He


 彼は悠然と方舟の上を歩く。肩に鴉を止まらせ。
 空は橙の光に包まれ、抜け殻となった舟の残骸を炙り出していた。
 彼は、地上で最も高い人工物の上から遥か水面を覗き、嘲笑を浮かべる。
 そして、何処か神懸かった横顔はゆっくりと水面に吸われて行った。
鴉は、彼の肩を離れ暫くそこに留まっていたが、やがて、陸無き水の世界へ
舞って行った


2000.04.13