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スイス(チューリッヒ)へ


ヨーロッパアルプスを越え、チューリッヒ向けて下降に入るBoeing 737-400

ヨーロッパアルプス上空を飛ぶBoeing 737-400。山々の中には、マッターホルンもあるはず?

■アルプス越え

 きょうは休業日でしたが、部活動があったため、いつも通りに出勤して部活中は学校の物理室で独り静かに仕事をしていました。もう以前のように土曜日が生徒の活動で気ぜわしいこともなくなりました。運動系の部活動の生徒が来て練習試合をしたり、基礎的な鍛錬に汗を流しているだけになってしまいました。まさに「ゆとり」が実現した結果です。職員室も閑散としており、部活の顧問が数人出たり入ったりしていました。私のいる部屋は4階にあり、だれも来ませんから、本当にシーンとしています。広い廊下をサンダルでパタパタ歩いている私の足音だけが、不気味に響いているだけです。「きょうは帰ったら、どこに飛ぶかな?」などとボンヤリ考えながら生徒用の世界地図帳を眺めていました。「フランスやスペインなどは何度か飛んでいるしな…」などとブツブツ独り言をいいながら地図を見ていたら、急に「そうだ!スイスのベルンに行こう!」と思いつきました。「ベルン?」と不思議がる人も多いと思いますが、どうしてでしょう?じつは、その少し前にP.M.Aディラックの書いた『一般相対性理論』東京図書を少し読み直していたからです。もうおわかりですよね?

 部活が終わり、少し用事を済ますと、急いで帰宅しました。荷物を置くと早々にパソコンを起動させてFS2002を立ち上げました。種々の設定をすませ、2002/06/22(土)14:25ローマの空港を離陸しました。目的地は「チューリッヒ」に変更しました。予定していた「ベルン」の空港の滑走路は4500ftほどしかなくて、着陸時に不安があったためです。機体はBoeing 737-400。ここで、ハプニング。離陸して順調に高度を上げて行っていたので、自動操縦に切り替えました。そうしたら、急激な左旋回に入りバンク角がかなり大きくなっていました。これは、ひょっとすると失速かな?と思っていたら、案の定高度が急激に下がり始めました。機首を上に上げてお尻からすり落ちる感じです。「まずい!」と操縦桿を思い切り前に倒し、機首を下げるようにしました。しばらくその状態をつづけた結果、ようやく速度を回復して、機体を水平近くに安定させることができました。あとは、高度が33000ftに上がるのを待つだけです。そこからは水平飛行に移ります。約15分でその高度まで上昇しました。ここからは巡航速度290kts(IAS)での飛行です。フライトプランでは、ちょうどヨーロッパアルプスを山越えして、スイスのチューリッヒに向かうコースです。所要時間はおよそ1時間と少しです。

 今回の飛行は、時間も短いため、きちんとパソコンの前に座り景色を見たり、コックピットの計器類のチェックなどをしていました。ローマからはイタリア半島の西海岸線に沿って北上して、ジェノバの上空辺りからアルプス越えにかかるコースです。ヨーロッパアルプスは4000m級の山脈ですから、高度を33000ftにとってあれば、下降に入っていても高度は十分です。イタリアのマジョーレ湖の上空辺りを通るので、左手にモンテローザやマッターホルンなどの名峰が見えるかなと期待したのですが、残念ながら特定できるには少し距離がありすぎたようです。ただ、雪に覆われた山々の中に、これらの名峰が含まれていることは確かです。上に載せたスナップは、スイス側に入ったところで撮ったものです。飛行機の高度は次第に下がっているのがわかりますね。

 アルプス越えが終わると、もうそこはスイスの牧歌的な光景が広がっています。大小の湖沼も点在しています。チューリッヒの空港はチューリッヒ湖という細長い湖の近くにあります。この湖は有名なライン川の源流にも当たっているようで、地図で見ると、この湖から北に向かう流れはそのままライン川に合流しています。ほどなく空港が近づいてきました。空港は1500ftの標高があります。飛行機の高度が4000ftになった辺りで、ギア・フラップを降ろし、着陸態勢に入ります。滑走路が正面にくっきり見えてきました。これからが緊張の一瞬です。ゆっくり下降をつづけ、滑走路の端を通過後着地。逆噴射をかけてそのまましばらく滑走。ブレーキを小刻みにかけながら減速して、滑走路の中央部で停止。ちょうど15:30でした。ここから、スピードをゆっくりにして誘導路からターミナルまで移動しました。途中、飛行機が2機誘導路に向かうのを見ました。これから出発するのでしょう。

■飛行機の速度について

 FS2000までは、飛行機の速度(計)には「TAS(=True Air Speed)真大気速度」が使われていました。この速度は、静的な理想大気に対してどれくらいの速度で飛行しているかを示すものです。それに対して、今度のFS2002では「IAS(=Indicated Air Speed)指示大気速度」というより実機に近い速度の表示に変わりました。これは、大気が高度とともに密度が小さくなることや、それに伴う速度の変化も加味されたものです。飛行機は大気の中を飛ぶため、地上での車の速度のようなものは測ることはできません。ピトー管という速度を測る装置があり、風圧と静圧との差から大気との相対的な速度を出す方式を取っています。

 同じ280kts(時速では約1.85倍の518km)でも、高度が高くなると大気の密度や気温が変わります。ここでは、大気の密度だけに着目すると、高度33000ft(約10000m)では大気の密度は地上の約1/3になります。IASでは280ktsで表示されていますが、これをTAS表示に直すには、この密度の比の逆数の平方根をかければいいですから、280×√3=484ktsとなります。これは、時速表示では時速896kmですから、飛行機の本などに載っている巡航速度にほぼぴったり合うことがわかります。今回使ったBoeing 737-400でも速度計の指針では高度33000ftで速度が290ktsになっていましたが、その針のすぐ上にある小さなMach(マッハ)表示では0.79マッハを示していました。高度33000ftくらいでは気温は約−30℃ほどですから、そこでの音速は313m/sになり、1マッハは1130kmほどになります。ここから、0.79マッハは時速892kmが出てきます。よく「ジェット旅客機は高度10000mくらいのところを時速900kmくらいで飛行しているんだって…」といわれますが、それがこれにあたります。しかし、これはあくまでも大気が静止しているものとして、その大気に対しての速度です。

 地表面に対する通常の意味での「速度」は、今まで述べた方法では測れません。でも、最近では「GPS=Global Positioning System(全地球測位システム)」が普通に使われるようになりました。車に使われているカーナビもそうですね。あれを使えば、飛行機でもすぐに自分の飛行機の地表面に対する速度を測ることができます。今は、まだそこまで行っていないかも知れませんが、すぐにそうなるでしょう。飛行機の速度計ひとつ取っても先人たちの苦労の跡が偲ばれるというものです。

 2002/06/23 (日) 8:30:24

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