Sleeping


 懇々と成長を遂げて行く街の片隅に眠るアパルトメント。淡茶色の壁面は、殆ど地が見えない程蔦で隠蔽され、鬱蒼とした木々に囲まれて安らかに時を止めていた。

 しかし、その遺物は完全に眠っているのではなかった。

 埃が積もる市松模様の床上に刻まれた比較的新しい足跡。

 そして、その行方から聞こえてくる微かな寝息…。其を辿ると、屋根の落ちた大広間へと出た。

 堅牢な煉瓦と鉄筋で象られた外殻を、嘲笑うように照りつける陽光。骨組みの隙間から天使の掛け橋の如く降りてくる、無数の光の階。

 それを目指すように横臥している少年と少女。昏々と眠り続ける。

 そして、その傍らで誰に読まれるともなく手紙を書き続ける一人の女性。差出人は『津世由佳子』とあるが、彼女はそれを消して『Mr.K』と書き直した。

途端

 吹き抜けの天井から飛来したが、その手紙を咥え光の階を目掛けた!

 後に残されたのは、黒い羽と、いつか見た銀の羽…。


2000.02.142000.11.30