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最近読んだ本(1)


■教育関係

(1)佐藤達哉『知能指数』講談社現代新書

 教育現場で仕事をしていると、「人間の能力を測るのに何か目安になるものはないかな?」と、つい安易な方法を見つけて流用してしまいそうになることがあるのですが、この作者はそういうときによく持ち出される「IQ」というものに疑問を投げかけている。
 これは当然と言えば当然なことですが、何か一つの指標で人間の能力をあらわせるのでは?と考えてしまうことはかなり危険なことです。それも「科学的」な衣装を着て言われ出すと一般の人も教職に就いている人もつい「IQ神話」に毒されてしまいがちです。
 それじゃ別の指標を…といって「EQ」なる概念を出してきても、結局は同じ轍に落ちてしまうのがオチです。何かの指標に頼りたくなる気持ちをちょっと押さえて、目の前にいる人に誠実に接することで、その人を少しでも理解できればいいのではないかと考えさせられた。

(2)伊藤進『創造力をみがくヒント』講談社現代新書

 この種の本は、けっこう好きなのでつい買って読んでしまう。ほとんど1日もかからないで読み飛ばすので、余り記憶にも残っていないだろうし、かといって読みなおすこともない。この本で何を今更と思ったのは「文章を書くということは、無から有を創造することである」という文章に作者が驚いているところ。創造性というのをどう定義するかにもよると思うが、人間のやることで「無から有」を生み出すなんて別に驚かなくたって不可能に決まっているではないかと私は思った次第。

 創造性を論じる本は多いが「それじゃ、書いているあんたは創造力があふれているの?」と感じてしまうことがほとんどである。まず、創造性にあふれている人が「創造性」に関して何かを書いている暇などほとんどないのでは?といつもシラーとしてしまう。それじゃ、読まなきゃいいのだが読んでしまう自分が情けない。f^_^;)

 (伊藤氏より反論)
 この本の感想を読まれた著者の伊藤進氏より「読み方が浅い。私の主張している内容をよく理解していない」という趣旨のメールをいただきました。そこで、再度この本をゆっくりと読み返してみました。読後感はほとんど変りませんでした。ただ、著者の伊藤氏に不快な印象を与えたことは間違いないので、この場を借りてお詫びいたします。本の書評をしたつもりはありませんから、こういう読後感をもつ人間もいるんだ、とお思いください。本の読み方は読者によってさまざまであるのではと私は考えています。

(3)山下富美代『集中力』講談社現代新書

 これまた題名を見ただけで結論は見えている本なのだが、つい買って読んでしまった。「集中力」をつけるにはどんな具体的な方法を提示しているのか?手っ取り早く知ろうと後ろの結論の部分から読んでみた。――思った通り、通り一遍のことしか書いてなくて、全然迫力がなかった。まあ、せっかく買ったからと前段部も目を通して見たが、認知科学と銘打つほどの内容はなく、心理学というのもまだ「文学」なのかと一先ず納得して本を置いた次第。

(4)小室直樹・色摩力夫『人にはなぜ教育が必要なのか』総合法令

 この著者(特に小室直樹氏)の本は過激で実に面白い。いずれ紹介する予定でいるが、同氏の他の本も私には興味を持って読めた。実は、小室氏は私の出身高校(会津高校)の先輩にあたる人で、私が高校で習った英語のグラマー(文法)を教えてくれた田崎先生とは同級生なので(ついでに衆議院議員の渡部恒三氏も同級生)、彼の高校時代からの話はよく授業時間にも聞いたことがあった。とにかく天才肌の人のようであるが、TVでちょっと目にした氏の姿・口調はどう見ても会津の田舎のオッツァンである。しかし、論は鋭く考えさせられる論者(学者)である。

 この本でも「日本の教育全般」にかなり過激な論を次々と繰り出しており、楽しい。ただ、彼のこの分野での論には少しごり押しのところが感じられる。小学・中学・高校(大学は自分が東大にいるからわかるだろうが…)などの実態については実際に調査をして、論を立てている訳ではないため、どうしても新聞やマスコミ等の報道された内容に基づいて意見を述べており、かなり思い違いをしているとしかいいようのないことを発言しているのは残念である。しかし、そういう点があっても本としては面白く、またためにはなるものと言って良いと思う。「小室シリーズ」は私の愛読書の一つである。

(5)清水義範『虚構市立不条理中学校』講談社文庫

 この本は以前は2冊に分かれていたのを、今回文庫本にするにあたり、合本され1冊の本として発売されたものである。私が読んだのは、確か(上)に当たる部分を図書館から借りて読んだように記憶している。内容は、もう忘れてしまっていた。

 今回本屋さんでこの本を見つけ、懐かしくなって購入してお正月にコタツでゴロゴロしながら読みなおしてみた。そうしたら、内容を次第に思い出してきて一気に読んでしまった。あー、そうでした。これは「小説」です。しかし、教育の現場で働く者として、身につまされる内容の記述がいたるところでなされ、下手な教育書を読むよりはこれを読んで自分の身を振り返るのも大切なことのように思えた。

 作者の清水義範氏は好きな作家の一人でけっこう読んでいると思うが、教育系の大学出身ということも多少は関係しているのか、教育現場の実態を相当に把握しており、記述にも鋭いものがある。教員の手ごわい相手と言ってもいいだろう。

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