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家なき子レミ  原作

原作本の紹介 家なき子レミ
原本 サン・ファミーユ
発行年 1876年
原作者 エクトル・アンリ・マロ
フランス人(1830年〜1907年)
訳書名 家なき子
出版社 河出書房新社 他
翻訳者 福永武彦・大久保輝臣 他

原作の補足説明
 家なき子の日本語翻訳本は河出書房新社以外にも岩波書店や偕成社から発売されているが、ここでは一番入手の容易な河出文庫版を紹介する。おそらくまだ絶版になっていないと思われるが、本屋に置いていることは少なく、取り寄せる必要があるだろう。
アニメとのストーリーの違い
 アニメと原作では、まったくと言っていいほど異なります。基本的な人物構成と、前半の基本的なストーリー展開は同じですが、後半のストーリーは、別の作品と言って言いくらいに違います。アニメと原作の同じところというのは、レミが実は捨て子で、バルブランに売り飛ばされてしまい、ヴィタリス一座と共に旅を続けるが、冬の雪山でドルチェとゼルビーノが狼に襲われて殺されてしまい、そしてヴィタリスも亡くなってしまうというくらいです。しかも上に挙げたところだけでもアニメと原作では違いがあり、例えばアニメではレミがバルブランの手によって人買いに売り飛ばされそうになるところをヴィタリスさんに助け出され、レミは自分の意思によってヴィタリスさんと旅をする事になりますが、原作ではレミはバルブランによってヴィタリスさんに売り飛ばされ、そしてヴィタリスさんはむりやりレミを連れて行ってしまうのです。さらに冬の雪山でもアニメではレミが狼に襲われそうになったのを助けようとしてドルチェとゼルビーノは命を落としますが、原作ではレミが火の見張りを怠って眠りこけている隙にドルチェとゼルビーノが山小屋を抜け出し、そして狼に襲われているのです。この時、アニメではジョリクールは一命を取り留めていますが、原作ではその数日後に亡くなっています。そしてヴィタリスさんが亡くなった時も、アニメではレミとヴィタリスさんの感動的なやりとりがありますが、原作では飢えと疲れと寒さで二人は屋外で寝てしまい、レミが気付いた時には知らない家のベッドで寝かされており、そこでヴィタリスさんが凍死して警察が運んで行ったという事を知らされたというありさまです。
 このようにアニメと原作とでは違いは多く、前半では4〜8話は完全なアニメオリジナル(それ以外は原作に忠実という意味ではない)、後半はヴィタリスさんの亡くなった後はアニメオリジナルとなっています。そこで原作を知らない人の為に、アニメと違うところを重点的に簡単にストーリーを紹介します。
原作のストーリー
 レミは8つになるまでシャバノン村でお母さんのアンヌと2人で貧しいながらも幸せに暮らしていました。ちなみにアニメで登場した妹のナナはいません。しかしパリへ出稼ぎに行っていたお父さんのジェロームがケガをして家に戻ってくると、レミは自分が捨て子である事を知らされ、ヴィタリスさんに40フランで売り飛ばされ、ヴィタリスさんにむりやり連れていかれてしまいます。アニメのようにレミが自分の意志でヴィタリスさんについて行ったのではありません。しかし原作でのヴィタリスさんもアニメと同様に悪い人ではなく、旅芸人を続けながらレミは字を学び、音楽を学びます。
 ユセル、ボルドーと旅を続けたヴィタリス一座はトゥルーズで警官といざこざを起こし、ヴィタリスさんは裁判にかけられ禁固2ヶ月で牢屋に閉じ込められてしまいます。レミは悲観にくれますが、ちょうどその時イギリスから股間節炎でピレネー山地へ温泉治療に来ていたアーサーとその母親のミリガン夫人と知りあい、アーサーと仲良くなったレミはヴィタリスさんが解放されるまでの2ヶ月間、アーサーたちと白鳥号でガロンヌ川をさかのぼる船の旅を続けます。ミリガン夫人にはアーサーより年上の子供がいたのですが、そのこが生まれて6ヶ月になる頃、ミリガン夫人は夫と共に重い病気になって意識朦朧となり、気付いた時には夫は亡くなり子供は行方不明になっていたのです。ミリガン夫人は夫の弟であるジェームズに頼んで子供の行方を探してもらいましたが見つかる事はなく、その7ヶ月後アーサーが生まれました。しかしアーサーは生まれ付き体が弱く、医者からあとわずかの命と言われつつ今まで生き延びてきたのでした。
 ヴィタリスさんと再会したレミはミリガン夫人と別れ、再び旅を続けますがパリへ向かう途中、雪の山越えで吹雪の遭遇し、山小屋で休んでいる時に狼に襲われ、ゼルビーノとドルチェが殺されてしまいます。そしてジョリクールも肺炎にかかってしまい、看病の甲斐なく亡くなってしまいます。カピだけでは芸が成り立たないと判断したヴィタリスさんは、ひとまずレミをパリに住むガロフォリに預けようとしますが、ガロフォリは子供を買い取って奴隷のようにこき使う男と知り、再びヴィタリスさんはレミを連れてパリの町をあてもなくさまよいます。しかしおりからの寒さと飢えと疲れの為、ヴィタリスさんは民家の玄関先で倒れてしまい、そのまま亡くなってしまいます。
 レミが気付いた時には知らない家のベッドで寝かされており、ヴィタリスさんが亡くなった事を知らされます。レミは途方に暮れますが、その民家はアキャンという名の植木屋で、子供もたくさんいた事からレミとカピを引き取ってもらえる事になりました。レミはそこで家族同様の扱いを受け、幸せに暮らします。ところが幸せは長くは続かず、2年後に雹が降った事がもとでアキャンさんは破産し、子供たちはバラバラに親戚のもとへ、そしてアキャンさんは5年間刑務所に閉じ込められる事になってしまいます。レミは再びカピを連れて芸で身を立てながらバラバラになった子供たちの連絡役としてパリを離れて町から町へ渡り歩こうと考えます。そんな時、2年前にガロフォリの家で知り合ったマチアに偶然出合い、マチアはバイオリンやコルネットが演奏できた事から、レミはマチアと一緒に旅を続ける事にしました。
 レミはヴィタリスさんに教えてもらったおかげでハープが演奏できましたが、マチアはレミ以上に芸達者で、マチアのおかげでレミ一座はお金に苦労する事なく旅を続けます。アキャンさんの家の子供の一人アレクシスに逢う為、バルスに来たレミは、ひょんなことから炭坑に入る事になりました。そこで炭坑事故が発生してレミは暗い炭坑にアレクシスのおじさんのガスパールたち6人と共に閉じ込められてしまいます。しかし事故発生から14日後に6人は助け出され、レミは再びマチア、カピと共に旅を続けます。
 レミはシャバノン村に行って自分を育ててくれたアンヌに逢いに行こうと考え、手土産代わりに今まで貯めた214フランという大金をはたいてユセルの町で雌牛を買い、シャバノン村でアンヌと感激の再会を果たします。ところがレミはそこでアンヌから意外な事を聞かされました。レミの本当の親がレミを探していると言うのです。ジェロームが家にいなかったのはレミを探してパリまで行っていたからでした。
 レミは本当の両親を探して再びパリに戻る事にしました。途中ドルージーに立ち寄り、アキャンの子供の一人、リーズに逢いに行きます。そしてレミはマチア、カピと一緒に6ヶ月半ぶりにパリに戻ってきましたが、レミの本当の両親の情報を握っているジェロームはどこにもおらず、さんざん捜し回った末に得た情報はジェロームが1週間前に亡くなったという内容でした。レミは途方に暮れますが刑務所にいるアキャンさんのアドバイスに従い、アンヌに手紙を出す事にしました。すると4日後にアンヌから返事があり、その手紙にはジェロームが死ぬ間際にアンヌ宛に出した手紙も入っていたのです。その手紙にはレミをロンドンの法律事務所が探していると書かれていました。
 レミは再びマチア、カピと共にパリを離れブーローニュからロンドンまで船で渡りました。そしてロンドンの法律事務所を訪れ、レミは本当の家族に案内されます。レミは期待に胸を膨らませていましたが、レミの本当のお父さんとお母さん、そして兄弟はみんなレミの想像したものではなく、レミはがっかりしてしまいます。レミは捨てられた時、立派な産着を着ていたので、てっきり自分は金持ちの家の子供に違いないと思っていたのですが、レミが連れて来られた家はまるで納屋のような汚い家だったのです。そればかりかその家で数日過ごすうちに、家族はみんな泥棒をして生計を立てている事を知ります。レミは自分の本当の家族が泥棒だったと知って落胆します。
 そんなある日、1人の男が本当のお父さんを訪ねてきました。その人はレミをしばらく見つめた後、お父さんと英語で何やら話しあった後、帰っていきました。レミは英語があまり話せなかったので何を言っているのかわからなかったのですが、マチアは陰からこっそりと会話を聞いていたのです。マチアは少しばかり英語が話す事ができ、彼の説明によると、男はジェイムズ・ミリガンで、レミがマチアによく話していたアーサーの叔父だったのです。そしてアーサーは元気にしていると聞きレミは嬉しく思いますが、なぜジェイムズがここに来たのかレミもマチアにもわかりませんでした。しかしジェームズが何かを企んでいる事だけはうすうす気付いていたのです。
 それからしばらくしてレミの本当の家族はレミとマチア、カピを連れて盗んだ品物を売りさばきに旅に出る事になりました。そこでマチアはかつての仲間だったボッブと出合い、レミと一緒に居酒屋で芸を見せます。ところが旅の途中にも家族は盗みを繰り返し、教会に盗みに入ったところを堂守に見つかってしまい、家族は逃げおおせましたがカピが捕まってしまいます。そんな事は知らないレミはカピの飼い主という事で犯人にされてしまい、警察に連れていかれて裁判にかけられました。裁判では結論はでず、重罪裁判で結論を出すと聞いてレミはショックを受けてしまいます。それを聞いたマチアとボッブは汽車で移送されるレミを警察の手から救い出し、ボッブの知り合いの船乗りに頼んでリットルハンプトンからフランスのノルマンディーまで運んでもらいます。
 レミとマチア、そしてカピはフランスに戻ってきましたが、どこに行けばアーサーやミリガン夫人に出逢えるのかわかりません。とりあえず白鳥号でフランスのどこかの川にいるに違いないと考えたレミとマチアは、手始めにセーヌ川をさかのぼり、芸で生活費を稼ぎながら白鳥号の行方を探す事にしました。最初のうちは白鳥号の情報はありませんでしたが、シャラントンで初めて白鳥号の情報を得ます。白鳥号はセーヌ川からヨンヌ川へさかのぼって行ったとの事でした。レミはヨンヌ川をさかのぼるとドルージーを通る事になるので、リーズに逢いに行きますが、リーズが預けられていた親戚の家には別の人が住んでいたのです。その人の話ではリーズを養っていたおじさんは水門にはまって死んでしまい、おばさんは以前奉公していた人を頼ってエジプトに行ってしまい、リーズはちょうどそこを通りかかった船に乗った夫人に息子の遊び相手にと引き取ったとの事でした。
 レミはミリガン夫人がリーズを引き取った事を知り、ますます希望に燃えます。レミは白鳥号がリヨンからスイスに向かったと聞き、白鳥号を追いかけます。そしてとうとうセセルで白鳥号に追いつきました。ところが白鳥号には誰も乗っておらず、近くにいた人から、ここから先は流れが急で船では行けないので、馬車でジュネーブ湖の畔のブベーへ向かったと聞きます。レミたちもブベーへ向かい、レミはそこでリーズの姿を見つけますが、ミリガン夫人と一緒にジェイムズの姿も見えたので、ひとまず隠れてマチアにミリガン夫人を呼び出してもらう事にしました。マチアはミリガン夫人にロンドンでジェイムズを見た時の事など詳しく説明し、ミリガン夫人を呼んできました。ミリガン夫人はマチアの話を聞いた時からレミがいなくなった自分の息子ではないかと考え始めます。しかしどうしても確信が持てない為、ひとまずレミとマチアをジェイムズに会わせないように近くのホテルにかくまい、その間にレミの育ての親であるアンヌに来てもらいました。アンヌが大切に保管していたレミが捨てられた時に着ていた産着は、まぎれもなくミリガン夫人のものであり、ミリガン夫人はようやく行方不明になった自分の子供と感激の再会を果たす事ができたのです。そしてミリガン夫人はレミだけでなく、不幸なレミを愛してくれたマチアやリーズも一緒に暮らす事になるのでした。
 それから十数年後、レミはリーズと結婚し、初めてできた子供にマチアと名付けて幸せに暮らします。アーサーは立派な青年になり、マチアはウィーンでも名だたるバイオリニストとして名を馳せていました。レミは自分が身寄りのない頃に助けてくれた人々を館に集めてパーティーを行い、そこで集まったお金をもとに貧しい辻芸人の為に憩いの家を作る事にするのでした。
アニメとのキャラクターの違い
 原作とアニメでのキャラクターの違いは、何と言ってもレミの性別でしょう。原作では男の子ですが、アニメでは女の子になっているのです。これは「世界名作劇場大全」によると安達祐実主演の同名テレビドラマにあやかってレミも女の子に変更されてしまったそうだ。レミの性格は原作もアニメもほとんど同じように思える。というのは原作の場合「レミは…」などと第三者的立場で書かれておらず、自叙伝のようにすべて「ぼくは…」と書かれているので、本人の性格はなかなか読み取りにくいという事情があります。
 ヴィタリスさんも原作とアニメでは異なります。ヴィタリスさんの性格は同じなのですが、原作のヴィタリスさんにはアニメには登場しない過去があるのです。アニメのヴィタリスさんは動物と音楽が好きなただの旅芸人ですが、原作のヴィタリスさんは旅芸人になる前の過去が語られており、それによるとヴィタリスとは仮の名前で本名はカルロ・バルザーニと言い、30〜40年前にはイタリアきっての有名な歌手として劇場で歌っていたらしい。しかし声がダメになると自分の名声に傷をつけたくなくて姿をくらまし、ヴィタリスと名前を変えて旅芸人になったという事です。
 原作とアニメではストーリーが異なる為、名前が違ったり、同じ名前でも人物が違ったりする場合があったりします。例えばアニメに登場するガスパールは子供を奴隷のようにこき使う悪人でしたが、原作で同じ事をしていた人の名前はガロフォリといい、原作でのガスパールという名前の人物はアキャンの親類でアレクシスを引き取った人のいいおじさんです。またアニメでのマチアは不良少年として描かれていますが、原作ではレミと一緒に旅を続ける芸達者な少年で、決して悪いことをしないというタイプです。さらにリーズも原作ではアキャンの子供で言葉を喋る事ができない心優しい少女として描かれており、将来レミはリーズと結婚する事になります。
まとめ
 原作ははっきり言ってアニメより面白いです。物語の全般にわたって自分の事を一人称で書いてあるので多少の違和感を感じるかもしれないが、それでもヴィタリスさんとの旅と、そして別れ。さらにアキャンさんの家での平穏な生活から、マチアと共に辻芸人としての旅に至るまで、おもしろく読む事ができる。逆にアニメは、前半は原作と同程度に良かったが、ヴィタリスさんが亡くなった後のガスパールの家での物語はあまり面白いとは言えない。
 特に原作では後半、レミとマチアの旅を通しての友情がメインだっただけに、アニメでは後半、旅はしないし、レミは女の子になっているし、マチアは不良少年でひったくりはするしで、とても友情など期待できないような… いや正確にはかなり無理のある友情しか描けなかったのが残念である。それに比べれば原作は見事で、レミが捨てられた理由。すなわちミリガン家の財産を奪う為にジェイムズは遺産相続人であるレミを捨て、アーサーの死を祈りつつ、レミがミリガン家に戻らないようにレミをドリスコル家に送ったというところまで、ちゃんとした設定ができている。しかしアニメではジェイムスが存在しない為にガスパールがレミを誘拐して1万フランを要求するという設定になっているが、それとレミが捨てられた事にはつながりはなく、何となく理解しにくいところがある。
 またヴィタリスさんの過去についてもそうだが、原作の方が基本設定がしっかりしており、アニメ化にあたっては原作より適当に設定を変えたが、途中でつじつまを合わせるのに苦労しているのがうかがえる。いずれにせよこの「家なき子」の作品についてはアニメよりも原作の方が面白いと思われる。
 それと原作を読んで感じられるのは、自分が貧しくて苦労していた時に親切にしてくれた人に、裕福になってから恩返しするというところは、同じエクトル・アンリ・マロの書いた「家なき娘」(ペリーヌ物語)に似ていると感じずにはいられない。

評価
 項目 5段階評価 コメント
アニメとの類似性 基本的な設定が同じくらいで、後半はまったく違います
入手の容易度 ☆☆☆ 数年前に文庫版が出版されたが既に絶版になったかも
お薦め度 ☆☆☆☆☆ 原作はアニメより面白い。特に後半の旅は一気に読めます
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