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読書日記2003


■2003年はどんな本と出合えるか。

 昨年暮れからはじめた読書日記ですが、年末ということもあって忙しなく、なかなかゆっくり本を読んでいる時間もありませんでした。ま、これは言い訳。読む気になれば(面白ければですけど)、どんなときでも本は読めます。もう、老眼も少しずつ入り込んできて、本を読むときにも影響は出てきています。かと言って、それを口実に読書を止めるわけには行きません。本を読まない人生は、わたしにはあまりに虚しく思えてしまう。どんな本を今年は読むのか、自分でも予知せぬことがあるので、わかりません。でも、この1年でどんな出会いがあるのか楽しみでもあります。

 最近読んだ本をどんどん積み上げてゆきたいと思っている。だから、上に書いてあるのが、最近のものという書き方をしているので、ご承知ください。ちなみに、コメントはまったくあてにはなりません。興味のある人はご自分で購入して読んでみてくださいね。なお、あまりに専門的な本は載せてありません。

■2003年に読んだ本(日時は記録をした日。その前後に読み終えたという意味)

2003/12/31(水) 08:26

★E・T・ベル:田中勇、銀林浩訳『数学をつくった人々T』早川書房 \820

 1937年に出版され、日本語でも戦後間もない頃翻訳されて出版されたようだが、くわしいことはわからない。この本は、1997年10月に東京図書から出版された同名本の上・下の文庫本である。わたしも本屋さんでちらっと見た覚えはあるが、そのときはほとんど読む気もなかったようである。今回、早川書房の文庫として出てきて、これなら読みやすいだろうと手にした。文庫3冊になっており、現在Uを読んでいる。Tでは、ツェノン、エウドクソス、アルキメデス、デカルト、フェルマ、パスカル、ニュートン、ライプニッツ、ベルヌーイ家の人びと、オイラー、ラグランジュ、ラプラース、モンジュ、フーリエという人びとを取り上げている。いずれも、数学史・物理学史に名を残している有名な人ばかりであるが、人生はさまざまである。日本にも数学者の高木貞治氏の『近世数学史談』河出書房→共立出版というとてもおもしろい数学史の本があり読んだが、この本もE・T・ベル氏の鋭い(?)ツッコミもあり、どんどん読み進めることができる。数学は数学の問題を解くのが一番面白いのだろうが、ときには、こういう数学を作ってきた人たちの生活ぶりに触れてみるのも、また別の見方ができて楽しい。数式が出てくると、ジンマシンの出る人も多くいるとおもうが、この本はそれほど数式も出てこないし、出てきても無視して読みつづけると、何となく読み通せるとおもう。あまり、数学アレルギーにならずに、手にとってほしい。文科系の本ばかり読んでいるのは、やはり精神的にはかなりバランスを欠いているといわれても仕方ないだろう。読む数学のたのしみもとてもいいものだと推薦したい。

2003/12/31(水) 08:09

★ロバート・アップデグラフ:酒井泰介訳『あたりまえのアダムス』ダイヤモンド社 \1000

 すぐ前に読んだ『ピーターの法則』の最後に、この本の紹介が出ており、本屋さんで見かけたとき、それをおもい出して購入した。「あたり前主義」を徹底するととてつもないことができるということをサラーと書いてある。どんな分野であれ「あたり前のことをあたり前にやる」ことほどむずかしいことはない。人はすぐに自己流にアレンジしたがり、それで失敗する。わたしも初任の頃、先輩教師によくいわれた。とくに、公私とも大変なお世話になった故中島正忠(わたしたちは「しょうちゅうさん」と呼んでいたが)先生には、このことを何度も教えられた。

 この本の初版本は、1916年(大正5年)に出版されているから、ちょうどわたしの親父が生まれた年でもある。読みはじめて不思議な気がした。100ページにも満たない薄い本だから、あっという間に読み終えてしまったが、とてもずっしりした気持ちになってしまった。この「アダムス」氏のように行動することは、じつにむずかしいことだし、簡単にできることではない。この本が90年近くも読み継がれている理由がおぼろげながらわかった気がする。「あたりまえに」行動する、考えることをもう一度ゆっくり熟慮してみたい。

2003/12/26(金) 15:09

★ローレンス・J ・ピーター:渡辺伸也訳『ピーターの法則』ダイヤモンド社 \1400

 12月17日の新訳発売日にさっそく購入した。その日は、はしがきとあとがきだけ読んで、数日は読まないでいた。この本の発売前に旧版の田中融二氏訳のものを数回読んでみたので、どうにもその記憶が残っていて、新訳の方に違和感が出てしまってはいけないとおもい、その記憶が薄れるのを待って読んでみることにした。

 読みはじめてから、一気に数回読んでみた。うーむ、感想はむずかしい。訳者の渡辺さんからもていねいなメールを頂き、何度かメールのやり取りもしているためか、正直にいって、コメントしづらい雰囲気がある。田中氏の訳と渡辺氏の訳の両方とも頭に浮かんでしまって、まだ自分でも混乱している状況なのだ。もとの原書はおなじでも、翻訳とはただ横書きを縦書きに機械的に直すものでなく、原著者のいわんとするところの真意を表現しなおすものなので、じつに創造的な作業である。だから、当然のことながら、訳された人の吸収されたものや理解されたことがおのずと訳文にでてしまう。その意味では、両方の本とも立派な本だと感じ入っている。エーィ、もどかしい。モジモジせずにいえば、どちらの本も一長一短であるということだ。本の装丁、余白の取り方などは旧版が、文章のパラグラフをわかりやすくしてあるのは新版だとおもう。新版でただ一箇所気になったのは、「ピーターの法則」そのもののプレゼンテーションが弱いこと。法則なのだから、きちんとカッコでくるるとか、枠で囲むとかの工夫がほしい点。これは、訳者の方の仕事というより、本の編集をする人の工夫が足りなかったと素直におもう。あの法則の記述の仕方では、どれが一体「ピーターの法則」なのか、明確でなくなってしまう。そこがとても残念。

 ただ、絶版状態であった本があたらしくよみがえるという意味ではとてもいい企画であった。いい本は、やはり後世に残していくのも大切な役目だろう。わたしの頭は旧版からの影響を避けられないが、新版で読まれる方は、またあたらしい目でこの本を読むわけで、それは時代の流れで何もいうことはない。両方を楽しめるわたしは、幸運である。この新版の価値も時代が決めるのだろう。くわしくは、後日、別のページで述べたい。

2003/12/16(火) 09:16

★養老孟司『養老孟司の<逆さメガネ>』PHP新書 \680

 昨日の朝に読み始めて、今朝の早朝5:00頃読み終えた。といっても、ずっと読んでたわけではないので、どのくらいで読んだのかははっきり意識していない。ただ、空き時間に断続的に読んでいただけ。わたし自身、高校生の頃からメガネをかけているが、この物理的なメガネのほかに種々のおもいこみメガネをかけているのだろうとはおもっている。せいぜい意識に昇ってくることなど高が知れているから、意識下では自分自身ですらどういうことを蓄えているのか、まったくわからない。養老氏が<逆さメガネ>という表現で示している内容は、おおよそは理解できるが、当然のことながら、わたしにはよくわからないこともあった。ものごとを捻って見るというか、そういう見方もあるのかな、とはおもうが、それとてひとつの見方でしかない。頭がいい人なので、こういう見方は変ですね?とヒントをいうが、「それでは、具体的にどうしたらいいのでしょう?」という問いには「それは、自分で考えよ」と返答は示さない。さすがに、現代人のほとんどを「バカ」といえるだけの人だけあって、そういうおろかな問いには答えないところがすばらしい。「ああすれば、こうなる」とおもい込んでいるのが現代人のおかしな点なのだ。まあ、「ああいえば、こういう」というのも何か屁理屈ばかりのようで、少し頼りないのだが…。何かの講演会で話した内容をそのまま文章にしたような本で、冗長なところはやむを得ないだろう。

 前に同じ著者の『バカの壁』を取り上げたが、あちらの方がおもしろかったような気もする。人間はずーとバカだったというのが真実のような気がする。それでも、そこそこに何ものかを作り上げてしまうところが不思議でもある。わたしもそうだが、「バカだ」といわれつつ、それらの本を読んでいるということが、なおのことバカである。それも、こういう本がベストセラーとかで多くの人が読んでいるというのが、これまた不思議でもある。みんな「自分だけはバカではない」とおもい込んでいるのかもしれない。

2003/12/16(火) 08:11

★大村平『仕事力を10倍高める 数学思考トレーニング』PHP出版 \1200

 帰りがけによく寄る本屋さんで、何気なく見つけて買った。著者の大村平氏の本は、以前にずいぶんと入れ込んで読んでいたので、久しぶりに目に付いたので、買うだけ買ってみようとおもったのである。コートのポケットに入る小さく薄い本(といっても230ページある)なので、通勤時だけに読もうと決めて読み始めた。読むのに2週間ほどかかったけれど、仕事力が10倍に高まったかどうかはわからないが、とてもおもしろい本だった。この人の数学の本は読んでスーッとわかるように書いているので、よほど頭のいい人にちがいない。これだけ、わかりやすく書くには、書くほうにべらぼうな実力がないと書けない。あげてある例なども適切で、数学の苦手な人が読んでも十分に読み通せるとおもう。別に目的があって買った本でもないし、ただそれだけである。これが何の役に立つのかなんて考えてもいない。そういう数学の本がとてもすきだ。すぐに役立つという本はあまりおもしろいとはおもわない。なお、この本は、演習書ではないので、問題形式になってはいない。

2003/12/09(火) 13:44

★山本義隆編訳『ニールス・ボーア論文集2 量子力学の誕生』岩波文庫 \860

 以前に読んだ『ニールス・ボーア論文集1』の続編であるが、内容はかなり変わっている。論文集1がほとんどが物理の内容面を取り扱っているのに対して、この本は物理関係の人だけを対象にしているものではなく、1に較べて読みやすい。講演の記録的な論文も多く、量子力学が出来上がってゆく経過やそのとき活躍していた人たちの回顧録も多く載せられていて、数式だけになりがちの量子力学の教科書類とはまたちがった雰囲気で読めるいい本である。山本氏の訳がじつにていねいで、文章のフォローがきちんとしており、やはりこの訳者あっての本だとつくづくおもう。物理の専門書ではないが、この本を読んでおいて、量子力学を学べば、この理論の理解に役立つことはまちがいないとおもう。わたし自身にとってもそうだった。文庫本といっても、索引までいれて507ページもある。解説、参考文献、索引など科学の本はこうして書くという例を示してくれる本でもある。

 この本を、前回の本同様、毎日の通勤時に少しずつ読んでいたため、時間的には読み通すのに時間がかかったが、これくらいのペースで読んで正解だった。内容を何度も反芻して考えながら読むためには、速読はしない方がいい本なのだろう。こういう内容の本は、おそらく速読には向いてはいない気がする。書いている山本氏の呼吸が伝わってくるような力作である。これが、この値段で買えるとは、本当に岩波書店に感謝しなければならないだろう。いい本に出合えた。

2003/12/07(日) 09:10

★勢古浩爾『まれに見るバカ』洋泉社新書 \720

 この著者の本を何冊かまとめて買ってあり、時間を見つけては読んでみている。この本の帯には、「バカにつける薬がない!抱腹絶倒の「当世バカ」図鑑!」とかある。何でも相当に売れた本らしい。最近「バカ」についての本がいろいろ出ている。よく本屋さんでそういうタイトルが目に付く。わたしも「まったくあいつはバカだよな」などと口走ることがあるが、よく考えてみると、「バカ」とはどういうことをいうのかは、うまく定義できない。定義できないものは、使う人がそれぞれに考えているイメージで表現するしかない。だから、すごくあいまいである。それが、返って読む人それぞれのイメージと重なって笑えたりするのだろう。たしかに、この本は「よく書くよ」と笑える本である。著者は「バカではない」といい切って、いろんな人を俎上に載せて切りまくっている。そんな点が、本が売れている要因かもしれない。

 気になった点は、著者の批評の対象が書かれた本をもとに選ばれている点。著者の読んでいる本は、これまた日本では当たり前かもしれないが、ぜんぶ文科系の本で、非常に偏った本しか取り上げていない点。など。しかし、ここまで大胆に人を「バカ」といい切れる度胸には感心する。本当は著者は気弱な人なのかもしれないが、文筆上で強靭なことはいいことだろう。わたしには、うらやましくおもえる。文化の一方を担う理科系にも当然、「バカ」と称される人はたくさんいる。でも、理科系の人は度胸がないのか、そんなことをいっている暇がないのか、ほとんどこういう批評をする人は見かけない。不思議な現象だ。

 あと、何冊かこの著者の本を買ってあるので、年内に何とか全部読んでみたい。なお、あとがきに著者が「なぜこのようにバカが次々とでてくるのか自分にもわからない」と書いているが、これこそが「ピーターの法則」の示すものではないかと、わたしはおもう。こういう単純なおもい込みをするところが「理科系バカ」の証か。

2003/12/02(火) 07:50

★中野好夫『ちくま日本文学全集 中野好夫』築摩書房 \1000

 勤務する高校の図書館で借りた。文庫本と同じサイズなので、とても読みやすい。中野好夫氏については、新潮文庫で出ているサマセット・モームの訳で高校生の頃より知っており、何冊か読んでいる。モームは、わたしも好きで、はじめて英語の原書(こういう表現はもう古くて嫌なのだが)で読んだのが、ペンギンブックで出ている『Of Human Bondage』であった。今でも、モームの英語はとても読みやすい(内容は深いが書き方が明解)で、わたしくらいの英語の実力のものには、ちょうどいいとおもっている。AsimovやFeynmanの本も英語で読んだほうがわかりやすい、とおもっている。訳本でも、中野氏の訳はすばらしい。日本語の文章を書いても明解な人は、訳もこなれていて、違和感を感じさせない。ちなみに、この本には、いろいろな文章がはいっているので、列記しておく。

人間の死にかた より
・「ガリヴァー」作者の死
・親鸞その晩年と死
世界史の十二の出来事 より
・血の決算報告書
・狂信と殉教
ルネサンス人シェークスピア
遺書について
川路聖護
最後の沖縄県知事
蘆花徳富健次郎 より
・謀叛論
悪人礼賛
私の信条
わたしの文章心得
歴史に学ぶ
現代の危機と終末観
マーク・トウェインの戦争批判
主人公のいない自伝 抄

 以上である。とくに、川路聖護 悪人礼賛 わたしの信条 わたしの文章心得は何度か読み返したが、自分にはいい内容だった。すでに以前に読んだものもあったが、何度読んでも中野氏の文章はクリアで気に入っている。わたし自身がこういう文章を書けないから惹かれるのかもしれない。敗戦直後の文章もあり、当時の世相・雰囲気がわかる。昨今威勢のいい言動も盛んだが、58年前のことを忘れるにはちと早いすぎる。な、石原さん。
 中野氏というと、終生何かに怒りまくっていた印象があるかもしれないが、わたしにはごくふつうのまともなことをいっているとしか感じない。物事を覚めた目で見ているようにおもえる。枝葉末節に捉われずに、本質的な箇所に切り込む論調はとてもすきだ。これは、まったく個人的な好みであるが。

2003/11/20(木) 11:31

★勢古浩爾『わたしを認めよ!』洋泉社新書 \680

 以前に読んだ『おやじ論』の著者の本で、娘の通う予備校の先生はこの本の話をしていたそうである。本屋さんでも、なかなか出会えずにいたが、ようやく見つけたので、買って読んでみた。「孤独論」「自己証明論」「家族承認論」「性的・社会承認論」「反承認論」「普通論」「最終承認論」の七章からできている。文章は、話し口調のような感じで書いてあるので、読みやすかったが、内容は「よくここまで考えるなあ」と感心してしまうほどだ。わたしなど、単純(バカか)なので、ふつうこうつきつめて、人間関係の基礎を考えたりはしない。最初、題名で「自己主張」みたいな本かとおもって読み始めたが、まったく違っていた。読み終えると、この題名が的確であるのがわかった。この著者は「生きる」ということの意味をじつに深く考えている。わたしは、素直に「ここまで考えていませんでした」というしかない。文体も、わたしにはとても読みやすい。まだ読んでいない著書にも関心がある。

2003/11/07(金) 09:16

★山本義隆編訳『ニールス・ボーア論文集1 因果性と相補性』岩波文庫 \760

 毎日の通勤の電車・バスの中だけで読んでいたので、けっこう読み通すのに時間がかかってしまった。この読書記録にも載せる本なのか自分でも迷っていた(そのほとんどが量子力学という物理の分野の専門的な話なので)ため、記録も遅れた。文庫本といっても内容は量子力学創設期のボーアとアインシュタインの論争がメインになった論文集なので、物理で量子力学を学んでいないとピンとこないかもしれない。現在でも量子力学の根底概念の中には未確定の要素が多々あるが、その発端を教えてくれる骨のある本である。編訳といっても、ほとんど山本義隆氏(物理学者兼駿台予備校講師)が一人で書かれているはずだ。氏の物理の実力はノーベル賞級といわれるほどである。しかし、時の流れのいたずらで予備校講師という在野の立場で、すばらしい仕事をされている。この本も、序文・解説と並みの科学史家にはとても書けないレベルのものになっている。

 内容は読んでもらうしかない。ただ、原子レベルのミクロの世界では、わたしたちがふつうにおもっている「因果関係」という概念は、通用しない。しかし、そのミクロの世界を語るには、どうしても現実の言語や装置と折り合いをつかねばならない。その接点を「相補性」という概念でまとめていこうという話だ。現在、量子力学という名前で教えられている内容は、このボーアが提唱した「コペンハーゲン解釈」というものが前提になっている。この概念を知らずとも、数学的な取り扱いを知っていれば、量子レベルの計算などはできる。しかし、しかしである。アインシュタインやボーアなどの先人たちがどのようにして、「量子力学」を創りあげてきたかを知っておくのは、数学的なテクニックを知ることと並行して大切なことかとおもう。よって、若き物理学徒のみなさんにもぜひ推薦したい本である。

2003/10/27(月) 15:27

★日下公人+三野正洋『プロジェクト・ゼロ戦』ワック出版 \880

 今もって語り継がれる「ゼロ戦」の良かった面、悪かった面などを設計段階・性能・運用面などの観点から両氏が語り合っている。両氏ともゼロ戦が本当に好きなんだなとわかる。このゼロ戦を最前線で操縦するパイロットたちは懸命に戦っていたのに、あの時代は「上層部がバカだった」ときっぱりいっている。その通りである。そして、現在はどうかといえば、やはり「上がバカだった」となる。これもまさにその通り。下の者がいくら頑張っても「上がバカではどうしようもない」のは、昔も今も同じだ。名機ゼロ戦も最後までこき使われて終わってしまった。現代の日本の組織でも、真に能力のある者も、使い捨てにされる運命にあるのは同じ構図であろう。無能な上層部は狡賢く生き延びていく。わたしも著者たちと同じように「ゼロ戦大好き人間」であるが、無駄死にはしたくない。ゼロ戦をネタに現代の組織論にも話がおよんでいておもしろく読めた。ただ、当時のことを今の目でいくら批判・分析しても、もうその時代を変えることはできない。これから、それをどう生かすかは現代人の問題だろう。

2003/10/27(月) 07:50

★井田茂『惑星学が解いた宇宙の謎』洋泉社新書 \740

 夏に開催された日本物理学会の科学セミナー「宇宙を見る新しい目」のテキストに参考文献として挙げられていたのが気になって、本屋さんで見つけたとき買っておいた。内容はセミナーでも取り上げられていたものと重複していたが、楽しく読めた。わたしたちの住む太陽系みたいな惑星系はどこにでもありそうな気がするが、どうもそうではないらしい。他の惑星系はすでに100個以上確認されているが、そのいずれもが、わたしたちが想像していた惑星系とは異質らしい。つまり、惑星の並び方、性質などが似ても似つかないものが多いようなのだ。そこから、また新しい惑星理論が生まれつつある。太陽系自体の成り立ちもまだわかっていないのが現状。あのお月さんが岩石だけでできているとても変な衛星だということはあまり知られていないみたいだ。その成因はまだわかっていない。わかっていないことだらけなので、とてもおもしろい。自然科学の謎というのは、わかってしまえば、単なる知識になってしまうため、こういう研究段階のものがじつは一番おもしろい。おそらく、科学に終わりはないような気がする。

2003/10/24(金) 09:14

★勢古浩爾『おやじ論』PHP新書 \680

 娘の通う予備校の先生がこの著者をほめていたそうだ。娘たちが紹介された本は別の本だが、わたしにはこっちの本がおもしろそうなので、買って読んでみた。いやはや、今年度のお笑い大賞をあげたくなるほどおもしろかった。今年、本を読んでいて腹を抱えて笑ったのは、二度切りである。それほどわたしにとっては愉快な本だった。こういう本を書ける人は好きだ。文章で人を笑わせられるというのは、すごい文章力だとおもう。それも下ネタ話などではなく、ふつうの内容で。著者は現在サラリーマン。洋書輸入会社に勤務とのこと。専業の作家でないところがまたいい。著者も中年。わたしも中年(年下だけど)。気づいてみると、もう中年だった。自分でも予想外のことだ。50歳前後に予定ではこの世を去っているはずであったが、生き延びてしまった。そして、こういう本に出会ってしまった。自分では、どうにもできない業みたいなものである。この作者の他の本も気になりだした。本屋さんで見つけたので、数冊買い込んだ。おもしろそうなのだけ、読んでみようとおもっている。もう、好きでもない本を義理で読んでいる時間はない。

2003/10/15(水) 07:56

★ジェームズ・アレン:坂本貢一訳『「原因」と「結果」の法則』サンマーク出版 \1200

 95ページの小冊子なので、あっという間に読んでしまった。読んで自己啓発本などで有名な「ナポレオン・ヒル」や「マーフィーの法則」で有名なマーフィー博士などの語り口の元がここにあることをすぐに感じた。「自分の思いが自分自身を作っている」という考え方の基が。こういう価値観はその人の感じ方によるので、わたしにはこの本のいわんとしていることは、まずまずわかるが、肯定も否定もできそうにない。人間の表面にあらわれている意識は、その下にある潜在意識にくらべれば、あまりに小さい。かといって、潜在意識にあることが、人間の行動をすべて決めてしまうというように、決めつけてしまうのは躊躇される。こういう本は、読んで自分にはとても適切だとおもえる人にはいいかもしれない。わたしには、ちょっとどうかな…とおもつつ読んでいた。考え方としては参考にはなるし、面白いけれど、ここまでわたしには悟れない。

2003/10/14(火) 07:48

★ダニエル・キイス:小尾芙佐訳『アルジャーノンに花束を』早川書房 \760

 今年2冊目の小説。小説はほとんど読まなくなった。この本は、以前、英語のペーパーバックで途中までは読んだ。しかし、何かの理由でそのままになってしまっていたので、早川書房から文庫本で出たのを見つけ買った。そして、12日・13日の2日で一気に読んだ。500ページほどあったが、活字が大きく印刷してあり、老眼の出てきた自分にはとても助かった。こういう本がやはりいい。内容は、書いてしまうと返って、結末が面白くなくなるので、興味のある方は読んでみてください。「頭がよくなりたい」と考えている多くの人に、非常に参考になる結末だとおもう。わたしの尊敬する作家アイザック・アシモフが激賞したというくらいだから、小説としてはとても優れているのだろう。この作家の本は、この本しか読んでない。今度、13冊ほどのダニエル・キイス文庫という形で出版されているみたいなので、別の作品も読んでみようかとおもっている。早川書房の本はけっこう当りが多い。

2003/10/10(金) 09:47

★ポアンカレ:吉田洋一訳『科学の価値』岩波文庫 定価不明

 何度か紹介したポアンカレの著作の第2巻目の本。1905年に出版されたものなので、ちょうどアインシュタインの革命的な論文の発表された年と同じである。現在読んでもまったく古さを感じさせない。というより、最近出版されている本より、奥が深く考えさせられる内容だ。ほぼ100年近く前に、科学の危機と称せられる論調があったことも現在と似ている。科学の世界の古典になるとおもうが、古典と呼ぶにはあまりに未来を見据えて書いてある。何度も読み返したい本である。

2003/10/09(木) 16:14

★藤沢晃治『「わかりやすい表現」の技術』講談社ブルーバックス \800

 もう数日前に読み終えたのだが、中間テスト問題作りや連日の会議つづきで読み終えたことも忘れかけていた。サブタイトルは「意図を正しく伝えるための16のルール」とある。次にそのルールを記す。

(1)おもてなしの心を持て。
(2)「受け手」のプロフィールを設定せよ。
(3)「受け手」の熱意を見極めよ。
(4)大前提の説明を忘れるな。
(5)まず全体地図を与え、その後、適宜、現在地を確認させよ。
(6)複数解釈を許すな。
(7)情報のサイズ制限を守れ。
(8)欲張るな。場合によっては詳細を捨てよ。
(9)具体的な情報を示せ。
(10)情報に優先順位をつけよ。
(11)情報を共通項でくくれ。
(12)項目の相互関係を明示せよ。
(13)視覚特性(見やすさ)を重視せよ。
(14)自然発想に逆らうな。
(15)情報の受信順序を明示せよ。
(16)翻訳はことばでなく意味を訳せ。


と以上16のルールが挙げられている。道路の標識や役所の文書、製品の説明書などなど身近なところに「よくわからない表現」がじつに多い。これらの欠陥をよく調べてみると、上記にかかげたルールのどれかに違反しているという。たしかにそうともおもえる。ただ、この16のルールすべてを満たしても、どうもわからん人にはわからないこともある。あくまでも目安として、これらをチェックして明快な表現を心がけてゆくことは大切だろうと考えた。

2003/09/30(火) 16:06

★佐藤文隆『宇宙物理への道』岩波ジュニア新書 \780

 めったに借りないのだが、昨日ちょっと調べものがあり、勤務校の図書室に行った際に見つけた本で、一晩で読んだ。佐藤氏の本は、専門書から文庫サイズのものまでずいぶんとお世話になっている。内容的には概知のことが多かったが、この本は氏の京都大学教授退官の際の「退官講演」が元になっている。山形の田舎から京都に出てゆく過程などにも触れられていて、これはとても興味深かった。自分の好きな学問にマイペースで打ち込んで行かれる姿がすがすがしい。本当にすぐれた頭脳をもっていて、のびのびと才能を開花させてこられたのが、すぐにわかる。若い人たちへのメッセージを念頭に書かれているが、もちろんどんな年齢の人が読んでもいい。塾通いも厳しい受験勉強もすることなく、田舎からひょっと出てくるこういう天才的な人はこれからの時代にはあまり見られないだろうな。氏の専門書は、とてもレベルが高いので、これほど早くは読めないが、でも面白い。わたしの尊敬する学者さんである。

2003/09/29(月) 08:06

★小浜逸郎『頭はよくならない』洋泉社 \740

 昨日買って、一気に読んでしまった。書名が世間の常識に反するようで気に入った。というより、日頃、教育の現場で仕事をしながら生徒や同僚などを観察していると、まさにこの書名の通りだと感じていたからだ。確かに学業成績の上下は多少あるが、基本的には勉強したからといって、頭がよくなるとはおもわれない。努力でカバーできる部分はおもったより少ないし、努力ができるというのも頭のよさの一つなのだろう。もちろん、自分自身を振り返っても、否定したい気もするが、事実そうである。頭のいいふりをしたり、学歴(学校歴)をふりまわしても、すぐに化けの皮ははがれてしまう。この本で一番印象に残ったのは、「頭がいい」というのはどういうことかを列記して書いてある部分だった。長くなるので、別に稿をおこして書いてみたいとおもうが、それを見るとなるほどなーと妙に納得してしまう。ふつうに日常をふりかえっても、「すごく頭のいい人だな」「中ぐらいの頭だな」「頭が悪いな」などというのは、だれでも少し時間があればあっという間に直感でわかる。こういうことを、教育の現場で生徒にいう人は今はほとんど(?)いない。わたしがまだ生徒・学生をやっていた頃には、ふつうにいわれていたし、それもかなりの確率で当たっていた。自分の評価は自分ではなかなかむずかしいが、他人のそれは意外に簡単なのだ。もちろん例外は常にあるのだが、結果的に見ると大きくはずすことは少ない。仕事で生徒たちを見ていても、学業成績も含めて、「頭のいい・悪い」はけっこうわかるようにおもう。ただし、それを本人にいうことはない。「努力すれば、伸びる」なんて言ってごまかしている。「努力できる」ことも「頭のいい」条件の一つなのに…。

 頭がいいことはすばらしいことである。人間として生まれたのなら「頭がいい」ことは自慢していいことだし、下手な謙遜などはいらない。その能力を存分に生かして、社会に貢献してもらえば、みんな助かるのだ。頭がいい人に変な劣等感をもったり、いじめの対象にしたり、「頭がいい」だけでは人生はやっていけない、などといっている人は、頭の悪い人である。頭がいい人にもその人なりの限界はあり、それを本人が自覚しているとすれば、その人は真に優れた頭脳をもっていると考えてまちがいない。頭のいい人が必ず「偉人」になるかというと、そうではないが、逆は真なりで、「偉人」と呼ばれるような人で頭の悪い人はまずいない。才能の現れ方に不均衡はあっても、基本的には頭がいいといえるだろう。

 同世代の半分が大学まで行く時代になっても、頭のいい人の割合は増えない。親は(わたしもその一員である)子供に「頭のいい」人になってほしいと願う。しかし、親があっての子供である。「トンビが鷹を生んだ」の喩えは、例外だからこそある。「頭のいい人」をみんなが素直に認め、その才能を生かせる雰囲気ができてくれば、頭のいい人たちもきっとやりがいが出てくるにちがいない。

2003/09/27(土) 17:55

★ポアンカレ:河野伊三郎訳『科学と仮説』岩波文庫 定価不明

 ポアンカレの三部作(本当は四部作)『科学と仮説』『科学の価値』『科学と方法』の1作目。1902年に出版されたので、書かれたのは前年の1901年頃だと推測される。まだ、アインシュタインの特殊相対性理論が発表される1905年の前である。この本を若きアインシュタインは何度も読んだはず。この中に、すでにアインシュタインが相対性理論で述べようとしたことの萌芽がしっかりと書いてある。わたしがこの本を読むのは、もう3回目くらいだとおもうが、何度読んでも考えさせられる。現在でも「科学と仮説」の関係はこの本に述べられている以上のことは何もない。もう、こういう本を、若い人たちで読む人もいないだろう。古本屋のおやじさんも「最近は岩波の文庫を読む人もめったにいないからなー」とぼやいていた。いい本は、リメイクして何度も出してくれるといいのだけれど…。出版界も大変だろうからな。岩波もきちんと読みやすい現代語に直して読んでもらおうという努力が今ひとつだ。この本も訳がわかりにくいところがところどころ散見する。時代を超えて残したい本なので、ぜひ読みやすくしておくのも大切かなとおもう。

2003/09/27(土) 17:44

★関根正明『心をつかむ話し方』学陽書房 \1360

 昨年、近くの「BOOK OFF」で\100で買い、そのまま積んで置いた本。もう読みそうにないので、捨てようかなとおもった。捨てる前に、1度だけさっと読んでみようとおもい、読み始めた。捨てないでよかった。ものすごくまじめそうな中学校の校長さん(80年代頃)が書いた本で、教師がどういう風に生徒や父母との接するといいかが、実例も豊富にていねいに説明してある。共感するところが多く、とても教えられる点がいろいろあった。仕事に生かして行きたい。最後の方で、「言葉よりも心である」と精神論に行ってしまっているのは、少し残念な気がした。精神論を持ち出すと、せっかくのいい味がすぐに悪くなる。話し方のへたなわたしには(すぐに早口でベラベラになる)「良寛戒語」の一節はきびしく効いた。反省してますf^^;)。

2003/09/24(水) 08:26

★川島隆太『自分の脳を自分で育てる』くもん出版 \1200

 最近、本屋さんで「百ます計算」などの練習本を頻繁に見かける。陰山英男氏の実践を本にした『本当の学力をつける本』文藝春秋の中で紹介されて広まったものとおもわれる。陰山氏の実践は、岸本裕史『見える学力、見えない学力』大月書店という本に書かれていることを元にしている。この本に「マラソン計算」という項目で紹介されているものがそれである。何事にも先人というのはあり、それをどう新しい形で応用して行くかが大切なのだろう。これを学校という大きな組織の中で実践されたものが、評価されたのだとおもう。折も折、学力低下の問題もそれに拍車をかけたのかも知れない。

 最初から変なことを書いたが、じつは「単純な計算」練習などが脳のはたらきを活性化させるという実験的な根拠を与えたのが、川島氏の書かれたこの本である。こども向けに(もちろん大人が読んでも内容は優れている)ていねいに「ブレインイメージング研究…脳の活動状況をCTやMRIという機械で可視化する」を紹介しているのが、この本である。この中にその具体的なデータが載っている。専門的なことはわからないが、コンピュータを使って可視化された写真では、たしかにそのように見える。ただし、解釈はいくらでもできるので、この解釈にまちがいがないかどうかは、わたしには判断できない。彼の説明をすなおに信じれば、そうとも取れる。

 この本を読んで、脳の研究というのはほとんどわかっていないのだなという印象を受けた。まだまだ現象論の段階で、理論的な解明には程遠いようだ。こういう現状をみると、これらの基礎固めの上に成り立つはずの「心理学」などが、文学のようなイメージを抱かせる原因がよくわかる。人間が自分たちの脳についてクリアな議論をするには、材料があまりに足りないのが現実なのだ。脳について書かれた本を読むときは、そういう現状をきちんと認識した上で読む必要があるな、と教えてくれる誠実な本であった。続編が出ているので、それも近々読んでみようとおもっている。

2003/09/22(月) 17:22

★広中平祐『ドキュメント・わが母 雲の如く』旺文社 \1200

 部活動の指導(といっても指導できないが)のため、物理室に残って雑務をしている。退屈でもあるので、昨日、文化祭の古本市で50円で買ったこの本を読み始めたら、面白くて2時間ほどで一気に読んでしまった。広中氏は数学のノーベル賞といわれる「フィールズ賞」を受賞された世界的な数学者である。日本国内でもほとんどの賞は受賞され、昭和生まれではじめての文化勲章を受章している。長く、米国のハーバード大学教授でもあられた方。氏が自分の母親について書いた本で、はじめて目にした。9男6女計15人のこどもを育てられた母親を懐かしむように描いている。こういう環境の中でも、本当の才能をもった人は出てくるのだということは希望を抱かせる。父親と母親の自然な相補関係、こどもを愛しんでくれる母親。そこから、巣立って知る親の愛情。同じようにして、田舎を出てきたわたし自身にも「オレもそうだったなー」と何度も思い起こさせられるような文章にときどき感慨する。亡くなってすでに18年近くになるわたしの母のこともおもい出してしまった。母とは高校時代までしか一緒に生活していないから、広中氏と同じである。実家を離れて本当に父・母の苦労がわかったようにおもう。一人の人間として、母親を見れるようになったのも、そのせいだろう。本の中にも同じような表現があり、胸がつまる。読み終えて、しばし、故郷のことをおもった。

2003/09/21(日) 12:45

★内田研二『成果主義と人事評価』講談社現代新書 \660

 昨日(9/20)の読売新聞神奈川欄2に「教員に「能力給」導入」という記事が載っていた。県教委は今年度から「公立学校教職員の人事評価システム」を導入したが、これを実際に給与に反映するかは、現在検討中である。県議会で松沢知事に質問した民主党の勝又恒一郎氏という方は「やる気のある先生も、やる気のない先生も給与が同じなのはおかしいのではないか」とじつに幼稚な質問をしている。「やる気のあるなし」が簡単にわかれば、だれも苦労していないのである。能力があるかどうかもわからない県教委のお役人たちが校長・教頭などの管理職の人事評価をし、さらにその能力があるとかないとか関係なく管理職になってしまった校長・教頭が一般教員の人事評価をする。それを給与に反映するという流れだ。

 最近では、公務員関係は何でも民間でやっていることを真似すればいいというような風潮が蔓延しており、この能力査定主義や人事評価システムも民間の真似である。仕事内容がちがっていてもとにかく真似である。わたしも今年度「自己観察書」とかいうのを書いて、管理職に見てもらい、ご指導を仰いだ。管理職の方は、以前は一般教員だった人がほとんどなので、さぞかしすばらしい先生だったのだろうと、謙虚に話を伺い、その指示を受けて、書き直すところは書き直して提出した。年度末に、その書いた目標などが実行できたか、査定を受けるみたいである。何だか、子供のときの目標作りみたいで、ちょっとアホらしかった。こんなので、給料が決まるのだったら、文章書きのうまい人ならすぐにできるし、実行などは適当にやっていればそこそこにできることだけ書けば、実行できるに決まっているし、本当に「やる気」などというのを判定できるのか、心もとない。

 どの職業にしても、それに従事している人が、すべて適正にあっていてすばらしい仕事をするなんてことがあるとしたら、わたしは気持ちが悪くなってしまう。たしかに、仕事をしないで給料をしっかりもらうというのは、見ていて不愉快にならないかといわれれば、なるに決まっている。しかし、あまりに潔癖主義の人が増えているのは何か危険なものを感ぜざるを得ない。仕事なんて、ほどほどにやっていればいいのでは、とわたしはおもう。人のことはともかく、あまり気にしても仕方ない。

 ところで、この勝又氏という議員さんは、この種の本くらいは読んでメリット・デメリットをしっかり把握してから質問しているのでしょうな…。読んでいないとはいわせませんよ。能力のある議員さんなのだろうから。

2003/09/16(火) 15:49

★藤沢晃治『「わかりやすい説明」の技術』講談社ブルーバックス \800

 毎日、仕事で生徒に授業をしていると、「わかりやすく」教えようと苦労が絶えない。さきほど6時間目の3年生の物理が終わった。授業の前にこの本の最後にまとめてある15のルールを声を出して反復してから臨んだが、うまくいかなかった。室温32℃、湿度65%の中では、生徒たちはほとんど死んでいた。授業が下手なのは、教員になった頃からで、今まで授業が上手いと自分でおもったことは一度もない。会津弁丸出しで訛っている。早口で話があっちへ飛んだりこっちへ飛んだりする。自分の頭の中では、話の内容は全部つながっていると勝手におもっているのだが、聞くほうはそうではないことは、生徒の顔を見ていてわかる。試しに、ときどき、ICレコーダーに授業で話したり、説明したりしているのをそっくり録音して聞いてみている。たしかに訛ってはいる。ただ、わたし自身には話のつながりはわかっているので、それほどの違和感はない。もう10数年も前から、授業ではかなり意識してゆっくりとていねいに話すように努力はしているのだが、生徒はそうはおもっていないみたいだ。

 教えている物理の内容自体が自分できちんと理解できていないときは、生徒がわからないのは当然である。それは、わたしの不勉強と理解力のなさだから、日々努力するしか方法はない。「わかりやすい説明」というのがあるというのは、その通りだろう。ただし、万人にわかりやすいというようなことは考えにくい。「わかりやすい」といっているだけで「わかる」とはいっていないところがそれだろう。どんなにわかりやすく工夫をしてみても限界はある。よくいわれるように「心ここにあらざれば、見れども見えず、聞けども聞こえず…」はいつの時代でも通じる。あくまでも、聞く意思のある人に、できる限りわかりやすくというのが前提になっていることをわすれないで、読むしかない。自分の逃げ口上にはしたくないので、この本に書いてあるようなことを常に意識して実践できるようつづけてみたい。

2003/09/13(土) 10:31

★M・ミッチェル・ワードロップ『複雑系』新潮文庫 \933

 フラクタルやカオスなどを大きく含む概念が「複雑系」といわれている。かなり前から、これらの理論には関心をもっていたが、吉永良正『「複雑系」とは何か』講談社現代新書を読んで、概略だけは知識としてもっていた。その中に、この本のことが書いてあり購入だけはしてあったが、そのまま積ん読状態が長くつづいてしまった。今回、ちょっとしたきっかけで読んでみようという気になり、通勤時だけに限って読むことにした。683ページあったので、約1ヶ月ほどかかってしまったが、昨日ようやく読み終えた。「複雑系研究」のメッカであるアメリカアリゾナ州サンタフェ研究所の成り立ちから、それを支えてきたすごいメンバーたちへの膨大なインタビューを巧みにまとめあげて書かれている。途中で息切れもした。最後の頃には、あまりにインタビューの内容が多いので、「……」と○○はいう、のような表現にちょっと食傷気味になってしまった。本当にねちっこいなーともおもったが、これくらい書いてようやく「複雑系」という新しい考え方のもとがわかるのかな、と半ば諦めた気持ちで読んでいた。読み終えて、疲れた。吉永氏の本のほうがやはりわたしには合っていたような気がした。まだはじまったばかりの研究だとおもうが、これからどんな風に発展して行くのかには興味がある。種々の検索エンジンで探してみると、これらの現象をシミュレーションで見ることできる無料のソフトもけっこうあるので、楽しんでみられると面白いとおもう。これで、「複雑系」は少しお休みだ。

2003/09/08(月) 18:01

★千葉剛『宇宙を支配する暗黒のエネルギー』岩波書店 \1100

 現在の宇宙は、観測を信じるとすると、「加速膨張」をしているという。1929年にハッブルは「遠くの星々ほどお互いに速い速度で遠ざかっている(膨張している)」という「膨張宇宙論」を発表して人々を驚かせたが、現在ではさらに「加速して」膨張しているという観測のデータが得られており、その解釈をめぐって議論がなされている。この「加速膨張」の原因として考えられているのが、「負」の圧力成分をもつ未知のエネルギーである。正体不明のものなので「ダークエネルギー」と呼ばれているが、何とこのエネルギーが宇宙に占める割合は70%以上にものぼり、われわれが夜空に見ているいろいろな星々を造っている物質は、0.5%にも満たない。このダークエネルギーの正体について、種々の可能性を述べたものが、この本である。ほぼ100ページのコンパクトな本であるが、著者は35歳の若さにもかかわらず、大変ていねいにわかりやすく解説してあり、非常に参考になった。宇宙について書いた本にはいろんなレベルのものがあるが、レベルを落とすことなく、明快に書いてあるという点でもとてもいい本である。本屋さんに注文して購入したが、読んでじつに満足である。

2003/09/03(水) 10:05

★日高義樹『アメリカの世界戦略を知らない日本人』PHP \1300

 この本は、イラク戦争がはじまる前に書かれたものだが、イラク戦争のはじまる時期やその戦争後のことが、見事なくらいに的中している内容になっている。各章のタイトルは次のようになっている。「イラク戦争が世界を変える」「日米安保の時代が終わる」「次はお前の番だ、キム・ジョンイル」「当分北朝鮮と韓国は合併させない」「中国はブッシュ大統領に脅えている」「中国は怖くない」「ヨーロッパは終焉した」「ブッシュ大統領はけた違いに強い」「ドルの立場を守るには日本円が必要だ」「日本の平和主義は敗れた」の10章で構成されている。ちょっと前に読んだ同じ著者の本でも感じたことだが、どうも日本で報道されているアメリカのようすとアメリカ国内での論調に相当なずれがあるみたいだ。それというのも、日本人が聞いているアメリカのようすというのは、アメリカ東海岸のある一部のマスコミの論調とほぼ歩調を合わせているように見受けられるからだ。日本でも有名な「ニューヨークタイムス」などは、現在では野党になっている民主党を支持する新聞である。あれほど、日本国内でも人気のないブッシュ大統領がアメリカ国内では70%以上もの支持を得ている理由は、これらのインテリ新聞の聞きかじりでは、全く理解できない。この辺の状況をていねいにリポートしているこの本は、アメリカはおろか日本国内の現状にも疎いわたしにはとても参考になった。この本の内容をすべて吟味する力はないので、ひとまず参考にということであるが、こういう本もおもい切って読んでみてよかったとはおもう。

2003/08/28(木) 20:25

★栗田亘『漢文を学ぶ(一)(二)』童話屋 \286×2

 (一)(二)合わせて35文の漢文が載せられている。先日、何気なく買ったものだが、昨日ときょうで、電車の中で面白く読んだ。両方とも75ページで薄い。でも、読んでいて「おれも、こういうところばかりだなー」と反省させられる警句がじつに多かった。が、朝日新聞の天声人語などを書いていた人だからではないが、ちょっと権力批判の体臭がプンプンしているのはどうかとおもった。漢文が好きな人に多いのだが、漢文に書いてあることは、現実にはそういうことができなかった、そういうのは大衆的にも認知されなかったという反面教師的な文章が多いことを忘れてはならない。老子、孔子、孟子しかり。理想ではあるが、現実にはほとんど役には立たなかったのだ、とおもう。日本の漢文で習うものは、いわゆる中国での歎き節なのだ。現実、そうでなかったために、それを歎いて書かれたものが大半である。わたしもそういう中国の昔の文章(主に漢文)がきらいではないが、いかにも教養ぶってそんなものを学んでも何も得るものはないと考える。非常に私的ではあるが、漢文はほとんど反語として、わたしは捉えている。それほど、中国という国は、広く厳しいところであったと…。わたしは漢文にロマンはほとんど感じない。人生を生きる知恵としても、さほどのものとはおもえない。それなのに、なぜ読み続けるのか、わたし自身にもよくわからない。多分、あの大地がそうさせているのかもしれない。

2003/08/28(木) 08:55

★野本陽代『続・ハッブル望遠鏡がみた宇宙』岩波新書 \1000

 火星が昨夜、6万年ぶりに地球に最接近した。わたしは、ひょっとすると引力の関係もあって大きな地震などにつながらなければいいが、と一応心配しながら少しだけ対策は考えた。しかし、何も起こらなかった(まだ、しばらくは油断できないが…)。前著の続編で、本屋さんで見て、寝床で見るのにいい本だなとおもい、購入した。宇宙のいろいろなレベルの天体の写真が美しい。じつは、この本に載っている写真はインターネットでも簡単に見れる。「ハッブル・ヘリテッジ・シリーズ」と呼ばれる次のサイトへアクセスされるといい(http://heritage.stsci.edu)。可視光で見られる宇宙の果てまでの写真が勢ぞろいしている。夜空に見られる星々のさらにかなたには想像を絶するような世界が広がっている。宇宙をロマンティックに想像するのもいいが、観測で見られる宇宙は、そんなちっぽけな宇宙観をいとも簡単に吹き飛ばしてしまうほどの光景を見せてくれる。われわれ地球人の存在は、この広大な宇宙の中で見ると、あまりにも小さなできごとであるが、その存在は神々しい。「こんな小さな地球の中で、戦争なんて…」という気持ちも自然に湧いてくるが、しかし、それもまた現実である。あ、いけない、もう部活動に出かける時間なので、これにて。

2003/08/28(木) 08:20

★日高義樹『アメリカは北朝鮮を核爆撃する』徳間書店 \1400

 過激な書名の本である。新聞に広告が出たとき「エェッ!」とおもい、チェックを入れておいたが、なかなか本屋さんで見かけず、先日やっと見つけて購入した。書名は過激であるが、読んでみて、しっかりしたデータに基づき、冷静に分析している本であると感じた。アメリカにとって、「北朝鮮」の核は全くの脅威ではない。自分の国に到達するだけの弾道弾を北朝鮮はもっていない。それに、ブッシュ大統領はそれまでの政権の方針をほぼ無視して「核爆弾を持っている国は、核爆弾で攻撃する」とはっきりと表明している。もちろん、その前提に、サイズの小さな限定核が完成することをおいてはいるが。元来、アメリカは「攻撃をすることで、自分たちの国を守り、国を作ってきた」という経過と歴史がある。他の国の忠告など聞く気などさらさらないのである。今回のイラク攻撃をみてもわかるとおり、自分たちが攻撃しないと安全が保たれないとなれば、国連などの無力なものなど、最初から眼中にない。自分たちのしたいことはする、これが国の方針なのである。この本にあるように、北朝鮮がわがまま放題を言っていられるのは、あとわずかであろう。アメリカにとって、北朝鮮を攻撃するのは、すぐにでもできるとおもわれる。そのとき、在日米軍などは全く使われない。すでに、グアム島には、それまでになかった海軍の基地の拡張もおこなわれ、そこから北朝鮮をダイレクトに攻撃できる態勢がほぼ整っている。B52戦略爆撃機は米本土から多数終結して、準備は万端に揃っている。北朝鮮が「日本を攻撃する」などといっても、そんなことはアメリカにとって、何の脅威にもならない。日本は、現在では冷戦も終わり、アメリカがわざわざ自分たちの国の軍人の命をかけて守らなければならないほどの国ではなくなっている。実質「日米安保条約」はすでに、アメリカにとっては、何の意味ももたないものなのだ。「アメリカが日本を守ってくれる」などと幻想を抱いているのは、平和ボケした日本の国民だけであろう。この本の帯にある「金正日体制亡きあと、日本に本当の危機がやって来る」というのは、本当だとわたしもおもう。中国・ロシアがまた日本のすぐ近くまで忍び寄って来て、脅威となる。そのとき、この日本を守ってくれる国はない。自分の国は自分で守るしかない。これは、世界中どこでも通用する常識である。と、気負って書いてはみたが、わたし自身ほとんど「平和ボケ」しており、「何とかなるべェー」と情けないくらいに気合が入らない。昨日からは、北朝鮮を交えた「6ヶ国協議」がはじまった。北朝鮮の出方いかんでは、上に書いたようなことは現実におこるような気がする。一番、被害を受けそうなわが国が、北朝鮮に対して何の強制力(経済支援をしないなどというのは、泥棒にお金あげないよと言っているみたいに、おかしなことである)も行使できない国に成り下がってしまっている現実に愕然とする。われわれの住むこの日本は本当に国家なのだろうか?

2003/08/18(月) 10:46

★陰山英男『本当の学力をつける本』文藝春秋 \1238

 著者の名前が正確にMS-IMEでは出ない。「かげやまひでお」と読むのだが、苗字の「かげ」と名前の「ひで」の字が少し違う。どうでもいい問題ではない。しかし、わたしの使っている日本語入力システムではだめである。著者には申し訳ないが、この漢字で勘弁してもらうことにする。2002年3月30日に初版が出たときにすぐ購入して途中まで読んだまま、ずっとそのままにしてしまった。べつに面白くなかったというわけではない。この本の前後に「学力問題」を扱った本をかなり買い込んでいて、それらを次々に読んでいるうちに読みそびれてしまったのだ。昨夕、帰省先から戻り、疲れて少し寝てしまい、目が覚めて枕元に積んであった本の中にあったこの本に気がつき、残りを全部読んでみた。そして、ついでにもう一度ざーと最初から通して眺めてみた。副題に「学校でできること 家庭でできること」とある。学校でできること、まず何をおいてもやらねばならないこと、それは「本当の学力をつけること」という著者に全く同感である。そのために公立の学校はある。部活動だとかその他の活動は大切には違いないが、本質ではない。「生きる力」だののお題目の前に、自分の足でしっかりと人生を築いていくための本当の「基礎」となる「学力」を血肉になるまで子供に滲みとおすこと。この目的のために、学校でできることは何か。それが書いてある。著者のはじめての本であり、誠実さが伝わってくる。学校で教える者として、肝に銘じておかねばならぬこと、それは「学力」をきちんと保証することだ。これができなければ、学校の存在意味はない。ほとんどの生徒が塾通いをするのが一般的になってしまった現在、学校の意味が問われている。何でも学校でやろうとする時代はすでに終わっている。その当たり前のことを教えてくれる本である。

2003/08/18(月) 10:13

★夏目房之助『漱石の孫』実業之日本社 \1700

 8/11(月)から帰省してきた。この4月に亡くなった親父の新盆になるため、本当に久しぶりの夏の帰省であった。田舎で手持ち無沙汰にならないようにと、本屋さんで何か面白そうな本はないかと探していたときに、少し前にちらっと見て興味を感じたこの本を覚えていて、購入した。これを持って田舎に向かった。いざ、田舎に戻ると雑事も多く、なかなか読む時間はとれなかったが、8/16に暇を見つけて一気に読んだ。著者は有名な漫画家兼マンガ批評家であるが、あの文豪「夏目漱石」の直系の孫でもある。本は、この著者が祖父にあたる漱石の英国留学時下宿したアパートを訪ねるところからはじまる。最初からぐいぐいと惹きつけられてしまった。何といっても、わたしは幼少時からの漱石のファン。現在は、手元に『夏目漱石全集 全10巻』ちくま文庫しか置いてないが、田舎の実家にはそれぞれの年代で手に取った漱石の本が何冊も置いてある。文庫本になっている全集ももう何度か読んでいる。いつ読んでもわたしにはじつに面白い。「倫敦塔」という小品がとても好きなのだが、驚いたことにこのお孫さんも祖父のこの作品が好きだと書いてあり、わが意を得たり。文豪といわれる祖父を過剰に意識した年代もあったことなど、さもありなんと、同情したり…。読んでのあたらしい発見は、従来漱石は鏡子夫人とはあまり仲が良くなかったといわれているが、じつはそんなことはなかったということ。家族としての祖父母へのあたたかい想いがしみじみと感じられ、最後の一行まで納得できた。山仲間の甲地さんによると、鴎外がより深みがあっていいそうだが、一通りは読んだはずだが、わたしの漱石好きは気質のようで、読んでいて飽きない。おそらく、残りの人生も漱石を読んで満足しているのではとおもえる。この本でいいお盆を過ごせた。

2003/08/10(日) 09:53

★高田明和『脳を「芯」から癒す本』光文社KAPPA BOOKS \800

 副題に「クスリがいらないウツの処方箋」とある。わたしは、HPのあちこちに書いてあるように「うつ病持ち」と言っていい。おそらく、母親からの遺伝かなともおもうが、20歳頃からその傾向が出てきた。一番ひどかったのは30歳頃で、このときはじつにあぶなかった。当時、職場に自転車で通勤していたのだが、踏み切りで電車に飛び込みたくなったこともある。あまりの恐怖に、身体のあちこちが痛み、眠れない日々もつづいた。今おもうと、よくぞ生き延びた!と自分でも不思議なくらいである。だから、この病気になってしまった人の苦しさは痛いくらいにわかる。ただ、共感はするが、それ以上はする気はない。自分で乗り切るしかないからだ。現在でも、この病気は完治したわけではない。今のところ、死ぬまで治る予定はない。何とかだましだまし、付き合っていくしかないとおもっている。それでも、この本の著者が言うように、苦しみを和らげる方法はある。しかし、人間の神経細胞って不思議なものだなーとつくづくおもう。ほんのちょっとしたことで、シナプスの伝達物質の量が変化して、気分まで変わってしまうなんて。ま、そんなことはどうでもいい。この本からなかなか眠れないときの対処法をばっちり入手した。今度、眠れないときに試してみよう。

2003/08/01(金) 10:16

★サイモン・シン:青木薫訳『フェルマーの最終定理』新潮社 \2300

 この本もしばらく前に買って、寝かしこんでおいた。ちょうど発酵具合もよくなったので、数日前から読み始め、昨夜読み終えた。「フェルマーの定理」は有名で、今更よけいなことを書いてもしかたない。この定理が証明されたというニュースを10年ほど前に聞いたのだが、そのあとどうなったのか?という疑問に本当にていねいに答えているのが、この本である。この本の訳者の青木薫女史があとがきに書いているように、わたしもこの本の最初のあたりで、物理と数学をくらべ、数学の優越をこれでもかと述べているところは、ムッときたが、読んでゆくにしたがい、その意味もよくわかった。数学の内容に関わることで、ここまでぐいぐい惹きつけられる本は、そうはない。数学関係の本で感動するというのもめったにないことだが、じつをいうと、あまりの感動に目頭が熱くなったところがいくつもあった。わたしが、どうして数学に惹かれ続けていたのかが、ようやくにしてわかった気がする。ワイルズ氏が350年にもわたって天才数学者たちを退けてきた「フェルマーの最終定理」の証明に成功したのは(最終的に確認されたのは1994年末)、単なる偶然などではないことがはっきりとわかる。こういう問題解決をみると、人間ってやっぱりすごいと賞賛したくなる。この証明のもっとも決定的な指針となったのは、日本人の谷山豊(とよ)氏と志村五郎氏の提出した「谷山ー志村予想」である。この予想を証明することが、そのまま「フェルマーの定理」の証明につながったのだ。こういう日本人の仕事をていねいに書き出している著者のサイモン・シン氏は立派である。こういう本を読みながら、数学の問題を解くと、数学もさらに面白くなるとおもう。受験数学に疲れたときに、読んでみるのも悪くない。高校生にもぜひ勧めたい。

2003/07/29(火) 10:57

★藤岡改造『職員会議に出たクロ』ワック文庫 \880

 新聞に広告が出ていたので、仕事の帰りに本屋さんで買った。聞いたことのない出版社だったので、どこに置いてあるのかわからず、本屋さんの店員も探すのに苦労していたが、無事手に入った。「犬」の話である。長野県立松本深志高校に住み着いた野良犬「クロ」が職員として認められ、18歳くらい(犬では100歳くらいにあたるとのこと)の人(犬?)生をまっとうした話だ。ただそれだけの話である。これが、この夏に映画にもなり「さよなら、クロ」(主演:妻夫木聡)として上映されているので、先日観てきた。何だかわからんが、途中で涙が出たりで、困った。わたし自身は動物を飼うのはあまり好きではない。小さい頃、実家にも猫や犬はいたが、それは生活の中のありふれた光景でしかなかった。とくに、それらの動物がいないとどうなるというほどのこともなかったようにおもう。この話に出てくる「クロ」も、高校で飼われていた犬だったというだけのことである。生徒や職員にもずいぶんと可愛がられたようで、いい犬だったのだろう。現在、学校で(それも高校で)犬を飼っているというところは、聞いたことがない。そういうことに、じつにうるさい時代になってしまったから。わたしの出た中学校にも用務員さんの飼う犬や猫はいた。その時代、それは別に変わったことではなかった。その当時のことを知るものとしては、少し懐かしい気がした。

2003/07/22(火) 20:19

★グレアム・ファーメロ編著『美しくなければならない』紀伊國屋書店 \2500

 副題に「現代科学の偉大な方程式」とある。横浜に人間ドックに行った際に、伊勢崎町の有燐堂という大きな書店で購入した。物理の専門書のコーナーにあったので、最初「なんでこんな本がここに…」とおもったが、副題を見てすぐになっとく。表紙のカバーに「E=mc2」の有名な式が書いてあったからだ。この式はいつ見ても決まっている!11個の有名な方程式を見事に解説した論文が収められている。訳者の斉藤隆央氏と校閲の藤井昭彦氏の努力により、ていねいな訳文になっており、じつに読みやすくなっている。この種の本ではめずらしく読売新聞の書評にも紹介されているのを後で知って、やっぱりいい本だったのかと再度なっとく。6日間ほどかかって、7/20に読み終えた。ほぼ400ページにわたって繰り広げられる方程式の世界。いろいろな分野でこれはというとっておきの有名な式について本当に愛着をもって解説してくれている。物理分野のものは、学生時代からよく知っている式の意外な側面を知ることができたし、他の分野の式もなるほどなーと楽しめた。方程式を見て、「美しい!」などと感じたことは、じつをいうとそれほどはない。ただ、最近になってようやくというか、「記号の並びがきれいだなー」というような感じはするようになってきた。美的感覚のまったくない(だから、絵画などの美はわからない)自分には、一生関係のない世界だなとおもっていたが、こういう美なら多少は感じ取れるかもしれないと、かなりうれしくなった次第。方程式という世界はふつうの人は、あまり近寄りがたい感じがするかもしれないが、こういう形で接してみるのもいいのではとおもう。ただ、専門書コーナーにあるのでは、専門外の人はいかないよなー。もっとこういう本が読まれてもいいのではとおもうのは、やはり自分が「専門バカ」のせいか。

2003/07/16(水) 11:29

★藤原正彦『天才の栄光と挫折―数学者列伝』新潮選書 \1100

 本屋さんで何度か目にしたが、そのうち文庫本になったら買おうとおもっていた。内容の一部が『心は孤独な数学者』と重なるところがあったためである。ところが、現在並行して読んでいる『美しくなければならない 現代科学の偉大な方程式』という本(読み終えるまであと少し)と言わんとしていることが同じようにおもえてきたら、急に読みたくなって買ってしまった。読み始めたら、この著者の本はぐいぐい引きつけてくるので、結局2日間で読み終えた。取り上げている人物も、ニュートン、関孝和、ガロワ、ハミルトン、コワレフスカヤ、ラマヌジャン、チューリング、ワイル、ワイルズという錚々たる人たちであるが、いずれもその出生地や活躍した場所まで実際に足を運んで取材しての力作である。ふつうの偉人伝とはまったくちがう。数学は大好きで、数学史などにも興味はもっているが、通常の数学史とは異なるアプローチの仕方で、これらの人物を描いていて興味深かった。むずかしい数式だけの世界だけでは味わえない人間模様が、さらなる数学へといざなってくれるように感じた。無味乾燥になりがちな数学や物理などの中に、こういう話ができればいいのだが、もう授業時間数は減る一方で、生徒たちの自主性に期待するしかないのは、何とも残念である。著者の「どんな天才でも神様であるはずはない。」ということばは、まさにその通りで、抽象化された数学といえど、数学をやっているのは人間であることを、わたしたちはもう一度おもい出す必要があるだろう。

2003/07/12(土) 14:56

★松田卓也+二間瀬敏史『時間の本質をさぐる』講談社現代新書 \650

 購入してから相当長い間、そのままにしていた本である。なぜ、読み出さなかったのかは、自分でもわからない。つい数日前、目に止まったので、取り上げて読み始めたら、どんどんのめり込んでしまい、さきほど最後まで読んでしまった。「時間論」や「空間論」は、わたしも中学生くらいのときから、相当に気になっていた事柄であり、とくに「時間はなぜ一方向に変化しているようにおもえるのか?」という問いは、物理を専門に学び、その中の宇宙物理学のような分野を知るに従い、ますます疑問は深まる一方だった。この本では、「時間の矢の問題は、宇宙の膨張と深い関係がある」という立場で、物理学的な見解をとっている。これは、わたしが求めていた解答に相当に近く、なるほどと納得する見解でもあった。もちろん、いろいろな考えがあり、早急に結論のでる疑問でもないが、これからも考えつづけていきたい疑問である。

2003/07/09(水) 15:25

★藤原正彦『古風堂々数学者』新潮文庫 \400

 数日前に、本屋さんの棚に偶然見つけた。藤原氏の書かれた本はすべて読んでいたが、この本は単行本で出たのが2000年6月であったが、いずれ文庫本になるだろうと買わずにそのままにしていた。今回、この5月1日に文庫本で出たのだが、そんなことは知らなかったので、目に留まったのは本当に幸運だった。彼の本は本当に好きだ。文庫本化されている『若き数学者のアメリカ』『数学者の言葉では』『数学者の休憩時間』『遥かなるケンブリッジ』『父の威厳 数学者の意地』『心は孤独な数学者』はどれも楽しく読めた。ぜんぶエッセイだが、腹を抱えて笑ったりで、どれもすばらしく楽しいし、ときおりしんみりさせられる。今回の本も早く読みきってしまうのがおしいほどいい内容だった。全部で48本のエッセイが載っているが、どれも藤原ワールドを感じさせる独特のスタイルに、笑ったり、ニヤニヤしたりで、読む場所を選ばないといけなかった。こういう文章を書く方はじつはものすごいエネルギーを費やして書いていることは、行間から感じる。彼は、かの有名な作家である新田次郎氏の次男であるが、父親とはちがう独自のスタイルをすでに作りあげている。数学の話題もわたしの大好きなものであり、どうも長い付き合いになる気がする。彼のずけずけした物言いには、棘もあるが、実も多い。『寺田寅彦随筆集』岩波文庫となどとはまたちがう味わいがある。わたしがエッセイ好きなのは若い頃から変わっていない。

2003/07/09(水) 15:07

★新渡戸稲造・奈良本辰也訳『武士道』三笠書房 \480

 岩波文庫で以前読んだのだが、その文庫本もどこかへ隠れてしまって姿が見えない。それで、古本屋を探していたら、この本を見つけ\100で購入。じっくりと読んでみた。現代語訳なので、こちらのほうが読みやすかった。これと並行して藤原周平『たそがれ清兵衛』新潮文庫も読んでいたため、武士といっても、その評価のしかたはさまざまだと感じた。新渡戸稲造はこの本をもともとは英語で書いているが、そちらも一度読んだことがあるが、扱っている題材が日本のことなので、どうしても日本語になおしたほうが読みやすいのは仕方ない。武士道について今となってはどうだこうだという意識はないが、武士であった新渡戸が書いているほど、武士道がその当時の武士全員に意識されていたわけではないだろう。あくまでも、武士の中のエリートにあたる人たちの中にそういう意識があったという程度の考えないと、あまりに武士が格好よすぎる。実際にはそんなことは考えられない。新渡戸は外国人が日本の武士道を誤解しているのにガマンができないために、この本を書いたというが、この本によって新たな武士道に対する偏見が生まれた可能性も否定できない。異文化どうしの理解は本当にむずかしいことを、現代においても感じる。日本人に生まれたならば、一度は目を通しておきたい一冊ではある。

2003/06/29(日) 16:44

★齋藤孝『三色ボールペン情報活用術』角川oneテーマ21 \762

 齋藤氏の一連の「三色ボールペン」シリーズの実践編である。具体的にどのようにこの方法を使ってゆくかを例題などもやりながら活用してみようというのが目的。この方法は、わたしもできる限り参考にしてやってみているが、それぞれ人によってどうしても「ゆらぎ」は出てくるもので、かなり自己流になってしまっている。この本でも述べられているパイロット社から発売されていた「三色ボールペン(赤・青・緑)」は現在は在庫があるだけだそうだ。この4月に文房具店にもかなりおいてあったが、どうも一般の日本人は「赤・青・緑」の組み合わせでは買わないようで、いつの間にか「赤・青・黒」の三色にもどってしまっている。わたしは、この本にもある「赤・青・緑」の三色ボールペンを何本か買いだめしておいたので、当分問題はないが、そうでない人は、以前と同じで四色「赤・青・緑・黒」を買って使うしかないだろう。どうしても日常的には、「黒」が必要なのかもしれない。周囲をみても「青」でいろいろな書類を書いている人は、確かに少ない。ただ、わたしは以前は万年筆でモンブランのブルー・ブラックを使っていたので、それほど抵抗はない。でも、習慣ってそんなに簡単には変えられない一例でもある。わたしには役立つ本であった。

2003/06/29(日) 16:28

★石川英輔・田中優子『大江戸生活体験事情』講談社文庫 \533

 3分の2ほど読みかけてそのままになっていたものを、昨夜一気に読み終えた。江戸時代の生活の一部を実際に現代に実行してみた体験を書いた本である。まず、時間を現代のグレゴリオ暦ではなくて、江戸時代に使われていた太陰太陽暦を使ってみることからはじめて、火打石を使って火をおこすことや行灯の生活、着物での生活などなど現代で使ってみると、不便ではあるが、それを体験してみることによって、本などの資料を読むだけではわからない江戸の姿を描き出していておもしろい。最後の方で、石川氏と田中氏が述べている現代に対する批評はじつに的を得ており、わたしも同感することしきりであった。この大江戸**事情シリーズは全部もっているのだが、みんな途中までの読みかけで、まだ数冊残っているので、楽しみながら読んでいきたい。寝床で読むのが一番気に入っている本だ。

2003/06/27(金) 11:43

★M.マクルーハン&E.カーペンター『マクルーハン理論』平凡社ライブラリ \1200

 まだ学生だった頃、評論家の竹村健一氏が「マクルーハン理論」についてTVか何かで話していたのを覚えている。メディア論みたいなものだとはおおよそわかったが、あれからずいぶん時間も経ってしまい、マクルーハン本人が書いたものは、ほとんど本屋さんに行っても見かけなかったので、そのままになっていた。ま、竹村氏の書かれた解説本みたいなものは図書館などで見かけ、ちょっと読んではみたが、何といってもこの理論を考えた人のものを直接読んでみたいという気持ちはどこかにあったようにおもう。つい最近、大きな本屋さんで偶然この本を見かけ、すぐに購入して読みはじめた。いろいろな人の書いた論文をまとめたものなので、少し時間をかけてじっくり読んでみた。やはり、本人が書いたものが一番わかりやすい。ただし、本格的な論文集なので、感想といっても頭が整理されるまでには時間がかかりそうで、まだ一通り読んだというだけと言っていい。これから、じっくり読んでみて、生かせるところは仕事上のヒントとしても生かせればいいなとおもっている。こういう歯ごたえのある本も日常的に読んでいないと、どんどん頭も退化しそうなのは、別に歯に限ったことではない。図も全くない本なので、図解しながら読むと意外にわかったりして面白かった。

2003/06/27(金) 07:42

★毎日新聞科学環境部『理系白書』講談社 \1500

 副題に「この国を静かに支える人たち」とある。つい先日、6/20に発売になったばかりの本で、近所の本屋さんでは手に入らないであろうが、幸運にも、その20日に人間ドックに行った帰りに何気なく寄った横浜伊勢崎町の有燐堂で見つけ、購入した。本の帯にあった「理系は報われているか。」という文字に「まったく報われていない」と心の中でささやきながら読みはじめた。毎日新聞に連載されたものをまとめた本で、過去にもこの新聞社は「教育の森」という優れた連載ものを書いており、これも大部の本にまとめられている。学生の頃に一通り読んだ。この『理系白書』は、毎日、高校生に接していて、理系の生徒は文系の生徒にくらべて勉学へ取り組む姿勢も、勉強量も格段に多いのに、どうして社会に出ると、文系の連中が幅を利かせているのかと不思議におもっていた、という背景もあったので、興味深く読んだ。わたしが理系の人間なので、どうしても身贔屓になってしまうのを恐れ、意識的に冷静に読んだつもりだ。わかりすぎるくらい身近におもえることがらも書いてあったが、やっぱり理系の人間は視野が狭いのかもしれないなあ、とかの印象もうなづけた。時代は、もはや「文系」「理系」などといっている場合ではないのだ。理系の人間にもさまざまいるが、概していろいろな分野に興味をもち、種々の本を読んでいる人も多い。どうも、文系といわれる人たちが理系という分野にかなりの偏見を持っているようにおもえる。その原因の大半は、おそらく科学全般のむずかしさもさることながら、学校教育で受けた理系科目へのトラウマではないかと推測する。関係者として責任の重大さをまず反省している。日本にもごく普段着で科学のことが語れる人が増えてくれば、日本の未来にいい影響がでると、わたしは考えているのだが…。これも甘いかな。

2003/06/19(木) 12:34

★スチーブ・リブキン/フレーザー・サイテル ルディー和子訳
 『アイデアをいただいてしまえ!…模倣はこんなにクリエイティブだ』 ダイヤモンド社 \1600

 「創造、創造、…」と騒いでいるいる人たちには、皮肉におもえるような本かもしれない。「創造=模倣(マネ)+α」と明言している本だから。でも、内容は、ものすごく常識的。人間は過去にだれもやったことのないもの(こと)を「創造」したりすることなどできない。「創造力」が声高に叫ばれている科学や技術の分野でもそれは同じことだ。何でも自分で最初から創り出さなければならないなら、日常生活などできなくなってしまう。みんな、何かをマネして、そこにホンの少しのアイデアをプラスして「創造」と称しているにすぎない。野口悠紀雄『「超」発想法』講談社で触れられている「科学における発見=創造的剽窃行為」というのもこれにあたる。この本はビジネス書なので、ビジネス関係の例が数多く上げてあるが、これはどの分野でも同じと考えていいだろう。著作権や特許権など法律的にはいろいろと制限があるかもしれないが、ちょっと工夫をして「創造力」を発揮するのにはいいヒントが至るところに書いてある。とてもいい本だった。

2003/06/16(月) 15:25

★齋藤孝『質問力』筑摩書房 \1200

 生徒に質問するのも下手。ましてやふつうの大人に質問するのも下手な自分。質問の仕方にも上手下手があることはわかっているが、多少なりとも上手に質問を出して、お互い得るものがあるようにするためにはどうしたらいいのか、という悩みもあったので、何冊かすでに読んでいるこの作者の本を手に取った。少し前に買ってはあったが、昨日読みはじめて、きょうの昼頃に読み終えた。わかりにくいところは、図解してみたりしてメモをとっておいた。例としてあげてある、宇多田ヒカルとダニエル・キース氏の対談を読んで、宇多田ヒカルの頭の良さがじつによくわかった。単なる歌手とかいうレベルではないとつくづく感じた。それにしても、ときどきTVで見る、日本の「とんねるず」や「明石家さんま」などのバラエティー番組でトークをしているようすを見ると、そのギャップにむなしさを感じてしまう。彼らにそんなことは求めないにしても、もう少し何とかならないのかな、とおもうのは自分だけだろうか。おそらくそういうレベルでも見続けているわたしたちの方に問題があるのかもしれない。だれも見なくなれば、番組は成り立たないのだから。ま、人のことばかり言ってられない。我が身の実力のなさは毎日の授業で散々反省させられているのが現実。肩肘はらずにのんびり力をつけていこう。歳だからなどといいわけせずに…。

2003/06/09(月) 08:16

★石川英輔『大江戸仙花暦』講談社文庫 \590

 最近ではめったに小説を読まなくなってしまったわたしであるが、この作者の「大江戸シリーズ」だけは欠かさず読んでいる。本屋さんでひさしぶりにこの文庫本を見つけたので、さっそく購入。すぐに読みはじめた。この作者の本はわたしの体質にあっているのか読んでいて本当に心地よい。これは、はじめてこの作者の本を読んだときからのもので、何とも不思議な現象である。このシリーズものの感想は、この「読書館コーナー」で別に扱っていたのだが、楽しみで読んでいる娯楽本にそれほどおおげさな感想などないので、他の本と同じようにここにメモを書いておくことにした。といっても、この作者の世界観はわたしには相当の影響を及ぼしていることはまちがいない。「江戸時代」とは、じつはこんな世界だったのだと学校などで習う歴史とはまったくちがう等身大の世界を描いてみせているのが、このシリーズものだ。他のしちめんどうくさい歴史本は正直なところまったく読む気もしない。「なになに史観」などというのには興味もない。しかし、歴史をきちんと見る目は持っておきたい。そういつもおもっている。歴史を文学のようでなく、できる限り「事実の積み重ね」という視点で冷静に見たいと考えている。現代の視点からだけでなく、その時代に自分がいるというような視点で。

2003/06/06(金) 09:39

★久恒啓一『図で考える人は仕事ができる』日本経済新聞社 \1500

 まとめ買いした久恒氏の本の1冊。父の法要(四十九日と納骨)があったりで、ほとんど本を読む時間など取れない状況ではあったが、何とか暇を見つけて読んでみた。問題解決に図解を利用するというのは、理系の人間にとっては当たり前のことであるが、文系の人たちにとっては「文章」が一番大切なのだろう。現在の職場でも、理系の人は少ないので、当然のことながら回ってくる文書なども文字情報がほとんどだ。先日、修学旅行の見積書に図解を使った案が業者から提示されたが、このときは「これはわかりやすい」という感嘆の声が上がった。やはり、民間のほうがこういう試みには積極的であることがわかる。わたしも、これに負けじと、授業や会議のときにどんどん図解を利用していくつもりでいる。

2003/05/23(金) 11:20

★加藤寛一郎『一日一食断食減量道』講談社+α新書 \800

 1週間ほど前にこの本を買った。著者の名前で買った。加藤氏は航空工学がご専門の学者で、飛行機関連の本をよく読むわたしにとっては、おなじみの人であった。その人が何で「減量」の本を…?とおもい、とりあえず買っておいた。昨日の早朝にトイレに入るときに、何か読む本はないかな?とタンスの上に積み上げた本を見上げていたら、この本が目に留まった。読みはじめて、一気に衝撃を受けた。まるで、自分のことを書かれているようで、トイレを出ても読み止まらなかった。「水を飲んでも太ってしまう」と家族からも評されている太り体質のわたしが、現在よりさらなる減量をするには、この方法しかないと直感した。飲む・食べるが大好きで、それでも体重の増加には悩まされている現在、自分なりには減量に取り組んでいるつもりであった。昼はおにぎり1個の生活をして、何とか最大時よりは5kgの減量になってはいた。が、しかし、そこで平衡状態に達してしまった。エネルギー保存の法則から考えれば、口から入るエネルギーと身体全体から放出されるエネルギーがちょうどバランスした状態になってしまっていた。毎日1時間近くのウォーキングを入れても…。万事休す。この本を読んで、著者も同じような体験を経て、自分で編み出した減量法がこれである。わたしも「一日三度の飯」にあまりにも囚われていた。江戸時代はほとんどの人が二食であったというし、何も三度にこだわる必要はなかったのだ。別にそれで死んでしまったということもなかった。そもそも現代の日本人は食べすぎなのだ。これを指摘されただけで、目からうろこ状態になってしまった。頭ではわかっていても、食事を一日一食として身体が持つのだろうか?と疑問にも感じたが、著者はわたしの尊敬する飛行機の専門家。あの坂井三郎氏とも懇意の方である。そして、その坂井三郎氏も同じような減量をしていたとあっては、わたしにどうして拒否することができようか。本を読みはじめてわずか数ページ読んだだけで、この方法をやってみようと決めてしまった。そして、今朝からこの方法を自分の身体で実験(著者は上手い表現で”自験”と言っている)しはじめた。もうすぐ、12:00だ。正直言うと、朝から何も食べていないので、胃が(T_T)痛む。美味しい食事は夕方までガマン。3日目くらいが山であろうから、とりあえず1週間は死んだつもりで試してみようとおもっている。これで、死んでももう後悔はない。もう少し書きたいが、ちと、話が長すぎた。止める。興味のある方は各自でお試しあれ。

2003/05/22(木) 10:43

★田口善弘『砂時計の七不思議…粉粒体の動力学』中公新書 \680

 やはり「物理」に関する本は面白い。この本は買って2年ほど積読したままであったが、ふと思い出して読みはじめた。身近にある「砂時計」がじつはカオスとかフラクタルなどの「複雑系」といわれる現象の例であり、これに似た現象をさぐっていくと物理の扱える範囲を越えてしまうものであることが、ていねいに書いてある。日常当たり前におもっている「融解」や「沸騰」などの現象も詳しいメカニズム(何でそうなるのか?)はわかっていない。この本は著者がはじめて出したものだとのことであるが、研究の最前線について興味深く書いてあるので、とてもいい刺激を受けた。若い研究者の方々が、どんどんこういう現象の解明に向けて挑まれているのを知ると、とてもうれしい。著者があとがきのところで、「世の中の人は、とくに物理が嫌いになってしまったらしい」と述べている。高校生に物理を教えている者として、自分たちがそうさせてしまっているのかもしれないな、と反省させられた。

2003/05/20(火) 07:32

★久恒啓一『図解で考える40歳からのライフデザイン』講談社+α新書 \780

 昨日読み終えて、一旦自宅で記録を書き始めた。が、それをFDに入れて運んできて、職場のマシンにファイルをコピーしようとしたら、ファイルが壊れていたようで、読み込みできずに、再度書いている。題名からすると、ぼくはもう10年も余分に歳をとってしまったので、手遅れである。10年前に読んでいればよかったのだが…。でも、自分で本屋さんの本棚から選んで購入した本に無駄はない。けっこう参考になった。こういう本を若いときにはおそらく手に取ることはなかったとおもうと、自分もそれなりに歳を重ねているのが実感できる。P50に「糸川英夫博士はゼロ戦の設計者として有名ですが、…」とあるが、これは事実誤認であろう(苦笑)。こういうところは専門外なので、仕方ない(と言っても、日本航空に勤務していたのだから、ちょっと…)。少し前に、まとめて購入した本の1冊で、このところ図解に関心をもっている。学校現場でも、科目(わたしの教えている物理など)によっては、図解することは当たり前になっているのだが、いわゆる事務的なことにも図解を利用するという点ではたしかにあまり利用されていないとおもう。会議などで出てくる文書も箇条書きなどが主流で、いつまで経っても代わり映えはしない。もう、飽きてしまっている。書いてあることを図解すると、じつは書いている本人がまったくわかっていないことなども発見できて面白い。図解するだけで、物事の見方がかなり変わることがはっきりわかる。これを使って、自分の人生計画を冷静に眺めてみると、恐ろしいほど行き当たりばったりであったことがわかり、愕然。あ…、つらい。

2003/05/18(日) 16:30

★養老孟司『バカの壁』新潮新書 \680

 5/15に出張にでかけた(出張は本当に嫌いだが)帰りがけに、横浜の大きい本屋さんに寄ってみたら、この本が山積みしてあり、勢いで買ってしまった。じつは、この本は、新聞広告を見てすでに本屋さんに注文してあったのだが、「現在品切れ」とかで手元には届いていなかった。ところが、同じ本屋さんの大きなところには、ちゃんと山積みしてある。これは、どう見ても「ピーターの法則」の実例としかいいようがない。この話は、ここでは関係ないので、別の機会にすることにして、この本を昨日から読み始めて、ついさきほど読み終えた。毎日、仕事でいろいろな生徒や同僚に接しているが、「話せばわかる」なんてことはほとんどありえない、ということを切実に感じていたので、本の中身を読んで同感することしきり。おかげで、自分の認識にも少しだけ納得がいった。ただし、このような本に夢中になっていたせいか、本日予定していた、中間テスト問題作りとHPの更新作業は時間的に無理そうになってきてしまった。というのも、17:00からはわたしの晩酌の時間がはじまってしまうからだ。ちびちび飲みながら、普段はあまり見ないTVで「笑点」を見る。これが平和な日曜日の過ごし方と思い込んでしまっている、わたし自身の「バカの壁」である。

2003/05/16(金) 09:07

★久恒啓一『図で考える人の【実践】知的生産の技術』大和出版 \1400

 わたしが使っている図解は自己流なので、もっと汎用性のある方法はないかなとおもい、本屋さんを覗いていたら、見つけた本。内容を読んで、これは参考になるなと感じ、購入してみた。ついでに同じ著者の本を何冊か購入したが、最初に読んだのがこれ。日本航空に在職時に、実際に仕事の中で工夫されてきた図解法がていねいに書いてあり、仕事で使うときにもとても参考になる。どこの職場でも文章だけの書類が多いはず。ちょっと一工夫して図解すれば、長々と会議に無駄な時間を使っている必要がなくなる可能性もある。まずは、自分で実践してみようと実際に紙にまねてみて練習している。できるだけ多くの人が、見てすぐにわかる図解をめざしていきたい。

2003/05/08(木) 12:59

★白川英樹『私の歩んだ道』朝日選書 \1000

 職場である高校の図書館から借りた本である。図書館から借りた本というのは、書き込みもできないし、本当はあまり好きではないのだが、ぶらっと立ち寄った際にこの本を見つけた。この本は以前本屋さんでも見かけてはいたが、自分で買うところまではいかなかった。内容はノーベル化学賞を受賞するまでの自分の歩んだ道ということにつきるのだが、この方は大変に正直な人のようで、自分の歩んできた道を「なりゆき」とはっきり言っている。共感した。人生に夢と目標をもってじつに計画的に生きておられる人もいるかとおもうが、それは少数派であろう。大抵の人はなりゆきで生きているのだとわたしは考えている。わたしもそうである。このことにいいも悪いもない。むしろ、それが自然の流れだとわたしはおもう。白川氏も書いておられるが、自分のことは自分ではじつはよくわからないものだと。それでいいのだ。これからの夢と聞かれて、「できるだけ、公の職から退くこと。それが私の夢です。」と答えている氏のさりげないことばに、今までの生き方を見たようで、すがすがしく感じた。
 なお、蛇足ではあるが、白川氏が飛騨高山で高校まで過ごされたと知り、ひょっとして、「白線流し」で有名な斐太高校の出身かと調べてみたら、もう一つの進学校である高山高校の出身であることがわかった。高山高校のHPに氏のことが紹介されており、そのことを知った。

2003/05/05(月) 16:15

★和田秀樹『大人のためのスキマ時間勉強法』PHPエル新書 \760

 5/3(土)から名古屋の伯母の家に行って来た。20年ぶりである。伯父の仏壇へ父親の死去を伝えるために、思い立って出かけてきた。出かける直前までこの本を読んでいて、出発直前に読み終えた。時間の使い方、見つけ方はむずかしい問題でもあるが、早起き鳥のわたしには、けっこう時間はあるように思っている。むしろ、休む時間をきちんと取れていないことが多いように感じていたので、その辺の時間の取り方に興味があった。あらかじめ、用事の入れない時間・日・期間などを決めて、そこを死守するという姿勢が大切である。それを、守るためにも普段の仕事でも、早目にすすめておくというのは、わたしのやり方と同じで共感した。出発までの4時間ほどで集中して読んだが、新幹線の中で内容を思い出しては、今後の参考にしようと思った。こういう本は、理解するというより、自分でできるところだけ、実際に習慣化しないと意味のないものなので、当たり前になってしまえば、ほぼわかったということになるのだろう。しばらく、ゆっくり本を読む時間も取れなかったが、気持ちが落ち着くに従い、読書意欲ももどってきたみたいなので、いろいろ手にとって見はじめている。やはり、読書をしていると落ち着く。

2003/05/02(金) 10:08

★西村克己『図解する思考法』日本実業出版 \1300

 普段からわかりにくいことやもやもやしていることは紙に簡単な図を書いて考えるようにしているが、いつも立ち読みしている本屋さんで、目に留まったので、この本を購入してみた。3日間かかって読んだ(見た?)けれど、とても参考になった。他人がやっていることを盗んで自分のやり方に加えるのは、とても楽しい。ちょうど、マイクロソフト社の「パワーポイント」をプレゼンテーションの道具ではなくて、別の用途に使えないかと考えていたところだったのと、フリーソフトの「SVG Cats」という図解を使ったアイディアプロセッサーみたいなものをいじっていたので、この本を読んで、これらのソフトの使い方などに合点が行った。いろいろな使い方をしたほうが面白いし、あれこれ試してみるのはとても気分がいいから。この本は、図解して十分に練られた構想(プロットという)をもとに書かれているので、ペラペラめくって速読するのにも適している。内容がわかりやすい本が一番だ。

2003/04/29 (火) 17:39 (読書のスキマ

 今回も読んだ本の紹介ではありません。申し訳ありません。この4月に入り、父親の容態があまり芳しくなく、病院通いが続いており、とても本をゆっくり読んでいる時間はとれませんでした。それでも、何冊かは並行して読み続けているのですが、雑事が多く集中できないでいました。
 父親の葬儀も終わり、自宅に戻りましたが、今度は母親と父親の仏壇を我が家で供養することになり、今まで本を好き勝手に置きまくっていた和室の本を片付ける羽目になりました。姉たちやその援護を受けたカミさんの厳しい言葉には逆らえず、今朝から4時間ほどかけて本を整理しました。約200冊ほどの本を近くのBOOK OFFに運び込み、少々の売却金を得ました。がしかし、苦労して集めた本も最後はあっ気ないものです。本の内容を覚えているものもありますが、全く思い出せないものも多数ありました。まだまだ多数の本が残っているため、仏壇が来るまでにもう少し処分する必要がありそうです。わたしにとっては大切でも、他の人からはただのかさばるゴミなのかもしれませんね。しばらくは、新しい本を購入するのを控えて、残っている本に一通り目を通してみようと思っています。

 これからは、またゆったりと本を読んでいきたいものです。

2003/04/01(火) 13:21

★JCN『すべてがわかるブロードバンドルータ解体新書』ナツメ社 \1900

 319ページある分厚い本であったが、ちょうど自分の使っているブロードバンドルータの設定で苦労している時期だったので、集中して読んだ。同じところを何度も読んだりと、最近にしては珍しいくらい読んだ。全部がわかることはないが、8割くらいは何とか理解できたかと思う。ただし、こういう技術関連の本は読んでわかりましたでは役に立たない。実際の機器などの設定に役立ててこそ意味がある。そういう意味では、いろいろな機器の設定を広く浅く扱っているのはいいけれど、肝心の一番知りたいことが載っていなかったりで、ちょっと物足りなかった。しかし、これをベースにネットワークの勉強のキッカケになったことも確か。これからも、ときどき参考にしてゆきたい本である。なお、パソコン関係の本や雑誌は回転が速いので、古いものはほとんど役に立たないことが多いので、できるだけ新しいものを読むようにしている。しかし、原理的なことをしっかり書いたものもあり、そういう本は貴重である。この分野の知識は、自分でもどこで仕入れたものかわからないことも多く、こういう読書日記にはとても取り上げられそうにない。

2003/03/27(木) 11:26

★石崎秀夫『機長のかばん』講談社 \1500

 こんなにゆっくりと読んだ本も珍しい。もう3年くらい前からちょっとずつ読んでいた。飛行機関連の本は本当によく読むが、この本は著者石崎氏の25000回にもおよぶ長いフライト経験から書かれた「飛行機随筆」風であるためか、1つ1つの文章を味わうように読んでいたため、長い期間楽しめた。さーと目を通すだけなら、3時間もあれば読めるだろうが、そのときどき楽しみながら読むというのもじつにいい。飛行機にはかなり入れ込んでいるわたしにも、ずいぶんと知らないこともあった。それよりも、著者と一緒に空の飛ぶことを楽しんでいるようで、気持ちのいい本であった。石崎氏はこの本を書かれたあと、1994年に急逝されたとのこと。氏はすばらしいパイロットであられた。

2003/03/17(月) 10:35

★吉田たかよし『最強の勉強法』PHP \1350

 勉強法の本は好きである。とくに、自分が余り「合格」などに縁の少ない人生を歩んできたせいか、この著者のようにいろいろな分野の難関な資格や入学試験に合格してきた人の方法論には興味がある。自分で実践してみようとは思わないのだが、本屋さんで見かけるとよく買ってしまう。有名な進学校である灘中学・高校の出身の方で、社会人になっても好奇心を持ち続け、種々の勉強に取り組んでいる姿勢には驚嘆した。すなおに「灘中・高は単なる受験上手があつまっているだけではないなー」と思った。わたしでも実践できる方法もあるので、五十の手習いではないが、少しは取り組んでみる気になった。いくつになっても学ぶ姿勢は大切である。買う予定の全くなかった本であるが、いい刺激を受けたので、買って読んで正解だった。

2003/03/03(月) 16:24

★アラン・ピーズ+バーバラ・ピーズ/藤井留美訳
 『話を聞かない男、地図が読めない女』主婦の友社(文庫版)¥667


 いつも立ち読みしている近くの本屋さんで本を買ったとき、何気なくレジの近くを見たらこの文庫本が売っていたので、ついでに買って読んでみた。副題にある「男脳・女脳が「謎」を解く」の通り、男と女の違いがじつは遺伝的に異なっていることをわかりやすく、かつ、面白く解説している。わたしも男を50年もやっているが、じつは自分自身のことや自分の妻のことがよくわかっていない。ましてや、世の女性たちのことも。そして、男というものについてもわからないところが多かったが、この本を読んで「なるほどなー」と納得したり驚いたりととてもためになった。もっと若いうちにこういう本を読んでいたら…と思ったりもしたが、もう手遅れである。せいぜい、残りの人生を送るにあたって、この本の内容を思い出して、妻とも仲良く生活してゆきたい。

2003/02/19(水) 07:58

★小宮山宏『地球持続の技術』岩波新書 \740

 2002年秋ごろ、教科書会社で出しているパンフレットみたいなところに、この著者の短い論考みたいな文章が載っており、一読して興味をもった。そこで、参考にあげてあった著者の他の本を探してみたのだが、全く見かけない。インターネットや本屋さんで注文すれば、手に入ることはわかっていたが、それほどの意欲はなし。しかし、気になっていたのか、本屋さんに行くと必ず探していた。横浜などにある大きな本屋さんでも見かけないので、あきらめていたら、何と自宅のすぐ近くにあるなじみの本屋さんの岩波新書(それほどたくさんはおいてない)の中にひょっこりとあるではないか。これは、僥倖とばかり、すぐに購入した。読み始めてみたら、面白いというよりは、かなり学術的でまじめ。でも、読み終えてみると「地球環境の今後」について、相当に考えさせられた。とくに、2050年辺りが今後のターニングポイントになるだろうという予想は、自分の普段考えているものと同じで、共感を覚えた。やっと見つけて読んだ本は、やはりそれなりの印象を焼き付けてくれる。

2003/02/14(金) 15:30

★加藤寛一郎『零戦の秘術』講談社+α文庫 \900

 またしても、買って読んでしまった。坂井三郎氏の秘術「左捻り込み」についての話である。本屋さんで立ち読みしていて、もう零戦の本はいいよな、と思ってはいても読み始めると止まらなくなり、結局買ってしまい、昨日から2日で読んでしまった。著者:加藤氏の本も何冊か読んだことがあるので、とても読みやすかった。内容は、零戦好きにはたまらないけれど、飛行力学などに興味がないとよくわからないかもしれない。この「左捻り込み」の秘術は、Combat Flight Simulator2の零戦では、再現することはできそうにない。こういう自分の好きな分野の本は、どんどん読んでしまう。読んでいるときは、ほとんど「二宮尊徳」状態になってしまう。なんでだろう?

2003/02/12(水) 15:11

★坂井三郎『零戦の真実』講談社+α文庫 \980

 この本は、坂井氏の書かれた本では、読んでいなかったものだ。昨日から読み始めて、これまた一気に読んだ。読み始めると止まらなくなるのが、わたしの欠点でもある。題名を見ると、零戦のことがメインかなと思うが、そうではない。旧海軍の上層部(つまり海軍兵学校出のエリート軍人たち)のあまりの愚かさが的確に書いてある。じつは、これを読んでいると、現在の日本の政治・経済・教育・産業などなどでの至るところで見られる「怠慢と無能」ぶりは、戦時中と何も変わっていないというのが如実にわかる。坂井氏は、ものすごい零戦エースパイロットであったと同時に、すばらしい著述家(史実家)でもあることを教えてくれる。

★早乙女貢『敗者から見た明治維新』NHK人間講座テキスト \560

 TVでの放送は、時間帯があわず見なかったが、テキストだけを買っておいたので、きょう時間の隙間を利用して、一気に読んでみた。内容はすでに知っていることが多かったが、この話題は何度読んでも胸が痛む。面白いから読んでいるのではなくて、故郷「会津」の歩んできた道の何と過酷であったことかを、自分で再確認しているような気持ちだ。過去にこだわっているわけではないが、簡単に水に流せるほど軽い史実ではない。

2003/02/06(木) 08:05

★坂井三郎『零戦の運命 上・下』講談社+α文庫 \880×2

 記憶では以前にもこの本を読んだはずなのだが、自宅に本が見当たらない。そこで、やむなく再度買うことにした。買って読まないのも著者に申し訳ないので、2日間で読んだ。昨日の仕事の合間に読み終えたときは、本のあちこちに赤いボールペンを引いたあとが残っていた。赤い線を引いたところを2・3紹介。

「仕事というのは勝手がきかない。人間誰しも好きな仕事をしたい。しかし、なかなかその望みは、かなえられない。現在のセクションが不満であろうと、その仕事で実績を上げ、クリアしない限り、それ以上のセクションは巡ってこない。「チェッ、やってられるかい」と、ふてくされるのもいいだろうが、こうした姿勢ではまずプラスには作用しない。」

「人間、地面と自由と水は欲しいのである。」

「人の上に立つ人間は、下の者にモテなければ本当の統率はできない。これは軍隊に限らず一般社会にあっても同じだと思う。ところが、モテようと思ってもモテるものではない。もちろん優等生がモテるわけでもない。間違いなくいえるのは、下の者の目はごまかせないということである。部下は上に立つ者の何気ない会話、動作にも上司の人間性を鋭く見抜いている。」

などなど。重いことばである。わたしはこれを自分の親父のことばのように受け止めている。この本の「下」には、赤い線が一杯だが、もう引用は不必要だろう。どんな人生訓より、坂井氏の本の方がわたしには面白いし、自分の糧になる。

2003/01/29(水) 16:05

★谷沢永一『統率術』潮出版社 \1500

 昨年の4月に現在の高校へ転勤してきたとき、かなりの本を前任校から移動して来た。その中に、この本があった。少し読みかけのまま放っておいたのだが、気になったことがあったのか、最近はじめから読み出した。きょう、空き時間にスチール棚の組み立てをしていた。これは、持って来た本を物理準備室の床に1年近くも置きっぱなしになっていたのでそれを収納するためと、物理の資料本などを入れておくために購入してもらったものだ。組み立てながら、腰が痛くなると、この本を取り上げてようやく読み終えた。わたしにはちとむずかしい古文や漢文の話も多いが、この著者の本は好きなので、何とか最後まで行けた。書誌学がベースになった内容で、意味のわからないところもけっこうあったが、ま、一通り読んだということで許してもらおう。リーダーシップのあり方などはとても参考になった。

2003/01/26 (日) 12:35

 今回は読んだ本の紹介はない。というより、読みかけの本が数冊あるのだが、いずれも途中で止まっている。本業の仕事が立て込んでおり、自宅でも電車の中でも職場でも、本に集中することができない状況が続いている。こういう中でも本を楽しめるだけの器量が自分にあればいいのだが、残念ながらそれはない。今のところは、細々と断続的に読み進めているというのが、現状。そんな中で、学生から教員になりたての頃に購入した「岩波講座・現在物理学の基礎」全11巻はときおり引っ張りだしては読み直している。もう新しい内容のものが出ているのだけれど、最近また再復刊という形ででているのを本屋で見かけ、「へー、何で今頃」と思ったのだが、考えてみれば重要な基礎がそう簡単に変わるわけでもなし、体裁を新しくしていろいろな本を作っても、しっかりした執筆人を集めて編まれたこの全集の価値はそう簡単にゆるがないのだろうと感じた。どれも本格的な物理の専門書だが、中身は信頼のおける充実したものになっている。これ以上の内容は、今のわたしにとっては、おそらく理解できないだろうと思う。

2003/01/10(金) 13:07

★二間瀬敏史『図解雑学 素粒子』ナツメ社 \1200

 これまた、私の好きな著者によるわかりやすい「素粒子」に関する入門書。わたしの理解力もこのところ落ちる一方で、素粒子の専門書を読んでもわからないところが多すぎて困っている。こういうときには、基礎にもどってわかりやすい解説書が一番いい。この著者は、わたしと同年齢であるが、すばらしく頭が切れる。解説もていねいでわかりやすい。さすがである。この著者の本はほとんど読んでいるが、いつも感心している。この本も楽しめた。

2003/01/08(水) 16:31

★小柴昌俊『ニュートリノ天体物理学入門』講談社ブルーバックス \900

 2002年度のノーベル物理学賞を受賞された著者が、受賞理由になった内容について本当にていねいに説明している本だ。やさしく書くというのは、簡単なことではない。やはり、この道に精通している著者にしてはじめてこれだけわかりやすく簡潔に書けたのだと思う。読んで、とても勉強になったし、一気に読めた。

2003/01/05(日) 15:23

★斎藤眞『天皇がわかれば日本がわかる』ちくま新書 \660

 「なぜ武力を持っている者が天皇にだけは、頭が上がらないのか?」と不思議に思っていたことにほぼ納得が得られた。この本も積み上げておいたのだが、暮れの整理で出てきたので、一気に読んでみた。天皇と律令の関係、そしてじつはこれが現在でも続いていること、などなど「目から鱗」の本であった。これまた、年始に読んでおいてよかった。ちなみに、今年は2日に東京駅に行ったら(一般参賀が目的ではない)ものすごい人でびっくりした。私は知らなかったのだが、2日は天皇の一般参賀のある日であったのだ。わたしたち7名はそれを避けるように、恒例の大江戸ツアー(ウォーキング)で渋谷駅まで歩いてきた。天皇を奉る人たちが現在も多数派なのだなと実感させられた。

★ノーベル賞研究会編『ノーベル賞おもしろ雑学事典』ヤマハ \1200

 元旦からこたつに寝そべって読んでいた。昼間からのお屠蘇気分だったので、トピック的に細かく書き分けられているため、読みやすかった。ノーベル賞の科学分野については仕事柄けっこう自分でも知っていると思い込んでいたが、やはり読んでみると意外な発見が多かった。つまり、知らなかったということ。昨年の2人の日本人が受賞されたことは嬉しかったが、今年も出そうな雰囲気で、予備知識をしっかりもっておくのにもいい本だと感じた。

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