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神奈川県の公立高校入試制度に物申す(1)


1 はじめに

入試制度というのはどのようにいじってみても、すべての立場の人から見て「これはいい」というものはないのが本当のところだろう。がしかし、余りに無理のあるときには、それは問題にしなければいけないし、またそうしなければ「行政の怠慢」といわれても、仕方のないことでもある。神奈川県の場合も多くの「問題点」を隠し込みながら、実施されている。いろいろな意見はあるのが当然であるが、ここでは、教育現場で働く一教師として、感じていることを述べていこうと思う。あくまでも私個人の「私見」であることを最初にお断りしておきたい。

新しい入試制度になっての2回目の入試が現在進行中である。2/17に公立高校入学選抜学力検査(入試)が実施され、2/27に合格発表が行われるちょうど半ばが、これを書いている2/23にあたる。今日も明日行われる第2次合格者判定会議の準備のために授業時間は午前中の4時間だけになる。今日の午前中に第1希望校の選抜(募集定員の80%)に入れなかった(不合格になった)受験生のデータ(内申点・入試点など)が次の第2希望校に送信されて行くことになっている。第1希望と第2希望をちがう高校にした生徒で、第1次選考に漏れた生徒はこの段階で第2希望の高校へデータが送られてしまうわけである。第1・第2希望を同じにした生徒は第1希望の高校にデータが残り、そこで第2次選考の対象として再度検討されることになる。第2希望の高校にデータの送られた生徒はそこで新たに第2次選考の対象となり合否を判定されることになるというしくみなのだ。

具体的に数字を挙げてしくみを見てみたい。仮にある公立高校の募集定員が100名だとすると、120名の志願者があれば、以前の制度では倍率は1.2倍となる。ところが、今度の制度では第1次選考で対象になるのは、募集定員の80%の80名なので、倍率は1.5倍となってしまう。しかも、その80%の中のさらに70%(56名)は単純に内申点と入試の総合計(比率は内申60%、入試40%)で上位から機械的に合格が決まってしまい、残りの30%(24名)は内申・入試に加え、各高校に事前に公表した「選考にあたって重視する内容」を加味した「総合的な選考」というもので合格が決まる。この段階で、選考上はで40名が不合格となってしまう。つまり、1回目の入試がここで終わったことになり、あらかじめ2次選考用に用意された残り20%の枠は2回目の入試(書類上の)と分けて考えた方がよいことになる。

次に第2次選考であるが、対象者は第2希望で第1希望と同じ高校を志望した受験生と他校を受験したが第1次選考で不合格となり第2希望で回されてきた受験生の2種類である。仮に上で述べた第1次選考で不合格となった40名の受験生の中、20名が第2希望に他校を志望していればこの段階でその受験生は完全に第1希望の高校は不合格となり、データは第2希望の高校へ回されてしまう。第2希望も第1希望と同じ高校を志望した残り20名の受験生と他校から第2希望として回されてきた受験生(仮に10名とする)の合計30名が第2次選考に残るわけである。募集定員の20%(この場合20名)は最初から第2次選考用に確保されていて、第1次選考とは全く別の入試と考えても間違いはない。そこで第2次選考では30名の中から「総合的な選考(上位校はほとんど成績の点数のみ、下位校は反対に素行などを重視する)」で残り20名を選ぶことになる。ここで不合格となった10名の受験生は、それこそ本当に「不合格」となり、行く場所がなくなってしまう。

面白い現象が起こるのはこの場面である(受験生は必死なのだから不謹慎ではあるが)。第2次選考で他校から1人も回って来ない場合、第1・第2希望を同じ高校にした受験生(この場合20名)は自動的に合格となってしまう。さらに、笑ってしまうのは(これまた不謹慎ではあるが)、第2次選考に残った受験生が残り20名に達しない場合(たとえば10名しかいないとき)、その10名は何の問題もなく合格した上で、今度は足りない10名を再募集という形で再度の入試を行なうことになるのである。最初から第1・第2希望を同じにしておけば簡単に合格したのに…と私など思ってしまうのだが。ちなみに、本年度私の勤務する高校ではこの最後のケースになり、再募集することになった。最初から1校のみ志望できることにしておけば、確かに20名の不合格者は出るが、当然私立などの併願をしているはずだから、以前と同じことで何も時間とお金を掛けて再募集などしなくてもいいのである。こんな点からも、今回の入試制度は実に「馬鹿げた」制度であると私は考える。

合格発表は受験した第1希望の学校に見に行くことになる。見事合格した生徒には、合格証明書とその後の案内などが入った合格書類を同時に受け取ることになる。不幸にも不合格だった生徒には第2希望の高校の合格が決まっていれば、その旨を書いた合格証明書が渡され、合格書類は第2希望の高校へその足でもらいに行くことになる。第1希望と第2希望の高校共に不合格だった生徒には「不合格」の通知だけが手渡されることになる。2校同時に落ちたことになる。「あなたは2校ともだめだったのですよ」とダメを押されるわけである。その気持ちは如何に?「15の春に泣かせない」のきれいごとで始まったこの入試制度の結果がこれである。2校も同時に落ちるのですぞ!

県内165校の県立高校の入試の実態は外部から見ても、内部から見ても多くの問題を先送りしながらこうして現在に至っている。

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