コラム・投げ釣りの魅力
投げ釣り。その言葉が示すように仕掛けを投げて魚を釣る釣りの事である。もちろん、他の釣りも仕掛けを投げて魚を釣ることには変わりないが、この投げ釣りというのは「投げ」る事に重点を置いた釣りである。
それでは一体どうして、仕掛けを遠くに飛ばす必要性があるのだろうか? 答えは至極簡単。遠くに飛ばせば飛ばすほど、より広範囲に魚を狙うことが出来るから。広範囲に狙うことにより、魚との対話のチャンスがより一層アップするからである。もちろん、ただ単に遠くへ飛ばせばいいというワケでもないのだが(笑)
何が潜むとも解らない広大なる海原で、投げ釣り師、いわゆる『キャスター』は遙か水平線の彼方へとキャストし続ける。まだ見ぬ魚との対峙の瞬間を夢見て…。それはキャスター自らの夢とドラマが胸の中で複雑に交錯する瞬間だ。
キャスターはじっと竿先を凝視し、息を殺して魚からの魚信(アタリ)をひたすら待つ。やがて、竿先が波の動きとは異なる動きを見せると、それを見つめる瞳がグッと広がり、胸の鼓動が一気に激しくなる。…いつもそうだ。キャスターはこの瞬間をひたすら待ち続けているのだ。
汗ばんだ手を拭く暇もなくキャスターは竿を手にする。そして魚からのラブコールを受け取ると、無我夢中にリールのハンドルを回し始める。もうすぐ対峙の瞬間がやってくると思っただけで自然と息は荒くなり、何とも言えない快感が、稲妻のように頭の天辺から足のつま先まで走り抜けていく。
遂に、運命の対峙を果たす時がやってきた。釣り上げた魚を手にすると、今までの快感が絶頂に達する。これぞ「エクスタシー」。次の瞬間、釣り場がエデンに変貌したのは言うまでもない…。(小林一竿『暁に消えたキャスター』より)
これとは別に、投げること、すなわち「キャスティング」することの楽しさを味わえるのもまた、投げ釣りの魅力の一つと言えるかもしれない。
キャスターは波打ち際で大きく深呼吸した。陸・空・海。そのすべてに神経を集中させると、グッと竿を握りしめ、渾身の力を込めいざ大海原へとフルキャストした。すると、重力から解放されることを一瞬だけ許された錘が、綺麗な放物線を描きながら水平線の彼方へと飛び立っていった。錘を結ぶラインが、紺碧の空と海に挟まれた空間に青、赤、黄と、色鮮やかな旋律を刻んでいった。
「釣れても良い、釣れなくとも良い。この際釣果などはもう、どうでも良い事だ…」
砂浜に立つキャスターが、まるでオーケストラ指揮者の如くその旋律に聞き入ると、釣りをやりながら釣りの目的を忘れるぐらいに不思議で独特な空間が、いやがおうにもキャスターの周りを包み込んでいった…。(小林一竿『飛んでけ僕のシャトルライナー』より)
日常の煩悩やストレスが、一瞬にして吹き飛んでしまう瞬間。これも投げ釣りでしか味わうことができないエクスタシーなのだ。
投げ釣りの魅力はこれだけではない。
投げ釣りで釣れる魚は多種多様。代表的なところで言えばシロギス、カレイ、アイナメ等があげられるがクロダイやマダイ、そしてイシモチ、アナゴなどなど数えればキリがない。逆に言えば、投げ釣りで釣れない魚などは無いぐらいに狙える魚が豊富なのである。砂浜でキスのアタリを楽しむのも良し、堤防でのんびりカレイを狙うのも良し、夜釣りでまだ見ぬ大物を狙うも良し。本当にいろんな魚を狙うことができるのがこの投げ釣りの特徴だ。もちろん、ただ海に向かって「何が釣れるか分からないドキドキ感」を味わうのも良し。釣り師のワガママすべてに応えてくれる釣りなのだ。
とにかく堅苦しい事は抜きにして、投げ竿片手に海に行ってみよう。そしてその手、その肌、そして身体全体で『投げ釣り』を感じて欲しい。きっとあなたの知らなかった「釣り」の世界が広がるハズだから。
さあレッツ、フィッシング!! トライ、キャスティング!!