなりそうにないから、当分はお医者様に診ていただかなければならない。でもね、それにはお金がたくさんかかるの。私たちはお前を売りたくて売るんじゃないのよ。どうしても今お金が必要なの。水曜日には馬市があるわ。そう、明後日よ。お前と一緒にいられるのはそれまでなのよ、パリカール」と言ってパリカールを抱きしめるのでした。
 パリに着いてからペリーヌはお母さんの病気について心配したり、どんどんなくなっていくお金の事に心を煩わせたりしていましたが、その日の暮らしに追われて暮らしている飴屋さんや侯爵夫人、靴直しのガストンさんなど、シモン荘に住む貧しい人々の優しい励ましや、毎日お見舞いにやって来るマルセルの暖かい友情を心から嬉しく思うのでした。
第20話 パリカールとの別れ
 ペリーヌ達がパリへ着いて4日が経過しましたが、お母さんの病気はいっこうに良くなりませんでした。しかもお医者様の高い診察費とそれ以上に高い薬代の為、お父さんの形見の指輪を売ったお金はもちろんの事、馬車や写真機を売ったお金もあっという間になくなってしまいました。ペリーヌはパリカールも売る為にシモンじいさんと馬市に出かけました。ところがパリカールは馬市の入口で立ち止まり、押しても引いても動かないのです。パリカールを売らなければお母さんの薬代は作れず、ペリーヌは困ってしまいました。そんな時ペリーヌの前にシモンじいさんの知り合いのルクリおばさんが現れパリカールを買おうと言うのです。ペリーヌはパリカールを100フラン以上で売りたかったのですが、ルクリおばさんは20フランでしか買わないと言うのです。あまりの値段の違いに交渉は決裂します。ところがどうしてもパリカールは馬市の入口から中に入ろうとはしません。そこへ再びルクリおばさんが現れ30フランで買おうと言うのです。ペリーヌには不本意でしたがパリカールが馬市に入ろうとしないので、ペリーヌにはルクリおばさんに売るしか手はなく、わずか30フランでパリカールを売ってしまうのでした。パリカールと別れる時、ペリーヌは目にいっぱい涙をためてパリカールの首を抱きしめました。「パリカール、色々ありがとう、元気でいてね」でもパリカールはペリーヌの帰る姿を見て、いつまでも鳴き続けるのでした。
第21話 最後の言葉
 パリカールがたった30フランでしか売れなかった事を知ったお母さんは、このお金で明日汽車に乗ってマロクールに行こうと決心します。このお金で薬を買っていたら、あっという間になくなってしまいます。しかもペリーヌ達はパリカールを売ってしまった今、何も残っていないのでした。けれどその時お母さんの病気はとても悪くなっていたのです。お母さんはベッドにひざまずき「神様、どうか私に力をお与え下さい。私はどうしても娘をマロクールの祖父の所に連れて行かなくてはならないのです。もし無事にペリーヌを祖父のもとに送り届ける事ができましたら、その時はどうぞいつでも私の魂をお召しになっても構いません。それまではどうか私をこの世に生かしておいて下さい、そして私にもう少し力を、この哀れな母親にお与え下さい」そう言って祈るのでした。
 シモン荘の良き人々に見送られてペリーヌとお母さんはマロクールに出発する事になりました。ところがお母さんはマルセルが呼んで来た辻馬車にどうしても乗る事ができず、気を失って倒れてしまったのです。再びベッドに戻ったお母さんを先生が診察しますが、先生は帰り間際にシモン荘の人々にお母さんはもう長くないと言うのでした。シモン荘の人々はびっくりしますが、ペリーヌの事を考えると誰もその事をペリーヌに伝える事はできないのでした。ペリーヌはベッドの前にひざまずき両手を合わせて「天国にいらっしゃるお父様、どうか私達をお守り下さい。神様、お母さんを元気にしてあげて下さい」そう言って祈るのでした。
 その夜、お母さんは心配するペリーヌをベッドのそばに呼び寄せ静かに言いました。「いいですか、これからお母さんの言う事をしっかりと頭の中に入れておいて。私はまもなく神に召される時が来たようです。お母さんはあなたを何とかしてマロクールまで連れて行こうとしましたがもうダメだという事がわかりました。お母さんが死んだらあなたは一人でおじいさんのところに行きなさい」「お母さん、死んじゃいや!」「泣かないで話を聞きなさいペリーヌ」そう言うとお母さんはペリーヌにハンドバックを持って来させ中から紙を取り出して言ったのです。「これはお父さんとの結婚証明書です。マロクールに着いたらおじいさんに見せなさい。あなたがおじいさまの孫だという大切な証明になります。もしかしたらおじいさまはあなたを歓迎しないかもしれない。おじいさまは私たちの結婚に反対でした。お父さんとおじいさまはお母さんの事でケンカをしていたのです。その為にお父さんは家を捨てなければならなかったのです。おじいさまは大変頑固な方だと言うから今でもお父さんの事を怒っていらっしゃるでしょう。そしてもっとお母さんの事も… お母さんはお父さんの言いつけだからあなたをどうしてもおじいさまの所に連れて行きたかったのです。たとえお母さんがどんな扱いをされようとも」ペリーヌはびっくりしてしまいました。おじいさまは自分達を大歓迎してくれると思っていたからです。ペリーヌはマロクールへ行く気がなくなりました。「嫌です、私はお母さんと一緒でなければ絶対に嫌です」「でも、もう心をわずらわせる事はなくなりました。マロクールに行くのはあなた一人なんですから… ペリーヌ、お母さんはあなたを素直で正直な子に育てたつもりよ。あなたはみんなに愛される子になってほしいの。おじいさまも初めはあなたに冷たく当たるかもしれないけれど、そのうちにあなたが素直で正直な子だとわかると好きになってくれます。お母さんはそう信じています。人に愛されるにはまず自分が人を愛さなければ… ペリーヌ、お母さんには見えます、あなたが幸せになった姿が… 幸せになりますように、ペリーヌ…」お母さんはそう言い残すと静かに息を引き取りました。ペリーヌはその夜お母さんの胸の上で泣き続けるのでした。
第22話 忘れられない人々
 もうお母さんは帰って来ない、ペリーヌは一晩中泣き明かしました。もうこれ以上涙が出ないほど泣きました。お葬式の日、ペリーヌはお母さんの棺を載せた馬車の後を歩きながらお母さんとの旅を思い出していました。お母さんとペリーヌを乗せた馬車をパリーカールが引く、それは楽しい旅の想い出でした。しかし長い長い旅の末にペリーヌに残されたものは深い悲しみとバロン一匹だけでした。そしてシモン荘の人達の励ましの声がいつしかお母さんの声になったのです。お母さんを教会の墓地に埋葬した後、ペリーヌはシモン荘の人々に別れを告げ汽車に乗る為にパリの駅に行きます。マロクールに行くにはピキニ駅まで汽車に乗ればいいのですが、なぜかペリーヌはパリのはずれのラ・シャペル駅までの切符しか買わないのでした。駅まで見送りに来たマルセルは不審に思いペリーヌを問い詰めます。ペリーヌはピキニ駅までの切符を買うお金がないのでラ・シャペルまで汽車に乗り、そこから歩いてマロクールに向かおうとしたのでした。マルセルに別れを告げペリーヌはおじいさんのいるマロクールに向けて旅立ちました。もうお母さんはいないのです。マルセルと別れてペリーヌは急に心細くなりました。それにマロクールに着いてもおじいさんは暖かく迎えてくれるとは限らないのです。汽車はパリの町の中を北へ向けて走っています。8月の中旬の雨上がりの午後でした。
第23話 ひとりぼっちの旅
 お母さんを失った悲しみを振り切るようにペリーヌは旅立ちました。そしてラ・シャペルの駅に着くと、おじいさんのいるマロクールへ向かって歩きだしたのです。おじいさんの住むマロクールまで汽車で行けば簡単です。しかしペリーヌにはお金がありませんでした。そこでパリの北のはずれのラ・シャペルまで汽車に乗り、あとは歩いて行く事にしたのです。ラ・シャペルからおじいさんの住むマロクールまでは150キロ、1日30キロづつ歩いても5日で行ける。ペリーヌはそう考え元気いっぱいに歩き始めました。ラ・シャペルの駅を旅立った時、ペリーヌは5フラン12サンチームのお金を持っていました。これだけあれば5日は食べていける、ペリーヌはそう考えていました。朝パンを一切れ食べただけのペリーヌのお腹はぺこぺこでした。ペリーヌはパン屋に入りパンを買おうとしましたがパン屋のマルガレータにペリーヌの差し出した5フラン銀貨が偽物だと言われ、お金を取りあげられてしまいます。ペリーヌは悔しさと悲しさで泣きながら走り続け、郊外のスイカ畑で泣き崩れてしまうのでした。そのままスイカ畑で寝込んだペリーヌはスイカ畑の持ち主の兄弟に助けられ、翌日パン屋のマルガレータから5フラン銀貨を取り返してもらうのでした。
第24話 美しい虹
 ペリーヌとバロンの旅は今日も続きます。一日中歩き続ければ夕方にはお腹は空っぽになるし、足だって棒のようになるに決まっています。でもペリーヌはへこたれません。バロンと一緒に懸命に歩きます。おじいさんの住むマロクール目指して。ペリーヌとバロンが農家の庭先を歩いているとバロンが野兎を見つけました。バロンは野兎を追い続けますがバロンは農家の売り物の花をめちゃめちゃに壊してしまいます。ペリーヌは怒った農家のおじさんに5フラン銀貨を渡して何とかバロンを許してもらうのでした。事情を知って気の毒に思ったおじさんはペリーヌに5フラン銀貨を返そうとしますがペリーヌは受け取りません。その代わりにペリーヌは花束をもらうのでした。実を言うとペリーヌはとても後悔していました。あのおじさんからお金を貰っておけばよかった。どうしよう、もう1回パンを買えばお金はすっかりなくなってしまう… ところが今日は何も食べずに野宿しようと考えていたペリーヌのもとに1人の紳士が通りかかり、ペリーヌが持っていた花束を40サンチームで買い取ったのでした。ペリーヌは「神様だわ、神様が私達を哀れんで花束を買って下さったのだわ。神様、心よりお礼申し上げます」そう言ってペリーヌはパン屋へと急ぐのでした。
 次の日も風一つないとても暑い一日でした。持っていた水も飲み尽くしてしまいます。ペリーヌもバロンも喉がからからでした。でもこのあたりには小川や沼はまったくなく水を飲む事ができませんでした。それでもペリーヌは疲れ切った足を引きずって一生懸命歩くのでしたが、容赦なく照りつける太陽の光の中でとうとう気を失って倒れてしまったのです。気が付くと辺りは夕立で大粒の雨が降っていました。けれどもペリーヌは雨宿りする事なんかまるで考えず、バロンと大きく開いた口を空に向け雨をたくさん飲むのでした。そして雨があがった後、ペリーヌは虹を見ました。ペリーヌはこんな大きな美しい虹を見たのは初めてでした。虹は七つの色に輝いています。亡くなったお父さんやお母さんもきっと天国でこの美しい虹を見ているに違いないとペリーヌは思うのでした。
第25話 パリカール!私のパリカール!
 ペリーヌはとうとう残り全財産の5サンチームでパンを買ってしまいました。おじいさんの住むマロクールまであと3日はかかるはずです。無一文のペリーヌはこれからどうするつもりなのでしょうか? でもくじけないようにペリーヌは後の事は考えないようにして元気に旅を続けるのでした。ところが夜は毛布一枚掛けずに眠るという生活で疲れ切ったペリーヌは風邪をひいてしまいます。でもペリーヌは身仕度を整えると、またマロクールを目指して歩きだしました。そしてとうとう最後の5フランで買ったパンも食べつくしてしまいます。ペリーヌは近くの畑で働かせてもらおうとお願いしますが、あっさりと断られてしまうのでした。ペリーヌは空腹と暑さでますます風邪がひどくなってしまいます。そして高い熱を出し、とうとう道端に倒れてしまったのです。ペリーヌはひどい熱で目の前が真っ暗になってきました。「ああ、これで私は死んでしまうかもしれない、もし死ぬのなら人に見られない所で死にたい」そう思ってペリーヌは最後の力を振り絞って森の中へ歩いて行ったのです。森の中で力尽きたペリーヌは「お父さんお母さん、おそばに私もすぐに行きます、バロンさようなら」そう言うと意識を失うのでした。バロンは必死になって近くの村に助けを求めに行きますが誰も相手にしてもらえません。しかし近くの林でバロンは覚えのある匂いを嗅いだのです。バロンはパリまで一緒に旅をしてきたロバのパリカールを見つけたのでした。バロンはパリカールと主人のルクリおばさんを引き連れてペリーヌのもとに駆けつけます。パリカールと再会したペリーヌは大喜びでパリカールの首を抱きしめるのでした。思いがけないパリカールやルクリおばさんとの再会でした。もう安心です。ペリーヌはルクリおばさんやパリカール、そしてバロンに見守られてぐっすりと眠るのでした。
第26話 親切なルクリおばさん
 長く辛い独りぼっちの旅に耐えたペリーヌの勇気に女神が微笑んだ。パリカールとルクリおばさんに会えるなんって! 気がつくとペリーヌは病院のベッドの上で寝ていました。もしルクリおばさんに逢わなければペリーヌは今もあの森の中で倒れていたでしょう。そしておそらくそのまま死んでしまったかもしれません。本当に運が良かったのです。ルクリおばさんはクズ屋の仕事でマロクールのそばまで行くので、ペリーヌに一緒に行かないかと誘います。ペリーヌはルクリおばさんに世話になったお礼にルクリおばさんの仕事の手伝いをする事にしました。そして再びパリカールとバロン、そしてまるで男みたいなルクリおばさんとの愉快な旅が始まりました。ルクリおばさんは「パリカールは本当にいいロバだよ、今になっておかしいけど、あたしはあんたから安く買いすぎた、もっと高く買ってやればよかった。でもやっぱり神様はお見通しなんだね、ちゃんとあんたとまた逢う事ができたよ。そしてパリカールを安く買いすぎた償いをさせてくれたんだ。ペリーヌ、あんたはあたしに何も恩を感じる必要はないんだ。一緒にいる間はあたしの娘になったつもりで気楽にしていておくれ」と言うのです。ペリーヌはルクリおばさんの言葉を心から嬉しく思うのでした。
 ペリーヌの働きぶりに感心したルクリおばさんはペリーヌに「見ず知らずの親戚に頼るよりは、このまま一緒に仕事を手伝ってくれないか」と話しを持ちかけます。ところがペリーヌは「私やっぱりマロクールへ行きます。おじいさまを訪ねるのは父と母の言いつけなので、それに背くわけにはいきません」と言って断るのでした。ルクリおばさんはあきらめますが「でもねペリーヌ、これだけは覚えておきなよ。親戚だからといって突然訪ねてきた貧乏人を暖かく迎えてくれる人は世間にはそうはいない」と言うのでした。そして次の日、マロクールの近くで世話になったルクリおばさんに別れを告げ、ペリーヌは1人でマロクールに向かって歩き始めたのです。しかしマロクールが近づくにつれてペリーヌはとても不安な気持ちになってきました。なぜならおじいさんがペリーヌを暖かく迎えてくれない事を知っていたからです。いったいペリーヌのおじいさんはどんな人なのでしょうか?
第27話 おじいさんの冷たい顔
 長い長い旅でした。ペリーヌはとうとうお父さんの故郷マロクールの村に着きました。ペリーヌは感激でいっぱいです。目の前にはおじいさんの経営する織物工場が建ち並び、丘の上にはお城のような屋敷がそびえ立っているのです。ペリーヌは今すぐにでもおじいさんに逢いに行きたいと思いました。ところがマロクールの村に着いたところでペリーヌはロザリーという1人の女の子に出会いました。ロザリーはとてもおしゃべりでペリーヌにパンダボアヌ工場の事や、それを経営するビルフランについて説明します。ビルフラン・パンダボアヌ、それはペリーヌのおじいさんの名前でした。ペリーヌはおじいさんがお金持ちで工場の持ち主だとは聞いていましたが、7000人以上もの人達が働く大工場の持ち主だとは知らなかったので、すっかり驚いてしまいました。ロザリーはビルフランについて説明を続けます。とても厳しく少しの失敗も許さない人、しかも身内にも厳しく息子のエドモンと意見の衝突をしてインドに買い付けに飛ばしてしまったが、インドで勝手に結婚してしまった為、ビルフランはカンカンに怒って親子の縁を切ってしまった事などをペリーヌに語って聞かせるのでした。ロザリーと別れペリーヌがビルフランの屋敷の前に着いた時、偶然にもビルフランは馬車に乗って屋敷から出てきました。しかしペリーヌはおじいさんに声をかける事なくそのまま見送ってしまうのでした。ペリーヌには本当にどうしていいかわからないのです。初めて見たおじいさんの冷たい横顔。ロザリーという少女から聞いたおじいさんについての話しがペリーヌを怯えさせました。「お父さん、お母さん、私はとうとうマロクールにやって来ました。でもおじいさんは今でもお父さんの事を怒っているそうです、もちろんお母さんの事も… そしてきっとあたしの事など何も考えてはいないでしょう。だからあたしが孫のペリーヌだと名乗って出ても、きっと冷たい顔で「ああそうか」と言うだけです。いいえ、孫だと認めてくれないかもしれません。お父さん、お母さん、あたしはおじいさんに愛してもらいたいんです。そしてあたしもたった1人の肉親であるおじいさんを愛したいんです」ペリーヌは心からそう思うのでした。
 ペリーヌはシャモニという食堂を経営しているロザリーの家を訪れる事にしました。ロザリーのおばあさんのフランソワーズはペリーヌを見た瞬間、どこかで見た事があると思うのですが、どこで見たのか思い出せないのでした。フランソワーズに名前を尋ねられたペリーヌは思わず「オーレリイです」と、でまかせの名前を言ってしまいました。ペリーヌは当分おじいさんの屋敷に孫だと名乗り出る事をやめようと決心しました。そして本当の名前も言わない方がいいと思ったのです。ペリーヌはロザリーに織物工場で働きたいから紹介してほしいとお願いするのでした。そこでペリーヌはロザリーからビルフランは目が見えないと聞かされます。近くで見たおじいさんの顔は確かに厳しく冷たい表情をしています。でもどこか寂しそうな感じも漂っていました。それにしてもおじいさんの目が見えないとはペリーヌは考えてもみなかったのです。ロザリーは泊まる所のないオーレリイを部屋に泊めてあげることにしました。ペリーヌはロザリーと1つのベッドで一緒に寝るのです。ペリーヌはなかなか寝つかれませんでした。それはあの厳しい顔をしたおじいさんの事をいつまでも考えていたからでした。
第28話 パンダボアヌ工場
 マロクールの村に朝が来ました。パンダボアヌ工場の汽笛は5時45分に鳴ります。工場で働く人達はそれを聞くと家を出て工場に向かうのでした。オーレリイと名前を変えたペリーヌは友達になったロザリーに連れられておじいさんの工場、パンダボアヌ工場へ向かいました。ペリーヌはそこで働く事にしたのです。そしてロザリーのおかげでトロッコ押しの仕事も決まりました。そこへビルフランがやって来ますが、ペリーヌは思わずビルフランに声をかけ「目の手術をしてはいかがでしょう?」と言います。ビルフランは自分の身を案じてくれるオーレリイに感心し、オーレリイの給料を1日60サンチームに増やすようにと工場長のタルエルに言うのでした。
 そしてオーレリイのトロッコ押しの仕事が始まります。ひたすら工場の間をトロッコを押して歩くだけの仕事でした。仕事は簡単でした。でも慣れない仕事は疲れるものです。ペリーヌは昼休みが来た時、本当に助かったと思いました。その日ペリーヌは夕食が終わってから工員たちに安く貸しているという下宿屋に案内してもらいました。8人部屋で2段ベッドが4つあるだけの狭い殺風景な部屋でしたがペリーヌは1週間分の部屋代を前払いしてそこに住む事にしました。ペリーヌはバロンを連れて林の方に散歩に行きます。夕陽を浴びて草むらに寝転びながらペリーヌは「お母さん、今日おじいさまの顔を見たら思わず声をかけてしまいました。でもやっぱり孫のペリーヌだと名乗れませんでした。だから他の人は私がおじいさまにお世辞を言ったのだと思っているようです」とお母さんに語りかけるのです。するとどこからともなくお母さんの声が聞こえてきます。「ペリーヌ、辛抱しなさい。あなたがマロクールに来るのに色々苦しい事を乗り越えたではありませんか。これからも苦しい事があるでしょう。でもそれに耐えるのです。そうすればいつかは幸せに、本当に幸せに…」そしてペリーヌはそのまま草むらの上で寝てしまうのでした。「今日は疲れたのねペリーヌ、ゆっくりお休みなさい、お母さんがここからお前を見守っていてあげますよ」とお母さんの声が聞こえてくるのでした。
第29話 池のほとりの小屋
 夜が明けようとしていました。昨日工場で働いたペリーヌはすっかり疲れ切って林の草むらの上で寝込んでしまったのです。ペリーヌは林の中の池に囲まれた小島に小さな狩猟小屋を見つけます。その小屋は壁はすき間だらけ、床は何もない状態でしたがペリーヌはその小屋がすっかりと気に入ってしまいました。仕事中にロザリーが機械に手をはさまれて怪我をしてしまいます。ところが工場長のタルエルは医者に見せようとはしません。ペリーヌは怒りととまどいでどうしていいかわかりません。その時ビルフランが現れて早く医者に見せるよう工場長のタルエルに命令しました。ペリーヌはおじいさまの優しい一面を見たような気がしました。
 ペリーヌは仕事を終えた後、下宿屋に行き部屋を借りるのをやめるから前払いした部屋代を返してほしいとお願いしますが聞き入れてもらえません。下宿代を返してもらえなかったのでペリーヌにはもうわずかなお金しか残っていませんでした。1週間後の給料日まで倹約して使わないと大変な事になるのです。しかしペリーヌは決心していたのです、あの素晴らしい池の畔の小屋で1人で暮そうと。辺りは静まり返っていました。普通の女の子だったらとても恐くてこんな所で住むなんって考えもしなかったでしょう。でもペリーヌは少しも恐くはありませんでした。それに少し頼りないけどバロンが一緒ですから。
第30話 自分の力で
 池の畔の小屋での生活は素晴らしいものでした。独りぼっちでも美しい池、輝かしい太陽、それにペリーヌだけの秘密の小屋があれば寂しくなんかありません。ペリーヌは自分の力で住み始めたのです。ペリーヌは池の畔の小屋がすっかり気に入りました。そして当分ここで生活しようと考えたのです。それにはまず小屋を清潔にして住みよい所にしようと考えました。まず掃除です。次に床に敷いてあるシダを取り替えようとしたところで仕事の汽笛が鳴りました。ペリーヌがトロッコを押している最中、靴の先がぱっくりと口を開いてしまいました。ペリーヌは困ってしまいました。靴を履かなければ足が痛くて、とてもトロッコ押しの仕事はできません。でも靴を買うお金は持っていないのです。土曜日が給料日ですが、例え貰ったお金全部を使っても靴は買えません。そこでペリーヌは靴を自分で作る事にしました。葦を編んで靴の底を作ってみますがうまくいきません。再度挑戦して葦を編み上げ、工場の帰りに靴を作る材料を35サンチームで買ったペリーヌは再び靴作りを始めるのでした。ペリーヌは朝までかかって靴を作り上げ、さっそく作ったばかりの靴を履いて喜んで工場にでかけます。それは素敵なスペイン靴で工員の仲間からとてもうらやましがられるのでした。
 工場からの帰りにロザリーを見舞ったペリーヌはロザリーに小屋に住んでいる事を告白し「あの小屋、人が住むようにできていないからとても不便なの。でも私、素敵な家にしようと思ってるの。お金はないから何もかも自分の力でやるの。とりあえずお料理ができるようにするわ。鍋や食器も自分で作ってみるつもりよ」と言うのでした。土曜日、初めての給料3フラン60サンチームを貰ったペリーヌは、そのお金で生地を買いシミーズを作ります。工場の安い賃金ではパンを買うだけが精一杯でしたので、自分の力で作れるものは何でも作るつもりでした。この小屋での生活を少しでも豊かにする為に。
第31話 お客様を迎えて
 ペリーヌは食事代を少しでも浮かせる為に5サンチームで釣り針を買うと、枯れ枝と縫い糸で釣り竿を作って池の魚を釣ろうとしますが、大きな魚は釣れませんでした。縫い糸が悪いのだと考えたペリーヌは馬の尻尾の毛を失敬し、それを釣り糸にして魚釣りをしたところ大きな魚を釣り上げる事ができました。さらにペリーヌは捨てられていた缶詰の空き缶で鍋を作り、枯れ木を削ってスプーンやフォークを作ります。ペリーヌの手作りの靴やシミーズ、フォークを見たロザリーはすっかりとペリーヌに感心してしまいます。ロザリーがあまりにペリーヌの生活に関心を示すので、ペリーヌは今度の日曜日に池の畔の秘密の家の昼食にロザリーを招待する事にしました。ロザリーと弟のポールは大喜びでした。ロザリーは昼食に招待されましたが、何もない小屋に1人で住んでいる事を知っていたので、食事に招待されたのではなく遊びに来てくれという意味だと思っていました。しかし日曜日に池の畔の小屋に行くと、池で釣った魚、スカンポのスープ、木の実のデザートなどペリーヌの手作りのおいしい料理がたくさん並んでおり、ロザリーはペリーヌの生活の知恵に、ただただ驚くばかりです。ロザリーはペリーヌがこの小屋で誰の助けも借りないで1人で立派に暮らしているのに、すっかり感心してしまうのでした。
第32話 名前の秘密
 ペリーヌがこの小屋で生活を始めてからもう1月近くになりました。工場から貰う賃金はわずかでしたが、ペリーヌは自分の生活を少しでも豊かなものにしようと色々工夫をしました。自分で作れるものは自分で作り、他人が捨てたものでも利用できるものは何でも利用しました。今日も野生のスグリを採ってきて、おいしいジャムを作ろうと一生懸命でした。ペリーヌはロザリーのケガの全快祝いに招待されました。ところが技師のファブリさんがやって来て通訳のベンディットさんが肺炎で入院するので御者を探していると言うのです。その事を聞いたペリーヌは快く御者を引き受けてピキニの町の病院へ急ぎます。そしてピキニの町で偶然にもルクリおばさんやパリカールと再会するのでした。
 ペリーヌはルクリおばさんやパリカールと再会を喜び合い、ルクリおばさんに近況を報告しました。ルクリおばさんはペリーヌがまだおじいさんのところに行っていないのなら一緒にクズ屋の商売をしないかと再び誘いますが、ペリーヌは「いずれはおじいさんのところに行こうと思っていますから」と言って断るのでした。ペリーヌはファブリさんの呼ぶ声が聞こえたのでルクリおばさんと別れてファブリさんの所に駆けつけますが、別れ際にルクリおばさんから「ペリーヌ」と呼ばれた声をファブリさんに聞かれてしまいます。ペリーヌはマロクールではオーレリイと偽名を使っていたのでファブリさんは不審に思ってしまうのでした。帰りの馬車の中でファブリさんは「さっきの君の知り会いの人ね、あの女の人、君の事をペリーヌと呼ばなかったかい? 僕には確かそう聞こえたけど… オーレリイというのは本当の名前じゃないんだね」とペリーヌに問い詰めます。ペリーヌは「ええ、でもこの事は人には言わないで下さい。お願いです、誰にも言わないで下さい」と言うのが精一杯でした。ファブリさんは「わかった、誰にも喋らないよ。僕はね、前から君の事をとても不思議な子だなと思っていたんだ。もしよかったら君の事を色々聞かせてくれないかな? いや、話したくないなら無理にとは言わないけど、もし君が困っている事があったら僕に相談してくれ、いつでも相談に乗るからね」と言うのでした。ファブリさんの優しい言葉はペリーヌの胸を打ちました。ペリーヌはおじいさまの事を何もかも打ち明けてファブリさんに力になってもらおうかとも考えましたが、やっとの思いでその考えを押しとどめました。ロザリーの家に着いたペリーヌはセザールからおいしいステーキをご馳走になります。本当においしいステーキでした。ペリーヌは何ヶ月ぶりかでこんなおいしい肉を食べたのです。そしてみんなの暖かい思いやりに心から感謝するのでした。
第33話 テオドールの財布
 ある日、次期社長と噂されるテオドールの財布がなくなりました。工場中大騒ぎの揚げ句、非常識にもすべての工員の体を調べろとペリーヌに命令します。しかしペリーヌはいとこにあたるテオドールの命令を厳しく断るのでした。ペリーヌは何だかとても恥ずかしい気持ちでした。あの馬鹿げた振舞いをしたテオドールはペリーヌの本当の親戚なのです。テオドールはビルフランの妹の子供でペリーヌのお父さんのエドモンとは、いとこ同士にあたるのです。おじいさんはいったいテオドールをどういうつもりで工場の大事な地位につけているのかとペリーヌは不思議でなりませんでした。
 小屋に戻ったペリーヌのもとにファブリさんがやって来てランブと本をペリーヌにプレゼントします。ペリーヌは夜に本が読めると大喜びするのでした。ファブリさんは「僕はこの間から君の事が気になって仕方がないんだ。君は何しにこのマロクールに来たんだ? 初めからあの工場で働く為に来たんじゃないだろ? よかったら僕に話してくれないかな? 少しは力になれると思うよ」と言います。ペリーヌはおじいさんがビルフランだという事だけ伏せて、親戚を訪ねてマロクールにやって来たが、喜んで歓迎してくれないとわかっているので、まだ訪れていないと説明するのでした。ファブリさんは「とにかくその親戚の家に行ってみて、冷たくあしらわれたら、その時はその時でまた考えてみようよ」と言ってくれるのでした。ファブリは別れ際、小屋のそばでテオドールの財布を拾います。道に落ちていた財布をバロンが小屋まで持って来ていたのです。テオドールの家まで財布を届けに行ったファブリさんとペリーヌにテオドールはお礼すら言わずに社長のいとこである事を鼻にかけます。ファブリさんはあんな甥を持った社長が気の毒だと嘆くのでした。
第34話 忘れられない一日
 ペリーヌがマロクールの村に着いたのは夏の終わりでした。そして今はもう秋です。冬にはペリーヌの住んでいる池の畔の小屋は狩猟小屋として使われるので、しばらくするとあの小屋での生活とも別れなければなりません。その時はいよいよおじいさまの所へ名乗り出た方がいいのではないか、ペリーヌはまだ迷っているのでした。さわやかな秋風が吹き始めたある日、バロンがパンダボアヌ工場に迷い込んでしまいます。製品におしっこをかけてしまい追い回されたあげくバロンは工場からつまみ出されてしまいました。そしてペリーヌは突然工場長のタルエルに呼び出されてしまいます。ペリーヌはバロンの事で怒られると思い込んでいたのですが、サンピコア工場に行きビルフラン様のお手伝いをするよう命令されるのでした。
 おじいさまに逢える、ペリーヌはそう思うと胸をはずませてサンピコアに向かいます。ペリーヌは何だか夢を見ているような気持ちがしました。おじいさまが呼んでいる、おじいさまが呼んでいる。ペリーヌがおじいさまに呼ばれたのはペリーヌに英語の通訳をしてもらいたかったのです。ペリーヌのお母さんはイギリス人だったのでペリーヌも英語を話す事ができたのです。サンピコア工場ではイギリス人技師が機械の設置に訪れていたのですが、通訳のベンディットさんは肺炎で入院中だしファブリさんはイギリスに出張中だったので英語を理解できる人がおらず、機械の設置の予定が1週間も遅れていたのです。ペリーヌの通訳は見事なものでビルフランはたいそう感心し、ペリーヌはしばらくトロッコ押しの仕事をやめて通訳の仕事をする事になったのでした。
第35話 英語の手紙
 ペリーヌはいつもより2時間も早く目を覚ましました。昨日おじいさまから頼まれた英語の通訳が思いのほかうまくいったので引き続きサンピコアの工場にでかける事になったからです。今日もおじいさまに会える、そう思うとペリーヌはおちおち寝ていられなかったのです。ロザリーはペリーヌからサンピコアの工場での事を詳しく聞きたがりました。工場でも仲間の工員達の質問責めにあいました。サンピコア工場に向かう馬車の中で御者のギョームはペリーヌに「ビルフラン様はお前の事を気に入ったらしいや、今朝も利口な娘だって誉めてたよ」と言います。おじいさんが本当に自分を気に入ってくれていたとしたら、こんなに嬉しい事はないとペリーヌは思いました。ペリーヌは通訳の仕事の他にも、おじいさまの所に来る英語の手紙と英語で書かれた貿易新聞を読んでくれと頼まれます。ペリーヌは貿易新聞を読み始めますが、記事の内容はインドについて書かれていました。インド、それはペリーヌのお父さんが結婚した所です。そしておじいさまはその結婚に大反対でした。ペリーヌはおじいさまの前でインドの記事を読みながら胸が打ち震えました。ビルフランは目が見えないにもかかわらず工場内を移動する時でさえ人の手を借りようとはしません。ペリーヌは何って頑固で強情な人なんだろうと、すっかり驚いてしまいました。
 マロクールに戻った後、工場長のタルエルはペリーヌを呼んで、その手紙の内容を教えろと命令するのです。しかしペリーヌはおじいさんから手紙の内容を口外しないように言われていたのでペリーヌは決して話そうとはしません。ペリーヌは手紙の内容を教える事にどんな意味があるのかと不思議に思うのでした。ペリーヌはその事をロザリーに相談するとロザリーはタルエルさんがビルフラン様の所に来る英語の手紙を気にするのは息子のエドモン様の消息を知りたいからだと言うのです。ビルフラン様はとっくにエドモン様の事など忘れていると思っていたけど、実は弁護士のフィリップ先生をインドに送ってエドモン様を探しているのです。ところが工場長のタルエルさんと甥のテオドールさんは工場を継ぎたがっているのでエドモン様の帰ってくるのを喜ばないと言うのでした。「エドモン様はきっと帰ってくると思うわ」と言うロザリーに対しペリーヌは「いいえロザリー、エドモン様は、私のお父さんは永遠に帰ってくる事はないのよ」と心の中で言うのでした。ペリーヌは小屋に帰ってお母さんに語りかけます。「お母さん、おじいさまはもうお父さんの事は憎んでいないそうです。でもお母さんの事は… そして孫の私の事は… きっと孫はこの世にいる事も知らないのかもしれません」と…
第36話 よろこびと不安
 ペリーヌは一生懸命働きました。おじいさまのそばにいられる、ただそれだけで嬉しかったのです。ファブリさんが帰って来た、それはペリーヌにとっても大変嬉しい事でした。ペリーヌは親切で男らしいファブリ技師が大好きだったからです。でもイギリスからファブリさんが帰って来たら通訳の仕事もおしまいになり、おじいさまのそばにいられなくなる。ペリーヌはそう思うと悲しくなりました。ファブリさんはビルフランに「オーレリイをトロッコ押しに戻さず、このまま通訳の仕事をさせてほしい」と提案します。ところがビルフランは怒ったかのように「わしがいつオーレリイをトロッコ押しに戻すと言った? お前は今までどうりわしのそばにいて今の仕事を続けてもらう」と言うのでした。昨日からペリーヌの心にくすぶり続けていた不安はおじいさんの一言ですっかり消え去りました。ペリーヌは目の見えないビルフランの為にビルフラン宛の手紙を読む仕事をします。ところが突然ビルフランはペリーヌに「オーレリイ、お前は母親を亡くしたと聞くが、それからどれくらいになる?」と聞くのです。それは思いもよらない質問でした。おじいさんのこの質問にどう答えようかペリーヌはしばらくの間、迷いました。ペリーヌはおじいさまの孫という事だけは隠して正直に答えるのでした。パリからマロクールまで歩いてやって来たというペリーヌの言葉にビルフランはとても感心したので、ペリーヌは旅先での出来事をありのままにおじいさまに話すのでした。
 持っていた5フラン銀貨を偽物だと言われパン屋の女将さんに取られた事。親切な農夫の兄弟が取り戻してくれた事。でもたちまち使い果たしてしまった事。そして病気と空腹の為、力尽きて倒れてしまった事。しかし親切なルクリおばさんに助けられ病院に入院した事。そしてルクリおばさんの仕事を手伝いながら旅を続けた事。そのようにしてパリを出発して半月目にようやくマロクールにたどり着く事ができたとビルフランに説明するのでした。ビルフランはペリーヌがずいぶん苦労したんだなと、とても感心するのでした。ビルフランはマロクールの工場に戻らなければならなかったのですが、御者のギョームが昼休みに外に出てから戻って来ません。御者がいないので困っているとペリーヌが御者をかってでます。おじいさまのすぐ横に並んで馬車を走らせるなんって夢のような出来事でした。ペリーヌは慎重に手綱を操りました。馬車を走らせていると飲み屋から酔っぱらった御者のギョームが出てきます。しかしギョームが酒を飲んでいるのを知ったビルフランはギョームを首にするのでした。ペリーヌはおじいさんのギョームに対する厳しい態度を目撃して、ふと自分が孫だと名乗った時の事を想像すると身も心も凍るような気がしたのです。そして当分は名乗るまい、どんな事があっても孫だという事を名乗るまいと決心するのでした。
第37話 おじいさんの大きな手
 秋も深まり夜中は相当冷え込むようになりました。サンピコア工場での仕事を終えて再びトロッコ押しをやろうとしたペリーヌにタルエルは、もうお前の仕事はないのだと言い渡しました。でもビルフランはペリーヌを呼び出し「わしはお前を秘書にしようと決めた。秘書と言っても会社の仕事はまだ小さいお前には無理だ、お前にやってもらいたいのはわし個人に関する事だ。そしてわしの目の代わりに見てくれて、それをうまくわしに説明してくれる役を頼みたい。お前ならできると睨んだからお前を呼んだのだ。お前の身の上を聞いてとても興味深く思ったし、サンピコアでの仕事ぶりからお前が利口な事もわかった。とにかく秘書になってくれるな」と言うのでした。ペリーヌはおじいさんの秘書になった事で給料は一気に6倍の一月90フランになりました。さらにペリーヌは秘書としてふさわしい服をマロクール一の高級婦人店であるラ・シューズの店で買ってこいと会社の伝票を渡されます。
 タルエルとテオドールはペリーヌが秘書になる事には反対でした。しかしビルフランはペリーヌの目の確かさを証明する為、ペリーヌを原料倉庫に連れて行き麻の色を見分けさせます。ペリーヌは見事にテストにパスし秘書として認められるのでした。原料倉庫からの帰りビルフランは立ち眩みしたのでペリーヌに手を貸してもらいます。おじいさんの手は大きな皺のあるごつごつした手でした。若い頃から必死で働いて今日の財を築いた人の手です。初めておじいさんの手を取ったペリーヌは体中がかすかに震えました。ペリーヌはおじいさんの秘書になったのです。マロクールに来て約2ヶ月目にペリーヌは孫である事も名乗らずに大工場主ビルフラン・パンダボアヌの秘書になったのです。
第38話 すてきなワンピース
 ペリーヌがビルフランの秘書になった事を聞いたロザリー達は心から喜んでくれました。ペリーヌはとても幸せな気持ちでした。そしてロザリーは一月20フランで秘書としてふさわしい下宿を探してくました。それからラ・シューズ婦人の店に行き服と帽子と下着と靴を選びます。店の女将は最高級の生地で仕立てようとしますが、ペリーヌはラ・シューズの店で一番安い紺色のシックな出来合いのワンピースを選ぶのでした。ペリーヌは住み慣れた小屋に別れを告げてきれいな下宿に移ります。ペリーヌはその日早めにベッドに入りました。でも久しぶりに寝たふかふかのベッドのせいか、それともおじいさんの秘書になれた喜びのせいか、さっぱり眠くなりませんでした。ペリーヌはふと思い立ちました。あの池の畔の小屋で最後の夜を過ごそうと… ペリーヌは住み慣れたこの小屋でぐっすりと眠り、朝を迎えました。この小屋での生活は人に頼らず自分の力で生きていく事の楽しさを教えてくれたのです。それはペリーヌにとって生涯忘れる事のできない想い出となるはずでした。
 池の畔の小屋に最後の別れを告げペリーヌはおじいさまの秘書としてマロクールの工場に向かいます。ところがタルエルからビルフランにペリーヌが夜遊びしていると密告があったのです。ビルフランはペリーヌが訪ねて行った親戚の家に住んでいると思い込んでいました。しかしペリーヌは「でも私は結局親戚を訪ねる事はしなかったのです。私は冷たくされるのが嫌だったのです。その親戚には一度も会った事がなかったし、おまけに私の両親をとても憎んでいるという事でしたから、私がマロクールに着いた時はお金もなく、とてもみじめな気持ちでした。もしその親戚を頼って冷たくされたら私は生きる力を失ってしまったかもしれません。だからそれより自分一人の力で生きる事の方を選んだのです。幸いこの工場ですぐに働かせてもらえる事になりました」とビルフランに言いました。ビルフランは昨日の夜どこに行っていたか問い詰めます。ペリーヌは池の畔の狩猟小屋に行っていた事、今までずっとあの小屋で生活していた、そして下宿に移ったけど寝られなかったので一晩だけ小屋で寝た事をビルフランに答えます。「あの小屋は人が住むようにはできていなかったはずだが」とのビルフランの問いに、ペリーヌは「でも私の給料ではパンを買うと、ほとんど残りません。だから自分の手で生活に必要なものは何でも作りました。お皿もスプーンも鍋も… 形は悪くてもけっこう役に立ちました。それから靴や下着も。それからパンだけでは味気ないので食卓を賑やかにしようと魚を釣ったり食べられる生草や芽を料理しました」と答えました。ビルフランはペリーヌの生活ぶりにひどく感心しました。さらにラ・シューズ婦人の店でも無駄使いしなかったペリーヌに、ますますビルフランは心を引かれていくのでした。午後、工場巡回に出た時、ビルフランはペリーヌにあの小屋での生活について詳しく話をさせました。そしてビルフランはとても心を動かされたようでした。
第39話 インドからきた手紙
 今日もまた忙しい一日が始まります。ペリーヌは新しい仕事にも新しい暮しにもだいぶ慣れました。そして下宿の人達がみんなバロンをかわいがってくれる事を心から感謝しました。これで安心してお勤めに出る事ができるのです。ビルフランは仕事をいいかげんにする事を絶対に許せない人でした。その厳しさがビルフランを近づきがたい人にしているのです。ペリーヌは身近にいて工場の人々が必要以上にビルフランを恐れているのはそのせいだという事がわかりました。おじいさまは結局すべての事を自分で確かめなければ気がすまないのです。この熱心さにはいつも感心させられます。でもペリーヌは人を一切信用しないおじいさまを心のどこかで寂しく思いました。
 ある日インドから一通の手紙が届きました。ビルフランはさっそくその手紙を翻訳するようにペリーヌに命令します。インドから来たこの手紙にはなんとペリーヌのお父さんやお母さんの事が書いてあったのです、そしてペリーヌ自身の事も。ペリーヌは胸がどきどきしてなかなか手紙を読む事ができませんでした。ところがタルエルとテオドールは手紙の内容を知りたがりペリーヌに手紙を見せろとしつこく迫りました。たった一通の手紙が穏やかだった1日を急に不安な1日に変えてしまったのです。ペリーヌは手紙を翻訳し要点をビルフランに説明しましたが、息子のエドモンに関する詳しい情報は書かれておらずビルフランはがっかりしてしまいます。ペリーヌは手紙にはエドモンと結婚したマリについて書かれており、大変美しくその上、頭も良く大変優しい性質で、また2人の夫婦仲も大変良かったと書かれていたと説明しますが、それを聞いたビルフランは怒りだし、「わしはその女を息子の嫁とは思っておらん。インドでの結婚式などフランスでは問題にはならん。あの結婚はしなかったも同然だ」と言うのです。ペリーヌの「それではお2人の間に生まれたお子さんはどうなってしまうのでしょう?」の問いにビルフランは「子供だと? できてしまったのだから金くらいは出してやるさ。わしは息子の帰る日をいまだに待ち続けている。年を取ったしこの通り目も不自由、わしは今すぐにでも工場を信頼して任せられる人間が欲しい。だがあの女は息子を離そうともしない、それはあの女が引きとめているからだ、あさましい女め」と言うのです。おじいさんはやっぱり激しくお母さんを憎んでいました。そして孫の事など、ペリーヌの事など何とも思っていなかったのです。ペリーヌの目から思わず涙がこぼれ落ちました。しかしその孫の流す涙を目の不自由なビルフランはまったく気が付きませんでした。
 ペリーヌにとって今日は悲しい日でした。それはおじいさんのビルフランの口からはっきりとお母さんに対する憎しみの言葉を聞いたからです。そして孫の事も、そう、ペリーヌの事には全然関心を持っていないことがはっきりしたからです。ペリーヌは心の中で「おじいさま、お母さんは決してそんな人ではありませんでした。お母さんはお父さんをとても愛していました。お父さんもお母さんを… お父さんがマロクールへ帰ろうと決心した時お母さんは反対などしませんでした。そしてお父さんを助けて長い苦しい旅をしたのです。おじいさま、その旅の途中でお父さんは亡くなりました。おじいさまの息子はもうこの世にはいないのです。その上おじいさまの憎んでいるお母さんも亡くなり孫の私だけが残りました。そして私は… 孫のペリーヌはこうして隣の部屋にいるのです。おじいさまの秘書として毎日一生懸命働いているのです。お母さん、私はこれからどうしたらいいの?」と泣きながらつぶやくのでした。
第40話 バロンの災難
 落ち込んでいるペリーヌを見たファブリさんが心配してペリーヌに声をかけます。ファブリさんだけがオーレリイが本当の名前でない事を知っていました。その事は今まで誰にも喋りませんでしたが、この時オーレリイが、いえペリーヌが言っていた親戚というのが実はビルフランの事ではなかろうかと頭の中で閃いたのでした。ファブリさんは「もしも何か心配事があるのだったら遠慮なく僕に打ち明けてくれ、いいかい覚えておいてくれ、僕は君の味方だよ、いつだって…」と言ってくれるのでした。ペリーヌはファブリさんの優しい言葉に胸を打たれました。そして何もかもファブリさんに打ち明けてしまおうかという気になりました。でもその晩は何も言いませんでした。
 次の日は日曜日でした。ペリーヌは気を取り戻そうとバロンを連れて林を散歩していたのですが、何だか池の畔の小屋が見たくなったのです。すると突然銃声が聞こえてきました。小屋に誰かいる! ペリーヌが小屋に近づくと、中でタルエルとテオドールとかビルフランが亡くなった後の次期社長の座をめぐって密談していたのです。ペリーヌは恐くなって逃げ出しますがバロンが見つかってしまいテオドールの銃で撃たれてしまったのです。ペリーヌはすぐにバロンを抱えてお医者様に見てもらい、何とか一命は取りとめるのでした。ファブリさんはペリーヌに誰がバロンを撃ったのか聞きますが、ペリーヌは鉄砲を撃ったのがテオドールだと言う事はできませんでした。なぜならテオドールの名を挙げればファブリさんはきっとテオドールに文句を言うでしょう。そうすればペリーヌが2人の秘密の話を聞いた事がわかってしまい、どんな仕返しをするかと考えるとペリーヌは黙っているしかなかったのです。ペリーヌは夜中も寝ずにバロンの様子を見ていました。でも明け方、思わずうとうととしてしまったのです。
第41話 お城のような家
 ペリーヌは初めて遅刻しました。あの時間に厳しいビルフランはさぞかし怒っている事でしょう。ペリーヌは叱られる事を覚悟の上で工場に向かいました。ペリーヌはビルフラン、タルエル、テオドールの前で犬の看病していた為に遅刻したと言いますが、テオドールが犬の為に遅刻するのかと笑った為、ペリーヌはテオドールがバロンを撃った事を言ってしまいます。しかしペリーヌはタルエルとテオドールの悪巧みは喋りませんでした。それはビルフランを苦しめるだけでどうする事もできなかったからです。今ビルフランにできる事は息子エドモンの行方を探し当て連れ戻す事、それがすべてを解決するとビルフランは信じていました。
 ビルフランは息子の消息をたずねる為、インドに電報を打つようペリーヌに依頼しました。ところがタルエルはビルフランが頼んだインドへの電報の内容を教えなければ首にするとペリーヌを脅すのです。タルエルはペリーヌから電報を取り上げますが、電報は英語で書かれてありタルエルには読めませんでした。それを知ったビルフランはペリーヌを守る為、自分の屋敷に来て一緒に暮すようにとペリーヌに告げました。ビルフランの突然の言葉にペリーヌは驚き、そして嬉しさで胸を一杯にするのでした。さっそくビルフランはペリーヌの下宿に馬車を乗りつけペリーヌは荷物をまとめてビルフランのお屋敷に引っ越します。目の前にまるでお城のような大きなお屋敷が見えてきました。ペリーヌはそのお屋敷を目指して馬車を進めている事が夢の中の出来事のような気がしました。ペリーヌが案内された蝶の間は何から何まで豪華づくめでした。特に驚いたのは自家発電装置を使った電灯です。ランプやろうそくの灯に馴染んできたペリーヌにはそれが魔法の光のように見えたのです。屋敷の中を案内しましょうとやってきた女中のアンリエットに対してペリーヌはバロンのいる納屋に連れて行ってほしいとお願いします。宮殿のような蝶の間よりもペリーヌには枯れ草のベッドの方がよほど心が休まりました。でもビルフランはペリーヌがこのお屋敷に似つかわしい淑女になる事を望んでいるのです。8時の晩餐、それは淑女になる為の第一の関門になるはずでした。
第42話 ロザリーの悲しみ
 作業の終わりを告げる汽笛はビルフランの屋敷でもよく聞こえました。ペリーヌはいつもならこの時間には工場にいます。でも今日は突然おじいさんにこの屋敷に連れて来られました。そうです、ペリーヌはとうとうおじいさんと一緒に暮す事になったのです。ロザリーはペリーヌがビルフランのお屋敷で暮す事をたいそう羨ましがりました。ロザリーは「オーレリイはよほどビルフラン様に気に入られたのね。オーレリイはだんだん私から遠くなっていくみたい… あの人が初めてこの村にやって来た日、泊まる所がなかったので私の家に泊めたのよ。私の部屋で私のベッドで一緒に寝たのよ。思い出すわぁ〜」と言ってため息をつくのでした。ビルフランのお屋敷で暮す事になったペリーヌは村中の噂の的でした。その幸運を誰もが羨ましく思うのでしたが、ペリーヌは本当の幸せはまだまだだ遠いものだと知っていたのです。ペリーヌは鏡に向かいながら「あなたはまだオーレリイ、ペリーヌじゃないのよ。おじいさんの孫ではなく忠実な秘書なのよ、わかったわねオーレリイ」と自分に言い聞かせて晩餐に向かいます。こんな正式な食事はペリーヌにとって何年ぶりだったでしょう。ペリーヌは彼女を見ている2人の召し使いの目を意識してすっかりと緊張してしまいました。でも何とかうまくやったようでした。召し使いのセバスチャンはペリーヌにビルフランの為に本を読んであげるようにゼスチャーします。その事に気付いたペリーヌは目の見えないビルフランの為に本を読んでさしあげようと、ビルフランの部屋に行きますが、その途中で壁にかかるエドモンの20才の時の肖像画を見たペリーヌは思わず涙を流してしまうのでした。
 ペリーヌは親友であり相談相手であるロザリーに会えない事が気がかりでした。朝ビルフランの馬車の御者をして工場に出勤するペリーヌを見たロザリーはペリーヌに声をかけますが、ペリーヌは気付かぬまま走り去ってしまいました。ロザリーは自分が無視されたと思い込みとてもショックに思ってしまいます。しかもペリーヌはビルフランから昼食も一緒に食べようと誘われた為、いつもロザリーと一緒に昼食を食べていたのに今日はロザリーの所に行く事すらできませんでした。ロザリーはすっかりと機嫌が悪くなり工場巡回に訪れたペリーヌが声をかけても返事もしません。心配になったペリーヌはビルフランを待たせてロザリーの所に行き、事情を説明してロザリーと仲直りするのでした。
第43話 日曜日。ペリーヌは…
 ペリーヌがビルフランの孫としてではなく秘書としてこの屋敷にやってきてから1週間がたちました。その1週間のうちにペリーヌは屋敷の召し使いたちとも、すっかりと仲良しになってしまいました。でも今日は日曜日、ロザリーやファブリさんたちと久しぶりにゆっくり話ができるかと思うと心が弾みました。ペリーヌとロザリー、ファブリさんの3人はピキニ公園にピクニックに行く事にしました。ロザリーのいない所でファブリさんはペリーヌに「僕は君に聞きたい事がある、僕が君に何を聞きたいかわかるかい? それじゃあ正直に話してくれるね。 僕をあくまでも信用してほしいんだ。君が隠しておきたい事は絶対他人には喋らない、誓うよ」と言うのです。ペリーヌは「私、ファブリさんを信じます。ですから今日は私の事を何もかもお話しします」と言うのでした。公園へ向かった3人は途中、弁護士のフィリップさんに出会います。フィリップさんがインドにエドモンを探しに行っていた事を聞いたロザリーは「エドモン様見つかるかしら、ねぇオーレリイ、エドモン様見つかるかしら」とペリーヌに聞きます。ペリーヌは「わからないわ…」としか答えられませんでした。
 ボート遊びを楽しんだ後、ファブリは再びペリーヌと話します。「やっぱり君はビルフラン様の孫だったのか…」「ファブリさんお願いね、この事は誰にも言わないで、もちろんおじいさまにも」「でもなぜなんだ? なぜ黙っているんだい君は?」「おじいさんは私の母をとても憎んでいるし、孫の事などまったく関心がないとも言ったわ」「だけどビルフラン様は君が自分の孫とも知らないのにお屋敷に住まわせたんだよ、君の事を気に入らなければこんな事はしないさ、君が孫だとわかればいっそう君の事が好きになるよ」「私が孫だと名乗る為には私の父の死んだ事を教えなければならないのよ。おじいさまは私の父が、おじいさまの息子が生きていると思い込んでいるのよ」「でもそれは遅かれ早かれわかる事じゃないのかい」「そうかもしれない、だけどあんなに父の帰りを待ち望んでいるおじいさまに今、私は父の死んだ事を告げる勇気はないの」「それじゃあ君は永遠に孫である事を知らせないつもりなの?」「ええ、それでもいいと思ってるわ、もしおじいさまを悲しませないですむのだったら…」「君は変わってるなぁ〜、いいかい君がビルフラン様の唯一の後継者だとすると、フランスでも一二を争うパンダボアヌ工場は君のものになるのだよ」「ファブリさん、私はあんな工場なんかどうでもいいのです。私が欲しいのはおじいさまの心からの愛情です」ペリーヌと別れた後ファブリは「ペリーヌ、これから君はいったいどうするつもりなんだ」と1人でつぶやくのでした。
 ビルフランはフィリップ弁護士の提案で300フランの懸賞をつけてヨーロッパ中の新聞に広告を出してエドモンの行方を探すよう命令しました。ビルフランはペリーヌに「エドモンはインドにはいない。たぶんヨーロッパのどこかに、いやひょっとするとこのフランスにいるかもしれん。ヨーロッパ中の新聞に広告を出す事にした。今度こそ息子を探しだせる、エドモンは必ず帰ってくる」と言うのです。「私のお父さんは、おじいさまの息子はもうこの世にはいないのです」ペリーヌは心の中でそう言いました。でもいつかはお父さんの死がビルフランに伝わる日が来るでしょう。その時のビルフランの悲しみを見るとペリーヌの胸は締めつけられる思いがしました。
 新聞広告を出しても何の反応もなかった事に業を煮やしたビルフランはペリーヌに1度や2度ではエドモンも広告を見落としたかもしれないから何度も広告を出すようにとペリーヌに命令します。しかしペリーヌはすぐに返事をしませんでした。ビルフランは「なぜ黙っている? 明日さっそくフィリップ弁護士に電報じゃ」と言います。こんな時がペリーヌには一番辛かったのです。ビルフランにエドモンはもう死んだと伝える事ができない悔しさ。ペリーヌはエドモンの肖像画に向かって「お父さんはもうこの世にはいらっしゃらない。もしそれを知ったらおじいさまはどんなにかお嘆きになる事でしょう。孫だと私が名乗ればどうしてもその事を言わなければなりません。私はいったいどうすれば…」と心の中で語りかけるのでした。
第44話 いじわるな夫人
 ペリーヌがビルフランの屋敷で暮すようになって一番悔しい思いをしているのはテオドールでした。なにしろビルフランはこれまで自分の甥なのにテオドールを屋敷に住まわせようと考えた事もなかったのです。それなのにペリーヌはまるで身内の者でもあるかのようにお屋敷で暮しているのです。ある日ビルフランの屋敷にお客として一人の貴婦人が訪れました。このお客様はブルトヌー夫人といってビルフランの姉でテオドールの母親なのです。ビルフランはブルトヌー夫人の来た理由をうすうす感づいていました。ビルフランはペリーヌに「お前もわしのそばにいるから大方の見当はついているだろうが、テオドールはわしの後継ぎになりたがっている。わしも昔はそう思った。その頃はエドモンと仲たがいをしたばかりの時だった。だがあの男にはこのパンダボアヌ工場を経営していく力はない。あの男に任せたらこの工場は潰れてしまうだろう。わしはここを潰したくない。それには優秀な人間にこの工場を継いでもらわねばならん。それは息子のエドモンだ」と言うのでした。
 ビルフランは賑やかな事の好きな姉の為にさっそくパーティーを開くのですが、どうやらブルトヌー夫人の目的はペリーヌの事を探る方にあったのです。テオドールからペリーヌの悪口を吹聴されたブルトヌー夫人は晩餐会の席上でペリーヌの服装をけなすのでした。そこへフィリップ弁護士の使いが電報を持ってやってきます。電報にはエドモンが今年の3月にボスニアにいたと書かれていたのです。そして賞金の300フランが送られればもっと詳しい情報を送るとあったのです。ビルフランは泣きながら喜びました。ヨーロッパ中に出した新聞広告のおかげでとうとうエドモンの消息がわかる日が近づいたのです。もし賞金の300フランが支払われて詳しい情報が入れば、きっとエドモンが死んだという事もわかるでしょう。ビルフランはそれを知らなかったのです。でもペリーヌは知っていました。次の詳しい知らせが入った時はビルフランは悲しみのどん底に突き落とされる事を…
第45話 ボスニアからの知らせ
 ビルフランでの屋敷での晩餐会にもたらされた一通の手紙、エドモンは生きているという噂はたちまち工場中に広がりました。噂が広がっていくうちにエドモンが帰ってくるらしいなどとささやかれる始末でした。それでもビルフランは上機嫌でした。エドモンは今年の3月にボスニアにいたというフィリップ弁護士からの知らせはビルフランを心から嬉しがらせたのです。でもペリーヌは喜んでいるおじいさまの顔を見るのが苦痛でした。エドモンは、ペリーヌのお父さんはボスニアで死んだのです。
 ロザリーのおばあさんのフランソワーズはファブリさんにエドモンがいつ帰ってくるのかを聞きます。しかしエドモンが死んだ事を知っているファブリさんは「今年の3月に生きていた事がわかっただけで、今も生きているとは限らない」と言ってしまいフランソワーズを怒らせてしまいます。ロザリーはファブリが何か知っているのではないかと思って問い詰めますが、ファブリは「いや知らないよ、本当に」と言うのでした。ファブリさんは嘘をつきました。エドモンが死んだ事を知っているのはペリーヌ以外にはファブリさんだけです。でもペリーヌと約束をしていたのです。ペリーヌがビルフランの孫であることは誰にも話さないと…
 ビルフランとブルトヌー夫人、ペリーヌの3人で食事をしていた時の事。ペリーヌはビルフランとブルトヌー夫人の会話を聞いていました。「エドモンは本当に帰ってくるかしら」「帰ってきますとも」「エドモンには妻や子もいましたよね」「いや、いません」「だってあなたはエドモンがインドで結婚したから親子の縁を切ったのでしょ」「インドでの結婚などこのフランスでは正式に認める必要はありませんよ」「それはあなたの勝手な考えでしょ、エドモンの方はそうは思っちゃいないかもよ」「エドモンはボスニアにいたんだからきっと女と別れたんだ」「別れていなかったら? 奥さんや子供と一緒だったらあなたどうするつもり?」「それは別れさすしかないな」「別れたくないと言ったら?」「あの子にはわしの気持ちはわかってくれるだろう。第一フランスに帰ってくれば自分がインドで慌てて結婚した女がどんなにつまらない女かすぐわかる」「子供がかわいそうねぇ〜」「なぁ〜に、母親とインドに帰った方が幸せさ。母親にもインド人の血が混じっているのだから、その子供にもインド人の血が入っている。この土地に馴染むことはどだい無理ですよ」そこまで聞いたところでペリーヌは聞いていられなくなり気分が悪くなったと言って席を立ちました。部屋に戻って泣いていたペリーヌのもとにブルトヌー夫人がやってきて「テオドールの味方になってほしいの、テオドールがビルフランの財産を継いだ時にはたっぷりとお礼をはずむから」と言うのでした。今夜は悲しい夜でした。ペリーヌの目から涙がとめどなく流れました。おじいさまもブルトヌー夫人もペリーヌを心から悲しませたのです。でも2人ともまったくそれを知らないのです。
 そして1週間がたちフィリップ弁護士が何の連絡もなくマロクールにやってきました。それはエドモンの死を伝える知らせでした。ボスニアのフランス領事館からの公文書にはエドモンが今年の3月19日にボスニアで肺炎の為、亡くなったと書かれていたのです。ペリーヌの恐れていた日がとうとう来ました。ビルフランはエドモンの死を知ってしまったのです。そしてビルフランはしばらくの間、魂を抜かれた人のようになり涙を流し続けました。ペリーヌも泣きました。しかし屋敷に向かう馬車の中ではペリーヌはもう泣いていませんでした。今年の3月、ボスニアのお父さんのお墓の前で散々泣いたからです。でもまだビルフランは泣いていました。そこにはあの厳しくいかめしいビルフランの姿はなく、ただ息子の死を悲しんでいる哀れな老人の姿でしかありませんでした。
第46話 ビルフランの悲しみ
 息子のエドモンが死んだ事を知ったビルフランは悲しみのどん底に突き落とされたのです。必ず帰ってくると信じていたエドモンは、もうこの世にはいない事を知らされてビルフランはその悲しみのあまりに自分の部屋に閉じこもってしまい誰にも会おうとはしませんでした。慌ててお悔やみに駆けつけた人達にも、そしてペリーヌにも。ビルフランはエドモンの肖像画をさわりながら泣き続けるのでした。翌日、工場は休業となりエドモンのお葬式が行われました。お葬式が始まるまでに親戚や、友人、知人も駆けつけて、お屋敷は人でいっぱいになりました。こうなるとペリーヌは完全に無視されてしまいます。いよいよお葬式の始まる時刻になると人々はそれぞれ馬車に乗り教会に向かいました。ペリーヌは教会まで1人で歩いて行かなければなりませんでした。歩いている時にペリーヌは同じく教会に向かうロザリーとフランソワーズに出会いました。フランソワーズはエドモンの乳母をしていたので、その悲しみはいっそうのものでした。ロザリーはペリーヌが1人で歩いて来た事を不審に思って尋ねると、親戚の人がいっぱいいたので1人で歩いてきたと答えます。ロザリーは「そうね、あんたがどんなにビルフラン様に信頼されていると言ったって、べつだん身内でも何でもないんですもんね」と言うのでした。「いいえロザリー、今日はお父様のお葬式なの、私のお父様のお葬式なのよ」ペリーヌは心の中でそう言いました。寂しいお葬式でした。工場はお葬式の為に休みにしたのに列席者はほんのわずかでした。7ヶ月前、ペリーヌとお母さんはボスニアの小さな村でお父様の寂しいお葬式をしましたが、今日のお葬式もまたとても寂しいお葬式でした。
 お葬式からの帰り、ペリーヌはファブリさんと出会います。ペリーヌはファブリさんに工場をお休みにしてお葬式を開いたのにどうして工場の人は、ほとんど来てくれなかったのかを聞きました。ファブリさんはマロクールの村が見渡せる丘の上にペリーヌを連れて行き、こう言ったのです。「見てごらん、今でも畑が少し残っているけど昔はこのへんは貧しい農村地帯だったんだ。だけど今はパンダボアヌ工場がある。君の偉大なおじいさん、ビルフラン様が自分一人で作り上げた、この国でも一二を争う織物工場がある。このあたりの人達はみんな畑を捨てて工場に勤めるようになった。あっちこっちから人も集まってきて村の人口も増えた。だけど朝早くから工場で働いても貰う賃金は決して多くはない。それは君がトロッコ押しで貰った賃金がいくらだったかを思い出せばわかるだろ。確かにビルフラン様は偉い人だ。だけど工場で働いている人の生活がどんなだかは考えてはいらっしゃらない。いやきっと今までは工場を大きくする事ばかりを考えていて、その他の事を考えるゆとりがなかったのかもしれない。それに目がお見えにならなくなってからだいぶ長い。工場で働く人達の生活状態を知るチャンスもなくなった。ほら工場を囲むようにごちゃごちゃと軒を並べている家、そして今、君が住む宮殿のようなビルフラン様のお屋敷。工場で働く人達が今日のお葬式に少ししか出なかったのは、おそらくその人たちが仕事をしているからといって、べつだんビルフラン様に感謝する気持ちは持っていないという事じゃないのかなぁ〜 入院できる病院もない、子供を安心して預けられる託児所もない、酒場は多いけど清潔なレストランも少ない、ロザリーの店は上等な方だけど女工たちの泊まっている下宿屋のひどい事は君だって知っているだろ。もしビルフラン様がみんなに愛されているのなら、その息子さんの葬式には、あの教会に入り切れないくらいの人がやって来ただろうね」
 ビルフラン様は悲しみのあまり、まる2日も食事を食べようとしないとセバスチャンが心配しているのを見たペリーヌはビルフランを説得しようとビルフランの部屋を訪れます。ビルフランはペリーヌに「部屋に入るな、入ったらお前は首だ」と言うのですが、それにも構わずペリーヌは部屋に入って行きます。ビルフランは怒って杖を振り上げようとしますが、ペリーヌはビルフランにしがみついて「お食事をして下さい、お食事をしなくてはお体を壊します。どうか例えスープだけでも口に入れて下さい」と哀願します。ペリーヌに説得されたこともありビルフランは食事を取ろうと決心したのでした。セバスチャンはペリーヌがビルフランに食事を取らせたのだとペリーヌにお礼を言い、ビルフランがペリーヌを頼りにしているし愛していると告げるのでした。
 次の日はとても寒い日でした。ビルフランは気を取り直し工場に出勤しようとしますが屋敷を一歩出たところで倒れてしまいます。息子を失った悲しみからビルフランはとうとう病で倒れてしまったのです。ペリーヌはお医者様のビション先生を迎えに行く為、懸命に馬車を走らせるのでした。
第47話 オーレリィの顔
 ビルフランは悲しみのあまり病気になってしまいました。息子のエドモンの死はビルフランの心と体にとても大きな打撃を与えたのです。病気はそれほど心配する事はありませんでしたが、心の方がすっかりと衰えており、ビション先生は「ビルフラン様が自分で気力を取り戻さなければと言います。ペリーヌは自分がビルフラン様の為にできる事はないのかと問うと、ビション先生は「力づけておやりなさい、悲しみを忘れさせておやりなさい。あんたならそれができるんじゃないかな」と言うのでした。タルエルとテオドールはビルフラン様に決裁を仰ごうとお屋敷にやって来ましたが、ビルフランは2人に会おうとはしません。そればかりかビルフランはペリーヌにパンダボアヌ工場の事はタルエルに任せると言うのです。それを聞いたタルエルは大喜びし、任せてもらえなかったテオドールはがっかりしてしまうのでした。
 寝ずの看病をするペリーヌに向かってビルフランはエドモンの夢を見たと語ります。夢の中のエドモンはまだ小さく、ビルフランの手を引いてどんどん先に進んでしまうが、いつのまにか手を引いているのがオーレリイに代わっていたと言うのです。そしてせめて夢の中だけでもオーレリイの顔を見たかったとビルフランは思うのでした。ビルフランはエドモンの想い出を語ろうとフランソワーズを呼びます。その話しの中でオーレリイはエドモンに似ているという話が出ました。ビルフランはもしやと思いフィリップ弁護士を呼びエドモンの子供を探すように命令するのでした。ビルフランはエドモンの妻や子供には何の興味も示さなかったのですが、フランソワーズの話を聞くと急にビルフランはエドモンの子供、すなわち自分の孫がオーレリイではないかと思い始めました。オーレリイが自分から孫だと名乗らないのは自分が今まで散々エドモンの妻や子供の悪口を言っていたからではないかと考えたのです。さっそくフィリップ弁護士はエドモンの妻と子供、そしてオーレリイの情報を集める為パリに向かったのでした。しかしペリーヌはまったくその事を知りませんでした。
第48話 火事
 ビルフランは今日から工場へ出る事にしておりました。息子エドモンの死ですっかり元気を失っていたビルフランがまた仕事をする気力を取り戻したのは秘書のオーレリイが実はエドモンの娘ではないか、自分の孫ではないかと気付いたからでした。深い悲しみの中から立ち直りすっかり元気を取り戻したビルフランは秘書のオーレリイが自分の孫である事を願いながら以前よりも増して仕事に情熱を燃やすのでした。タルエルやテオドールにはそれが不思議でなりませんでした。ところがその日、村の保育所が火事になり女工員の子供達が火にまかれて取り残されてしまったのです。ちょうど馬車で通りかかったビルフランとペリーヌ、ファブリの3人は火事現場に駆けつけますが保育所は燃え尽きており、小さな子供が二人煙にまかれて亡くなったのです。ビルフランは慰めてやろうと母親のもとに近づきますが、逆に母親から馬声を浴びせられてしまうのでした。ペリーヌは火事で死んでしまった子供の事がかわいそうでなりませんでした。そして泣いていた母親の姿がいつまでも忘れられませんでした。
 ペリーヌはビルフランに明日の葬式にはおでになるのかと問います。「わしがどうして出なければいけないのだ?」「亡くなった子供の母親はこの工場で働いている最中に不幸にあったのですから…」「子供を亡くした悲しみならわしだって知っている。息子の葬式の時、あの女たちは来てくれたか?」「たぶん来なかったと思います、あの人達だけでなく働いている人達の大部分は来ませんでした」「それ見ろ、わしが明日の葬式に出る必要などどこにもない、工員たちは恩知らずだ」「いいえ、それは違います。あの人達は朝から晩まで働いてもほんの少しの賃金しかもらっていないので別にビルフラン様に恩など感じていないのです」「何だって? お前はそんな風に考えているのか?」「はい、ビルフラン様は今までは工場を大きくする事だけを考えていたのではないのでしょうか。ですからはこれからは働いている人達の事をもっともっと考えてもらいたいのです」「お前はわしが人の事を考えない自分勝手な人間だというのだな」「本当はそんな方でない事を私はよく知っています。だって、だって… 亡くなった母が私に教えてくれました。人に愛されたかったらまず自分が愛さねばダメだ。ビルフラン様が工場の人達から愛されるには、まずご自分があの人達を愛さなくては…」「もうよい、オーレリイ」ビルフランは見えぬ目を窓の外に向けしばらくの間、黙っていました。ビルフランは帰り際タルエルに明日の葬式は全額会社が費用を持ち、葬式に出席したいものは仕事中でも抜けてかまわない、そして自分も葬式に出席すると言うのでした。ペリーヌは嬉しかったのです。ビルフランはやはり冷たい人間ではありませんでした。道理のわからない人でもありません。私はおじいさまがとても好きです。ペリーヌは心の中でつぶやくのでした。
第49話 幸せの涙が流れる時
 ペリーヌはビルフランを連れて夜中に馬車で女工たちの宿舎を密かに訪れます。ペリーヌはビルフランに女工たちがどんな環境で生活しているかをビルフランに知ってもらいたかったのです。宿舎は狭い部屋に16人も生活しているので、とても不潔でひどい匂いの為ビルフランは息が詰まりそうでした。そしてペリーヌはビルフランに工場で働く人達すべての幸せを考えてほしいと頼むのでした。ビルフランは火事で起こった事件を教訓にして保育園や公園、工員達のアパートを作ると言いだしました。テオドールはこの計画に反対しましたがビルフランは頑として受け付けません。
 そして次の日、ビルフランの待ち望んでいたフィリップ弁護士がパリでの調査を終えて屋敷を訪れました。ビルフランは「神はきっと私の望みをかなえて下さる」と言って祈ります。フィリップ弁護士はビルフランに会いますが一つだけ調査が残っていると言ってペリーヌに向かって「パリではパリカールとルクリおばさんに会って来ました、あの方がよろしくとの事でございました、ペリーヌ様」と言ったのです。オーレリイではなくペリーヌと呼ばれたペリーヌはびっくりしてしまいます。そしてフィリップ弁護士は「これが私の最後の調査であります。ビルフラン様のお考え通り、こちらのお嬢様はビルフラン様のご子息エドモン様のお子様に間違いございません。お名前はペリーヌ、ペリーヌ・パンダボアヌ様と申します」と言ったのです。「やっぱりそうだったのか、ペリーヌ、いい名前だ、おいでペリーヌ、さあ、どこにいるのだペリーヌ、わしの所まで来てくれ」フィリップ弁護士に「さあ、早く行っておあげなさい、もう我慢なさる必要はないんですよ」と言われたペリーヌはビルフランのもとに駆け寄り、二人でしっかりと抱き合って喜び合うのでした。「ペリーヌ、もう離さないぞ、もう二度と離さないぞペリーヌ、神よこの幸せをあなたにどうやって感謝すればよいのでしょうか」とうとうその時は来たのです。ペリーヌはおじいさんの胸の中で泣きました。ビルフランの目からも涙がとめどなく流れます。2人の流した涙は暖かい幸せの涙でした。
第50話 初雪の降った日
 それはマロクール村に初雪の降った日でした。ペリーヌはビルフランの腕の中にしっかりと抱きしめられたのです。もう社長とその秘書ではありません、おじいさんと孫なのです。ビルフランとペリーヌの会話は続きます。「わしが頑固なばっかりにだいぶお前をいじめたようだなペリーヌ、でもお前の方もそうとう強情っぱりではないか、わしがお前の事を心から愛しているのがわかっているのに孫だと名乗ろうとしなかった」「確かにおじいさまが私の事を愛しているのはわかっていました。でもまだ恐かったのです。おじいさまはお母さんの事を…」「うむ、お前の母親の事はずいぶん悪く言った、しかもお前に向かって… 許してくれペリーヌ」「お母さんはおじいさまの考えているような人ではありません。お母さんはとても優しくて、頭の良い、そしてとてもきれいな人でした」「そうか、そうだったのか… お前をこんなにしっかりした娘に育て上げた人だ、きっと立派な人だったに違いない」「お母さんは私をおじいさまの所に送り届けようとして無理な旅をしたので病気になってしまったのです」「お前のお母さんには心から詫びねばならないな。でももう遅い…」「その言葉お母さんが聞く事ができたら…」「ペリーヌ、わしはお前を世界で一番幸せな娘にしてみせる。そうすれば天国にいるお母さんもきっと喜んでくれるだろう。ペリーヌ、わしのかわいい孫、もう一度わしの腕の中に来てくれ」そう言って二人は再び抱き合うのでした。ビルフランはエドモンの肖像画の前に立つと「お前はとうとう帰って来なかったが、わしにすばらしい宝物を残してくれたな、ペリーヌをありがとうエドモン」と言うのでした。
 ペリーヌがビルフランの孫だと知ったテオドールはショックでした。テオドールはタルエルのもとを訪れると二人はパンダボアヌ工場の後継者になれないと知って愕然とするのでした。ペリーヌとビルフランはペリーヌが世話になった人々に会う為、馬車で出かけます。ペリーヌがビルフランの孫である事を知らなくてもペリーヌに親切にしてくれた人々にビルフランはどうしてもお礼が言いたかったのです。ペリーヌがマロクール村に着いた日、泊まる所がなくて同じベッドで寝かしてくれたロザリーにビルフランは厚くお礼を言うのでした。そしてビルフランは集まったロザリーやセザール、フランソワーズ、ファブリを前にして「ここにいるみんなはわしのかわいい孫の為に心から親切にしてくれた人達だ。みなさん、もう一度わしは心からお礼を言わせてもらいたい、ありがとう」そう言ってみんなで乾杯するのでした。みんなペリーヌに優しくしてくれる人達でした。もしこの人達がいなかったらペリーヌの今日の幸せはなかったでしょう。
第51話 おじいさんの目
 ペリーヌはビルフラン家のお嬢様になったというのに、庭の雪かきをしたり、馬車で御者をしたりと、今までと少しも変わったところがなく召し使い立ちを戸惑わせます。ビルフランはペリーヌを工場に連れて行くことをやめました。おじいさんは長い間学校に行っていなかったペリーヌにちゃんとした教育をする必要があると考えて家庭教師をつけて勉強させる事にしたのです。昼間にビルフランの仕事場を訪れたペリーヌにビルフランは「ペリーヌ、柔らかい手だ、これはよくわかる。お前の生き生きした声もよくわかる。だがお前の顔は… わしのかわいい孫の顔がわからんのはもどかしい。わしはお前の顔が見たくてたまらん、どうしてもお前の顔が見たい、ペリーヌ」と言うのでした。ビルフランはビション先生に目の手術ができるかを相談します。ビション先生は成功する確率は4割だと言います。しかしビルフランはペリーヌの顔を見る為に自分の運命に賭けるのでした。次の日パリからお医者様がやって来て、屋敷の中の一室が手術の為に使われました。それはかなり危険な手術でした。ビルフランにいつ気管支炎の発作が起こるかわからなかったからです。ペリーヌはひたすら神に祈りました。そして天国にいるお父さんやお母さんにも… そしてペリーヌの祈りが神に通じたかのように手術は成功しました。ビルフランはペリーヌをそばに呼んで言いました。「ペリーヌ、お前の顔が見られるぞ、あと1週間だ、あと1週間たつとお前の顔が…」
第52話 忘れられないクリスマス
 今日はクリスマスイブでした。ビルフランの目の手術からちょうど1週間がたったのです。その間心配されたビルフランの気管支炎も起こらず手術の経過も極めて良好でした。ラ・シューズ婦人の店でプレゼントを買ったペリーヌはロザリーの家を訪れ、家族全員にビルフランからと言ってプレゼントを差し上げます。ビルフランは孫と出会えたのはロザリー達のおかげだからささやかなプレゼントをしたいとのことづけをペリーヌに託したのでした。
 ビルフランはペリーヌがどんな顔をしているのか見たくてたまりません。周りの人は美人だと言うので想像してみるのですが、ペリーヌは「私、美人じゃありませんよ、そんなに期待していると後でがっかりしますよ」と言います。すべては明日わかる事でした。そしてクリスマスの日、とうとうビルフランの目の包帯が取られる日が来ました。包帯を取ったビルフランの前にペリーヌが立ちます。ビルフランの目にはペリーヌの顔がはっきりと見えたのです。ペリーヌは「よかった、本当によかったわ」と言って喜びました。ビルフランは「しかし何ってお前は息子に、エドモンに似ているんだ。もしわしが目が見えていたらひと目でお前が孫だとわかったろうに、フランソワーズをのぞいては誰もその事に気付かなかったのは、よくよく間抜けな人間が多かったんだな。ペリーヌお前はやっぱり美人だったじゃないか、この嘘つき」と言うのでした。ほんの短い時間でしたがビルフランはペリーヌの顔を見て心から感動したのです。やがてあと2ヶ月もすれば毎日かわいい孫の顔を見る事ができるようになるでしょう。
第53話 春の訪れ
 もう春がすぐそこまで来ているというのにマロクールには大雪が降りました。冬の間も休む事のなかった保育園の建設作業もこの雪では続ける事が困難になってきました。しかしやがて雪も溶け保育園の建設も進み、ようやく予定どおり春には保育園が完成しました。工場の工員達は大喜びで落成式を祝いました。ビルフランはペリーヌにプレゼントをします。そのプレゼントとはペリーヌがお母さんと一緒にパリまで旅をして来たロバのパリカールでした。ビルフランがペリーヌの為にルクリおばさんから譲ってもらったのです。その頃マルセルのいるエトワールサーカスがマロクールに向かって行進していました。エトワールサーカスはパンダボアヌ工場に呼ばれていたのです。ビルフランとペリーヌはパリカールに引かれて池の畔の小屋を訪れます。それはペリーヌがマロクールにやって来てからビルフランの秘書となるまでの2ヶ月間、ペリーヌがたった一人で暮してきた場所でした。ビルフランはペリーヌから小屋での生活を聞きペリーヌをとても好きになった想い出の場所だったのです。ビルフランは言います「わしはなぁ〜ペリーヌ、お前からあの小屋での暮らしぶりを聞いた時からお前を本当に好きになった。下着も靴も必要なものはすべて自分の手で作り出したと言った。手製の釣り竿で魚を釣り、野生のスカンポを料理してロザリーにご馳走したという話はわしを心から感動させた。何と素晴らしい娘なんだ、何という意志の強い娘なんだ。そう思ってわしはすっかりお前が好きになった。そして、ああ、神様ありがとうございます。その娘がわしの孫だったとは」
 次にビルフランとペリーヌは保育所を訪れます。それは当時としては最も設備の整った保育園でした。ビルフランは満足そうに小さな子供達の姿を見てまわりました。次に2人が向かったのは工員住宅の建設現場でした。ファブリの案内で建設現場を見てまわった2人は働く人々を優しくねぎらいました。ペリーヌの提案でビルフランが始めたマロクール改造計画は何としてもビルフランが生きている間に完了させたいとビルフランは思います。ペリーヌは「あと何年かすればマロクールは見違えるような素晴らしい所になりますわ」と言うのでした。マロクールに着いたマルセルはペリーヌに出会います。2人は大喜びで再会を喜びます。マルセルはペリーヌに一つだけ質問するのでした。「ペリーヌは今、幸せ?」「ええ、とっても幸せよ」
 ビルフランとペリーヌはマロクールの見渡せる丘の上に立ち、2人で語るのでした。「わしは昔ここに立って決意した事があった。パンダボアヌ工場をフランス一の工場にしてみせると。その頃はこの工場は今よりずっと小さかった。そして今また新しい決意をしなければならない。それはこのマロクールをフランスで一番豊かで住みよい所にする事」「そうよ、そうだわ。頑張りましょう、おじいさま」「頑張ろう、ペリーヌ」そしてペリーヌはマロクールの町に向かって叫ぶのでした。「お父さぁ〜ん、お母さぁ〜ん、私、幸せよぉ〜、安心して下さぁ〜い」と…
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