◇トリ頭ターミナルへ ... ◆前のページへ
icon0417.gif2002年

==活字本==
佐伯泰英の時代小説
鎌倉河岸捕物控
連作形式で、一話ごとに起きる事件を解決しつつ、一冊を通しての事件にも決着をつける捕り物帳。
江戸古町町人でもある十手持ち「金座裏の宗五郎」に持ち込まれる事件に、鎌倉河岸育ちの若者四人(宗五郎の手先をつとめる亮吉、酒問屋の豊島屋で働く娘しほ、呉服商いの松坂屋の手代政次、船宿の船頭彦四郎)が何らかの形で関わります。さらに、一冊を通じての事件は、この四人に深く関係するものになっています。

居眠り磐音江戸双紙
縁戚でもある三人の幼なじみが江戸遊学を終えて国許に戻ったが、狂気のような殺人事件と仇討ちに巻き込まれ、生き残った坂崎磐音は失意のまま国を出奔して、江戸に戻る。浪人として江戸で暮らす彼がぶつかる日々の出来事や事件の話かと思っていたら、やがて出奔してきた藩政が裏で見え隠れするようになりました。あらら。(一〜二巻目)
坂崎磐音、国許豊後関前藩に戻り、ついに藩政を専断する国家老宍戸と対決をする。それはいい。それはそれなりに片が付いたみたいだからいい。でも、その時許嫁(元?)は両親を助けるために女衒に身を売って国を出ていたので、次はそちらがテーマになるのでしょう。早く救ってやってくれよ磐音。でも彼女を買い戻すだけのお金、持ってないよなあ。いくら藩のために働いたとしても、元々貧乏藩だし……どうなってしまうのだ?(三巻目)

古着屋総兵衛影始末
はったりのきいた伝奇活劇風作品。
江戸富沢町の古着問屋惣代大黒屋は、神君家康より隠れ旗本として徳川家を護持するよう密命を受けた鳶沢成元の表の顔である。その六代目である総兵衛の時代に、大黒屋の裏の顔を知ってか知らずか、古着問屋惣代を召し上げようという動きが始まった。
総兵衛の指揮による探索や反撃と言った様々な動きがとても段取り良くて、気持ちがいい。部下や一族の者を手際よく動かしていく様は、ちょっと鬼平を連想してしまいました。時代小説は意外と好きなのですが、どちらかというと、じんわり来る話を読むことが多くて、こういうスカッとするものは久しぶりでした(でも完全ハッピーエンドではなかったけど)


「ダークホルムの闇の君」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/創元FT文庫
面白いです!魔物と契約した資本家が送り出す魔法世界ツァー。その企画の裏方みたいな仕事をやらねばならない魔法世界の人々のお話。普通の教団が邪教集団の役をやらされたり、エルフは闇エルフを演じたりと、逆らうこともできずに言われるがままなのです。今年は、夫婦と一女一男五グリフィン(遺伝子魔法の産物なので、グリフィンも夫妻の子供)という奇妙な家族構成の一家の主ダークが、お告げにより「闇の君」を演じる当番になってしまいます。生き物に関する魔法に長じているダークは苦労しながら「闇の君」をこなそうとしますが、様々なアクシデントが起き、子供達がそれを助けていきます。“Dark Lord of Derkholm ”
ジョーンズの描く世界だから単純な善人は出てこないし、最後の最後までパズルのピースがどこにはまるのかわからない。わたしは3日かけて読み切ったのですが、途中で子供達が夢に出てきてしまいましたよ。しかし一番好きなのは、ドラゴンのウロコです。らぶりーな頑固オヤヂ竜だ

「ミラー・ダンス・上下巻」L・M・ビジョルド/創元推理文庫
マイルズの留守中に彼になりすましてダンデリィ傭兵部隊の快速艇とコマンド部隊を手に入れたクローンのマーク。ジャクソン統一惑星のクローン達を研究所から連れ出そうとするのだが、失敗して進退きわまってしまう。急遽あとを追ったマイルズだが、マーク達の救出作戦のさなか、敵弾の直撃を受けてしまう。蘇生への望みを託して低温保管器に納められたマイルズの遺体が、脱出行の最中に行方不明になってしまう。マイルズの訃報は故国バラヤーにも伝えられ、マークは遺伝的両親に対面する。マイルズの皇位継承権が自分に引き継がれると知ったマークは、それを避けるために全力を挙げてマイルズの遺体捜索にとりくむ。
「親愛なるクローン」に出てきたマークの再登場です。なんだか冷たいロボットみたいな印象が残っていたのですが、随分と……この物語の中で自己確立をしていったということか。

「オーケストラ楽器別人間学」茂木大輔/新潮文庫
わたくし、ノンフィクションは年に1冊程度しか読みません。そして読んでも、暇を埋めるような読み方になり、いつ読み終わったんだかハッキリしないことが大部分です。だから読了本リストに入れ忘れることもしばしばです。しかしこの本は読み始めたら面白くて、一気にいってしまいました。ちょうど「モーツァルトは子守唄を歌わない」を読んでいて、目に入った題名に興味を引かれたのが購入動機だったのですけどね。乱暴な言い方をするなら、楽器別の演奏者特性を、血液型や星座占いに似たような書き方で紹介している本です。しかし、長年に渡る観察事実を元にしているので、占いとは異なります。ところで、わたしはクラリネットがやりたくなりましたよ。いや人間的性格じゃなくて、楽器特性が気に入ったの。退職後の趣味にしたいものです(楽器は毎日練習しなくてはならないので、会社勤めをしている間は無理。少なくともわたしには無理)

「鳥姫伝」バリー・ヒューガート/ハヤカワ文庫FT
「唐代中国(もどき)の静かな村で子供達が謎の病に倒れた。純朴な村の青年十牛は助けを求めて北京に行き、老賢者李高と出会う。李高の診断では治療には幻の薬草が必要。大力参と呼ばれるその薬草を求めて、十牛と李高は旅に出る。中国全土を巡り、大力参を追い求めて魔物と戦ううちに耳にした手がかりは、鳥姫の伝説だった。
アメリカ人が書いた中華ファンタジー。中国モノのあっけらかんとしたおおらかさと、西洋の合理的な部分がうまくミックスしていて、とても読み応えのある話になっていました。中国オリジナルのお話って、「これは突っ込んじゃいけないんだ」という、耳目を半分ふさぐのが楽しむコツ、という所があるけれど、これはふさぎたくなる部分がうまーく説明されていている感じです。それでいて、中国の桁の違う(白髪三千丈的な)感じも残してあるので、「これのどこが中国よ?」と思うこともありませんでした。李高が魅力ある爺さんで、十牛とのやりとりがユーモラスです。泣かせてくれるエピソードもあるのですが、これは西洋的な部分でしょうね。中華だとバッサリ殺して省みないものなあ。(せいぜい大泣きしておしまいでしょう)。
なお、わたしなんぞには気がつけないアレコレについて書かれたページがあります。「鳥姫伝」を読むというページです。

「真世の王 ・上下巻」妹尾ゆふ子/エニックスEXノベルズ
かつて〈銀の声持つ人〉が言葉の力で創りあげた世界。だが、いまや言葉の網は緩み、完璧だったはずの世界は綻び、魔物が跳梁するようになっていた。辺境出身の青年ウルバンは、言葉の力で魔物と戦おうと目論む月白領王ソグヤムに付き従って王都に向かう。竜使となった幼馴染みジェンと、世界が滅んだ後その再生を担う〈真世の王〉の候補として生み出された、漆黒領王家最後の姫エスタシアと出会う……。
ハイ・ファンタジーにこだわりのある作者のこの作品は、世界の成り立ちが“言葉”であることもあって、とても緻密な言葉で紡がれています。日頃読み飛ばしている、キャラ萌えで成り立っているYA作品とはまったく違いますね。そして先が見えない。そもそも、滅亡に向かう世界を救う勇者という、普遍的な構図が成り立たない。だって〈真世の王〉の存在が世界滅亡後の再生を担うことだから。でも登場人物達は、今ある世界の滅びを少しでも遅らせたいと努力しているのです。しかし同時に先の救いとして〈真世の王〉を守ろうとしている。世界は一体どうなろうとしているのでしょうか?
最後まで先が見えない話でした。ラストバトルの悪夢めいた描写が迫力で、これはガッチリと作られた世界だからこそ支えられるのでしょう。なぜこの世界にソレがある?とか、どこから持ってきたパーツなの?などの、白ける要素は最後までありませんでした。異世界の空気がとても濃い物語です。
さて自分は、キャラ萌え体質ではないとはいえ、お気に入りのキャラクターの一人や二人いないとなかなか辛く感じる自分をハッキリと意識したような気もします。たぶん一番人気だろう、東方月白領の若き領王ソグヤムは、わたしもやはり好き。思想も行動も前向きで自立的だし、従兄弟との掛け合い漫才で笑えるシーンを作り出してくれている唯一のお人だし。ヒロイン・エスタシアへの感情移入は最後まで不可能でした。まあ、これはな、好みから言って仕方あるまい。エスタシアだけでなく、ジェン&ウルバンのヒーロースタンス二人(ヒーローとは言い切れないあたりが、この本の特徴かもしれない)も、「遅かった」だの「間に合わなかった」だの「力が足りない」などと言うのもどうもね……。でもエスタシアが何度も自分に言い聞かせる「テイ、エスタシア(立て、エスタシア)」には、心動かされましたよ。だからといって彼女がきちんと立てるわけではないのだけど。

「人狼」今野敏/徳間文庫
杖をついた整体師美崎のシリーズ続刊。私立探偵の能代が紹介してくれた患者の黒岩豪は、美崎が選手生命を断たれるまで所属していた修拳会館の出身で、今は自ら道場を開いている。だが彼らの目的は他にあった。最近話題の狼男―狼の面をつけ、渋谷の街で非行少年グループたちをたった一人、しかも素手で痛めつけているという男が、黒岩の弟子・真島らしい。黒岩は美崎に真島の手助けを依頼する。
やっぱり特別面白いわけじゃないんだけど、なんだか好き。続けば絶対に読むことでしょう。今刊の主な舞台は池袋で、ストリートのボランティア自警団やら不良やらが出てきます。美崎と金髪中学生達との交流のエピソードがお気に入りです。シリーズになれば彼らはきっとまた出てくると思うな

「よろずお直し業」草上仁/徳間デュアル文庫
どんなものでも直す「よろずお直し業」を営むサバロは戦場で蘇った五年前より以前の記憶を失っている。目には見えない命のねじを巻き戻すことであらゆるものを元通りにするサバロは、自分自身の心臓のねじも毎日少しずつ巻き戻しながら旅を続けている。連作短編集。
こういうほっこりと優しいお話は好み。物を直すことを通して、その所有者や壊した当事者の心を見つめ直すのですね。ラストがもの哀しいのが寂しいのですが、エンドレスで続くのでない限り、まとめとしてはこうならざるを得ないんだろうなあ。いや、決してアンハッピーエンドではないのですけれどね

「サムライ・レンズマン」古橋秀之/徳間デュアル文庫
いやあ、すっげー面白かったです。そういえばこういうノリだったよスミスのスペースオペラは!クジラ族レンズマンのジョナサンやドラゴンのウォーゼルとか、ちゃんと思い出せるし、キムボール・キニスンはこういう奴。うんうん。「ブラックロッド」シリーズや「タツモリ家の食卓」の戦闘シーンなどでの、作者のハイスピード・ハイテンションがいい風に脳天気スペオペテイストを醸し出しているようです。いやもうアメコミ調スペオペは理屈じゃないね。笑い声なんか「HA!HA!HA!」という感じだよ(実際、挿絵ではそう描かれていたりするし)

「暁天の星−鬼籍通覧」 椹野道流/講談社ノベルス
「真実の剣」シリーズ テリー・グッドカインド/ハヤカワ文庫FT
「封仙娘娘追宝録」ろくごまるに/富士見ファンタジア文庫
新米仙人の和穂が師匠の仕事場の準備をしていた時に事故が起き、欠陥宝貝726個が地上に飛び散ってしまう。放っておけば地上界の人間が死に絶える事態が起きると知り、和穂は地上に降りて宝貝を回収する任につく。お供は、唯一逃げ出さなかった欠陥宝貝の殷雷刀。仙骨を封じられ、人間となった和穂は、無事にすべての宝貝を回収できるのか?
726個回収するまでに、何冊かかるんだろう?とりあえず1冊で数個回収しているようですが。富士見ファンタジア文庫に期待する面白さはクリア。勢いがあって面白かったです。欠陥宝貝のいくつかは人格を持っており、殷雷刀も人型になります。素直だけれど芯の強い元仙人の少女和穂の一生懸命さと、和穂を守ることを使命としている殷雷刀(その欠点は情のもろさというを武器の宝貝)の戦いっぷりとが、いいコンビ。
このシリーズは、キャラクターもストーリーも、微妙に予想を裏切ることが多く、その意外感が魅力です

「スター・ハンドラー」草上仁/ソノラマ文庫
生物訓練士のミリが就職したゼネラル・ブリーディング社はくせ者揃い。そして群の個体数が素数であることにこだわる珍獣(?)ヤアプ=ポチの調教途中で危険度Aの星に不時着してしまったミリ達をオオドラゴンモドキが襲うが、ポチの活躍で危機を脱する。しかし王族でミュージシャンで犯罪組織のボスである依頼人に、なぜか引き渡し前のポチをかっさらわれてしまう。ミリ達はミネア宙軍タレント組合のバックアップを受けながら、ポチを取り戻しに行く!

☆様子見シリーズ☆
「BIOME(バイオーム)深緑の魔女」伊東京一/ファミ通文庫(シリーズとは違うのか?)
舞台は大地の大部分を樹海に覆われた世界。主人公ライカは森林保護者で、森林の生態系を守り、異常繁殖などで人々の生活を危険にさらさないようにするための職業だ。ライカは、とある国で樹海に異常発生したバンクシワームの駆除を依頼される。しかし、この異常発生の裏には、ある復讐劇が……。
虫がいっぱい出てきます。緑もむんむんしてます。でも気持ち悪くはありませんでしたよ。主人公は、放浪生活をしてきた山猫のようなタイプ。世界設定が魅力的なので、続編を期待したいなあ
次の作品「クロスオーバー」も密林と虫ムシ大行進とのことだったので、続編かと思ったら違いました。世界も違う。でも虫と戦います。今作も、男も女もタコ殴りにしたい奴がいないのが嬉しいです

「ウィザーズ・ブレイン」三枝 零一/電撃文庫
ボーイ・ミーツ・ア・ガールの魔法士と情報戦のシリーズ。最初は「う〜ん?」程度でしたが、徐々に面白さが増してきています。「I-ブレイン」が魔法を科学っぽい造語で語るタイプなので、ちょっと古橋秀之を連想しましたが、あの濃さはないです。まあ「ボーイ・ミーツ・ガール」はねぇ、このパターンは飽きたよと思いましたが、青年の永遠の憧れなんでありましょうなあ
2作目…フリーの便利屋魔法士ヘイズは、ヒマラヤ山脈上空に浮かぶ特殊な魔法士実験施設に潜入し、実験データとサンプルを持ち帰るという依頼を受ける。実験体の暴走の可能性を聞かされていたヘイズは、そこに暮らしている天真爛漫な少年少女4人に戸惑う。彼らは滅亡に向かう外世界のことも知らずにいた……。
前作は典型的なボーイ・ミーツ・ア・ガールでしたが、今度のはその面についてはバリエーションパターン。メインストーリーとのバランスもうまくいっていると思います。実験体である少年少女達の哀れさも自然な分悲しくて、後半は一気読みしてしまいました。登場人物は総入れ替えされていますが、神戸消失に言及されていたので、時間的には直後みたい。前作は魔法士と情報戦の設定のユニークさで読んだところがあって、評価保留気味だったのだけど、この先は、世界観と人間で読ませてくれそうな予感。登場人物もクロスしていくらしいし、もうちょっとつきあおうかな。なお、この作者の兄弟感にもいささか興味あり。
3作目…アメリカに残るシティで、ファクトリー産まれの魔法士達が主人公。で、1作目の神戸に出てきた黒沢裕一がゲスト扱い。あきらかに戦いよりも人間関係がメインになっていますね。

「シンフォニアグリーン」砦葉月/電撃文庫(シリーズ化するらしいんだけど)
プラントハンターの少女が出会う、人と機能性植物を巡る短編集形式のシリーズ(?)。植物という共通項があるためについ伊東京一の「BIOME」と比較してしまうのですが、あちらにSFテイストを感じるならば、こちらはファンタジーです。移動手段(車や飛行物)であったり楽器であったりという、特化した機能を持つ植物が次々に出て来るのですが、わたしはP・アンソニイのザンスシリーズ(もっと即物的だったけど)や横田順彌のポエム君シリーズを思い出していました(ポエム君にそういう植物が出てきたかどうかは忘れているんだけど、なぜか思い浮かぶ)

「AVION〜天界高度戦記〜」富永 浩史/富士見ファンタジア文庫
「天かけるバカ」のような空の騎士と、魔法とが混在している、帝政ロシアがモデルらしい国が舞台。国家的陰謀に巻き込まれた父達(男爵と御者)を助けるために、お嬢様とその使用人格の双子の兄弟が、飛行機を飛ばします。そして騙されて男爵を襲った刺客の少年もなぜか同行させられ、いつしか仲間に。
面白かったです。「天かける……」のような脳天気さはないけれど、キャラクター達の感情がまっすぐで気持ちがいい。ひねているようでもわかりやすいんだな

☆純文学系作家によるファンタジーはやや異色☆
「神様」川上弘美/中公文庫
短編集。純文学風味のぶたぶたという感じ。変なものが日常に溶け込んでいるの。小学校の教科書で星新一の短編を読んだ時のことを思い出しました。どの話も国語の教科書に載っていて不思議はない、しかも小学校から高校までオールOKだけれど、テストで「この時のクマに対するわたしの気持ちを30文字で述べなさい」とか出されたらとてもイヤだなと思った。クマとのピクニックも、河童の宴会も、壺に住むコスミスミコも、人魚も、対峙する“わたし”心情はとても微妙で、読み手の年代と精神状態で答えが違うだろうし。ところで、わたしはかなり読み進むまで、語り手が男だと思っていたんだけど、もしかしたら全部女だったのかしら?わたしの感覚だと、同じアパートに住むクマに誘われて散歩に出るシチュエーションは、男の方が自然、天然。かなりのメルヘンとわかっていれば、女でもいけるんだけど、日常の延長だとなーーどうも女とクマの友情は絵柄が浮かびません

「13」古川日出男/角川文庫
2部構成で、1部は片目だけ色覚異常ゆえに色に対して鋭敏な響一の少年時代。特に中学校卒業後に渡ったザイールでの森の兄弟との絆と、森での暮らしがメイン。2部は、まずハリウッドでの映画人達のエピソードから始まり、響一がからんでくる。ここ半年で何作か読んでいる純文学風味ただよう冒険物語でした。この作品はかなり面白い方

「紫の砂漠」・「詩人の夢」松村栄子/ハルキ文庫
四つの月を持ち「真実の恋」によって男女の性差が決定する星で、禁断の地である紫の砂漠に魅せられたシェプシは七歳になって「運命の旅」に出る。名無しの詩人に連れられて各村々の子供達は旅をするが、シェプシは途中で一人こっそり旅から抜けて砂漠に足を踏み入れる……。「童話物語」とどこか通じる雰囲気があるなあ。なんだろう?純文学方面の作者だということから来るものなのかな?(この作者は芥川賞作家)いわゆるファンタジーをメインに書いている作家の作品とはどこか違う味わいを感じます。ジュブナイルのファンタジーではなく、ハイ・ファンタジー(日本ではどうしたって読者層を若めに想定しなければならないにしても)の作家のものとも違う。一つには、ファンタジーの“お約束アイテム”がないってことはあるんだけど。あ、でもこのお話はSFだったんだわ……。
「詩人の夢」は「紫の砂漠」の続編。前作で受けた心の傷を残したまま詩人になったシェプシ。砂漠が開放されて以来、調和のとれた閉じた世界は様々な面で変わっていく。信仰、政治、生活の変化は人の運命の子の養子制度にも影響していく。
出てくる科学技術力面でどうもアンバランスさを感じるのですが、この物語にとってそこは些末事なんだろうから目をつむりましょう。前作に比べるとややとっちらかった印象になっているのは、前作が安定した世界の中での主人公の心情だけを追っていたのに対して、こちらはシェプシの心情だけでなく世界も動いているからなのでしょう。前は、一点に向かって収束していくベクトルだけだったけど、今回はあちこちを向いたベクトルがあるから、メインとなるベクトルの力が弱くなっているみたい。

「童話物語 大きなお話の始まり」向山貴彦・著 宮山香里・絵/幻冬舎文庫
とても面白かったし、感動しました。が。どうしても十二国記の第一作や宮崎アニメのラピュタや、あとなんだっけな?忘れてしまったけど何かもう一つが脳裏をちらちらし続けていたのでありました。えーっと、わたしの泣きツボは、おばあちゃんとオムレツでした。

==マンガ==
「トッペンカムデンへようこそ」征矢友花/秋田書店プリンセスコミックス

「風の杜夜話」市川ジュン/あおばコミックス
ネムキ系異界との境界ストーリーとでも言いますか。舞台は鎌倉の旧家。その当主風宮高王が生活費の足しにするためにやっている骨董と花の店「風(ふう)」の雇われ店長、元OL美鳥。高王とは親同士が古い友人で、法科の大学生でもある「風」の副店長朝比奈多。風宮の蔵から持ち出されて「風」で売られる品物や、風宮の敷地にあるものにまつわる不思議ストーリーです。雰囲気は「百鬼…」や「雨柳堂…」とちょっと似ているのですが、あちらのように闇の濃さは感じません(画面が白いせい?)。庭が広々として花が多かったり、出てくる品物にガレなどがあるせいでしょうか?

「知らない国の物語」川瀬夏菜/白泉社花とゆめコミックス
生きのよいローズマリー王女と、素直さ変化球のレイノル王子との恋の進展・ヨーロッパ風王族バージョンです。面白かったんだけど、色々と連想する作品があったのも事実。柳原さんちの「千沙&一清」。それから草川さんちの「ガートルードのレシピ」の、ヒロインの強さ(読み返したらサハラの方が度胸あったかも)と策略を巡らす兄。しかし王女と王子の恋物語と、女子高生と悪魔の恋物語では当然ムードが異なるのでした。兄もガートルードんとこの方が性悪。ところで絵について、最近の白泉社的絵柄という印象を持ったのだがどうだろう?なんとなく、あの人のアシスタントやっていたのだろうか?などと思ってしまうのだ。あの人と言うのは、複数当てはめることが可能なんだけど。

「コーセルテルの竜術士」石動あゆま/集英社クリムゾンコミックス
若き天才竜術士・マシェルは七人のチビ竜の育児に日々大わらわ、というお話。子竜達は二頭身でころころしております。ほとんど保父さん日記という趣ですね。
で、とっとと2巻を買いに走ったわたしは、これのどこがツボだったのでしょうか?おこちゃま相手に「かわいい〜!」などという反応は、微塵も引き出せないわたしなので、子竜の愛らしさにやられたわけではありません。さっぱりした気性のデキる娘さんがいるわけでもない。どこ?どこなのわたしの心をつかんだのは!?

「水と器」山田睦月/新書館WINGS COMICS(02/06/09)
幼い頃の記憶を持たない美しい人形師が作る人形は、魔が宿りやすいという噂があった。怨霊退治を生業とする坊主が彼と出会い、妖と人間が引き起こす事件に関わってゆく……
雑誌を読んでいた頃にちょっと気に入っていた話がシリーズ物として続いていたのね。続きが読めて嬉しいです

「深海蒐集人」かまたきみこ/朝日ソノラマ眠れぬ夜の奇妙な話コミックス
地球温暖化により世界のほとんどが海に沈んだ。海中の様々な過去、歴史を引き上げるダイバー・ミミが出会う様々な事件。4編収録されているんだけど、これって続きは出るのだろうか?(通しナンバーが入っていないから…)タフなダイバー・ミミが気持ちいい。そして、童顔の35歳、蒐集局長ルカ・フェラーリがお気に入りであります。

「クレメンテ商会」かまたきみこ/朝日ソノラマ眠れぬ夜の奇妙な話コミックス
近未来ファンタジー。OA機器違法メンテナンス業者「クレメンテ商会」を名乗る美女・修子が追い求める「彼」とは……。
OA機器販売・メンテナンスを国際保護企業ギャノンが独占しているという設定に大受けしたのは、わたしが事務用品納入会社にいるせいでしょうが、愉快、愉快。しかしゼロックスの方が世界的大手だと思うけどなぁ〜

「火消し屋小町」逢坂みえこ/小学館BIG COMICS SPECIAL
就職が決まっていた会社の倒産のために、消防士の卵になったイケイケ女の南夏子21歳。消防学校でのエピソード〜消防学校卒業して現場に配属。職業モノって好きだ

「ES」惣領冬実/講談社モーニングKC
他人の脳に接触し、記憶を改竄することのできる秋庭亮介。その能力に興味・疑問を抱く医学研究者の九條美祢。二人が出会い、亮介と同じ能力を持つイザクの存在が明らかになったところで「続く」。さあ、2巻を買わなければ!少女漫画出身者が青年誌に描くと、絵がキレイだと思いますわ。

「MOON LIGHT MILE」太田垣康男/小学館ビッグコミックス

「ふたつのスピカ」柳沼行/メディアファクトリー
宇宙ロケットの事故で母を失った少女が、宇宙飛行士を目指す物語。実際のところ養成学校への入学試験が「度胸星」とかぶるのは否めないけど、こちらは少女の物語だし、彼女にだけ見える宇宙飛行士の幽霊という存在もあってファンタジー度が高いです。試験が似ていると思ったのは、結局宇宙飛行士に求める資質のチェック方法が、実際このようなものだということなのかも

「プラネテス」幸村誠/講談社モーニングKC
舞台は21世紀後半の地球を取り巻く宇宙空間。デブリ(宇宙空間を漂うゴミ)の回収を行っている3人(女1男2)が主人公。ゴミとは言っても秒速8キロで地球の周りを回っているため、大きさによっては大惨事となるかなり命がけの仕事です。宇宙に出るということは決して特殊ではないけれど日常茶飯事でもない、といった程度の背景の中、毎回この3人のうちの1人にスポットを当て、宇宙空間での日常生活や彼らが抱える問題を描いている短編?集。ちょっと調べたところ、これは雑誌に不定期掲載されているようです。ゴミ回収を続けるうちに事故で亡くなった奥さんのお守りを見つける話。病院で月生まれの子供と知り合う話。など、ちょっといい話もあるのですが、わたしとしてはテロ組織が喫煙所を爆破するもので一服できなくてキレたフィー(女)が、結果的にさらなるテロ行為を阻止することになるコメディータッチのエピソードに笑わせてもらいました。
二巻ではこの巻は木星往還船への搭乗を目指すハチマキというテーマで貫かれています。この巻で「でかい夢を実現する人間」として描かれているのが皆ちょっとはみ出したタイプと言うのは、意図的なのかなぁ、やっぱり?

m_starm.jpg
◆トリ頭ターミナルへ