アヴラム・デイヴィッドスン短編考課表
last updated: 05.6.15 5:41 PM
1954
My Boy Friend's Name is Jello C
F&SF, July 1954
「ボーイフレンドの名は」中上守訳(SFマガジン1970年1月号)
「恋人の名はジェロ」村上実子訳★
デビュー作という価値はあるが、さしておもしろくない。
1955
The Golem A
F&SF, March 1955
「さすらいのゴーレム」竹中芳訳(ミステリマガジン1975年8月号)
「ゴーレム」竹上昭訳(紀田順一郎・荒俣宏編『怪奇幻想の文学[5]』新人物往来社)
「ゴーレム」吉田誠一訳(『SFベスト・オブ・ザ・ベスト[下]』創元推理文庫)
「人造人間ゴーレム」村上実子訳★
デイヴィッドスンの代表作にして傑作。
1956
The Ikon of Elijah B
EQMM, December 1956
「エリヤの聖画像」竹本祐子訳(ミステリマガジン1999年9月号)
キプロス島の骨董商があるキリスト教小宗派の持つエリアの聖画像を手に入れようとする。異国情緒は楽しめるが、出来は普通か。
1957
The Necessity of His Condition B+
EQMM, April 1957
「物は証言できない」田中小実昌訳(日本版EQMM1958年7月号/エラリー・クイーン編『黄金の13/現代篇』ハヤカワ・ミステリ文庫)
1956年度EQMM短編小説コンテスト第一席受賞作。"Now Let Us Sleep"と対をなす作品。
Mr. Stilwell's Stage B
F&SF, September 1957
ブラッドベリ風の怪奇小説。悪くないが、やや古めかしいか。
Now Let Us Sleep B
Venture, September 1957
「さあ、みんなで眠ろう」洲浜昌弘訳(SFマガジン1982年11月号)
バドリスばりにいやな話。テーマに比重がかかりすぎて、ややデイヴィッドスンらしくない気もする。
Jury-Rig C
Venture, November 1957
田舎の港湾都市に遭難した宇宙人がいる。おがくず焼却炉がロケットになって飛んでいくオチはいいが、アメリカ田舎ネタと宇宙人の新語がわかりづらい。
1958
The Bounty Hunter C
Fantastic Universe, March 1958
ありきたりな文明批評とありきたりなオチ。つまらん。
Or All the Seas with Oysters A
Galaxy, May 1958
「あるいは牡蠣でいっぱいの海」常磐新平訳(アイザック・アシモフ編『ヒューゴー賞傑作集[1]』ハヤカワSFシリーズ)
ヒューゴー賞受賞作。「雀海中に入りて蛤となる」みたいな話。
The Creator of Preludes C
EQMM, June 1958
「前奏曲の創作者」青田勝訳(日本版EQMM1960年11月号)
主人公は作曲家ではなく画家。たいしておもしろくはない。
The Cost of Kent Castwell B+
AHMM, July 1958
「世の中金がすべて」という話。おもしろい。
Great is Diana C
F&SF, August 1958
19世紀イギリスのオッパイ星人の話。ペダンティックすぎる。
Paramount Ulj C
Galaxy, October 1958
宇宙人がやってくる話。タイトルが変、書き方が変、にもかかわらずオチは陳腐という典型的なデイヴィッドスンのダメダメ短編。
Thou Still Unravished Bride B+
EQMM, October 1958
「君はまだ汚れなき花嫁」田口実訳(日本版EQMM1959年7月号)
題名はジョン・キーツ「ギリシャの古壺のオード」より。書き方はやや古いが、内容は古びていない。
1959
The Sensible Man C
Playboy, February 1959
アメリカからソ連に亡命した宇宙科学者の話。完全に古びている。
The Dive People B
EQMM, February 1959
「ドヤ街の人々」岩田迪子訳(日本版EQMM1961年4月号)
貧乏作家、ニューヨークの安アパート、異常心理とデイヴィッドスン印満載。けっこうおもしろい。
The Certificate B
F&SF, March 1959
「申請受理」山田和子訳(SFマガジン1971年10月号)
ショートショート。まあ、出来は普通か。
Love Called This Thing B
with Laura Goforth
Galaxy, April 1959
テレビ好きの宇宙人(?)の話。50年代アメリカのテレビネタだから、やや古くさい。
Take Wooden Indians B+
Galaxy, June 1959
ものすごくバカな設定(木彫りのインディアン像を現代に残すために過去を改変しようとする)はいいけれど、アメリカ的ノスタルジーなので、日本人になじみがなさすぎる。
Ogre in the Vly C
【別題】The Ogre
Worlds of If, July 1959
民俗学ファンタシー。平凡な出来。
No Fire Burns B+
Playboy, July 1959
先見的すぎて、いまやありきたりの話。実に惜しい。
Dagon B+
F&SF, October 1959
超絶技巧短編。わざとわかりにくく書いてあるので、個人的にはどうかと思う。
1960
Apres Nous C
F&SF, March 1960
「わが亡きあとに……」浅倉久志訳(各務三郎編『世界ショートショート傑作選[2]』講談社文庫)
ノアの大洪水ネタ。しょーもない。
The Tenant B
Shock, May 1960
「アパートの住人」中村融訳(中村融編『千の脚を持つ男』創元推理文庫)
ホラー風味で描いたニューヨーク。わたしにはよくわからないところもあり。
Fair Trade C
F&SF, July 1960
アイダホ州の田舎に遭難した宇宙人がやってくる。変なオチはいいが、アメリカ南部のことがなじみがない。出来も普通か。
Climacteric C
F&SF, August 1960
「女の子よりドラゴンが好き」というショートショート。これもタイトルが変だな。
Yo-Ho, and Up C
F&SF, December 1960
意味不明のショートショート。短すぎて、意味を知りたいとも思わせない。
1961
The Sources of the Nile A
F&SF, January 1961
流行の「源流」を追い求める話。たいへんおもしろく、傑作だと思う。
Where Do You Live, Queen Esther? B+
EQMM, March 1961
「エステルはどこ?」高梨正伸訳(ミステリマガジン1969年8月号、初出題名「エスターはどこ」/仁賀克雄編『幻想と怪奇 おれの夢の女』ハヤカワ文庫NV)
デイヴィッドスンの中南米趣味がよくわかる佳作。短くておもしろいけれど、翻訳は難しそう。
The Teeth of Despair B
with Sidney Klein
F&SF, May 1961
「クイズミリオネア」でインチキする話。まあ、普通。
The Affair at Lahore Cantonment B
EQMM, June 1961
「ラホーア兵営事件」福島正実訳(ミステリマガジン1962年10月号/ビル・プロンジーニ編『エドガー賞全集[上]』ハヤカワ・ミステリ文庫)
エドガー賞受賞作。キプリングの詩が下敷きになっていて、説明がないとわからない。
Traveller from an Antique Land C
EQMM, September 1961
「エジプトから来た旅人」平尾圭吾訳(日本版EQMM1962年2月号)
詩人シェリーの生涯を下敷きにしたミステリ。ペダンティックすぎる。
The Vat C
F&SF, October 1961
錬金術ネタのショートショート。しょーもない。
The Dragon Skin Drum C
Kenyon Review XXXIII, No.1, Winter 1961
第二次世界大戦直後の中国を舞台にした普通小説。エキゾティシズムだけの頭でっかちな短編。
1962
The Singular Events Which Occurred in the Hovel on the Alley off of Eye Street C
F&SF, February 1962
JFK暗殺ネタをファンタシー風に処理。日本人にはなじみがなさすぎ。
The Sixty-Third Street Station B
F&SF, March 1962
ホラー風味。ニューヨークの地下鉄の話なので日本人になじみが薄いだろうが、悪くはない。ちょっとわかりにくいが。
The Tail-Tied Kings B+
Galaxy, April 1962
異様でグロテスクなイメージがよろしい。
Miss Buttermouth C
F&SF, May 1962
中近東オカルト風味のショートショート。たいしておもしろくはない。
Revolver B+
EQMM, October 1962
「拳銃」水沢伸六訳(日本版EQMM1964年11月号)
「ある拳銃」小鷹信光訳(エレノア・サリヴァン編『世界ベスト・ミステリー50選[下]』光文社文庫)
一丁の拳銃が描きだすニューヨークのさまざまな側面。森村誠一『異型の白昼』を連想。
1963
Faed-Out B
F&SF, October 1963
タイトルは誤記に非ず。ハリウッド怪談で、ワンアイディアのわりには長すぎるか。
The Lineaments of Gratified Desire C
【別題】Price of a Charm
EQMM, December 1963
「お守りの値段」宇野輝雄訳(日本版EQMM1964年4月号)
サラエボ事件について知識がないとオチがわからない。
What Strange Stars and Skies B
F&SF, December 1963
ヴィクトリア朝のエイリアン・アブダクション。手記形式なので、擬古文で書いてあり、会話もなし。ジョン・ファウルズ『マゴット』(国書刊行会)をふと連想した。つまらなくはない。
1964
The Unknown Law C
F&SF, January 1964
「見えない法律」小尾芙佐訳(ミステリマガジン1971年7月号)
大統領が在任期間中にひとりだけ暗殺できる「見えない法律」があるという話。たんなるアイディアストーリーで、書き方も古くさいSFタッチ。
Sacheverell B
F&SF, March 1964
「サシェヴラル」村上博基訳(SFマガジン1984年8月号)
2回読んでやっとどういう話かわかった。異様な雰囲気はいいし、カーニヴァル趣味はデイヴィッドスンらしい。
The Cobblestones of Saratoga Street B
EQMM, April 1964
アメリカ的ノスタルジー(丸石舗装とかマスケット銃とか)が日本人にはなじみがないし、オチが読めるのが難。
A Quiet Room with a View B+
EQMM, August 1964
老人ホームの話。ユーモラスで、なおかつグルーミーな味わいがたまらない。
1965
The House the Blakeneys Built B
F&SF, January 1965
「ブレイクニーズの建てた家」(『らっぱ亭奇譚集 その弐』非売品)
話そのものはよくある文化人類学ネタ。スタイルで読ませる短編。
The Third Sacred Well of the Temple B
EQMM, May 1965
「聖なる井戸」曽我容人訳(日本版EQMM1965年12月号)
メディアによって僻地が観光地として搾取されてしまうという、これまた現代的なお話。南米の異国情緒は楽しめるが、出来としては普通か。
The Invasion C
Playboy, July 1965
「侵略」大井良純訳(ミステリマガジン1975年5月号)
可もなく不可もなし。すごく変なところはデイヴィッドスンらしいが。
Mirror, Mirror B
F&SF, October 1965
つまらなくはないが、デイヴィッドスンらしさは薄い。
The Goobers B+
Swank, November 1965
「グーバーども」浅倉久志訳(SFマガジン2004年7月号)
少年が主人公で、「デス博士の島その他の物語」に相通じるところがある。
1966
Bumberboom A
F&SF, December 1966
「どんがらがん」深町真理子訳(SFマガジン1972年11月号/ドナルド・A・ウォルハイム&テリー・カー編『追憶売ります』ハヤカワ文庫SF)
ピカレスクでスラップスティックな傑作中編。
1967
Captain Pasharooney B+
Saint, May 1967
センチメンタルな雰囲気がよい。
Quick with His Hands C
F&SF, August 1967
火星を舞台にした少年時代の苦い思い出。べつに火星でなくてもいい話。
The Power of Every Root A
F&SF, October 1967
メキシコの呪術をからめた一種のミステリ。新本格的な狂った動機が最高。
Basilisk B+
New Worlds of Fantasy, ed. Terry Carr, 1967
「どんがらがん」の続編。
ヴァンス〈切れ者キューゲル〉を思わせる無責任ピカレスクファンタシー。
1969
The Importance of Trifles B
【別題】The Man Who Killed Sailors
EQMM, January 1969
1840年代のニューヨークを舞台にしたミステリ。日本における「明治ものミステリ」みたいな感じ。
The Roads, The Roads, The Beautiful Roads C
Orbit 5, ed. Damon Knight, 1969
「道よ、道よ、うるわしの道よ」広田耕三訳(R・シルヴァーバーグ他編『世界カーSF傑作選』講談社文庫)
読みにくいし、つまらない。
1970
The Captain M. Caper B
EQMM, March 1970
「スミスはどこにいる?」小倉多加志訳(ミステリマガジン1970年7月号)
ヤクザの回想録を代作する仕事を引きうけた売れない小説家がひどい目にあう話。設定はいいが、長さのわりにはイマイチ。
Zon B
Worlds of If, May 1970
ヒロイックファンタシー風中編。つまらなくはないが、尻切れとんぼ。
Timeserver C
Galaxy, May 1970
なんだかよくわからん。
Selectra Six-Ten C
F&SF, October 1970
たんなる楽屋オチ。
Big Sam B
Alchemy and Academe, ed. Anne McCaffery, 1970
冬眠する男の話。妻がまったく動揺しないところが“奇妙な味”。
Rite of Spring C
Orbit 8, ed. Damon Knight, 1970
なんだかよくわからん。
They Loved Me in Utica B
New Worlds of Fantasy #2, ed. Terry Carr, 1970
酒びたりの老いたシンガーとマネージャー役の女性を描いたショートショート。おもしろいけど、やや高踏的すぎるか。
1971
The Man Who Saw the Elephant B+
【別題】What More Is There to See?
Yankee Magazine, October 1971
ペーソスのあるいい話だが、クェーカー教徒ネタなのが難。
Summon the Watch! C
EQMM, October 1971
ブルックリンに暮らす老嬢ふたりの家に強盗が入る話。ノスタルジーネタになじみがない。
A Bottle Full of Kismet B
Strange Seas and Shores
中国のかぎ煙草瓶コレクターのもとに魔神があらわれる。普通の話だが、悪くはない。
Basileikon: Summer B+
Quark 4, ed. Samuel R. Delany and Marilyn Hacker
デイヴィッドスン流ニューウェーブ短編。意味がさっぱりわからないことを除けば、たいへんおもしろい。
1972
The Last Wizard B
EQMM, December 1972
「最後の魔術師」(『らっぱ亭奇譚集 その壱』非売品)
地口オチのショートショート。
1975
And Don't Forget the One Red Rose A
Playboy, September 1975
「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」伊藤典夫訳(SFマガジン1996年12月号)
アイディアはボルヘス風だが、都市生活の現実を描き、弱者にやさしいまなざしを注いでいるところが、デイヴィッドスンならではの味わい。
1976
Crazy Old Lady B
EQMM, March 1976
「気違い婆さん」高見浩訳(E・D・ホウク編『今月のペテン師』創元推理文庫)
ある意味では陰惨な話だが、からっとしたユーモラスな書き方なのがよろしい。
The Account of Mr. Ira Davidson B
F&SF, May 1976
発明家だった祖父の不思議体験。オチがよくわからん。
O Brave Old World! B
Beyond Time, ed. Sandra Ley, 1976
改変歴史もの。アメリカ人が読むと大喜びしそうな話。
1977
Hark! Was That the Squeal of an Angry Thoat? B
【別題】Hark! Was That the Squeal of an Angry Throat?
Fantastic, December 1977
ニューヨークに火星のジョン・カーターがやってくる話。ほとんどプロットはなく、超独創的な文体で書いてある。
1978
Business Must be Picking Up B
EQMM, May 1978
自給自足の職人村の村長がとった起死回生の策とは? 普通におもしろい。
Naples A
Shadows, ed. Charles L. Grant, 1978
ヨーロッパの幻想映画のように味わい深い小品。世界幻想文学大賞受賞作。
1982
Dr. Bhumbo Singh B
F&SF, October 1982
呪文と香りと干し首を売る呪術師の話。前半はげらげら笑えるが、途中から突然わからなくなる。
1983
Full Chicken Richness B
The Last Wave, vol.1, October, 1983
発明家がチキン風味スープに使った鳥とは? まあまあおもしろい。
1985
Revenge of the Cat Lady B
F&SF, January 1985
貧乏な老婦人にテレビのお告げがある話。
The Peninsula B
Amazing, November 1985
現代的かつ神話的で、とぼけたオチ。まあまあおもしろい。
The Slovo Stove B+
Universe 15, ed. Terry Carr, 1985
東欧系移民に伝わる魔法のストーブの話。しみじみしていて好きだが、やや渋すぎるか。
1986
The Deed of the Deft-footed Dragon B+
Night Cry, Fall 1986
リジー・ボーデン事件の真犯人は斧をあやつる中国人武術家だった。なじみがなさすぎ。
The Singular Incident of the Dog on the Beach C
AHMM, December 1986
ホームズパスティーシュ。それ以上でもそれ以下でもない。
1987
The Engine of Samoset Erasmus Hale and One Other, Unknown C
Amazing, July 1987
19世紀にラジオを発明していた男の話(実録風)。たいしておもしろくはない。
1988
While You're Up B
F&SF, November 1988
奇妙奇天烈なショートショート。意味はさっぱりわからないけど、けっこう好き。
One Morning with Samuel, Dorothy, and William C
Asimov's, December 1988
英文学の知識が要求されるうえ、ネタもいまいち。
1989
Down by the Depot B
EQMM, August 1989
「追いはぎ」夏来健次訳(EQ1991年7月号/EQ編集部編『英米超短篇ミステリー50選』光文社文庫)
ショートショート。まあ、普通の出来かな。
1993
The Spook-Box of Theobald Delafont De Brooks B
【別題】The Spook-Box of Theodore Delafont De Brooks
Tomorrow, July 1993
デイヴィッドスンの生前最後の雑誌発表短編。現代のおとぎ話という感じ。
1995
Twenty-Three B
Asimov's, July 1995
男性は必ず23歳で非業の死をとげたり、行方不明になる呪われた一家の話。つまらなくはないが、ものすごく読みにくい。
・わたしが読んだ短編だけなので、完全な短編リストではありません。評価もあくまで個人的なもの。
・★=『10月3日の目撃者』(村上実子訳、ソノラマ文庫・海外シリーズ)に収録
・初出はHenry Wessells氏作成の書誌 "Index to the Writings of Avram Davidson"(→
The Avram Davidson Website)による。
・AHMM=Alfred Hitchcock's Mystery Magazine
・EQMM=Ellery Queen's Mystery Magazine
・Asimov's=Isaac Asimov's Science Fiction Magazine
・F&SF=The Magazine of Fantasy & Science Fiction
・編者名付きの初出はオリジナルアンソロジー。