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あらいぐまラスカル  ストーリー詳細

第1話 黒いマスクの可愛いやつ
 1914年のアメリカ合州国。ウィスコンシン州のブレールスフォードという小さな町にスターリング・ノースという名前の11歳になる動物好きの少年が住んでいました。ノース家の家族はお父さんのウィラード、お母さんのエリザベス、そして2人の姉のセオドラジェシカがいました。しかし、お母さんは病気で10日前から病院に入院しており、セオドラはアーサーと結婚して嫁入りしてしまい、ジェシカはシカゴ大学に通う為にシカゴで下宿していたので、家にはスターリングとお父さんの2人だけしかいませんでした。しかしスターリングは大の動物好きだったので、犬のハウザー、カラスのポー、そしてスカンクたちを飼っていました。
 お母さんが入院してしまったのでノース家では家政婦のハケットさんを雇いました。しかしハケットさんも泊まり込みではなかったので、朝の食事はスターリングとお父さんの交代で作らなければなりません。お母さんのいない生活は何かと大変で、時計のネジを巻き忘れてしまい、お父さんは朝寝坊して、スターリングは学校を遅刻してホエーレン先生に怒られてしまうのでした。
 放課後、スターリングと友人のオスカーは飼犬のハウザーを連れて魚釣りに出かけます。オスカーが見つけた絶好の釣り場を目指して森の中を歩いていると、何やら銃声が聞こえてきました。誰かが森の中で猟をしているようです。すると突然ハウザーが木の根元を掘り始めました。スターリングはキツネでもいるのではないかと思ってハウザーが掘るのを手伝うと、木の根元からあらいぐまが飛び出してきたのです。木の根元の巣にはあらいぐまの赤ちゃんがいたので、あらいぐまの母親はとても気が立っているようです。スターリングはあらいぐまを飼おうと考え、あらいぐまの母親と赤ちゃんを捕まえようとしました。ところがそこに猟師がやって来てスターリングがとめるのも聞かず、あらいぐまの母親を銃で撃ってしまったのです。猟師はあらいぐまの毛皮で帽子を作る為、仕留めたあらいぐまを持って帰ってしまいました。スターリングはあらいぐまの赤ちゃんを何としても育てようと考え、持ち帰るのでした。
第2話 ぼくの新しい友達
 スターリングは帰りにアライグマの赤ちゃんの育て方をオスカーのお母さんのグレタに聞く為にオスカーの家によりました。スターリングは育て方を聞いて家に帰る途中、クラスメイトのスラミーたちに会いました。スラミーはあらいぐまの赤ちゃんを見ると、それをよこさないと通さないと言うのです。スターリングは力で決着をつけようとスラミーに一対一のケンカを挑みましたが、スラミーは体が大きかったのでスターリングは負けそうになってしまいます。そこへスターリングのお父さんが車で通りかかり、スラミーは慌てて逃げ出してしまうのでした。スターリングはあらいぐまの赤ちゃんをラスカルと名付けて一生懸命育てました。そして庭に立っている樫の木の穴の中をラスカルの家にしました。
 あらいぐまの赤ちゃんを家に持ち帰りましたが、家政婦のハケットさんはいい顔をしません。ハケットさんは動物が嫌いだったのです。そればかりかハケットさんはハウザーを家の中に入れてはいけないと言うのです。ノース家の家族はみんな動物好きだったので、お母さんがいた頃は動物が家の中に入って来ても、誰も文句を言う人はいませんでしたが、ハケットさんが来てからはそういうわけにはいかなくなりました。ハケットさんはノース家に雇われた家政婦ですが、ハケットさんに来てもらえなくなるとノース家はお父さんと息子の二人暮らしで、炊事や掃除、洗濯をしてくれる人がおらず、困った事になってしまうのでした。
第3話 友情
 お母さんの病気は良くなかったので手術する事になりました。スターリングはミルウォーキーの病院にいるお母さんのお見舞いを2日後に控えて1つの悩みを持っていました。それは、スターリングのいない間のラスカルやスカンク、カラスのポーたちの世話をハケットさんに断られたからです。スターリングは親友のオスカーに家に泊まってくれるように頼みました。けれどもオスカーは引き受けてもいいけども、家の手伝いが忙しいので頑固者の父親が許してくれないだろうと言うのです。スターリングはお父さんを連れてオスカーのお父さんのハーマンさんにお願いに行きました。ところがハーマンさんは酒を飲んでいて、とても荒れていました。お父さんはオスカーが来てくれたら1日5ドル出すから、それでその間だけ人を雇ってほしいとお願いしましたが、ハーマンさんはコップを投げつけてお父さんを追い返してしまうのでした。
 ミルウォーキーへ出発する当日になりましたが、スターリングには動物の世話をしてくれる人が見つからず、途方に暮れてしまいました。ところがその時オスカーがやって来ました。オスカーはハーマンの許しがおりたので、今晩はノース家で泊まって動物たちの世話をしてくれる事になったのです。スターリングは大喜びすると安心してミルウォーキーの病院に向かうのでした。
第4話 ミルウォーキーのお月さま
 スターリングとお父さんは汽車でミルウォーキーに向かいます。ミルウォーキーはとても大きな町で、その大都会の大きな病院にお母さんは入院していました。スターリングは2ヶ月ぶりに会えるお母さんに胸をはずませながら、姉のセオドラに案内されてお母さんと面会します。スターリングもお母さんも2ヶ月ぶりに逢えてとても喜びました。お母さんの手術は明日行われます。けれども、お父さんは医師のミッチェルからお母さんの病気が予想以上に悪い事を聞かされました。お母さんは腸ガンだったのです。しかも心臓も悪かったので体の調子が良くなるまで手術を延期していたのです。その事はお母さんにはもちろんの事、スターリングにも知らされませんでした。
 病院からの帰り、お父さんを病院に残してスターリングはセオドラの家に向かいます。車の中でスターリングはセオドラに「お母さん早く治って家に帰りたいって。明日の手術がうまくいけば早く帰れるね、きっとうまくいくね。お母さんみたいないい人は神様が守って下さるよね、お姉さん」と言いますが、お母さんがガンだという事を知っていたセオドラは小声で「も、もちろんよ」としか言えませんでした。何も知らないスターリングが不憫でセオドラは目に涙をためていましたが、涙で曇って前がよく見えずにセオドラは電柱に車をぶつけてしまうのでした。
 その日はスターリングとお父さんはセオドラの家に泊まりました。その夜、スターリングはなかなか寝つけませんでした。スターリングはベッドを抜けだすと、満月に向かって明日のお母さんの手術がうまくいきますようにと心の中で祈るのでした。
第5話 オスカーへの贈り物
 オスカーがラスカルやハウザーたちの世話をしていた頃、ミルウォーキーではお母さんの手術が行われていました。スターリングは心配でたまりません。いちおう手術は終わりました。しかし腫瘍のできていた場所が悪く、腫瘍をすべて取り除く事はできませんでした。ミッチェル先生の腫瘍が再発したら命が危ないという言葉を聞いて、お父さんとセオドラはショックを受けてしまうのでした。
 後の事はセオドラたちに任せてスターリングとお父さんはブレールスフォードへと帰っていきます。スターリングが家に戻るとオスカーがラスカルの世話をしていました。スターリングはオスカーに礼を言うとオスカーはスターリングに謝りました。オスカーはリールの付いた竿を使った事がなかったので、スターリングがいない間に試しに使ってみたのですが、リールの使い方がよくわからなかったので糸がからまってしまったのです。スターリングはオスカーを怒るどころか、オスカーが前からリールの付いた竿を欲しがっていたのを知っていたので、スターリングは動物たちの世話をしてくれたオスカーへのお礼に、糸のからまった竿をプレゼントしたのです。オスカーは大喜びでプレゼントを受け取るのでした。
第6話 さようならスカンクたち
 スラミーはどうしてもラスカルを手に入れたくてスターリングがいない間にラスカルを盗もうとしてハウザーに追い立てられた事がありました。そこでスラミーはラスカルを手に入れる為にジョーカーという犬をハウザーにけしかけ、ハウザーが気を取られている隙にラスカルを盗もうとしました。でもジョーカーはハウザーの前に出るとすっかり脅えてしまい、ジョーカーは腹いせにスカンクたちに吠えたてるばかりです。そんなジョーカーに驚いたスカンクたちは一斉にオナラをしてしまいました。ちょうどその日、教会では結婚式が行われていましたから大変。結婚式はオナラの匂いで大騒ぎになってしまいます。
 スターリングが教会から戻るとスラミーの仕業だと知りました。スターリングはハウザーとラスカルを救出すると川の畔まで悪臭を避けて逃げました。家に帰ればきっと叱られる。自分が悪いわけでもないのに、ただスカンクを飼っていたというだけで叱られると思うとスターリングは憂鬱でした。ノース家にはコンウェイさんとサーマンさんとフートン牧師が来て、お父さんとスカンクをどうするかを話し合っていました。サーマンさんは自分の姪の結婚式をメチャメチャにされたのでスカンクを銃で殺すべきだと言います。お父さんはスカンクを殺す事には反対でしたが、飼い続ける事にも反対でした。お父さんはスカンクをどうするかはスターリングに任せるが、飼うのはやめなさいと言うのでした。
 スターリングはスカンクたちに最後の餌をたっぷりと与えるとウェントワースの森に放す事にしました。スターリングはウェントワースの森でスカンクを追い払うように放すと、「さようなら、元気でやれよ」と言うと走ってその場をあとにするのでした。スターリングはスカンクとの別れを悲しく思いました。そしていつかラスカルとも別れなければならないかもしれないと思いましたが、今は考えない事にするのでした。
第7話 馬と自動車はどちらが速いか
 スターリングはスラミーが許せませんでした。スラミーはラスカルが好きで盗もうとしているのではなく、単にスターリングの大切にしている物を取り上げたかっただけなのです。でもスターリングはスラミーとケンカしてもいつも負けてしまいます。そこでスターリングはスラミーに負けない為にも拳闘を習おうと決心するのでした。
 お母さんの手術の経過はとても順調で、あと10日ほどで退院できる事になりました。スターリングはお母さんが帰ってきた時に少しでも気分よく過ごしてもらう為にスターリングが芝刈りをしていると自動車の音が聞こえてきます。隣の新しい物好きなサーマンさんが自動車を買って練習しているのです。ところが下手な運転で走り回るものですから道をジグザグに走ったりハウザーが轢かれそうになったりする騒ぎでした。
 スターリングは自転車で池に釣りに出かけました。スターリングの釣り竿はオスカーにあげてしまったので、お父さんの上等の釣り竿を譲ってもらったのです。今日はその釣り竿を初めて使う日でした。スターリングは釣りの帰りに自転車がパンクしてしまいます。しかしコンウェイさんの荷馬車に出会ったので自転車と一緒に家まで送ってもらえる事になりました。ところが自動車嫌いのコンウェイさんと自動車に乗ったサーマンさんが道で出会ったからさあたいへん、狭い道で言い合いが始まり、とうとう馬と自動車の競走が始まってしまいました。コンウェイさんの馬のドニィブルックは一生懸命走りましたが自動車にはかないません。サーマンさんの自動車は先に行ってしまいましたが、途中でエンジンが焼け切れてしまい、結局コンウェイさんの馬が勝利します。翌日、サーマンさんの車はドニィブルックに引いてもらってサーマンさんの家まで戻るのでした。
第8話 蛙とボクシング
 ある日オスカーは教室にラッキーという名前の蛙を持ち込みました。ラッキーは4メートルもジャンプするという大きな蛙でした。ところがラッキーを隠していた箱がホエーレン先生に見つかり、ホエーレン先生が箱を開けろと命じた為、ラッキーが箱から跳びだし、教室中が大騒ぎになってしまいます。そんなオスカーの蛙に目をつけたのがスラミーでした。スラミーは蛙のジャンプ競争を申し込み、もしオスカーの蛙が負けたらラスカルを渡せとスターリングとオスカーに約束を迫るのです。オスカーとスターリングはスラミーの挑戦を受ける事にしました。しかしスターリングの家に行った時、ラッキーは目を離した隙にカラスのポーに連れ去られ、空から落とされて死んでしまったのです。
 スターリングとオスカーはしばらくぼんやりしていましたが、気を取り直して新しい蛙を探しに行きました。蛙はなかなか見つかりませんでしたが、ハウザーが大きな蛙を見つけてくれたのです。その蛙はとてもよく飛びました。オスカーがこの蛙にラッキー二世と名付けると、素晴らしいやつだと折り紙をつけてくれたのでスターリングは安心して家に帰りました。ところが家に着くとラスカルを巣から取り出そうとしている黒人を見つけたのです。その黒人はマーチンといい有名なボクサーでした。マーチンはブレールスフォードの町を通りかかった時に車が故障し、マネージャーのヘンリーがお父さんの古い知り合いだったのでノース家に一晩泊めてもらう事になったのです。スターリングはスラミーに負けない為にマーチンからボクシングを学ぶのでした。
 翌日オスカーの蛙とスラミーの蛙とのジャンプ競走が行われました。スターリングはオスカーの蛙が負けたらラスカルをスラミーにあげる約束になっていましたが、オスカーの蛙が勝ったらどうするのかを聞きます。するとスラミーは自分の家のアイスクリームを1ヶ月間、毎日1個ずつあげると言いますが、スターリングはそんなものよりラスカルに手を出さないように約束させるのでした。最初はスラミーの蛙がジャンプし、それは遠くに飛びました。スターリングは心配になりましたがラッキー二世はそれよりはるかに遠くまで飛んだのです。スターリングとオスカーは大喜びしました。ところが勝負に負けたスラミーは怒って自分の蛙を投げつけるとラッキー二世を自分の足で踏みつぶしてしまったのです。スターリングは我慢できなくなりスラミーと決着をつけようとします。2人は一対一のケンカを始めましたが、スターリングは昨日マーチンから教えられた通りのやり方でスラミーを見事に倒してしまうのでした。
第9話 お母さんの帰宅
 2ヶ月ぶりにお母さんがミルウォーキーの病院から帰ってくる事になりました。スターリングが駅に迎えに行くとお母さんが病院まで見送りに行ったお父さんと一緒に汽車から降りてきました。スターリングは久しぶりに帰って来たお母さんに甘えて大喜びでしたが、お母さんは汽車での長旅の為、少し体調を崩していました。スターリングは家に帰って来たお母さんにラスカルを紹介します。お母さんもラスカルもお互いとっても気に入ったようでした。
 その夜、お母さんはもうミルウォーキーの病院に戻らない、どうせ死ぬのだったらミルウォーキーの病院ではなく、生まれ育ったブレールスフォードの町で、お父さんやスターリングのそばで死にたいと言うのです。お母さんは自分の病気がとても悪く、もし再発すればその時は命が危ない事を知っていたのでした。
第10話 はじめての探検
 ある日、スターリングは生簀に入れる鮠を釣りに近くの池まで出かけました。しかし激しい雨が降り始め、スターリングは雨宿りをしますが、雨はすぐにあがったので家に戻って来ました。するとコンウェイさんの娘のマーサが10セントを持ってスターリングと一緒にお菓子屋さんへ飴を買いに行こうと言うのです。スターリングはマーサに付き合う事にしましたが、マーサの持っていた10セント硬貨をカラスのポーが奪い取って巣に持って帰ってしまいました。ポーは光るものが大好きだったのです。仕方なくスターリングは大損害だとぼやきながらも自分の貯金箱から10セントを取り出しマーサに渡してお菓子屋さんへと行くのでした。
 激しい雨があがった後、ラスカルは初めて樫の木を自分の力でおります。ラスカルにとって独り歩きは生まれて初めてでした。だから見るもの触れるものすべて珍しいものばかりです。それに気が付いたスターリングとお母さんはラスカルを陰から見守り続けました。ラスカルは鮠の入れてある生簀へ行き、さっそく水泳と魚取りに夢中になり、自分で捕まえた鮠を洗って食べます。カラスのポーがラスカルをいじめに来ました。ラスカルはポーが苦手だったのでいつもケンカしてばかりでした。そしてラスカルは庭の周りを探検してまわるのでした。
 お父さんはあらいぐまは夜行性なので、夜の間に巣から逃げてしまうのではないかと言います。スターリングはそんな事はないと言い張りましたが、心配でたまりません。夜中に何度も目が覚め、ラスカルの巣を見に行きます。そして朝になってスターリングは巣にラスカルがいるのを見たスターリングは安心するのでした。
第11話 消えた角砂糖
 生簀の魚を取り、それを洗って食べるのがうまくなったラスカルにスターリングとオスカーはすっかり感心してしまいます。そして屋根裏部屋に潜り込んで持ち出した幼い頃の椅子をラスカルに使ってもらう事にしたのです。スターリングはその椅子を使ってラスカルをみんなと同じようにテーブルで食事をさせたかったのですが、ハケットさんに反対されてしまうのでした。その椅子に座って行儀よくミルクを飲むラスカルにスターリングが角砂糖を与えると、ラスカルはいつもの癖でそれをミルクにつけて洗い始めたのです。角砂糖は見事に溶けてなくなり、ラスカルはせっかくもらった角砂糖がなくなって大騒ぎです。そんなラスカルを見ていたスターリングやお母さんは大笑いするのでした。
 ラスカルは角砂糖の味が忘れられず、夕食後、巣を抜け出すと台所に忍び込み角砂糖の入ったビンに手をかけたのです。それを見つけたハケットさんはラスカルから角砂糖の入ったビンを取り上げようとしてラスカルに手を引っかかれてしまいました。ハケットさんはお父さんの運転する車で病院に運ばれましたが、スターリングは手を引っかかれたくらいで病院に行くなんってオーバーだと思わずにはいられないのでした。
第12話 本と一セント銅貨
 家政婦のハケットさんが突然やめてしまいました。代わりの家政婦さんがなかなか見つからなかったので食事の支度や掃除、洗濯などは体調の良くなったお母さんがする事になりました。スターリングは今度来る家政婦さんが動物嫌いでなければいいと思うのでした。でも、お母さんの体調は良くなっていたので家政婦さんを雇う必要もなさそうな雰囲気でした。
 夏休みになって大学に行っているジェシカが家に帰って来ました。スターリングは一冊の素敵な動物図鑑をもらいます。そして懐かしい家や家族に逢えて嬉しそうなジェシカがソファに腰を降ろそうとした時でした。ソファの上ではラスカルがスヤスヤと寝ていたものですから、ジェシカはラスカルをもう少しで潰しそうになってしまうのでした。ジェシカはラスカルにもお土産として1セント銅貨をあげる事にしました。ラスカルは光る物に目がなかったのです。1セント銅貨をもらったラスカルは大喜びでした。ところがラスカルが1セント銅貨を巣に持ち帰ろうとした時、ポーが1セント銅貨を奪いに来たのです。ラスカルとポーは激しい戦いを繰り広げ、とうとうポーは1セント銅貨を奪って教会の上の巣に帰ってしまいました。1セント銅貨を奪われたラスカルは怒っていましたが、それを知ったジェシカが再びラスカルに1セント銅貨をあげたので、ラスカルはそれを巣に持ち帰って宝物にするのでした。
第13話 夏休みの第一日目
 いよいよ夏休み、すがすがしい朝を迎えたスターリングはこれからの計画に胸をはずませます。そして朝食の時、ナマズのフライを食べたいというお母さんに、きっと釣ってきてあげると約束をするのです。自分だけの秘密の場所で釣りをするスターリング。でもかかるのは鰍ばかりです。ところが今日はダメかなとあきらめた頃、急に大きな引きがあり糸が激しく左右に動き始めたのです。スターリングは力一杯釣り上げました。それは重さが4キロもある大ナマズだったのです。スターリングは意気揚々として家に帰りました。
 ところが家に帰ってくるとスターリングがナマズを釣っている間にお母さんは倒れて、お医者さんのゲイン先生が来ていたのです。スターリングはお母さんにナマズのフライを食べてもらおうとしましたが、お母さんには食べられそうもありません。そればかりかスターリングはゲイン先生のお母さんはもう危ないという言葉を聞いてしまったのです。スターリングはとても大きなショックを受けてしまうのでした。
 あんなに元気だったお母さんが倒れるなんって… スターリングにはどうしても信じられませんでした。お母さん死なないで! 心の中でスターリングは何度も何度も叫びました。セオドラもジェシカもお父さんも一心に祈りました。でもお母さんの病気はもう取り返しのつかないものになっていました。そしてノース家は深い悲しみに直面していくのです。
第14話 母のない子
 数日後、教会の鐘は47回鳴りました。お母さんが亡くなったのです。お葬式の後、スターリングは埋葬される前のお母さんの棺にすがりついて泣きました。セオドラはミルウォーキーへの帰り際に、スターリングを自分の家で預かった方が良いのではないかとお父さんに相談しました。お母さんの亡くなった今となってはスターリングをブレールスフォードに残しておくより、セオドラと一緒にミルウォーキーへ行き、セオドラ夫婦と一緒に暮した方がスターリングの為になると考えたのです。しかしスターリングは反対でした。スターリングはブレールスフォードを離れたくなかったのです。お父さんもセオドラもスターリングの意志を尊重して、スターリングをこのままこの家に残す事にするのでした。
 お母さんの形見の指輪をセオドラが持って帰る事になりましたが、洗面所に置いていたところ、なくなってしまいました。実は光る物に目がないラスカルがそれを盗んで巣に持ち帰ろうとしたところをポーに奪われてしまったのです。スターリングはポーの巣がある教会の鐘楼に登って指輪を取り返そうとしました。スターリングがポーの巣の中を見ると指輪が入っていました。そればかりかポーが拾い集めたスプーンやフォーク、ルアー、眼鏡、ハサミ、コインなど光る物がたくさん入っていたのです。スターリングは指輪とお金をポーの巣から失敬して、指輪をセオドラに返すのでした。
 セオドラはミルウォーキーへ帰っていきました。そして翌日にはジェシカもシカゴへ帰っていきます。ノース家にはとうとうお父さんとスターリングの2人きりになってしまいました。お父さんは仕事で忙しく、スターリングは1人で夕食を食べなければなりません。スターリンクはラスカルと一緒に夕食を食べますが、寂しさは隠せませんでした。そしてスターリングが寝る頃になってもお父さんは帰って来ません。スターリングは寂しくて思わずベッドに入って泣いてしまいました。するとラスカルが巣を抜け出してスターリングのベッドに潜り込んで来たのです。スターリングは「お前もお母さんがいないんだから僕の気持ちがわかるよね」と言ってラスカルを抱きしめのるでした。
第15話 アリスと友達になれたらなあ
 お母さんが亡くなってから一月たちました。心の優しいスターリングは今日も墓地に来ては、町に来た新しい駅長さんのスティーブンソン一家の事、なかでも自分と同じくらいのアリスという少女の事を話しかけます。スターリングはアリスと友達になれたらと思わずにはいられませんでした。それからオスカーたちと森へ出かけ釣りを楽しみます。ところが急に雷鳴が轟き、雲が空を覆い始めました。そして森の中から女の人の助けを呼ぶ声が聞こえてきたのです。スターリングとオスカーが声のした方に行ってみると、そこにはこの町に新しくやってきたスティーブンソンさんのおばあさんのクラリッサが木の根に足を挟まれて動けなくなっていたのです。
 スターリングとオスカーはクラリッサを助けてスティーブンソン家へとクラリッサを送って行きました。ところがスティーブンソン家ではクラリッサがいなくなったので近所の人をかき集めて探しに行くところだったのです。しかも、事もあろうにクラリッサは自分が恥をかきたくないので、スターリングとオスカーに迷子になったのは自分たちで、私はあなた達を助けたと言ってほしいとお願いするのです。スターリングやオスカーは渋々クラリッサの言う通りに、自分たちが迷子になったと近所の人たちに言いましたが、誰も信用しようとはしません。なぜならウェントワースの森はスターリングやオスカーにとって子供の頃から遊びたおしている、いわば自分の家の庭のようなものだという事を近所の人はみんな知っていたからでした。
 翌日、スターリングがお母さんのお墓の前にいると、自分の名前を呼ばれたような気がしました。よく見るとアリスが自分の名前を呼んでいるのです。スターリングはびっくりしてしまいました。アリスは昨日クラリッサがお世話になったお礼にジャムのビン詰めと、アリスが作った花輪を持ってきてくれたのです。そしてアリスはスターリングに「私のお友達になってね」と言って帰っていきました。アリスもブレールスフォードに来たばかりで友達がいなかったのです。スターリングは嬉しくて花輪を持ったまま野原を駆け回ってしまうのでした。
第16話 楽しいパーティーの夜
 ある日スターリングは紐で嘴をグルグルに縛られているポーを見つけます。嘴にはカラスのイタズラに困っていますというクラリッサからの手紙が付いていました。スターリングはスティーブンソン家へ急ぎます。ポーはクラリッサがお花畑を作ろうと畑に種を蒔いたそばからほじくりだして食べてしまったので、怒ったクラリッサがポーを捕まえ嘴を紐で結んでしまったのです。ところがクラリッサはポーがスターリングの友達だという事を知ると驚いてしまい、思いがけないスターリングの訪問をスティーブンソン家の一家あげて大歓迎してくれました。そして森でのお礼にとスターリングとウィラード、そしてオスカーをパーティーに招いてくれたのです。さっそくスターリングはオスカーに報告に行きましたが、オスカーはお父さんの了解がないとパーティーには参加できないと言うのです。そしてオスカーのお父さんは都会からやってきた人の家のパーティーに百姓のせがれが参加しても恥をかくだけだと言って認めてくれません。しかし、夕食の時にその話を聞いたオスカーのお母さんは「この世の中に貧しい百姓の息子だからってやっちゃいけないって事なんかないよ、オスカー。神様はそんなふうに不公平に人間をお作りになるはずがない事くらいお前、学校で習って知ってるだろ」そう言ってオスカーがパーティーに行くように薦めたのです。オスカーは大喜びでした。
 そして翌日の夜、スターリングとウィラード、そしてオスカーはパーティーに参加し、おいしい料理を食べ、夜が更けるのも忘れて歌ったり踊ったりするのでした。
第17話 ラスカルの冒険
 ある晴れた日、スターリング親子はアリスとアリスのお姉さんのフローラを誘ってコシュコノングの湖へとピクニックに出かける事にしました。お父さんはお母さんが亡くなって以来、スターリングが寂しくないように気を遣ってくれており、今日のピクニックもお父さんが言い出したのです。クラリッサおばあさんはアリスのお父さんのジェイムスからピクニックは行かないように固く言われていたのですが、どうしても一緒に行きたがったので一緒に連れて行く事にしました。コシュコノングの湖はとても美しく、湖の畔で歌を歌ったり踊ったりして楽しい一日を過ごしました。たくさんの鳥や魚のいる大自然にラスカルも嬉しそうに飛び回ります。ところがふと気付くとラスカルの姿が見つかりません。みんなで手分けして探していると、ラスカルは崖の下まで降りていました。スターリングとアリスがラスカルを追って崖を降りると、洞窟を見つけました。洞窟に入っていくと、洞窟の壁に絵が描かれていました。その絵はスターリングのお母さんにとてもよく似ており、スターリングは胸を打たれ、お母さんの事を想い出すのでした。みんなは湖に出ると水着に着替えて泳ぎ始めました。スターリングもアリスも泳ぎが得意だったのでラスカルと一緒に湖を泳いで遊ぶのでした。
第18話 森で会ったふしぎな青年
 みんながボート遊びをしていた頃、クラリッサは森の中で丸太小屋を発見しました。みんなが岸に上がってきてから、丸太小屋を訪れます。そこはお父さんの友人だったバート・マーティーが住んでいた小屋だったのですが、10年前に亡くなってしまい今は誰も住んでいないはずでした。ところが丸太小屋には人が住んでおり、その人はお父さんの事を知っていたのです。その人はカールと言ってバート・マーティーの息子でした。カールは自分の父親の10回目の命日を、この小屋で過ごす為に休暇を取ってここにやって来たのでした。カールとすっかり仲良くなったスターリングたちはカールの素晴らしい丸太小屋に案内されます。腹ペコのみんなはそこでカールの釣った鱒をご馳走にしようと食事の準備にとりかかりました。ところが生簀に鱒を取りに行ったスターリングとアリスは運悪く鱒を逃がしてしまうのです。でもラスカルが砂浜の中からスッポン亀の卵を掘り出すのでした。みんなでスッポンの卵焼きを食べてお腹いっぱいです。カールは今度ぜひとも自分が支配人をしているスリーレイクス湖畔のホテルに来てほしいと言って別れます。みんなカールが大好きになってしまいました。そしてカールの言っていたスリーレイクス湖畔のホテルに行ってみたいと思うのでした。
第19話 ラスカルとトウモロコシ
 夏も真っ盛り、お父さんからもらったスターリングの畑にもたくさんの野菜が生りました。大きく育ったサヤエンドウを摘むと新鮮な緑の匂いが香ります。籠いっぱいのサヤエンドウを摘んだスターリングは八百屋のマッコイさんに売りに行き、ちょうど居合わせたハーマンさんにも上手にできたねと誉められ、すっかり気を良くしたのでした。スターリングは野菜を売ったお金を貯金し、カヌーを作ろうと考えていたのです。ところがセントラルパークの森でみんなと遊ぶうちにとんでもない事件が起りました。スラミーたちが覆面をして押しかけ、スターリングやオスカー、アリスをロープで木に縛りつけてしまったのです。スラミーはラスカルをよこせばロープをほどくと言いましたが、スターリングにはそんな気はまったくありません。スラミーはラスカルを2週間だけ貸してくれればいいと言いますが、それでも同じ事でした。とうとうスラミーたちは交渉決裂だと言ってスターリングたちを木に縛りつけたまま帰っていこうとすると、スターリングはラスカルを貸すと言いだしたのです。スラミーたちはラスカルを手に入れるとスターリングたちのロープをほどき喜んで帰ろうとしますが、その時スターリングは大きな音で口笛を吹きました。その口笛を聞いたラスカルはスラミーの腕から抜けだすと、一目散にスターリングのもとに駆けつけたのです。それはスターリングの計略だったのでした。
 オスカーはラスカルへの御褒美に自分の畑のトウモロコシをラスカルに与えました。するとラスカルはトウモロコシを狂ったように食べ始め、ついには自分でトウモロコシ畑に入ってトウモロコシを取って食べてしまうのです。その話を聞いたお父さんは「これは面倒な事になりそうだぞ、スターリング」というのです。お父さんの予感は的中しました。ラスカルはトウモロコシの味が忘れられず夜中に巣を抜け出すと教会のトウモロコシ畑を荒らしていたのです。
第20話 スターリングの悲しみ
 ラスカルのトウモロコシ畑荒しは日増しにひどくなり、とうとう町の人たちの怒りをかってしまいます。動物嫌いのサーマンさんや鉄砲の名人のラペットさんらが犯人探しに乗り出して、その晩トウモロコシ畑で待ち伏せます。困ったスターリングはラスカルの体と自分の手首とを麻紐で結び、ラスカルを部屋の中に閉じ込めてしまいます。でもラスカルはスターリングが寝静まると、麻紐を噛みちぎり、窓から抜け出してまたトウモロコシ畑へと向かって行くのです。夜中に気付いたスターリングはトウモロコシ畑へ向かうと銃声が聞こえてきました。ラスカルは無事逃げれたようでしたがラスカルはサーマンさんに見つかってしまったのです。
 翌日、ノース家に町の人たちが押しかけてきました。サーマンさんやラペットさんはトウモロコシ畑を荒らされた恨みもあり、ラスカルを銃で殺すと言うのです。しかしフートン牧師やコンウェイさんは檻を作ってその中に入れるべきだと言いました。スターリングはラスカルを檻の中に入れる事には反対でしたが、そうでもしないとラスカルは再びトウモロコシ畑を荒らす事になってしまうので、スターリングは渋々承知せざるをえませんでした。
 ラスカルを檻の中に入れなければならなくなった事を知ったアリスは、スターリングにカールの住んでいた小屋でラスカルと一緒に好きな事をして暮せばいいと提案します。しかし1人で丸太小屋に住んでも食べ物はないし、ましてやそれはできない相談でした。フートン牧師と約束してから3日経過しましたが、スターリングはラスカルを閉じ込める檻を作る気にはなれません。お父さんはスターリングになぜラスカルの檻を作らないのかと問いただすと、スターリングはお父さんはそんなにラスカルを檻に閉じ込めたいのかと言って荷物をまとめてラスカルと一緒に泣きながら家を飛び出してしまったのです。「お父さん、長い間お世話になりました。僕この家を出て行きます。森の奥でラスカルと2人で楽しく暮します。どうかお父さんもお元気で、さようなら」と言い残して…
 スターリングは夢中で家を飛び出しましたが、暗い誰一人通らない道をとぼとぼ歩いているうちにすっかり心細くなって、とっても悲しい気持ちになってしまいます。そして気が付くといつの間にかスターリングはお母さんのお墓の前に来ていました。そして誰一人いない場所では寂しくてとても暮せない事を悟ったのです。スターリングがお母さんのお墓の前で寝ているとお父さんが迎えに来ました。そしてお父さんは家に帰ろうと言うのです。スターリングは泣きながらお父さんに謝り、ラスカルと一緒に家に戻るのでした。
第21話 あぶないラスカル
 スターリングはとうとうラスカルの檻作りを始めました。しかしスターリングはあまり気が進みません。そんな夏休みが終わりに近づいたある日、あのカールから素晴らしい手紙が舞い込みます。カールの働くホテルにあらいぐまの親子が住みつき、ぜひラスカルを連れて見に来てほしいと言うのです。ラスカルのイタズラに頭を悩ませていたスターリングはすっかり嬉しくなったのでした。数日後、迎えに来たカールの車でアリスとフローラ、そしてもちろんラスカルを連れてスターリングは楽しい旅に出かけたのです。今回もクラリッサおばあさんは一緒に行くつもりでいましたが、行くのに反対したジェイムスの計略でシカゴに住んでいた時、隣に住んでいた仲良しのアンナおばあさんを連れてきたのです。クラリッサおばあさんはアンナおばあさんと話をする為にブレールスフォードに残らざるをえませんでした。
 カールたちは途中の野原で昼食を取って休憩します。ラスカルは車のクラクションを鳴らしてイタズラするので出発しようとしたところ、ラスカルは車のラジエターの排水バルブを開けてしまい、冷却水が空になっていました。しかし偶然通りかかった車に水を汲んできてもらい、無事に出発する事ができたのでした。ところが気がつくとラスカルがいません。ラスカルは水を汲んできてくれた車のスピードに魅せられて、一緒について行ってしまったのです。車の持ち主も気付きましたが、もう夕方になったいたので道に目印を付けて、そばの木にラスカルを繋いでおく事にしました。しかし夜になってラスカルはミミズクに襲われてしまいます。カールの車がそこを通りかかった時、スターリングは目印を見つけ何とかラスカルを救出するのでした。
第22話 森と湖と動物たち
 ブレールスフォードを出て2日目の夜にホテルノーザネールに着いたスターリングたちは、次の日カールの案内で近くの森へ散歩に出かけます。森の中はカールと犬のジンジャーの友達でいっぱいでした。ビーバー、かわうそ、あらいぐま、鹿、狐。カールはヒューと口笛を吹いて彼らを呼び寄せてみせます。スターリングとアリスはそんなカールに感心するばかりでした。そしてカールたちは屋根をはがしてイタズラしていた小熊のタンガと鬼ごっこをして遊びます。アリスとフローラは最初のうちこそ恐がっていましたが、しだいにタンガと打ち解けて楽しく遊ぶのでした。
 ラスカルは森で出会ったあらいぐまの親子のクレオパトラと遊んで、夜になっても帰って来ませんでした。スターリングは心配してラスカルを探しに行こうとしたその時、ラスカルはクレオパトラたちと一緒に帰って来たのです。クレオパトラは鐘を鳴らして入って来ました。スターリングはラスカルにだってそれくらいはできるはずだと考え、ラスカルに鐘を鳴らせるように仕込みます。ラスカルも最初のうちこそ理解できませんでしたが、クレオパトラが鐘を鳴らしているのを見ると、自分も真似をして鐘を鳴らせるようになるのでした。
第23話 カールの災難
 カールのホテルに来て早くも一週間がたちました。スターリングは森の動物たちと遊んで楽しい時を過ごします。ところが小熊のタンガに大変な事が起りました。ベランダの屋根板をはがしたり、客室に入ってお客を驚かせたりするタンガのイタズラに、経営者であるカールのおじさんが怒ってしまったのです。そして銃を持ちだし小熊に向かって銃を発砲し始めました。カールは慌てて駆けつけます。おじさんはカールのおかげでこのホテルは動物たちの見られるホテルとして繁盛しているが、あの熊だけは許せない、そのうちにお客様に危害を加えるようになると言うのです。そしてさらに発砲しようとするおじさんをとめようとして、カールは足を撃たれてしまいます。傷はたいした事ありませんでしたが、それでもカールは熱を出して苦しみました。おじさんは心配そうに何度も見舞いに来ました。スターリングはおじさんにもうタンガを撃たないでほしいとお願いしますが、おじさんはタンガがお客に危害を加えてからでは遅いと言います。スターリングは動物たちは人間に危害を加えないと反論したその時、森の動物たちがカールを心配してみんな集まってきたのです。おじさんは自分が間違っていた事に気付き、もうタンガを撃たないと約束してくれたのです。スターリングは大喜びでした。そしてスターリングもカールのように動物たちと心が通い合うようになりたいと思わずにはいられませんでした。
第24話 走れ走れぼくらのカヌー
 カールの足のケガはだいぶ良くなりスターリングの作ってくれた松葉杖で歩けるようになりましたが、計画していた1泊の森と湖の探検に行く事はまだ無理です。そこでスターリングに自分の力で探検に行く事を薦めると、スターリングはこの提案に大喜びで賛成し、カールからテントの張り方やカヌーの漕ぎ方など厳しい特訓を受けるのでした。その頃ブレールスフォードではお父さんとクラリッサおばあさんがスターリングたちを迎えに車で出発するところでした。そして翌日、スターリングとアリス、ラスカルを乗せたカヌーはキャンプ地へと向かいます。スターリングとアリスは食料を持って行きませんでした。それは食べる物も自分たちの力で調達しようと考えたからです。しかし、コック長を命じられたアリスは都会育ちゆえに少し不安でした。
 カヌーで川をさかのぼりながらスターリングたちは大自然の景色を満喫しました。そして途中でカヌーをとめて夕食の為の釣りを始めます。しばらくするとアリスの竿に大物がかかりました。アリスから竿を受け取ったスターリングは必死で格闘し、アリスと協力して大きな鱒を釣りあげました。ところが鱒が釣り上げられるとスターリングは大喜びでしたがアリスは突然、大きな声を上げて泣きだしたのです。スターリングはアリスがなぜ泣いているのかわかりませんでした。
 キャンプを張る砂浜に着いた時には夕方になっており、その頃にはアリスもすっかりともとの元気なアリスに戻っていました。スターリングはテントを立てて鱒の塩焼きを作り、アリスは森でブラッドベリーを摘んできてジュースを作ります。夕食の後、スターリングはキャンプファイヤーの火を囲みながらアリスに、なぜ鱒が釣れた時に泣いたのかを尋ねました。アリスは自分の竿に鱒がかかってからスターリングの命令を聞いてそれを実行するのに必死で、鱒がカヌーに釣りあげられた途端に緊張が解けて急に泣き出したくなったと言うのです。それからスターリングとアリスはキャンプファイヤーの火が消えるまで星空を見上げながら語り合うのでした。
第25話 森で見つけた子鹿
 すがすがしいキャンプの朝、さあ御飯の支度です。スターリングは川で鱒釣り、そしてアリスとラスカルは森へ木の実を摘みに出かけます。そのアリスたちの前に大きなメスの鹿が現れたのです。鹿の大きな目は何かを訴え、ラスカルについてきておくれというような仕草を繰り返すのでした。ラスカルは鹿について行き、アリスもラスカルの後を追いかけると、鹿の巣の中に病気の子鹿がいたのです。アリスは子鹿を抱えてスターリングの所に戻りました。しかしスターリングにも子鹿の病気を治す事はできません。子鹿の母親は心配そうに遠くから見守るばかりです。そこでスターリングは母親に何度も説明し子鹿をカヌーに乗せてホテルまで戻り、カールに診てもらう事にしました。カールの診断では子鹿は早く生まれすぎたのでお母さん鹿のお乳を飲む力がなくて弱っているだけでした。そこでスターリングは子鹿を元気になるまで育てる事にするのでした。
 ホテルノーザネールに着いたお父さんとクラリッサおばあさんはスターリングたちに合流しました。そこで熊の親子に出会います。アニーという名の母親の熊は、以前は人間と親しくてホテルにも来ていたのですが、ホテルに来ていた心ないお客に銃で撃たれ、以来人間嫌いになってしまったのでした。スターリングはお父さんにここで暮したいと言います。ここで暮して動物の世話をしてアニーと仲良くなりたいとスターリングは考えていたのです。お父さんはスターリングに「お前がこの森で暮してやろうとしている仕事は立派な仕事だ。だが立派な仕事はそればかりではない。この世には人の為になる大事な仕事がもっともっとあるのではないか? 例えばアリスのお父さんのような鉄道の仕事、フートンさんの牧師、それからスラミーのお父さんのパン屋。みんななくちやならない仕事だ。お前たちが学校で勉強するのは、世の中の事をたくさん知って自分がその中のどの仕事をするか判断する為だと言っていいんだ。今のお前はその勉強の途中なんだ。今のお前の決心が変わらないなら勉強が終わってから始めればいい。それからだってちっとも遅くない。父さんだってそれなら心から賛成できる。わかったなスターリング。それにお前がここで暮し始めたら父さんはどうなるんだ。お前にはカールやラスカルや動物たちがいるけど父さんは独りぼっちだそ」と言うのです。スターリングは自分の事ばかり考えている事に気付き、もう少し学校で勉強を続けようと思うのでした。
第26話 森と湖の夏まつり
 夏休みをスリーレイクスで過ごすスターリングはカールによって色々な事を教えられました。森の中でたわむれる動物たちの喜びはアリスを感動させ、スターリングはラスカルを森に返してあげようと思うようになりました。ラスカルは家に帰れば檻の中に入れなければならないのです。このまま森の中で暮した方がラスカルにとっては幸せではないだろうかとスターリングは考えたのです。子鹿も元気になったのでスターリングはお父さんと一緒に子鹿を母鹿に返してあげる事にしました。岸辺に放たれた子鹿とラスカルは母鹿を求めて森へ駆けて行きます。そして母鹿に出会った子鹿は嬉しそうに森の中へと入って行き、ラスカルもそれについて行きます。スターリングは「さようならラスカル」と叫んで一目散にカヌー目がけて走り始めました。岸辺に着くとお父さんと一緒にすぐにカヌーを出してラスカルを森に残したままカヌーを漕ぎ始めました。取り残されたラスカルは岸辺で鳴き続けます。しかしスターリングは振り返る事なくカヌーを漕ぎ続けました。スターリングはどうしてもどうしても涙が出て仕方ありません。ラスカルはカヌーを追って岸辺を鳴きながら走り続け、とうとうラスカルは湖に入って泳ぎ始めたのです。お父さんはそんなラスカルが見ていられなくなり、カヌーを漕ぐのをやめてしまいました。スターリングも湖に飛び込みラスカルを抱き上げるとカヌーに乗せ、ラスカルを泣きながら抱きしめるのでした。
 その話を聞いたアリスはラスカルがよっぽど悲しかったのだと思いました。スターリングもラスカルが森の動物たちと仲良く暮していくだろうと思っており、まさかあんなに必死になって追いかけてくるとは思っていなかったのです。カールは「森の生活とスターリングとどっちを選ぶか。ラスカルは迷いもせずスターリングを選んだんだよ」と言うのでした。
 ホテルノーザネールでは夏祭りが開かれました。そして祭りのクライマックスの花火が始まりました。スターリングとアリスは2人っきりでボートに乗りながら花火を見上げています。アリスはスターリングに「私、スターリングと友達になれて本当に良かったと思うわ。スターリングは私と友達になれて良かったと思わないの?」と聞きます。スターリングは返事に困り、顔をそらしながら「うん、まあ… そりゃそう思うけど… 男はそんな事、口になんかださないものさ」と言ってごまかしてしまいます。それを聞いたアリスは「ちぇっ! つまんない」と言うのでした。そしてアリスは来年の夏もこうして花火が見られますようにと祈ります。スターリングはアリスと「来年もきっと来ようね」と約束するのでした。森、湖、キャンプ、カヌー、そして色々な動物たち。スリーレイクスでの楽しい想い出を胸にスターリングたちはブレールスフォードに帰っていくのでした。
第27話 首輪と皮ひも
 スターリングはブレールスフォードに着いた早々サーマンさんに出会い、ラスカルを早く檻に閉じ込めろと怒鳴られてしまいます。スターリングはコンウェイさんからもラスカルを檻に入れるように薦められ、ラスカルの檻を作ると考えるとスターリングは憂鬱でした。スターリングはスリーレイクスから帰ってきたその日も食事を作ります。そんなスターリングを見ていたお父さんは家政婦さんを雇おうと言いますがスターリングは反対でした。なぜならまたハケットさんのような動物嫌いの家政婦さんが来るのが嫌だったからです。スターリングは食事は自分で作ると言ってお父さんに家政婦さんを雇わないよう約束させるのでした。
 スターリングは考えあぐねた末、馬具屋のシャドウィックさんを訪ねて行きます。そしてスターリングは檻が完成するまでの間、ラスカルの首輪と丈夫な革紐を作ってほしいとお願いしました。シャドウィックさんは快く首輪を作ってくれましたが、首輪を付けられたラスカルはあまり嬉しそうではありませんでした。そして今夜からスターリングはラスカルに首輪と革紐を付けて一緒に眠るのでした。
第28話 檻のなか
 楽しかった夏休みが終わり明日から新学期が始まります。でも、スターリングはとても複雑な気持ちだったのです。嫌々ながら作った檻ができあがり、冒険とスピードとイタズラが大好きなラスカルを、動物園の動物と同じように檻の中に閉じ込めなければならないのです。スターリングは檻の留め金を付けるのを明日に引き伸ばし、その間に少しでもラスカルを檻に慣れさせようと考えました。そして翌日、ラスカルをお父さんに預けてスターリングは学校に向かいました。久しぶりに会ったクラスメイトの顔。すっかり仲良しになったアリスも同じクラスに編入してきました。しかしオスカーは学校を休んでいました。オスカーが病気ではないかと心配したスターリングとアリスがオスカーの家に行くとオスカーは葉タバコの取り入れを手伝っており、あと10日は学校に行けそうにないと言うのです。それを聞いたスターリングは明日から学校が終わった後でオスカーを手伝う事にしました。そしてアリスもスターリングがオスカーを手伝っている間、スターリングの家で夕食を作ってあげると言うのでした。
 その夜、スターリングは初めてラスカルを檻に閉じ込めました。檻の扉を閉められてもラスカルは最初のうちこそ気付きませんでした。しかし出口がないと知ると檻の中を鳴きながら走り回ります。その鳴き声を聞いていたスターリングはいたたまれなくなってラスカルを檻から出して抱きしめました。ラスカルはどうして僕を檻に閉じ込めるのですかと尋ねるかのように、いつまでもスターリングの腕の中で鳴き続けるのでした。それでもスターリングは心を鬼にして再びラスカルを檻に閉じ込めます。スターリングはラスカルが心配で心配で夜中に何度も目が覚めましたが、どうにか無事にラスカルは朝を迎えてくれたようでした。
第29話 星空をとぼう
 お父さんは仕事で2週間ほど家に帰ってきません。お父さんはスターリングを心配して家政婦さんを雇うと言ってくれますが、スターリングは家政婦を雇う事には反対でした。ハケットさんのような動物嫌いの家政婦さんが来たらハウザーやラスカルが可哀想だったからです。スターリングにとっては家政婦さんに来てもらうよりも、例え自分で食事を作ったとしても、ラスカルやハウザーと一緒に食事を食べれる事の方が嬉しかったのです。
 学校へ行く途中、アリスはケガをした白鳥のヒナを見つけ、通りかかったスラミーに捕まえてもらいます。そして学校へ持っていき、このヒナ鳥を育ててみようかと言うのです。そんなアリスにホエーレン先生は白鳥は渡り鳥なのでケガを治してあげたらすぐに自然に帰してあげなさいと教えます。そしてそんな話からみんながどんなペットを飼っているのか聞き、今度教室に連れて来るように言うのでした。翌日、教室は生徒が連れてきたペットで大騒ぎでした。そしてラスカルはホエーレン先生が釣ってきたザリガニを捕まえると水で洗って上手に食べ始めたのです。生徒たちはとても感心しました。ところがラスカルがみんなの人気者になった事が気に食わないスラミーはラスカルに意地悪をした為、怒ったラスカルはスラミーの手を噛んでしまったのです。放課後、ホエーレン先生はラスカルが狂犬病の危険性がないとわかるまで最低でも2週間は檻の中で閉じ込めておかなければならないと言うのです。そしてスターリングは今日から2週間、ラスカルを檻から一歩も出さない事を渋々約束するのでした。
第30話 ケチケチするな
 スターリングの家を訪ねたホエーレン先生は元気なラスカルを見て狂犬病ではない事を確かめました。でもラスカルを檻から出すのは学校を休んでいるスラミーの様子を見てからと言うのです。そこでお見舞いに果物を持って行く事にしたのですが、ホエーレン先生はなぜか大きなメロンを選んだのです。そしてスターリングに贈り物をする時はケチケチしない方が良い事を教えたのです。ホエーレン先生とスターリングがスラミーをお見舞いに行くとスラミーは手が痛いと言って寝込んでいました。ところがホエーレン先生はお見舞いだと言って大きなメロンを出した途端にスラミーは喜んでその大きなメロンを痛いはずの手で受け取ったのです。スラミーは噛まれたはずの手はすっかりと治っており、学校を休んでいたのも仮病だった事がバレてしまうのでした。
 カールから手紙が届きました。手紙にはカヌーの製作を手伝いに行きたいと書かれていたのです。スターリングはカヌーを作ろうとしていた事を思い出しましたが、ラスカルの首輪や檻を作るのに貯金を使い果たしてしまった為、カヌーを作る材料を買うお金がありませんでした。そこでスターリングはお父さんにサービスの大判振るまいを繰り返し、とうとうお父さんから20ドル出してもらう約束を取り付けて大喜びするのでした。
第31話 花火のあがる日
 遠くに聞こえる花火や賑やかなブラスバンドの音に、何事かとラスカルは顔をのぞかせます。今日は秋の収穫を祝うアイリッシュピクニックの祭りなのです。しかしスターリングはカヌーの材料を買ってしまったのでお金は5セントしか持っていませんでした。スターリングとオスカーは、なけなしのお金を持って会場に向かいました。アイスクリーム、ポップコーン、パイ、風船、回転木馬。会場でのラスカルはすべてのものに心を奪われます。しかし持ち合わせが5セントしかなかったので、スターリングたちは目もくれずにメサジスト教会の婦人会が運営している無料のパイを6人分もらって食べるのでした。途中でアリスとフローラに出会い、4人はフローラのお金で回転木馬や観覧車に乗って楽しみます。観覧車に乗った時、フローラの帽子が風で飛ばされ、高い木の枝に引っかかってしまいました。とても登れそうにありませんでしたが、ラスカルに命じて帽子を取って来させ、無事帽子はフローラさんの手に戻るのでした。また、会場では馬車の競争も行われ、コンウェイさんのドニィブルックがシャドウィックさんの作った馬車を引いて優勝するのでした。
 そしてスターリングとオスカーにとって楽しくて素晴らしい競技が待っていました。賞金5ドルが支払われるパイの早食い競争です。スターリングとオスカーは5ドルの為に競技に出場しますが、スラミーも出場していました。スターリングは必死になって食べましたがスラミーの方が早く食べています。それを見たラスカルはスターリングのパイを自分も食べ始め、ラスカルの手伝いもあってスターリングが一番で食べ終わりましたが、ラスカルが手助けしたという事で優勝賞金の5ドルは2位のオスカーが手に入れるのでした。
第32話 わたり鳥の帰るころ
 ブレールスフォードの町に秋が訪れ、木の葉も色付き始めました。スターリングのカヌー作りは順調に進んでいましたが、船べりの板を曲げる作業がうまくいかず、1週間もとまったままです。そこへ洗濯屋のジムがフローラの相談事を持ってきたのです。それはアリスが助けてあげた白鳥の事なのです。白鳥はそろそろ南の国へ渡らなければならない季節なので放してやるように説明すると、アリスは泣いて嫌がり、とうとう屋根裏部屋に閉じこもってしまったと言うのです。スターリングはスティーブンソン家に行ってアリスを説得しました。もし自分が白鳥だったら自然に帰りたい、そしてラスカルももう少し大きくなったら森に返すつもりだと言います。白鳥にとって自然に返した方が幸せなのか、このままアリスのもとにいた方が幸せなのか、アリスにはわかりませんでした。そこでスターリングは白鳥を放してみてはと言います。もし白鳥がアリスのもとに帰ってくれば、白鳥はアリスのもとで暮す事を望んでいるのだと考えたのです。
 アリスはさっそく実行に移しました。白鳥たちの群れの前で白鳥を放すと、白鳥はアリスのところに戻る事なく、白鳥の群れに向かって飛んで行ってしまったのです。アリスは悲しくて泣いてしまいました。それを見ていたスターリングは、いずれは自分もラスカルと同じように別れが来るのだと思うと、ラスカルと別れる前にどうしてもラスカルをロックリバーで自分の作ったカヌーに乗せてやりたいと思い、カヌーの製作を急ぐのでした。
 船べりの板を曲げる作業もオスカーが名案を思いつきました。それはまっすぐな板を曲げるのではなく、もともと曲がっているチーズの樽をバラして使うのです。それはオスカーのお父さんの入れ知恵でした。オスカーのお父さんも子供の頃、同じようにカヌーを作ろうとして板を曲げるのに苦しみ、チーズの樽を使う事で問題を解決していたのです。スターリングはすっかりと嬉しくなり、オスカーのお父さんにお礼を言ってチーズの樽を集め始めるのでした。チーズの樽はたくさん集まり、カヌーの製作は進み始めました。翌日スターリングは白鳥たちの群れが南に渡って行くのを見ながら、来年あの白鳥がこの町に戻って来る時、ラスカルは自分のもとにいるだろうか? それを考えるとスターリングはこれからの毎日がとても大切なものに思えてくるのでした。
第33話 ドニィブルックの勝利
 カヌー作りの資金に困るスターリングにオスカーはジャコウねずみの毛皮取りでお金をためる事を薦めます。そして2人はサンダース川の秘密の場所に下見に出かけました。ところが秘密の場所にはスラミーがいて、ジャコウねずみの巣を見つけていたのです。仕方なくスターリングたちは他の場所を探していると、ラスカルが沼を見つけました。そこにはとても罠の数が足りないほどたくさんのジャコウねずみの巣があり、スターリングたちは大喜びするのでした。
 その夜、町に大変な騒動が起こります。ジェームズビルの郡大会でドニィブルックが優勝して御機嫌のコンウェイさんと自動車で通りかかったサーマンさんがケンカを始めたのです。そしてフートン牧師の仲裁で馬と自動車の長距離レースで競争を始めようという事になります。ルールは駅前からアルビオン農場まで往復で15マイル。それを馬は1往復、車は2往復してどちらが早いかを競争する事になりました。駅前には多くの町の人たちが集まり、馬と自動車のどちらが早いかを見守ります。そしてスタートが切られました。スタートからドニィブルックは快調に飛ばします。サーマンさんの自動車はスタートでエンジンがかからなかったり、途中でエンジンが止まったりの故障が出ましたが、所詮、馬と自動車では競争にならず、サーマンさんの自動車が勝ってしまいました。馬具屋のシャドウィックさんは車嫌いでドニィブルックを応援していただけに、ドニィブルックが負けて泣き出してしまいます。町の人たちも車の速さを認めないわけにはいかなくなり、馬の時代は終わったと口々に言い合うのでした。
第34話 いじわるな手紙
 カヌーに張る防水用のキャンバスを買う為に、ジャコウねずみ取りの準備を始めたスターリングは、罠の手入れを済ませ胸をはずませて郵便局に行くとフローラと出会います。スターリングもフローラもカールからの手紙を受け取りました。フローラはカールの事が好きだったのでとても嬉しそうです。スターリングは家に戻ると、さっそくカールからの手紙をラスカルに聞かせながら読みました。しかしカールからの手紙には見当違いの事ばかり書いてあるのです。「愛する我が心の友よ、僕は昨日も君の夢を見た。僕は決して忘れない、君の澄んだ瞳、そして白魚のような美しい指…」そこまで読んだスターリングは自分の指を見つめて「おいラスカル、僕の指はそんなに美しいか?」と尋ねてしまいます。スターリングはどうしたのだろうと最後まで読んでみると、それは何とカールがフローラ宛に書いた手紙だったのです。同じ頃フローラも嬉しさに胸をはずませて手紙を読んでいました。「親愛なるちびすけ君、君のマル秘大作戦は進んでいるか? 何事もあまり熱中しすぎると体に毒ですよ。時には気分を変えて木登りをしたり、庭で逆立ちをする事をお薦めします。それにこの頃は朝晩の冷え込みが激しいから、おねしょに気をつけよ」それを読んだフローラはカンカンに怒ってしまうのでした。
 スターリングは慌ててフローラの家に行き、フローラに手紙が間違っている事を告げました。フローラはスターリングが手渡した手紙を読むと安心しましたが、スターリング宛の手紙は怒りのあまりにフローラは丸めて屑かごに捨ててしまっていたのです。フローラはカールのそそっかしさをぼやきましたが、最後まで読めばスターリング宛だとわかったはずなのに、途中まで読んで屑かごに捨ててしまったフローラもそそっかしいとスターリングは言いました。フローラはさっきまでの怒りが嘘のように消えて、また機嫌が良くなるのでした。
 スターリングにマイケル商会から頼んでおいた毛皮の引き取りのカタログの郵便が届きました。スターリングはこのカタログを見てジャコウねずみの毛皮の値段を知ろうと考えていたのです。しかしカタログにはなんと罠に首を挟まれて苦しんでいるあらいぐまの絵が載っていたのです。それを見た瞬間、スターリングはカタログを投げ棄ててしまいました。そして自分が何の罪もないジャコウねずみを捕まえようとしていた事に気付いたのです。スターリングは罠をしまうと、ジャコウねずみを捕まえる事をやめたとオスカーに言います。オスカーはもったいないと言って残念がりましたが、スターリングは今にきっといい事があると言って自分を納得させるのでした。
第35話 カールとフローラ
 ジャコウねずみをどうしても捕まえて売る事のできなかったスターリングは、キャンバスを買うお金をどうしたものかとカヌーを前にしょんぼりしていました。そんな時カールから電報が舞い込みます。それによると今日の夕方、この町にやって来ると言うのです。スターリングやアリスはもちろん、フローラは嬉しくてたまりません。ところがカールは自動車で来る途中の道で、泥濘にタイヤを取られて動けなくなっていた自動車にでくわし、泥だらけになって助けますが、その時に結婚指輪を落としてしまったのです。みんなが待ちくたびれていると、夜になって泥だらけの姿でカールがやって来ました。しかしフローラはそれにもかかわらずカールと抱き合い、フローラまで泥だらけとなってしまうのでした。
 そしてカールはみんなを前に大変重大な事を話し始めました。カールはこれからヨーロッパに行くと言うのです。冬の間、ヨーロッパのホテルを見てまわって勉強し、春にはアメリカに戻って来る予定でした。そしてさらにカールはこの機会にフローラと結婚して2人でヨーロッパを見てまわりたいと言うのです。フローラも大喜びでした。家族のみんなも賛成だったので、急遽明日結婚式が行われる事になりました。
 その夜、カールはノース家に泊まりました。そこでスターリングはカヌーの作り方をカールに教えてもらいます。ところがカールは大切な結婚指輪を落とした事に気付きました。きっと車を押した時に落としたのだと思い、朝早くに探しに行きましたが結婚指輪は見つかりませんでした。結婚指輪がなければ結婚式はできないので、カールはガックリと肩を落としてしまいます。そんなカールを見ていたお父さんはカールに指輪を差し出しました。その指輪はお母さんの全快祝いにお父さんが作ったものだったのですが、お母さんはその指輪を一度もはめる事なく亡くなってしまったのです。カールはお父さんからありがたく指輪を受け取るのでした。
 結婚式はノース家のそばの教会で行われました。カールはお父さんの作った指輪を持って、そしてフローラはフローラのお母さんであるキャサリンのウェディングドレスを着て結婚式に出ます。するとその時、昨日車を押してもらったアッシュさんが教会にやって来てスターリングに結婚指輪を拾ったから返してほしいと指輪を渡したのです。しかし結婚式はもう始まっていました。カールはお父さんからもらった指輪をフローラの指にはめた後、スターリングはフートン牧師にアンコールを申し出て、今度はカールが買った結婚指輪をカールに渡し、カールはフローラの指にはめるのでした。結婚式の後、カールは幸せが2倍になったようだと言って2人で新婚旅行へと旅立っていくのでした。
第36話 待っていた老人
 ジャコウねずみ取りをあきらめたスターリングは、オスカーの薦めでサタデーイーブニングポストという週刊誌売りのバイトを始め、カヌー作りの資金集めに張り切ります。サタデーイーブニングの販売所を経営しているのは指輪を拾ってくれたアッシュさんでした。ジャコウねずみを捕まえる仕事に比べると割の合わない仕事でしたが、仕事のスタートは上々でした。スターリングはラスカルを連れて売り歩いたので、どこへ行ってもラスカルの人気は高く、みんな週刊誌を買ってくれたからです。そんなある日、スターリングが丘の上の古い一軒家に立ちよると、ハリソンという1人の老人がひっそりと暮していたのです。そのハリソン老人はスターリングに1年ぶりのお客さんだよと語りかけるのでした。スターリングはしばらくハリソン老人と話をし、ハリソンも1年ぶりのお客さんにすっかりと気を良くして、週刊誌を3冊も買ってくれたのでした。
 ちょうどその頃、アメリカではスペイン風邪という悪性のインフルエンザが流行していました。そしてこのブレールスフォードもたちまち病人の町と化してしまいます。1週間後にスターリングがハリソン老人の家を訪れるとハリソンさんは1週間の間、スターリングとラスカルに会える事を心待ちにしていました。スターリングはハリソン老人が朝から何も食べていないのを知ると、食事を作ってあげます。そしてハリソン老人がホットミルクを飲みたいと言うので、スターリングは明日ミルクを買ってきてあげる事にしました。ところが翌日スターリングがハリソン老人の家を訪れると、中からフートン牧師が出てきたのです。フートン牧師はハリソン老人が今朝がたスペイン風邪で亡くなった事を告げました。野菜を売りに来たおばさんがハリソン老人の最期を見届けており、おばさんの話しによるとハリソン老人はラスカルの名をうわ言のように呼び続けて、ラスカルが来たらこれをあげてほしいとクッキーを差し出して、そして息を引き取ったと言うのです。それを聞いたスターリングはハリソン老人の棺にしがみついて泣きました。こんな事になるのだったら昨日のうちにミルクを届けてあげるべきだったと思わずにはいられないのでした。
第37話 朝の乳しぼり
 スペイン風邪が流行したので学校はしばらく休みになり、小学生は外出禁止になってしまいます。スターリングもスペイン風邪にかかってしまいましたが、病状はそれほどひどくありませんでした。アッシュさんが24色の絵の具を土産にお見舞いに来てくれたので、スターリングは大喜びでした。スターリングはさっそくラスカルを描こうとしますが、ラスカルはすぐに動いてしまうので、スターリングは怒りだし、ラスカルの代わりにハウザーを描くのでした。
 ある夜、浮かない顔で帰ったお父さんは、相談があるとスターリングを呼び寄せます。10年がかりで育てた、お父さんが経営するノースダコタやモンタナの牧場が台風で全滅し、2000頭以上の牛が死んでしまったと言うのです。そしてその後始末の為、お父さんはしばらく家を開けなければならなくなりました。お父さんのいない間、スターリングは隣町に住んでいる叔父のフレッドのところに行き生活するように言われたのです。スターリングは事情が事情なだけにお父さんの言う通りフレッドおじさんの所に行く事にしました。ハウザーをオスカーに預けると、スターリングはラスカルと一緒にフレッドおじさんの家に行きます。フレッドおじさんの家には妻のリリアンと長男のチャールズ、次男のビルフレット、三男のアルフレットの5人家族で、子供はみんなスターリングより年上でしたが、スターリングは温かく迎えられました。フレッドおじさんの家は農家で、何よりスターリングが驚いたのは夕食が終わるとみんなすぐに寝てしまい、朝4時に朝食を食べると家族全員で牛の乳搾りをする事でした。
第38話 素敵なおもいで
 スターリングはフレッドおじさんの家に来てから楽しい体験が増えていきます。牛乳絞りや豚の餌作り、そして家畜の世話もできるようになり、汗を流して働く喜びを知りました。そんなある日オスカーから手紙が届き、アリスと一緒に遊びに来ると言うのです。スターリングはフレッドおじさんの家で手伝いをしていましたが、その日は休みをもらって、心をはずませて駅へ迎えに行くとオスカーはなんとハウザーも一緒に連れて来てくれたのです。スターリングとオスカーとアリスは3人で楽しく遊ぶのでした。
 ブレールスフォードのスペイン風邪もおさまり、学校も始まりましたが、学校が始まってもお父さんからは何の連絡もありませんでした。しかし、学校が始まって1週間経過した時、お父さんがやって来たのです。お父さんはまだしばらくモンタナで暮す事になりそうでしたが、スターリングの為にブレールスフォードの家にセオドラに来てもらう事にしたのです。スターリングはフレッドおじさんの家で暮したかったのですが、学校を休むと勉強が遅れてしまうので、スターリングは我が家に戻る事にしました。しかしフレッドおじさんの家での生活を通して働く事の素晴らしさを体験するのでした。
第39話 忘れられた誕生日
 今日はスターリングの誕生日です。1週間ぶりで学校へ行ったスターリングはホエーレン先生に今日から12歳になった事と、おじさんの農場での体験を得意げに報告するでした。その上ミルウォーキーからセオドラが帰って来るのですから嬉しくてたまりません。そして久しぶりにオスカーとアリスと一緒に帰るのですが、途中、銀行から出てきた浮かない顔をしたお父さんと出会います。セオドラがミルウォーキーから車でやって来ましたが、教会の前でサーマンさんの車に追突され、セオドラとサーマンさんは口汚くののしりあいを始めてしまいます。フートン牧師とスターリングの仲裁で何とかケンカはおさまりましたが、スターリングはアリスにセオドラは上品で美人なお姉さんだと言っていただけに、大恥をかいてしまうのでした。
 家に入ったセオドラは居間のカヌーを見てスターリングを叱りました。居間の絨毯が傷付くと言うのです。セオドラがカヌーを外に出せとしつこく言うので、スターリングは「姉さんはお母さんじゃないんだ。この家で命令できる権利なんかないんだ。僕に命令できるのはお父さんとお母さんだけだ。お父さんは許してくれたんだし、お母さんはもういないんだ。姉さんはここにいない人だし、僕はお母さんが亡くなってから僕はここでずっと1人で…」と言って泣き出したのです。セオドラは「ごめんなさい、私が少し言い過ぎたわ。私にはお母さんの代わりはとってもできないけど、私がいる間はいくら甘えてもいいわ」と言ってスターリングを抱きしめるのでした。
 今日はスターリングの誕生日でしたが、セオドラはその事をすっかりと忘れていました。スターリングに指摘されてセオドラは豪華な料理を作ってお父さんの帰りを待ちます。ところがお父さんもスターリングの誕生日を忘れていたのです。夜遅くに帰って来たお父さんはその事を思い出し、スターリングに懐中時計をプレゼントしました。その懐中時計はノース家の長男が代々受け継いできたもので、お父さんもおじいさんからもらったものでした。しかも懐中時計の紐は、今は亡きお母さんの髪を編んだものだったのです。スターリングはベッドに入ると懐中時計を握り締めました。そして今まで自分の誕生日を忘れた事がなかったのに、事業がうまくいっていない為に誕生日も忘れてしまったお父さんを守って下さいとお母さんに語りかけるのでした。
第40話 初雪の夜
 12月になってもお父さんの事業は良くなる気配がなく、お父さんはモンタナに行ったまま何日も帰ってきません。スターリングは事業がうまくいっていないのを感じており、セオドラに家にお金がないなら中学校には行かずに働くと言います。セオドラはそんなスターリングの優しさに胸を打たれ、家に中学校に行くお金がなくても、私が中学校に行かせてあげると言うのでした。
 ある日スターリングが学校から帰って来ると、ラスカルの檻が開いたままになっておりラスカルはどこにも見えません。実はコンウェイさんの娘のマーサがラスカルと遊ぼうとして檻の扉を開けたところ、ラスカルが逃げてしまっていたのでした。ところがそれを聞いたサーマンさんはチャンスと思って鉄砲を持ってラスカルを探し始めたのです。サーマンさんはラスカルに畑を荒らされた事を恨みに思ってラスカルが逃げだしたのをいい事に、ラスカルを帽子の毛皮にしようと考えていたのです。スターリングはサーマンさんをとめようとしましたが、サーマンさんは聞く耳を持ちません。しかしコンウェイさんも駆けつけ、サーマンさんをとめたのでサーマンさんは渋々帰っていくのでした。
 夜になってもラスカルは帰って来ませんでした。ところがお父さんが車で家に戻る途中、道の真ん中にいたラスカルを見つけてくれたのです。危うくお父さんはラスカルをひいてしまうところでした。その晩は初雪の降った寒い日でした。でも、スターリングの心はとても暖かいのでした。
第41話 めずらしい患者
 ブレールスフォードの町にも厳しい冬がやって来ました。いつもポーとケンカするラスカルは今日はなんだか元気がありません。ミルクや大好物の角砂糖をあげても少しも食べてくれないのです。どうやら急に寒くなった為、病気になってしまったらしいのです。けれども困った事にブレールスフォードには獣医がいません。心配でたまらないスターリングはゲイン先生に診てもらう事にしました。しかしそのままラスカルを連れて行っても診てもらえないと思い、オスカーの入知恵でラスカルを隠して、いかにもスターリングが病気なように見せかけて、看護婦のリーランドさんにお願いします。リーランドさんは体温を測っておいてと言って体温計を渡しますが、スターリングはもちろん、オスカーもアリスもあらいぐまの体温の計り方を知りませんでした。患者があらいぐまだと知るとゲイン先生はスターリングを追い返そうとしますが、スターリングがあまりに一生懸命お願いするのでゲイン先生は渋々ラスカルを診察するのでした。
 お父さんが家にいるようになったのでセオドラはミルウォーキーに帰ってしまいました。その日の夜もスターリングはラスカルの看病をしていると、ラスカルが自分で箱から抜け出して元気に歩きだしたのです。スターリングは大喜びでした。そしてそれから2〜3日後にはラスカルはすっかりと元気になってイタズラも再開し、スターリングはカヌーのキャンパスを買う為にアルバイトに励むのでした。
第42話 もうすぐクリスマス
 もうすぐ冬休み、そしてクリスマスがやって来ます。スターリングやアリスたちはクリスマスプレゼントを下見にヘンリックさんの店に行きました。オスカーはハンカチ、アリスはマフラーを見つけました。スターリングも手袋をお父さんに送ろうと考えましたが、手袋は5ドルもしたのでスターリングには5ドルのあてがまったくなく、どうしようかと悩んでしまうのでした。
 家に帰ったスターリングたちはさっそくクリスマスツリーの準備をしますが、ラスカルが問題でした。というのはラスカルは光る物に目がなかったので、クリスマスツリーの飾りつけを見るとメチャクチャにしてしまうのは目に見えていたのです。仕方なくスターリングは家の中に檻を作り、クリスマスツリーをその檻の中に入れる事にするのでした。
 シカゴの大学に行っているジェシカも久しぶりに帰って来る事になりました。さらにスターリングはジェシカから10ドルを送ってもらったのです。スターリングはお父さんへ手袋を買おうと決心して再びヘンリックさんの店へ行きましたが、スターリングが目をつけていた手袋は売り切れていました。注文すればクリスマスまでには間に合うと言われたのでスターリングは手袋を注文して店をあとにするのでした。
 クリスマスの2日前になってジェシカが帰って来ました。スターリングはジェシカが家に入る前に、何を見ても怒らないでとお願いします。セオドラの時はカヌーを見て怒られたので、ジェシカの時にはスターリングは先手を打ったのでした。ジェシカは檻に入ったクリスマスツリーには怒りませんでしたが、さすがに居間のカヌーには文句を言いました。しかしジェシカはラスカルまで檻に入れられている事を知るとスターリングに同情を示し、それ以上何も言いませんでした。
第43話 すばらしい贈り物
 町は一面の銀世界。そして今日は待ちに待ったクリスマスイブ。スターリングはみんなからのクリスマスプレゼントが楽しみで仕方ありません。ラスカルやハウザーも嬉しそうです。ところがお昼過ぎにお父さんへのプレゼントの皮の手袋をヘンリックさんの店に取りに行ったのですがまだ届いていないと言うのです。そこで困ったスターリングは馬そりでヘンリックさんと一緒に革細工職人のギルビイさんを訪ねるのでした。ところがギルビイさんの家では娘のリッチが病気で苦しんでおり、その看病の為、革細工はようやく完成したばかりでした。しかしギルビイさんの家は町から遠く離れており、医者を呼びに行く事ができなかったので、スターリングは長男のビリイと一緒に馬そりに乗ってゲイン先生を呼びに行く事にしました。ところが馬そりはヘンリックさんが使うのでビリイはゲイン先生を自分の家に呼ぶ手段がありません。そこでコンウェイさんにお願いしてドニィブルックを借りる事になったのです。ドニィブルックの引く馬そりでギルビイさんの家に向かったゲイン先生はリッチを診察しました。リッチは肺炎になりかけていましたが、ゲイン先生に薬をもらったおかげで、もう大丈夫そうでした。
 その夜、スターリング家ではクリスマスプレゼントの交換が行われます。スターリングからはラスカルにキャンディー、ハウザーには首輪。そしてお父さんには皮の手袋をプレゼントします。お父さんからスターリングへのプレゼントはスケート靴、ジェシカからスターリングのプレゼントはカヌーに張るキャンバスだったのです。スターリングは大喜びでした。
 スターリングはジェシカが学生なのに、なぜ18ドルもするキャンバスを買う事ができて、しかもその前には10ドルも送る事ができたのか不思議に思いました。ジェシカはシカゴジャーナルに小説を投稿して掲載され、原稿料をもらっていたのです。スターリングやお父さんはシカゴジャーナルに掲載されたジェシカの小説を読み、ジェシカが小説家になったと大喜びするのでした。
第44話 氷の上の戦い
 冬になってから眠い顔ばかりしていたラスカルは、このところ金網をゆすって出してくれと大騒ぎです。それもそのはず、スピードの大好きなラスカルがスケート遊びの虜になってしまったのです。アリスはシカゴにいた時、スケートを習っていたのでとても上手に滑れました。スターリングはあまりスケートをした事がなかったので最初のうちこそ下手でしたが、クリスマスプレゼントにもらったスケート靴をはいてアリスに正しい滑り方のレッスンを受け、みるみる上達していたのです。
 ジェシカはシカゴへ帰る事になりました。スターリングはジェシカに、もしもお父さんが学費を送る事ができなくなったらどうするのか尋ねました。ジェシカはお金を送ってくれなくても大学を続けると答えます。そしてお父さんの事業が今はうまくいっていなくても、きっとお父さんはこの苦境を切り抜けると言うのです。それを聞いたスターリングはジェシカを少し見直すのでした。
 スケート遊びに向かったスターリングはスラミーたちに取り囲まれ、ラスカルがひどい目に遭っているところをオスカーとそのお父さんのハーマンに助けられました。オスカーは一緒にそり遊びをしないかとスターリングを誘いますが、スターリングはアリスとスケートをする約束をしていたので断ってしまいました。スターリングがオスカーと別れた直後、オスカーとハーマンの会話が遠くから聞こえてきました。オスカーはハーマンにスケート靴を買ってくれるようにお願いしていたのですが、そっけなく断られてしまったのです。オスカーはスターリングやアリスと同じようにスケート遊びをしたかったのですが、スケート靴を買ってもらえなかったのです。それを知ったアリスはフローラの使っていたスケート靴をオスカーにプレゼントしようとしましたが、オスカーは受け取りません。オスカーは来年までに自分でスケート靴を買おうと決心していたのです。スターリングも自分がオスカーと同じ立場だったら同じ事をしただろうと思わずにはいられないのでした。
第45話 お母さんの平手うち
 厳しい冬のある日、どす黒い雲が広がり吹雪を呼びそうな空模様に学校は早引きとなりました。オスカーは吹雪で自分の家まで帰れそうになかったので、スターリングと一緒にスターリングの家に行きカヌー作りを手伝います。窓の外は吹雪が強まり雪はずんずん積もっていきます。夜になってもお父さんは帰ってきませんでした。スターリングは車でマジソンへ仕事に出かけたお父さんの事が心配でなりません。お父さんは吹雪を避けてどこかで避難しているに違いないと思う事にしました。
 一方お父さんは、どうしても今日中にデイビットさんに届けなければならない書類があったので、マジソンから無理をして車を走らせていました。しかし吹雪の為、車はとうとう立ち往生してしまい、お父さんはブレールスフォードの町まで歩き始めますが、吹雪と寒さの為にお父さんはとうとう倒れてしまったのです。
 朝になってもお父さんは帰ってきません。心配になったスターリングはコンウェイさんに頼んでドニィブルックの引く馬そりでお父さんを探しに出かけました。すると道端にお父さんの車が雪に埋もれていたのです。お父さんはここから歩いて町に向かったに違いないと考え、あたりを探し回りますが、突然ドニィブルックが動かなくなってしまいました。ドニィブルックはお父さんが目印の為に立てた僅かな布きれを発見したのです。スターリングは腰まで雪に埋もれながら目印の場所まで向かうと、1メートルも積もった雪の中にお父さんは倒れていたのです。お父さんはゲイン先生に診てもらい何とか助かりましたが、しばらくは動けそうにありません。スターリングはお母さんがお父さんを救ったに違いないと思わずにはいられないのでした。
第46話 お父さんのきびしい顔
 吹雪に遭っても負けなかったスターリングのお父さんでしたが、今度は疲労が重なって病気になってしまいます。スターリングはゲイン先生に当分の間お父さんを働かさないようにと注意されてしまいました。気の強いお父さんはちょっとでも目を離すと今にも動きだしそうなのです。そこへ心配して駆けつけてくれたアリスが、お父さんの看護婦兼監視役をクラリッサおばあさんに頼んでくれたのです。クラリッサおばあさんはこころよく引き受けてくれましたが、クラリッサおばあさんはそそっかしかったのでスターリングは心配になるのでした。
 スターリングが学校に行っている間にデイビットさんがお父さんを訪ねてきました。デイビットさんはお父さんに悪い知らせを持ってきたのです。スターリングが家に戻るとお父さんは打ちひしがれたように落ちこんでいました。お父さんは事業の立て直しに失敗し、とうとうノースダコタやモンタナの牧場を手放さなくてはならなくなったのです。お父さんは銀行からお金を借りて農場や牧場を増やしていったので、それが台風で潰れた今、お金のやりくりがつかなくなったのです。最悪の事態でした。スターリングは家に来ていたクラリッサおばあさんとアリスの前で泣きました。後になって考えるとスターリングはアリスの前で泣いた事がとても恥ずかしく思ってしまいました。スターリングが泣いたのはお父さんが事業の立て直しに失敗したからではなく、今まで一度もあんな寂しそうなお父さんの様子を見た事がなかったからでした。そしてスターリングは再びフレッドおじさんの家に2週間ばかり預けられる事になったのでした。
第47話 立ち上がった仔牛
 お父さんの事を心配するスターリングをフレッドおじさんは、くよくよ考えていても始まらないさと励ましてくれます。そしておじさんの家ではリリアンやチャールズたちが温かく迎えてくれるのでした。ちょうどその頃、小さな事件が起ころうとしていました。牛のルージイのお産が近づいていたのです。チャールズたちは生まれてくる子牛が雌牛であるようにと祈ります。生まれてくる子牛にはアーネストが既にロージイと名前を付けていました。スターリングはメスだったらロージイでも構わないが、オスだったらどうするのかと尋ねると、オスだったら殺して食べてしまうと言うのです。オスはミルクを出さないし、乳牛は大きく育てても肉はあまりおいしくないので売れないのです。スターリングは可哀想だと思いましたが、どうしようもない事でした。そしてスターリングもメスが生まれてくるようにと祈るのでした。
 その日の夜中にロージイは生まれました。みんなの願い通り雌牛でした。フレッドおじさんは子牛の立ち上がるところをスターリングに見せようと、夜中の2時にスターリングを起こします。スターリングは眠い目をこすりながら牛小屋に行くと、そこには生まれたばかりのロージイが、必死に足をふんばって立ち上がろうとしている姿がありました。そして見事に立ち上がったのです。それを見たスターリングはとても感動し、涙がこぼれ落ちそうになりました。そして自分もお父さんの事で落ち込んでいるばかりでなく、ロージイのように頑張らなければいけないと決心するのでした。
第48話 じゃじゃ馬ならし
 スターリングはフレッドおじさんの家に来てからも学校の授業に遅れまいと勉強を続けていましたが、途中でやめてしまいます。スターリングは中学校に行きたかったのですが、お父さんが破産したら中学校には行けなくなってしまうので、もう勉強する必要はないと考えていたのです。その頃ノース家にはスターリングを呼び戻す為にセオドラとアーサーが来ていました。セオドラはお父さんに事業の状況を聞くと、何とか破産はまのがれたが残ったのは、ここから100キロほど離れた所にあるビームストンの小さな農場が1つだけで、この家も手放さなければならないと言うのでした。
 厳しい冬の峠も過ぎて寒さのゆるんだある日、スターリングはフレッドおじさんからお父さんが迎えに来る事を知らされます。ところが翌日迎えに来たのはセオドラでした。スターリングはお父さんの仕事があまりうまく良くない事を感じるのでした。でもフレッドおじさんの言うように、くよくよ考えるよりも力強く生きようと決心したスターリングは、家に帰る前に馬のテディを乗りこなしてやろうと意気込みます。最初のうちこそテディはスターリングの言う事を聞きませんでしたが、しだいにスターリングはテディを乗りこなすようになるのでした。
 明日、スターリングが帰ってくる事をセオドラから聞いたオスカーとアリスはスターリングをびっくりさせようと林の中にかまくらを作る事にしました。オスカーとアリスは3人が十分に入れる大きなかまくらを作って、スターリングの帰りを楽しみに待つのでした。
第49話 雪の家
 久しぶりにスターリングは家に帰り、学校へと行きます。事業の再建に取り組むお父さんは1人ビームストンの農場へ行く事になりました。しかしビームストンには学校がなかったのでお父さんは、一緒に農場に行って働きたいと言うスターリングに、ミルウォーキーのセオドラの所に行くよう命じます。お父さんの助けをしたいと願うスターリングは悔しくてなりません。そして思い余って家を飛び出してしまいます。ところが行くともなしに入った林の中でオスカーと出会うのでした。
 スターリングはかまくらの中でオスカーとアリスに、もうブレールスフォードで暮す事はできなくなった事を告げました。スターリングは春になったらミルウォーキーから中学校に通うか、ビームストンの農場で働かなければならないのです。オスカーもアリスもスターリングが離れ離れになる事を悲しみました。でも、いつかきっとまた逢おうとかまくらの中で3人で手を取り合って約束するのでした。
 スターリングはミルウォーキーに行く事を決心しました。その事をお父さんに報告に行くとお父さんはスターリングに言います。「嬉しかったよスターリング。お前がさっきお父さんと一緒に暮したいと言った時、お父さんだって本当はお前と暮したい。だが、それを願う事は今の状況ではお父さんの単なるわがままにしかならない、お前には勉強してもらわねばならない。みんなお父さんが悪いんだ。2つの農場が台風でやられたのが原因だったとはいえ、やっぱりお父さんの経営方針の間違いが今度の事態を招いたんだ。お父さんにたった1つ残された農場でお父さんは1から出直すつもりで働くよ。その時お前がそばにいたらどれだけ心の支えになるか。でも、でもそれは許されない、お父さんの為にお前を犠牲にする事は絶対に許されない」「僕やっぱりお父さんと…」「ダメダメ、いったん決めた事を男はそんなに簡単にひっくり返してはいけない。今お父さんが言っている事は結局は愚痴に過ぎないんだ。いいかスターリング、4月からはお前は一人前の大人と同じ心構えで生きていかなくてはならない。辛い事もあるだろう。でも負けるなよ。4月までお父さんはここに… このところお前の面倒をまったく見てやれなかったが、その分取り返すつもりでいるからな」「お父さん!」そう言って2人は抱き合って涙を流すのでした。
 その日から春の訪れを告げる雨が降り始め、かまくらは解けて無残な姿をさらします。でもスターリングは3人がかまくらの中で交わした神聖な約束は決して破るまいと思うのでした。
第50話 カヌーの進水式
 春がとうとうやって来ました。そしてスターリングはあと1ヵ月でブレールスフォードとお別れです。スターリングはそれまでに作りかけのカヌーを完成させようと急ピッチで建造を進めました。スターリングはオスカーに手伝ってもらってカヌーにキャンバスを張ります。夜になったのでオスカーは帰ってしまいましたが、今度はお父さんが手伝ってくれることになりました。思いのほか早くキャンバスを張り終わる事ができ、あとは内側にニス、外側にエナメルを塗れば完成です。
 このところラスカルは落ちつきをなくしてきました。ジムやお父さんは春が来たからだと言います。すっかりと大人になったラスカルは春が来たのでお嫁さんが欲しいのだと言うのです。あと1ヵ月もすればスターリングはラスカルと別れなければなりません。ミルウォーキーは大都会なのでスターリングを連れていけないのです。しかしスターリングにはどうしてもラスカルと別れなければならない日が来る事が信じられませんでした。
 カヌーはとうとう完成し、3月半ばのある晴れた日にサンダース川でカヌーの進水式が行われる事になりました。カヌーを川に浮かべ、まずスターリングが試乗し、そしてアリスとオスカーが順に乗ります。そしてこのカヌーは半月後には君の物だとスターリングはオスカーに言います。スターリングはミルウォーキーにはカヌーを持っていけないのでオスカーにあげるつもりにしていたのです。それを聞いたオスカーは大喜びでした。スターリングも半年かかって自分の手で完成させたカヌーを漕ぐ事ができ、とても満足するのでした。
第51話 残された一週間
 スターリングが1週間後にミルウォーキーに行ってしまうある夜の事、ラスカルの檻にメスのあらいぐまがやって来ました。スターリングはもしラスカルを檻から出したらメスのあらいぐまと一緒にウェントワースの森に行ってしまうかどうかお父さんに尋ねました。お父さんは「行ってしまうかもしれんな、それが動物の本能だからな」と答えます。スターリングはラスカルを檻から出してみようと考えました。しかしその時ハウザーがメスのあらいぐまを見つけて追い払ってしまったのです。お父さんは「ハウザーは無粋な事をするなあ」と言うのでした。
 次の日の朝早くにサーマンさんが押しかけて来ました。サーマンさんはラスカルにニワトリを襲われたと言うのです。しかしラスカルは檻に入ったままでした。サーマンさんはニワトリを襲ったのはラスカルでないことを認めましたが、それでも今夜からニワトリ小屋を見張り、ラスカルだろうと何だろうと見つけしだい鉄砲をぶっ放すと言い残して帰っていきました。スターリングとお父さんはサーマンさんのニワトリ小屋を襲ったのは昨日のあらいぐまではないかと話し合うのでした。
 スターリングとオスカーとアリスの3人は自転車でスターリングの知っている秘密の釣り場所へ向かいました。そこはスターリングがお母さんの為に大ナマズを釣った場所だったのです。オスカーはこうして3人で自転車に乗るのもこれが最後だと思うと感慨深くなるのでした。スターリングはオスカーとアリスにラスカルをウェントワースの森ではなくコシュコノング湖の向こう岸に放すつもりだと言います。ウェントワースの森に放すと人間に慣れたラスカルは再び町に出て来てサーマンさんに鉄砲で撃たれる可能性があったからです。アリスはラスカルを放す時、一緒について行きたいと言いますが、スターリングは1人で行きたいと言い、アリスの提案を断ってしまいます。スターリングはラスカルとの別れは自分一人でしたいと言いましたが、本当はラスカルと別れる時にきっと泣いてしまうであろう泣き顔をアリスに見られたくなかったのでした。
第52話 別れと出発の時
 いよいよラスカルを森へ帰す日がやって来ました。アリスはラスカルに最後のお別れを言う為にスターリングの家までやって来ましたが、スターリングの部屋は荷物をすべてミルウォーキーに送ってしまっており、がらんとした風景に、アリスはいよいよスターリングもミルウォーキーへ行ってしまうのだなと思うと、寂しさを覚えるのでした。アリスはラスカルとの別れについて行く事は許してもらえませんでしたが、サンダース川までついて行く事にしました。自転車に乗りながらアリスはスターリングに、もしもラスカルがスターリングと別れようとしなかったらどうするのと聞きます。スターリングはそれでも別れると答えます。ラスカルにとってラスカルを自然に帰す事が一番幸せだとスターリングは考えていたのです。
 サンダース川でアリスと別れた後、スターリングは自分で作ったカヌーに乗って川をさかのぼります。そしてロックリバーへ出るとスターリングはラスカルとの1年間の楽しく過ごした想い出にひたりながらカヌーを漕ぎました。ラスカルと出会った時の事、スリーレイクスでラスカルを置いてきぼりにした時の事など… 湖でカヌーをとめたスターリングはラスカルを説得しました。お前はここで生きていくのが一番幸せなんだから、スリーレイクスの時のように追いかけてくるんじゃないぞと。夜になったらいよいよラスカルとお別れです。それまでスターリングはラスカルに語り続けるのでした。
 いよいよ夜になりました。スターリングはラスカルのお嫁さんを探して岸に近づきました。するとメスのあらいぐまが岸にやって来たのです。スターリングはラスカルに言います。「いいんだよラスカル、行っていいんだ。僕らの別れる時がとうとう来たんだラスカル。行ってお前の幸せをつかめ。行けラスカル」スターリングがそう言うとラスカルはカヌーを降りて湖を泳いで岸に向かい始めたのです。「そうだ、それでいいんだラスカル。さようならラスカル、幸せになれ」スターリングは目にいっぱい涙をためてそうつぶやきました。ラスカルは岸にたどり着くと、メスのあらいぐまと楽しそうにしています。スターリングは「さようならラスカル、達者で暮せよ」そう叫ぶとカヌーを反転させ泣きながらカヌーを必死になって漕ぎました。スターリングはたまらない気持ちでラスカルとの最後の別れの場所から離れるのでした。
 次の日、お父さんとスターリングはお母さんのお墓に挨拶を済ませると、駅に向かいました。駅にはオスカーやアリス、クラリッサおばあさんも見送りに来ていました。スターリングとオスカー、アリスの3人はいつまでも仲良くお話をしていましたが、いよいよ汽車がやって来ました。スターリングは別れを惜しみながらも夏休みに再会を約束して汽車は走り始めるのでした。
 スターリングは1人で出発しました。お父さんやオスカー、アリスと別れてミルウォーキーでの新しい生活を始める為に出発しました。この1年でスターリングは確かにたくましくなりました。ラスカル、いつまでも元気で暮せよ。さようならオスカー、さようならアリス。みんないつまでもお元気でまた会いましょう。僕も元気で頑張ります、みなさん。スターリングの想い出を乗せて汽車はミルウォーキー目指して走り続けるのでした。
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