Давид Ойстрах

 ヴァイオリンの教則番組「趣味悠々」でもいわれたように「音は放物線を描く」ように移っていくべきなのだそうです。
 Illustratorのおかげで私のようなへっぽこデザイナーでもきれいな曲線が描けるようになりました。上図のような曲線がベジエ曲線です。

 拡大しました。赤三角で示した点を「アンカーポイント」といいます。伸びている棒はハンドルです。ハンドルを引っぱると、次のアンカーポイントまでのカーブの描き方やボリュームが操作できます。一定のルールのなかで操作する限り、どんなに力を加えてもきれいな曲線は崩れることがありません。


 アンカーポイントは音符そのものだと思います。一定のルールの中でなら、どんなに強く弓を弾いても放物線が崩れることなく次の音へつながる計算(曲率の計算)ができているからです。
「音はいつもふたつでひとつ」と教えたのはスタリャルスキーでした。
 ある音を出したとき、次の音へどうつなげるか、いつも熟慮されていること。なめらかにつながるか、跳ねるか、クレッシェンドするか、減衰するか、かすれるか、張り出すか、艶を持たせるか、ぶっきらぼうか、平静を装うか、駆け登るか、リソリュートするか、弓を突くか、憑かれるか、ふらっと揺れるか、フォリオのふりをするか、踊らせるか、歌うか、祈るか、テンポ・プリモに戻るか、「強く弱くやや強く弱く」の基本へ還るか、生か死か、ストラディヴァリウスの音色と引替えに魂を売るか?

 音符というアンカーポイントのなかには、次の音符へ移るためにもっとずっと多くのいろんな情報と「力」がこめられていると思います。下はやはりベジエを扱えるドロー系ソフトFractal Design Expression で描いてみました。1小節のなかにどんなにたくさん16分音符が並んでいようと、それがどんなに速いパッセージであろうと音は「ふたつでひとつ」です。それがどんなヴィヴァーチェでも音符の一つひとつに次の音符へ移るためのベクトルがこめられているわけですが、例えば昇りつめた最後のメッセージが「あなたの楽器を壊しなさい」なんて曲が、どこかにあるような気がしませんか?