spatium artis ( 2014.12.26 updated )
Assunta
  聖母被昇天
1516-18
Oil on wood,
690 x 360 cm
Santa Maria Gloriosa
dei Frari, Venice

【部分図。クリックにて拡大】

■梗概

 1516年、当時まだ20代の半ば過ぎであるティツィアーノは、サンタ・マリア・グロリオーサ・ディ・フラーリ聖堂のために巨大な画の制作を始める。これなん、のちに彼の名声を天まで高める《聖母被昇天》である。
 ティツィアーノは当時、もうひとつの芸術の都であるローマへ赴くことを巧みに回避してはいたが、しかし同時にその、コンペティターとしてのローマの動向には絶えず気を配っていた。その対抗意識と、また同時代性への主体的な追従が、たとえばこの絵においても表現されている。たとえばミケランジェロの影響であるとされる、巨大に描写された使徒などがそうである。

 …この構図は、ミケランジェロやラファエロと多くの接触点を示しているが、ローマの影響は個々の人物にもみとめられる。これは、個々の人物で組み立てた構図というよりも、むしろ空間的事件から切り取った一断片を含んだ群像構成である。しかしその際全体の印象は、ミケランジェロにみるように彫塑的構築的な、また物質的及び精神的な根源力を一般化して強調することにもとづくのでも、またラファエロに見るように美しい身体や快い線を平面内に律動的に布置すること、すなわち律動性に基づくものでもない。その造形的構成は、主観的感覚的体験を強く表すのに直接役立ちうるように工夫されている。それによって全体は、驚くべき生命を得ている。奇蹟は感覚的な光景となり、同時に芸術の手段を通じて、任意に見られた視覚的認識というより以上のものとなった。(マクス・ドヴォルシャック『イタリア・ルネサンス美術史』下巻 p.277)
 「聖母被昇天」という主題は、そもそも新約聖書には出てこない。これはアポクリファ(聖書外典)にて取り上げられたテーマであり、中世には人気のある主題のひとつであった。

赤い衣をまとったマリアを頂点として、同じく赤い服を着た使徒二人が底辺となって三角形の構図ができている。

上昇する運動は、この構図と、また暗鬱な陰で構成されている地上から視線を上に移すにしたがって明るい光の色彩で彩られるティツィアーノの色構成によって、見事に表現されている。
下からマリアを押し上げるプット(ころころとした子供の天使)。

プットの力の表現、そしてこの部分図の右上に見えるのは聖母マリアの下肢だが、その表現を見てほしい。
マリアは、無重力のような浮遊で昇天するのではなく、引力に逆らうようにして、少しずつ上に「押し上げられる」のである。

下支えするプットの陰影表現もすばらしい。
上空でマリアを見守る主。
その表現は厳格な父のようで、ミケランジェロの《天地創造》の造物主を彷彿とさせる。

右側に見られるのは智天使ケルビム。少しこの画像では見難いが、右手に王冠をもっており、マリア戴冠の準備をしている。
天に向かう聖母マリア。
両手を開いて天を見上げ、黄金色の光を浴びている。
その表情は、やや呆然としながらも、確信に満ちているようでもある。

また、描かれている赤と青の衣装は聖母のアトリビュートである。
キリストは自ら天へ昇ったが、マリアは天使によって地上から天上に運ばれたといわれる。
これはマリアの左側に描かれたプットだが、太鼓をもっているのが見られる。音楽を奏で、天上へと運ばれるマリアを祝福している。
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