Astro


 夜がわたしを呼び覚ます。
 と、言っても危険がわたしを呼ぶのではなく、わたしの頭上から降り注ぐ古代の光が、毎晩わたしの心を駆り立てていた。
 何がきっかけで、こうして星空を眺めるようになったかは覚えていないけど、いつしかわたしは何万光年も離れた所から辿り着いた歴史の痕跡の持つ、まばゆい光に囚われていた。これが原因で、何度も学校に遅刻したり、友達の約束に間に合わなかったりと痛い目を見ているけど、どうしても止める事が出来ないのだった。
 あの夜も、そうだった。
 わたしはいつもの様に自室のベランダへ出て、何とはなしに天球を眺めていると、そう性能の良くも無い望遠鏡の対物レンズがはっきりと、見覚えの無い光線の尾を捕らえた。わたしは慌てて、星図と専門誌を首っ引きで確かめたけど、そんな天体に関する記述は一遍たりとて存在しなかった。
 わたしは心を震わせながら間違いが無いかどうか、再び接眼レンズを覗き込んだ

瞬間

 わたしの眼球に強烈な痛みが飛び込んだ!
 余りにも強烈な痛みだったので、もうその夜は逃げる様に自室に戻り、魘されながら眠りに就いた。
 翌朝、嘘のように痛みは治まっていた。
 だが、相変わらず、眼の中に不思議な違和感を覚えたので、鏡に相対して見ると、わたしの
瞳孔には、昨夜の流星の欠片が遺っていた。
 以来、わたしの眼の中にはいつでもあの時の星が煌いている。


1999.10.20