a Sunshine shower


 「ないもの」だけが欲しくて、捜して求めて已まないのだが、「ないもの」は見付けた途端、「あるもの」に擦り変わってしまうので、何時までも本当に「ないもの」を手にする事が出来ずに居る。
 その街に住む人々は皆、どういう訳か着ぐるみを纏い、如何なる時も決してそれを脱ごうとはしないのだが、彼らを見ている内に、何時の間にか自分の背中にもファスナーがある事に気付いた。
 自分にとって無用と思われたその衣を売るべく、背中に手を回したのだが、そこに触れたものは、まるで憶えの無い異界の生物の膚であった。

不意

 とても大切な事を忘れているような気がしてならないのだが、もしかすると、何か大事な事を忘れてしまった振りをして、誤魔化したいだけなのかも知れない。
 きっと、最早、何もかもが手遅れなのに違い無い。
 もしかすると、ここに書かれている事が、全て嘘であるとしても、誰もその真実を知りえないし、また自ら進んで知ろうとしないのはその所為なのだろう。
 まるで、或る高名な詩──幾千もの言語に翻訳され、知らぬものとていない名詩に数えられているが、驚いた事にその原詩を存じている者は誰一人おらず、どの資料にも記されていない──と同じ様に。
 蕭蕭と降る天気雨の中、もう動かない振子時計を抱えた老婆が唖黙り、音のしそうな蒼穹を仰いでいた。


2003.12.21