Another World
その物語は、何時も未だ始まっておらず、かと思えば何時の間にか全てを語り終えてしまい、また他の物語を紡ぎ始めるので、私はその物語の内容を未だ知る事が出来ない。
もしかすると、この物語そのものが最初から存在していないのではないかとも思えたのだが、私は黙って瞼を下ろし、その考えを伏せ置いた。
毎日、何処からともなく懐かしい贈り物が配達されてくるのだが、それらは皆、未来から届けられる。
その時計は、何度修理しても直ぐ左回りに運行してしまうので、気が付くと世界が始まりの前に戻ってしまう。
逆しまの雨が降る度、私は何時も無数の謂れ無き追憶に苛まれる。
とても大切な事を忘れているような気がしてならないのだが、もしかすると、何か大事な事を忘れてしまった振りをして、誤魔化したいだけなのではないかと訝しんでいる。
蕭蕭と降る天気雨の中、もう動かない時計を抱えて唖黙り、音のしそうな蒼穹を仰ぐ。
それが何を意味するのか、私には最早解らない。
何も解らない…。
2003.09.30