Resouces
生命維持装置を繋げられたままの『多細胞集積体』。それらは、ヒトとしての死を迎えたまま、今だ完全なる死を迎えてはいなかった。
「只今より、臓器及び生殖細胞、各種資源の摘出を行う。各自、充分に注意し、有効資源でを無駄にする事無く作業に集中してくれ。」
白衣を着た者達は、号令一下ヒトの皮膚に包まれた生命体を解体し始めた。
「まず、ダメージに弱い脳からだ。脳幹以外は、脳として機能していないが、記録=ログを遺した細胞はまだ生きている。慎重にやれよ。」
頭皮にメスを入れ、丹念に頭蓋から剥離させると、電気工具で頭蓋骨を分解し、幾重もの膜と水に包まれた柔らかいピンク色の蛋白質を摘出し、液と電気器具で充たされた壜に移し、すぐさま運び出された。それを皮切りに、肺、肝臓、心臓、腎臓、卵子、角膜・髄液…移植やバイオ、サイバー技術に適用されるであろう考えられるだけの組織が『死』を迎える事無く、『死体』から摘出され、チルドケースや、培養液の中に差し入れ、生きたまま持ち出される。
後に残された、骨組織・皮膚組織も例外ではない。
状態を保ちながら、順番に『骸』の枷を外され、然るべき処へ向かっていった。
筋組織・脂肪・髪に至るまで、ヒトという一個の生命体を維持してきた組織・細胞、そしてその中で生き続けていた別の生命体もまた、第二の『人生』を歩み始めていた。
───数時間後
家に帰った父子は、静かに夕食と入浴を済ませると、一緒の寝台で眠りに就いた。
彼等の脳細胞の中に記録され、生き続ける『母』はどんな夢を視せているのだろうか?
2000.02.08→2000.09.17