渦巻偽典 眼鏡 眼鏡にも様々な種類の眼鏡がある。 近視用、遠視用、老眼鏡、虫眼鏡、遠眼鏡、色眼鏡、紅い眼鏡と、時代や用途を映す日用品として、数多に製造された中で、史上最も人気のあった眼鏡は「萬解鏡」と呼ばれるものであった。 これはレンズとフレームの間に流し込まれた特殊なフィルターによって、眼に映る全ての事物の理を、瞬時に理解しうるという逸品で、主に学者や学問を志す者達の間で、飛ぶように売れたと伝えられている。 また、この眼鏡は遠くのものを見るのにも好都合だったことから、街の至る所に建造されていた塔(物見塔)などに登り、眼下を往来する俗物や、天の向こうに広がっているとされていた、泡宇宙が揺らめく様を観測するのにも用いられた。 しかし、眼鏡を長時間着用していると、眼鏡の破損=世界の崩壊と短絡的に勘違いし、絶望に至る病を患うケースが多発した為、全ての眼鏡を回収・廃棄処分し、製造販売は禁止された。 だが、好事家の間では高値で売買され、或る闇医者では萬解鏡を直接眼球に埋め込む手術を行っており、この眼鏡によって崩壊した精神が引き起こした反社会的現象は、年々深刻な問題を招いているという。 2001.06.02 |