Playback


 慌ててスタジオを飛び出したプロデューサーが見たものは、少年の日に擦れたインクが映し出していた『メトロポリス』の原型そのものだった。世界はモノクロームに染まり、鉄の塊でしかない不恰好な巨大ロボットが唸りを上げながら、宿敵とおぼしき黒い巨大ロボットと力比べをしている。
 近代的なビルは発砲スチロールのように壊され、道路から照らすサーチライトが夜空に軌跡を描く。その直ぐ側を、ハンティング帽に大きな眼鏡をかけただけの扮装で、トレンチコートにサングラスを纏った悪漢どもを追いかけ回る少年探偵。
 ハリウッドでもないのに、街中からは安っぽいピストル(『銃』ではない)による銃撃戦が繰り広げられ、『色』の付いた一般市民が流れ弾によって、次々に紅い血袋と化す。
 「ば、」
 思わず吐いた台詞を言い終えない内に、彼の勤務地もまた無残に崩れ落ちた。煌煌とするライトの中崩壊して行く『現実』は、最期の光を放ちながら、美しく散る。

 「これだ、これなんだよ!」
 至る所に怪しげな溶液を振りまきながら、半ズボンを穿いた中年男性が駆け抜ける。しかし、見る間に彼の身体は収まりの悪いコスチュームにそぐった少年の姿へと変貌し、空き瓶を投げ捨てると、懐からピストルを持って何処へとも無く去って行った。
 「これからの手筈はどうするんだい?」
 ビル街を駆ける内、自然集った少年探偵達は
 「決まってるだろ、BB団をやっつけるのさ!この帝都を守る為にね!」
 おう!と意気込んで、月に向かって走り出す。行く手には大写しになったBB団首領のシルエットが星空を彩っていた。

 後に残されたのは、総天然色の無残絵。
 だが何故か、誤魔化し様の無いリアリズムは満ちてくるモノクロームよりも遥かに虚構の如きものに見えて仕方が無かった。


2000.10.19