JR

ウィリアム・ギャディス

(抜粋)

William Gaddis JR (1975) pp.294-296

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(記事を読みつづけるJRにいらだって、バストが新聞を引っぱる)

——もういいだろ! さあ……。
——わかったよ、でも破ることないだろ、ほらこのでっかい煉瓦の建物の写真のところで破れちゃったよ、この刑務所みたいな、ねえこの建物なんだい?
——オフィスがあるところだ。
——なんで紡績工場がここでオフィスがここなんだ?
——なあ、建てるのを見てたわけじゃない。そんなこと知るか……。
——で、この長くて扉だらけの建物は、これ線路じゃん。やつら鉄道持ってるのか?
——それはただの廃線で、それは車庫だ。
——こんなでっかい車庫なんに使うんだよ。
——使ってない。ただ、市がトラックと除雪車を保管していて……。
——この広い場所はなんだい、イーグルズ・ビジターズって書いてあるけど。
——ソフトボールをする場所だ。
——誰が。
——会社のソフトボール・チームだよ……。
——ここに書いてあるホームタウン・イーグルズってやつ? なんで会社にソフトボール・チームが必要なんだ?
——ソフトボールが好きだからだ! ぼくはソフトボールを三試合も観戦させられたよ。ほら、これがホッパー頭取からの書類……。
——でも、ソフトボールやって、どうして給料もらえるんだ?
——それで給料をもらうわけじゃない! 週末と勤務後にやるんだよ、さあ……。
——なるほど、でも、これ会社の財産だろ?
——だからなんなんだ……。
——ていうか、でも財産ならなんでも、全部おれたち売っぱらえるんだぜ、この賃貸借付売買(リースバック)取引で、だろ?
——そんな話は知らないぞ! ぼくはここの人たちに何も心配するなと言ったんだ、そう記事に書いてあっただろ、だからそんなことできたとしても……。
——ていうか、売っぱらったあと借り戻すわけ、だからリースバックって名前なんだ。
——だいたい、なぜ売らなくちゃいけないんだ……。
——そういうやり方だからさ。読んで聞かせてやるよ、全部売っぱらって、売った相手から借り戻すわけ、たとえば九十九年の期間、っていうのは九十九年後にどうなるかなんて誰も気にしないだろ? そうすりゃ、会社の仕事つづけて、あいかわらず損しつづけたとしても、こいつを全部金に変えられるってわけ。いま考えてるのは、この球場とこの車庫とこのオフィスの建物全部をリースバックするとして……。
——社員のオフィスを売却したら、どこで働けば……。
——まあ、見ろよ……新聞をまとめて暖房器のてっぺんに突き刺すと、——紡績工場とオフィスを始終行ったり来たりして、電話でやりとりするより、机と荷物を全部工場のどこかに移したほうがいいじゃん、そしたらオフィスの建物と球場をまとめて更地にできるし……。
——なあ、そんなの、そんなのばかげてるよ。そんなことをしたら、従業員がどんな気持ちになるか……。
——球場売ったらぶつくさ文句垂れるって? 銀行に売ったら、あとは銀行がやつらにソフトボールさせりゃいいんだ、この車庫もだよ、なんでおれたちが税金と賃貸料払うってのに、市のぼろトラック入れとかなきゃいけないんだよ、そんなのほかの誰かがやればいい。売っぱらったって別のものに変わるわけじゃない、銀行がソフトボールさせてくれなかったり、トラック入れとかせてくれなかったら、銀行がぶつくさ文句言われるだけ、そうだろ? 暖房器に片足をかけてスニーカーのひもを結びながら、——とにかく、こいつを全部金にして……。
——誰がこいつを全部金にしてくれるっていうんだ、きみの言ってることはただの……。
——ていうか、そういうことになるのさ、だってこの帳簿価格の値段で売るとしたらマジお買い得だぜ、その売却額はこっから差し引かれて、税額控除にもなるってわけ、ほら見てみろよ……。
——おい、わかってるのか? そう書いてあるからといって、乗り込んでいって、そんなことをしていいわけじゃない。できるからやっていいわけじゃないんだ、できるからといって……。
——なんで?
——ここにいるのは生きた人間だからだ、それがなんでの理由だ! 株式を所有している人たちはまだ価値があると信じているし、社債の保有者のほうは、たいていがもう老齢で、社債を買ったのは身内に金を貸すような気持ちからだったんだ。それに、働いている社員たちは、球場を売って、オフィスを工場に移したりしたら、すぐに……。
——ていうか、なあ、人気取りでやってるわけじゃないんだぜ。ところで、すぐにどうするって?
——すぐに会社を辞めるよ、会社を辞めて……。
——ふーん、じゃあわざわざクビにしなくてすむってことじゃん、この連中にいちばん経費がかかるからな、だろ?


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