Song


 宵闇の中、森の方々から天を焦がさんばかりの炎が立ち昇っている。

 遠くから聞こえる砲塔の唸り。

 爆発物の破裂。

 怒号。

 悲鳴。

 絶望を予感させる音のうねりが、多くの屍と共に俺をますます孤独に追いやる。

 辛うじて直撃を免れたテントから慌てて通信器具を持ち出し、迫る死を伺いながら本隊に無線を繋ごうとするが、流れてくるのは虚しいノイズだけ。朝になれば、攻撃も止むかもしれないという一縷の望みも無いこともないが、それはあくまでもこちらの勝手な想像に過ぎない。
 空爆が行われていないのが唯一の救いだが、島全体の制圧権を巡る総力戦になっているのは、最早、間違い無かった。
 空から降ってくる打ち上げ花火の燃え滓の如き仲間の死体と共に、後どれだけの時間を過ごせば良いのだろう?
 出来るだけ嫌な考えをしないで済むように、俺は憑き物が降りたかの如く、無線のチューナーを捻る。
 ますます烈しくなる砲撃の中、ノイズさえも霞む

刹那

俺は苦々しい雨音にも似た雑音の隙間に、人の声を知覚した! 縋る思いで、慎重かつ滑らかにチューニングを合わせていく。
 少しずつクリアになる声。
 それは何処かで聴いた事のある
だった。
 子供の時分に、ふと誰かが歌っていたような出自不明の曲。永い間、連綿と歌い継がれてきた
童歌のような…。
 澄んでくる声に耳を欹てる。
 惹かれるように、鼓膜が音波を選択する。
 もう、周囲の音は一切遮断された

瞬間

眼前が不意にブラックアウトした。
 電源が切れた直後のゼラチン質の重い響きがやけにはっきり聞こえ、それきり何も聞こえなくなってしまった。

 しまった!

と、思った時にはもう──────


1999.12.132005.06.16