Road
セピアのフィルター。
音の無いぼやけたフィルム。
時折、雨とノイズが射す中、二人は楽しそうに微笑んでいた。
何処までも延びる一本道。
黄金色にそよぐ草原の上に、飛行船の陰が映り、雲一つ無い空に白く浮かんでいる。
二人は、手を取り合って幸せそうに歩く道すがら、一人の女性と出会った。
(黒い画面にテロップ)
「こんにちは。」
笑い返す少年と少女。
「こんにちは、お姉さん。」
不審そうに彼らを覗き込む女性。
「この近くに住んでいるの?」
邪気の無い笑顔で返す少年と少女。
「ううん。ぼくたちの家はずっと向こうにあるよ。ぼくたちは旅をしているんだ。」
「そう。わたしたちの所為で失くしてしまった蒼い欠片を探すために二人で旅をしているの。」
「蒼い欠片? それは、もしかしてこういうものかしら?」
女性は、トランクを開ける。中には、整然と並べられた小壜。傷一つ無い硝子を通した陽光が、封じられた蒼い結晶に尋常でない輝きを与え、彼らの網膜に、視界に、脳裏に蒼い点を刻んだ。
「…うわぁ…。」
「お姉さん、これ何処から見付けて来るの?」
女性はやや困った面持ちで、小壜の一つを手に取る。
「何処…っていうわけじゃないけど、時々、道端なんかに落ちているの。こんなに綺麗なのに誰も気付かないみたいで、つい見かける度に拾って行ったら、何時の間にかこんなに集まってしまって。」
「ふぅん。」
「ふぅん。」
二人は路上に広げられたトランクから、蒼い欠片を取り出しては不思議そうに光に透かしている。欠片は、一つずつ形が異なり、結晶のように多面体を成しているものもあれば、旧時代の記憶媒体の如き『チップ』状のものや、音盤にも似た円いディスク、飴玉の如きもの、書物の一篇のように薄く文字が刻まれたものまで多様な姿を呈していた。
「貴方達が探しているものと同じかしら?」
「…うーん、違うかもしれない。」
「似てるものもあるけど、違うような気がする。」
女性はトランクを片付け、空を仰ぐ。
「わたしが持っていても仕方無いから、もし同じものだったら譲ろうかと思ってたんだけど。」
「えー、勿体無いよ。そんなに綺麗なのに。しかも一杯持ってるんだよ。」
「そうだよ。それに、それはお姉さんのだもん。あたしたちはいつか自分で見付けるから、それはお姉さんが持っていたほうが良いと思う…。」
「…そう?」
「うん。きっとそうだよ。」
「じゃ、お姉さん、綺麗なもの見せてくれて有難う。」
女性は、先を急ごうとする二人に手を振る。
「またね。」
「またね。」
彼等の目指す道は、果てしなく延び、また彼女の向かう道も果てしなく延びていた。
2000.02.14→2001.09.11