多形腺腫の免疫染色所見


免疫染色は,日常の診断の際にはあまり必要としませんが,組織像の理解のために, 「唾液腺の組織像と免疫染色所見」で紹介しているいくつかのマーカーに関して, 多形腺腫ではどのような反応性を示すかをここに供覧します.


図1(AE1/AE3)

図2(AE1/AE3)

AE1/AE3(pancytokeratinに対する抗体)で染色すると,多形腺腫の二層性腺管構造の導管上皮系細胞と 筋上皮・基底細胞系細胞の両方が陽性を示します(図1).また,多形腺腫の特徴である,ばらばらにほぐれて 粘液腫状となった筋上皮・基底細胞系細胞も陽性で,これらが上皮性であることが明らかです(図2).



図3(AE1/AE3)

図4(AE1/AE3)

AE1/AE3は,軟骨様となってlacunaを伴う細胞にはあまり染まりませんが,まれに陽性を示す細胞も認められます(図3). 紡錘形の平滑筋腫様の細胞もAE1/AE3陽性で,これらの細胞が上皮性であることを示しています(図4).



図5(EMA)

図6(α-smooth muscle actin)

EMAは明らかな腺管構造を形成する導管上皮系細胞の管腔面のみが線状に陽性を示します(図5). α-smooth muscle actinは,予想通り二層性腺管構造部分では外層の筋上皮・基底細胞系細胞のみが 陽性を示します(図6).



図7(α-smooth muscle actin)

図8(Calponin)

α-smooth muscle actinは,平滑筋腫様の紡錘形細胞も陽性を示します(図7). Calponinもα-smooth muscle actinと同様に二層性腺管構造の筋上皮・基底細胞系細胞が陽性を示します(図8).



図9(Calponin)

図10(Calponin)

Calponinは粘液腫状の細胞(図9)や平滑筋腫様の細胞(図10)も陽性を示し, これらが筋上皮性細胞であることを示しています.



図11(p63)

図12(p63)

p63もα-smooth muscle actinやCalponinと同様に二層性腺管構造の筋上皮・基底細胞系細胞が陽性を示します(図11). 紡錘形細胞もp63陽性です(図12).



図13(GFAP)

図14(GFAP)

GFAPは明らかな上皮性結合を示す上皮細胞塊より,多形腺腫の特徴であるばらばらになった粘液腫様の 筋上皮系細胞がより明瞭に陽性を示し(図13),軟骨様細胞も強陽性を示します(図14). GFAPは,正常の唾液腺ではほとんど染まってこないこと(「正常の唾液腺組織と免疫染色」を参照), また,多形腺腫と並んで,導管上皮系細胞と筋上皮・基底細胞系細胞の両者からなる代表的な組織型である 腺様嚢胞癌ではGFAPはほとんど染まってこないことから(「腺様嚢胞癌の免疫染色所見」を参照), 唾液腺では多形腺腫の軟骨・粘液腫様細胞にかなり特異的な物質といえます.



図15(CK5/6)

図16(CK5/6)

正常唾液腺で筋上皮・基底細胞系細胞に特異的に陽性を示すCK5/6は,多形腺腫でも二層性腺管構造の筋上皮・ 基底細胞系細胞が陽性を示します(図15).これは,腺様嚢胞癌の場合と異なっています (「腺様嚢胞癌の免疫染色所見」を参照).また,粘液腫状の細胞もCK5/6陽性です(図16).



図17(CK5/6)

図18(CK14)

CK5/6は多形腺腫の紡錘形細胞も陽性を示します(図17). やはり正常唾液腺で筋上皮・基底細胞系細胞に特異的に陽性を示すCK14は,多形腺腫でも二層性腺管構造の 筋上皮・基底細胞系細胞や紡錘形細胞が陽性を示します(図18).



図19(CK14)

図20(CK14)

CK14は粘液腫状細胞も陽性です(図19).ところが,症例によっては,図20に示すように,導管上皮系細胞のみが 陽性を示すこともあり,反応性が一定していません.なお,腺様嚢胞癌でも,CK14は導管上皮系細胞のみが陽性を 示してきます(「腺様嚢胞癌の免疫染色所見」を参照).



図21(S-100 protein)

図22(S-100 protein)

S-100 proteinは,腺様嚢胞癌の場合と異なり,多形腺腫では特に陽性細胞が多く,しかも二層性腺管構造の 筋上皮・基底細胞系細胞や軟骨様,粘液腫様細胞(図21),紡錘形細胞(図22)などが幅広く陽性を示します. S-100 proteinは,多形腺腫の染色性を見るかぎり,腫瘍性筋上皮細胞のいいマーカーといえますが, 正常の唾液腺や腺様嚢胞癌では筋上皮細胞のマーカーとしては反応性が矛盾しています.

診断の際に多形腺腫かどうか迷って免疫染色を行う場合には,α-smooth muscle actin,calponin,p63, GFAP,S-100 proteinなどの染色が有用です.


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