渦巻偽典
犬
犬は古来より人間の良き友人であり、敵であり、神の御使いであり、また神そのものであった。
その象徴性は神が死んだ現在も尚、変わらない。
それ許りか、彼等は人間と共に進化し、今や人圏の隅々にまで、その種を多様化・適応させ、繁栄している。
犬は最早、物理的な生物種族のみを指す言葉ではないのだ。
複雑化した犬とは、如何なる存在か、ここにその特徴と性質を挙げてみる事とする。
1.集団
通常、犬は『群れ』・『組織』と呼ばれる階級性集団を形成、そこに所属して生活する。
無論、『野良犬』・『野犬』と称する、単独生活を好む犬もいるが、特別な事情を除き、数は一定で多くない。
また大多数の犬は、国家権力に浴している事が多いので、要注意である。
2.精神
階級性集団に属する犬は、その主人に忠実に従い、一生を過ごす。
従って、集団生活を営む、大抵の犬は主体性が無く、また、積極的にこれを獲得しようとしない傾向がある。特に、群れの頭数が多ければ多い程、その特徴は顕著に現れ、固有の判断力を喪失する。
が、それは彼等にとって苦痛ではなく、寧ろ中毒性を持った快楽として認知されている場合が多い。
また、集団に完全に浴している犬は、自分の所属する集団と他集団との縄張り意識が強く、些細な事で犬同士衝突しがちなので、越境して対象を扱う場合には、特に注意を要する。
3.忠誠心
犬は極めて忠誠心の強い存在である。一度自分が主人と認めたものには、一生寄り添い、付き従う。
主人は必ずし物理的な存在であるとは限らず、『思想』・『法則』をも盲目的に認知する場合も多い。
彼等は集団の性質や掟が不透明だと無用に混乱し、集団を破綻させたり、主人を傷付けてしまう事例もある。
秩序を持たず行使される力は、ただの暴力である事を肝に銘じて欲しい。
4.嗅覚
犬は人間の数十倍も感度の強い嗅覚を持ち、監視・尾行能力に長けている。
従って、彼等の前に隠し事を企てるのは、容易ではない。
燦燦と輝く太陽の元に、陰鬱な翳が色濃く現れる様に、彼等は何処からともなく、隠匿した筈の出来事を白日の下に暴き、独自の言語…大きな吼声により広く世間に伝播しらしめる。
特に我々の隣人・家族・親友に相当する犬には、充分警戒した方が良い。
5.癖
犬は不満や憤り、好奇心の赴くまま、あらゆる対象に噛み付き・吼え立てる傾向にある。
この癖は彼等を眠らせておくのと同じか、それ以上に厄介な習癖である。
これらの癖を植え付けない為には、幼少から強く躾けなければならない。
特に小型犬は、強くこの形質が現れるので、注意が必要である。
また、彼等は自分の気に入ったもの・場所にマーキングする事を好み、その対象が稀有であればある程、彼等の自我は充足する傾向にある。
6.哲学
犬には所属する組織の有無を問わず、固有の哲学を有している。
特に『野良犬』の場合、外的条件に左右されない独特の思想を抱いているものが多い。
一般に人間が、それを理解するには相当の困難を要する場合も少なくなく、特にその表現形に於いて誤認される事例も多々報告されているが、それによって犬が噛み付き・吠え立てる事は、余程の事情を除き、稀である。
但し、小型犬は過敏に反応する場合が多いので、気を付けねばならない。
2004.07.13
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