家事調整センター企画書

家事調整センター企画書

第1 理念など総論
1 意義

家庭裁判所では、調停調書、判決に結実する内容を中心に話が進められる。離婚をするかしないか、親権をどうするか、慰謝料、財産分与の金額ということがテーマとなってしまう。この結果、申立人がどんなところに問題意識や不安があって離婚を志向しているのか、双方の認識や意識のズレがどこにあるのか、本当に離婚は避けられないのかということは話し合いの対象から外されてしまう。また、最も問題が大きいのは、肝心の子どもの将来について、離婚の負の影響をどうやって軽減するかについての話し合いがなされない。来るべき離婚に備えて自分に不利なことは言わないため、真実には近づかない。葛藤が残り、増大していくだけである。

   家事調整センターは、対立構造を極力回避し、当事者、特に子どもの幸福のために、大人として理性的な結論に到達するためのサポート機関である。離婚が決まった際の金額(慰謝料、財産分与、養育費)については、原則として話し合わない。

2 理念

子どもの福祉を第一に考える。物言わぬ子供の将来にとって、合理的な視点から方法論を提案していく。

   対立的構造を回避するために、加害者、被害者という考え方を取らない。相手との関係において傷ついていたり、疲弊したりしていることは、相手に害意があろうとなかろうとも生じてしまうことがある。問題は、家族という対人関係において、本来あるべき姿ではないということであり、その場合、家族全体の力を合わせて改善するということである。改善のための原因の探求はするが、誰が悪いかという発想にはならない。一方的な原因ではなく、双方が改善に向けて努力するために、その観点から原因を分析する。

   改善行動は苦痛であってはならない。充実した、楽しい家庭生活は、安らぎの場でなければならない。改善に向けた努力は、問題があるから行うのではなく、あらゆる対人関係において意識的に行われることが当たり前のことである。何らかの制裁、償いではなく、それ自体が喜びとなる方法が理想である。改善とは成長である。

   このような第三者機関は、これまでなかったものだが、日本においても、古来、仲人やそれに類する第三者、有力者または双方の実家など、第三者がアドバイスをして家庭再構築が図られてきた。現在、実質的な仲人がなく、仲裁を買って出るような人もおらず、破綻に向けたアドバイスが横行している。本来あるべきサポートが自然発生的に生まれにくくなっているのであるから、人為的に、科学的に創設する必要がある。

   うまくゆかないのは、何か理由があるという視点が大事である。夫婦は双方を教育して家庭を作らなければならない。こういったメカニズムを踏まえた原因分析、改善方法を検討していく。

3 デメリット及びその回避

最大のデメリットは、一方当事者が申し込んでも、相手方当事者が応じないことである。

   家族再生で言えば、自分に非がないと思っている相手方は、家庭内の事情を話すことへの抵抗や、誰かに援助してもらうということに対して理解ができないかもしれない。

   離婚を見据えた話し合いで言えば、やはり離婚したくない当事者は、話し合いすら拒否することが考えられ、離婚希望当事者はさっさと調停や裁判で離婚を実現したいと思うかもしれない。

   また、面会交流の話し合いでは、監護親は面会させたくないし、非監護親は問答無用で自由な面会交流を望むだろう。

   これを解消するためには、センターで話し合うことのメリットを告げて、説得するしかない。また、広報活動を行うことが必要だ。

   家族再生で言えば、これを放置することで離婚など家族の別離となる危険が有り、離婚にいたらなくても葛藤の高まりによって当事者だけでなく子どもの成長に影響が生じる可能性がある。離婚で言えば、話し合いにより家族再生の希望が有り、裁判などで形式的に離婚しても、相手方の葛藤が高い時の弊害(離婚後のストーカー、別居を契機としたDV)等を説明し、専門家がサポートした話し合いが尽くされることが離婚後の安定した生活に資することを説明する。また、離婚時には、第三者から見た場合に荒唐無稽に思われるような疑心暗鬼がつきものであり、これが離婚が進まない要因になっていることを説明し、この解消に有効であることを説明する。また、何年もかけて裁判をするよりも、迅速な解決が図られる可能性が高いことも説明する。面会交流も、これが進むことによる子どもの福祉(引きこもり、自傷行為、いじめ、非行等の問題行動の回避、虐待の防止等)はもちろん、双方当事者の離婚後の生活の質的側面を向上させることを説明する。

   要するに、家事調整センターで話し合うことは、全ての人にとってメリットがあることを説明する。


第2 手続き内容など各論

1 取り扱う内容

 ・ 夫婦関係を中心とした家族関係の調整

 ・ 婚姻生活の再構築

 ・ 離婚の話し合い

 ・ 面会交流の方法及び実施

2 申し込みの時期・・出来るだけ早い段階で

1 家族は楽しくて当たり前

   家庭が楽しくなく、家にいることが苦痛なとき

   家族との生活に不安を抱くとき、

   家に帰りたくないと感じたとき

 2 自分の状態は自分ではわからない

   自分の状態、相手方からの仕打ちに疑問を抱いたとき

   病的に実家が恋しくなったとき

   口に出して言われないけれど、家族から責められていると感じたとき

   無性に誰かに相談したいとき

 3 離婚の葛藤を鎮めるために

   離婚を決めたけれど、子どもたちのことを話し合えないとき

3 家庭裁判所との関係

   家裁に調停を申し込む前に相談する場合

   調停で話し合いが調整できなかったとき

   離婚は決まったけれど、面会交流が決まらず話し合いができないとき

   面会交流が決まらず、離婚の話し合いが調整できなかったとき(一度調停を取り下げて、家事調整センターで話し合いを行い、金額等について再び調停を申し立てる場合。)


4 スタッフ

弁護士、心理士、ケースワーカー(社会保健福祉士)、社会保険労務士、行政、精神科医等


第3 類型別話し合いの流れのサンプル    

1 夫婦を中心とした家族再生

2 離婚についての調整

3 面会交流についての話し合い


1 夫婦を中心とした家族再生

<第1日目>

具体的に、経過表に基づいて話してもらう。当事者は、なかなか、どこに不満があるか、言い当てることが困難な場合があるので、親身になって、共感を示しつつ、ポイントを一緒に考えていく。

相談者の、不満、感情の源を相談者に提示してみる。理解が得られたら、その点に至る原因(コミュニケーション不足等)の改善方法を具体的に提案する。→ スタッフカンファレンス

<第2日目>

 前回の改善アドバイスの結果について、聴取する。出来たところ、できないところを評価する。相談者の心理的葛藤も考え合わせ、相手方の呼び出しを検討する。

<中間>

 相手方の呼び出し。調停とは違い離婚を前提としないこと、改善ポイントを考えることによって、充実した家庭生活を送れること。放置することによって、離婚や子どもに対する負の影響が考えられることを説明し、参加を説得する。昔の日本では、仲人などが行っていたことを、人間関係の変化で当センターが行うことなどを説明する。相手が安心して参加できて、改善の意欲を示すように工夫する。申込者の話を鵜呑みにしているわけではないことについても相手に知ってもらう。

 → スタッフカンファレンス

<第3日目>

 相手方との相談。申込者の話を鵜呑みにして、相手方を責めることはしない。むしろ、申立人の改善するべきポイントを、相手と共有する。この時、相手方の欠点という形での説明ではなく、あくまでも行動を改善する方向性ということで説明する。この説明については、事前に申込者の承諾を取る。現状認識と、将来に対する方向性について、共同で行動するという意識の一致は見たい。

 → スタッフカンファレンス

<第4日目>

 双方を前に、これまでのまとめを行い、具体的な行動提起をする。当事者の意見を反映し、より立体的な行動提起を構築していく。できる限り、期間を開けて再来を約束してもらう。どういうところが改善されて、どういうところが難しいか、参考資料にもしてもらい、自分たちの経験を、後輩たちに活かすという視点を持ってもらう。



2 離婚についての調整

<1日目>

  申込者から、経過表に従って説明を受ける。離婚を実現するための機関ではなく、納得ゆく離婚にするために、その原因を相手方にも納得してもらうための手続きであることを説明する。その時、暴力、不貞などの離婚原因が存在しない場合を中心に、離婚を選択する理由を突き詰めていく。場合によっては離婚を思いとどまるよう、提案することもありうることを説明する。スタッフは、申込者の気がつかない真意を探求していくことになる。直接の原因にこだわらず、心理過程の歪みなどにも十分配慮をする。改善方法を提案してみる。認知の歪みによる誤解などが懸念される場合は、それを解消するテスト方法を提案する。自主的に解決できないか試みてみる。

 → カンファレンス

<2日目>

  次回は相手方と話すということを告げて、離婚による子どもへの影響等について、十分な理解を得る。カンファレンスでの指摘事項を伝える。その上で、相手方への要望をまとめる。離婚の意思を確認するよりも、可能性として、どういう場合にやり直せるかという条件を、的確すぎる見通しを排除して、構築してみる。

場合によっては、一度他機関の相談を勧める。臨床心理士や精神科医は、きちんと信頼関係のある紹介先を、紹介状を作成して勧める。場合によっては、

<3日目>

  相手方呼び出し。唐突に離婚の意思を告げることは、自棄的態度となることにより、相手方の本心が隠されてしまう可能性を十分考慮する。家族再生について、申込者の現状への理解を求める。但し、この時点で、賛成や全面的な共感は求めない。また、離婚による、特に子どもへの負の影響を重視していることを説明する。離婚を推進する立場ではないことを説明し、合わせて、一方的な非難をする場でもないことを説明して、安心感を持ってもらう。

事実関係について、相手方と確認する。この際、申込者が事実関係を正確に把握できない事情(事態を悪い方に考える傾向等)についても、可能性を聞き出すことも忘れない。

相手方及び申込者の、改善するべきポイントを抽出する。粘り強く話し合うということを確認してもらう。

  → カンファレンス

   再生するための条件を抽出し、構築する。提案の仕方、提案後のサポートについても話し合う。

 <4日目>

  双方呼び出し。

  双方の現状、現状に至った原因、これを放置することの問題点、改善するための条件について提案する。これらは、一本の道筋であるため、それを意識して説明すれば、納得が出来る話だと思われる。

  条件を実践できない場合もある。その実践できない理由について、それぞれ個別的な説明の必要があるかもしれない。離婚理由について、できるだけ納得できるようになればベター。

  条件を実践してみるということであれば、報告日を定める。

3 面会交流についての話し合い


<第1日目>

  申込者から離婚に至る事情を説明してもらう。但し、この際に、当事者の話を鵜呑みにするのではなく、その背景まで分析的に聴取することが有効である。

  面会交流が子どもにとってどんなメリットがあるか、確認する。

  面会交流が進まない理由を聴取する。監護親が非監護親と会いたくないのか、連れ去りの不安があるのか、相手の粗暴を恐れているのか。

  面会交流をすることによって子どもの心理的負荷が高くなるような場合に該当するか、リスクアセスメントを行う。

  どのような面会交流ならば実現できそうか、条件設定を検討する。

 → カンファレンス

   リスクアセスメントをして、相手方への働きかけの方法を検討する。

 <第2日目>

   相手方呼び出し。必要があれば、訪問して説得する。

   面会交流が子どもにとってどのようなメリットがあるか説明し、センターが面会交流に積極的であることを理解してもらう。監護親に関しては、最低頭では面会交流が必要だということを理解してもらう。非看護親に対しては、面会交流の希望を持ってもらう。

   面会の条件設定、申込者の不安の根源について理解してもらう。

  → カンファレンス

   面会交流のありかた(面会場所、時間、受け渡し方法、双方の準備するべき物、遵守するべき事項)の案を作成する。

 <第3日目>

   面会交流の条件を提案し、面会日時を定める。

  → 面会交流実施

   受け渡し、監督付き面会の場合の監督、面会補助等の補助的業務についても必要に応じて行う。連れ去りの不安が顕著にある場合は、引渡しを確実に行う必要がある。面会場所についてもセンターの自前の施設があることが本来は望ましい。

 <第4日目>

   今後の面会交流の準則を定める。面会のペース、連絡の方法、諸条件など。また、最長でも1年後には、どちらかが希望すれば、準則の見直しの話し合いを行うこととする。

 

   順調に進む場合を想定している。あくまでも、当事者の個別性を重視して、柔軟にすすめる。旧当事者からの事情聴取など、事例の集積による研究をあわせてすすめる。


平成26年3月7日

このような企画を考えた理由についてのブログ記事

家事調整センターを創りたい 納得できる理性的な離婚と、円満な婚姻生活維持のために

http://doihouritu.blog.so-net.ne.jp/2014-02-11

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