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入試選抜業務作業の舞台裏


■一般入試の志願者ほぼ確定

 今朝(2003/02/04(火))の新聞に、神奈川県の公立高校の一般入試志願者数が載っていた。わたしの勤務する高校の志願者も何とか募集定員をクリアしてはいるが、今後の志願変更(第一希望変更はA、第二希望変更はBという)によっては、油断できない情勢なので、落ち着けないでいる。

 わたしの仕事は前回にも書いたように入選のPC担当である。単なるデータ処理係なのだが、現在の神奈川県の入試制度(複数志願制…第一希望校と第二希望校を選べる)では、この入試選抜のためのコンピュータ支援システムは仕事の中核である。これなしでは、まずほとんど不可能な制度になっている。入試制度がコンピュータでの支援システムに支えられて成り立っている。データ処理とデータ通信、さらに入試に関わる種々の雑務もある。何よりも疲れる作業は、入力したデータにミスはないかを何度もチェックする仕事やデータ加工時の関数や数式に間違いがないかどうかを見定めることだ。現任校では、これらの仕事は職員全員の仕事ではなく、PC担当者が兼務して行っている。わたしは、今年度(昨年の4月から今年の3月までの学校における年度制)が現任校1年目で、それまでの流れはまったく知ることもなく、この仕事に当たっているため、その辺の事情は知らない。学校ごとにやり方もけっこう違うため、その学校にあわせて仕事をするしかない。今朝、新聞に載った志願者数もこのシステムを使って県教委に報告したものだが、教頭・事務でも同じように提出された願書の手集計をおこなっており、それとシステムで出力したものが一致したところで、県に送信する。

 明日から、志願変更Aが始まり、志願者数に多少の変動が出る。それを逐次追跡して、変更を入力してまた送信。という手順が何度もつづく。これから、3月の上旬まではこの作業が間断なくつづき、気持ちの休まる日々はない。その間に、入学試験があり、そのデータを元に選抜するための資料作りなど、気疲れのする仕事が何度も入ってくる。とにかく、休める日はめったにないので、毎日出勤することだけを考えて生活している有様である。

■仕事は平等には回ってこない

 自分の仕事に愚痴などいうつもりはない。みんなそれぞれの役目で仕事をしているわけだし、できる範囲で努力をしているのだろう。わたし自身、それほど必死に仕事をしているのか、確信はない。ただ、きょうも風邪で休んでいる職員もいるが、何ともうらやましい(これは皮肉である!)。わたしは、休みたくても休めない。同じPC担当になっている職員は4名いるが、わたし以外は3名とも3年生の担任であり、2月からは生徒は自由登校になったものの、まだ進路関係の仕事も残っているだろうから(と一応気を使うふり…本当はこんなの理由にもならない)、入選の仕事の大半はわたしがせざるを得ない。それに、この入選支援システムの内容を知っているのは、今年の担当者ではわたししかいないから、事実上休めないようになってしまっているのだ。1月中旬、わたしの親父も病に倒れ危篤状態になったが、何とか現在は小康状態を保ってはいる。しかし、もう高齢なので、いつ何があってもおかしくない。たとえ、万一のことがあったとしても、この仕事を終えるまでは動けない。代わりにやってくれる人がいれば、休めるものなら休みたい。でも、それはかなわない。

 仕事をしていていつも思うのだが、仕事は平等には回ってこない。仕事はお金と同じで、できる(できそうな)人・お金のある人のところに集中する。声をかけても仕事をしない人(したくない人)は仕事をしない。声をかけられないと仕事がないと思っている人もいる。仕事は自分から見つけてするものだが、お殿様のように声をかけられるのを待っている人も多い。わたしは「これから作業に入りますよ」などと声をかけたりはしない。すでに毎日作業はあることを言ってあるし、自分から来ない人を当てにすることはない。自分でさっさとやってしまう。とくに、PC関係の仕事は、頭数だけいても意味はない。テキパキと正確に仕事ができることが大切だ。時間に追われながら仕事をすることになるので、俊敏さが必要である。人に言われて仕事にのこのこ来るようでは、この仕事をする資質に欠けると言われても仕方のないことだ。厳しいことをいうようだが、わたし自身もこれを書きながら自戒している。

 県教委では、入試のための「入学者選抜業務支援システム(正式名)」を”誰でも使えるシステム”などと言っていると伝聞したが、とんでもない。講習は1回で、何度読んでもよくわからないマニュアルを渡されただけで、本番に臨んでいる。パソコンには強い(大言壮語ではない、事実である。)わたしでも、毎日のようにハラハラしながら使っている。データの保存方法があまりに稚拙で、すでにデータを損失する寸前のところで、何とか回避したこともある。県から配給されたパソコンもNECの安物で、安定性もよくない。メモリも不足、リソースメモリ不足もよく起こす。県ではこのパソコンで入選業務をやれと通達まで出している。ハード、ソフト両面での不安定さを抱えながら、作業に取り組んでいる。いつの時代も現場の苦労などあまり考慮されることなく、役所からは偉そうな通達だけがやってくる。ま、中には良心的な人もいることは人間社会だからわかるものの、そういう人はおそらく組織の中では埋没しているのだろう。

■今は入選作業真っ最中(2003/02/21(金) )

 昨日は、1日かけて採点の終わり点数を入力したファイルをシステムから落として、いよいよデータの加工の作業をした。データの加工は、すでに中学校側には公表してある基準に従って行うのだが、勤務校の基準ははっきり言って余り統計学的には意味のない手法を使っておこなうことになっている(これは前年度までに決めてあることでわたしにはどうにもできない)。単純にデータをある数値をもとに並べて終わりというわけではない。過年度生や他県から転勤などのために移動してくる受検生もいるため(そういう場合は資料欠という扱いになる)、それらのデータは別扱いで処理しなければならない。また、合否判定会議にかけるときの資料になるため、細部にわたって入選委員会での話し合いを盛り込みながら、データを処理し、資料化してゆかねばならない。

 これらの仕事はPC担当の4名で当たるのだが、実質この作業ができるのは、わたしともう一人の先輩教師Yさんだけである。いわゆる表計算ソフト上で、いろいろな関数や数式を入れて、データを加工してゆく。自分の教えている生徒たちの成績を出すときの緊張感とはまたレベルが違うので、こういう作業には比較的慣れているわたしでもかなり緊張する。昨日は8:50にこの作業に入り、12:00まで全く休憩なしでやり、そのあと20分で昼食。12:25から13:45まで集中して仕事をつづけて、ようやく資料の原案をプリントアウトできた。が、その後に行われた入選会議でいろいろな修正が出て、その都度パソコンに向かい、どんどん変更を加え、最終的に「これでいいだろう」という資料に仕上がったのが、16:30頃である。ただ、パソコンの操作ができるというだけでなく、入試の流れ、選考基準の流れなどがわかっていないと実際のデータ加工さえできない。それもミスは許されない。受検生に迷惑はかけられないし、自分の意地にかけてもミスはしたくない。PC担当の気合もようやく入ってきて、少しずつみんなが動いてくれるようになったのはうれしい。

 きょうは、午後「第1希望判定会議(募集定員の80%の合否を決める)」が予定されている。判定のための資料はすでにできているのだが、志願辞退などが入れば、またデータの作り直しがあるため、これを書いている今も気持ちは落ち着かない。判定会議後であれば、それは次の「第2希望判定会議」のデータ入力の際にその辞退者の入力をして人数の確定ができるのだが、今の段階ではそれもできないため、ハラハラドキドキである。一応の目安は1時間45分後の正午である。まだ、事務室から連絡は入っていない。じつはこれを書いているのは、わたしはそういう事態になったときの待機のため、物理室でやることがないためである。気持ちに余裕でもあれば、読書するとか教材研究をするとかできるのだろうが、どうにも落ち着かないのは気が小さいせいだ。こういうときは、時間の経つのが遅く感じられる。現在、2003/02/21(金) 10:29である。

■一番の山場でもPC担当者の意識は低い

 民間の会社では、PCを操作できないことは、即「リストラ」を意味するのかもしれない。だが、公立の学校にあっては、「私はPCは苦手なので、できません。」で通る。その分の仕事はすべて、ある一定以上のPC操作技術を持った人のところへ来る。でも、給料に差があるわけではない。PCができようができまいが、本業は授業をすることなので、それ以外の仕事はほとんど評価されない。それじゃ授業のほうはとなるのだが、授業が上手いとか下手だとか関係なく経験年数が同じなら給料も同じである。授業が崩壊していても職場では見て見ぬふりである。せいぜい、管理職が少しチェックするようだが、その管理職でも自分が教室で教えていたときどれほどの授業ができていたのかはほぼ想像がつくというものだ(管理職は授業がきちんとできるかどうかは関係ない)。こうしてつらつら考えてみると、教員の中でPCに強いということは返って仕事が増えるだけだあり、あまりいいことではない。「私は苦手ですから…」と逃げていたほうが仕事が来なくていいのである。わたしは気が弱いせいか、転勤時して来たとき、すでにこの仕事が回ってくることは決まっていても、断れなかった。たぶん、みんな逃げて、残されていた仕事であることは知っていたので。

 今年度の入選委員会の中でも、このPCの実務に当たったことのない人は、この仕事の大変さは全くといっていいほど認知されていない。教員には理想論の好きな人が多いので、自分にはできそうにないことも平気でしゃべる。だれかやってくれる人がいることを当てにして。自分がやるわけではないから、無責任なのである。万が一そういう仕事が回ってきても「私はそれは苦手なので、できません。」で逃げてしまう。こういう教員がおそらく全国の教員の8割くらいはいるんじゃないか。約4ヶ月は仕事のある日は絶対に休めないし、代わりはいないも同然なのである。ちなみに、わたしは、年休は午後の時間休しかとれなかった。親父が危篤のときも、親父には済まない気持ちを抱きながら、職場に足を運んでいた。

 PCの操作が苦手なことは、別に責められることではないだろう。それより、係になっていながら、その仕事があるときに現場に居合わせない、作業を人任せにしてしまうことは、無責任といわれても仕方ない。わたし自身は、一人でPCの作業をすることには慣れているのでそれほどのストレスはないが、扱うデータがミスの許されないものなので、せめて入力時にデータ元や画面をチェックしてミスのないように見守るというような協力はほしかった。しかし、ほとんどそういうことも望めず、わたし一人に任せっぱなしの状態のまま、最後まで来てしまった。作業に従事している期間が長かっただけに、もう少し協力体制のある中で仕事をしたかったとは思う。しかし、今こうして仕事が終わってみると、もっと強引に協力を求めなかった自分にも非はあると感じている。自分のペースでどんどんやってしまうという、わたしの悪い点がでてしまったのだろう。ただ、自分なりに精一杯やったことは間違いない。この仕事に集中するために自分の分掌(教務部)での仕事を犠牲にせざるを得ない点があったことも事実だ。おそらく、わたしがやるべきことをやっていないために、迷惑をかけた点もあったことをお詫びしたい。わかっていながら、やらなかったのだから。この仕事に集中するために…。

■入試選抜作業を終えて

 終わってみれば、あの気ぜわしい期間も夢のようだ。まだ、つい先日まで入選関連の仕事が残っていたのだが、合格者のデータは新1学年のクラス編成の作業へと引継ぎ、もう気持ちは次年度のことに移っている。入選委員会の集まりもあと1回。次年度からの新しい入試制度に向けて審議しなければいけない案件があるためだ。これが終わって本当に今年度の入選の仕事が終わる。個人的には余りやりたくない仕事ではあった。でも、仕事が回ってきたからには最後まできちんとやり通したかった。そういう意味では、実際にできたと思っている。

 次年度からはじまる新しい入試制度は、まだその概要は未定である。いつものように県教委からは、今までの制度のどこが良くて、どこが悪かったのかのきちんとした総括もないまま、次の制度へと流れ込んでゆく。「複数志願制」という鳴り物入りではじまった現在の入試制度もわずか6年という短い間に終焉を迎えようとしている。今度の新しい制度もおそらくそれほどは長く続かないことは、現在進行している制度の概要を見ても予想できる。学区の廃止、前期試験(推薦)と後期入試(学力試験)などが検討されているが、県教委の最大の目的は、生き残りの学校とそうでない学校を分けて、最終的には県立高校の数を大幅に減らすことである。学校数を減らせば、少子化にも対応できるし、さらに職員の人員削減にもつながり、税収減に苦しんでいる県にとっては願ったりかなったりなのだ。あと10年くらいは景気の回復など到底望めない中、教育予算の削減は急務なのだろう。しかし、よく考えてみれば、税収などそれほど有効に使われているとは思えないのだから、将来の子供たちへ投資したほうがずっといいように思うのは、我田引水というものか。

 今年で終わる入学者選抜制度(複数志願制)は、余りにも複雑であった。コンピュータによる入選業務支援システムを使ってはいるが、そのシステム自体がとても煩雑で不安定要素の多いものだった。志願者のデータをパソコン通信で送受信すること22回。それもそれぞれの学校任せの通信システムで、不安定といったらなかった。変なマクロのかかったシステムプログラム。何度も送られてくるバクの修正。システムの中身が見えないための不安を抱えての作業。約4ヶ月続く作業中は、休日以外は休みもとれなかった。PC担当者(実質1名)では分担などできるはずもない。みんなやりたくない仕事なのだから、「ちゃんとやってくださいよ」とも言いづらい。それにシステムの概要を知るだけでもけっこうてこずるほどだから、足が向かないのもわかる気がする。いつの間にか、転勤早々PC担当のまとめ役になったわたしにほとんどの仕事が来たのもむべなるかな。

 何はともあれ、何とか無事仕事を終えてホッとしている。しばらくは、この手の仕事は関わりたくないが、次年度からはじまる新制度の入試でも県教委は何らかのシステムを使わせたがるような気がする。また、担当する学校側に自前でシステムを作れるだけの技量がなければ、そういうシステムを受け入れざるを得なくなる。次年度の担当者にはそういう点をきちんと申し送りたいと考えている。まもなく、2002年度の最後を迎える。その日が、わたしの入選委員会PC担当としての最後の日になる。

 2003/03/17(月) 09:19

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