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icon0417.gif2003年

==活字本==
北森鴻のミステリ
「凶笑面 〜蓮丈那智フィールドファイル1」新潮文庫(10月〜)
異端の民俗学者・蓮丈那智。彼女がフィールドワークに赴いた先で遭遇する数奇な事件を綴った連作短編集。「民族学ミステリー」。民族学というのは、史学と背中合わせにあるものらしい
「花の下にて春死なむ」新潮文庫
「三軒茶屋の路地裏にあるビアバー「香菜里屋」のマスターによる安楽椅子探偵ものの連作短編集。自覚のあるなしは様々ながら、謎を持ち込むのは「香菜里屋」の常連客達で、マスターはカウンターの向こう側でおいしい料理を作りながら話を聞いて、その謎への回答を示していく
「メイン・ディッシュ」集英社文庫
連作短編集。小劇団「紅神楽」を主催する女優・紅林ユリエの恋人で同居人のミケさんは料理の達人にして名探偵。そんなミケさん自身にもタレにも明かせない秘密がある……。劇団の座付き作者・小杉隆一の迷探偵ぶりをフォローするかのようなミケさんの名推理と、ユリエの演劇活動が描かれる奇数章と、誰のものともしれぬ視点で語られる偶数章が、どのように交錯していくかも見物。ともあれ、ヒロインが活動的だと話も明るめになってありがたい
「狐罠」講談社文庫
「店舗を持たず自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う「旗師」の宇佐見陶子。彼女が同業の橘薫堂から仕入れた品は贋作だった。プロを騙す「目利き殺し」に陶子も意趣返しの罠を仕掛けようとするが、橘薫堂の外商担当の殺人事件に巻き込まれてしまう……

「ドラゴンファーム 1〜4」久美沙織/ハヤカワ文庫JA(10〜11月)
「竜飼いの紋章 〜ドラゴンファーム1」
「竜騎手の誇り 〜ドラゴンファーム2」
「聖竜師の誓い(上)〜ドラゴンファーム3」
「聖竜師の誓い(下)〜ドラゴンファーム4」
丘ミキが体質に合わず、その後も数年おきにチャレンジしては玉砕していた久美作品で、初めて、面白いと思えるものに出会えました。

「グリフィンの年」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/創元FT文庫(9月)
『ダークホルムの闇の君』の続編。今回はダークの娘、グリフィンのエイダの学園物です。
前作から8年後、ダーク一家の末っ子だったエルダが魔術師大学に入学するところから始まります。かつての教授陣は皆引退しており、大学の授業は浅く形骸化している上に財政難。エルダと同じ指導教官についた新入生5人は、みな個性的な面々ばかり。貧乏国の皇太子、南の皇帝の異母妹、刺客に狙われる首長国出身の青年、ドワーフ初の入学者、海賊の娘である美女。実は魔術師大学入学にあたって、それぞれ複雑な事情を背負っているですが、なにしろ出身は一見きらびやか。大学の運営陣が彼らの父母に寄付を募る手紙を出したばっかりに、刺客はやってくるわ、海賊は乱入するわの大騒ぎになります。力を合わせて魔法で侵入者を撃退しようとする新入生たちですが……。
前作がダーク一家の家族としての結束だとすれば、今回は新入生達の友情の結束でしょうか。ところでこれは、わたしがこれまで読んだジョーンズの作品の中で、一番わかりやすかったです。児童書の「大魔法使いクレストマンシー・シリーズ」や「ハウルの動く城」よりもスッキリしている。勢いのまま、ジョーンズとの出会いの作品「九年目の魔法」を読み返したのですが、(3度目なのに)やはりわからないことの方が多いの……。好きなんですけどねえ。"Year of the Griffin"

「銀盤カレイドスコープ」海原零/集英社スーパーダッシュ文庫(7月〜8月)
1巻「 (Vol.1)ショートプログラム:Road to dream」 桜野タズサは16歳の美貌のフィギュアスケーター。実力はあるのだがどうも試合で結果が出せず、おまけに意地っ張りな性格と減らず口が災いして、スケート連盟やマスコミにとっては悪役。トリノ五輪への切符も遠いと思われていたある日、カナダ人の少年ピートの幽霊に取りつかれた。第2回スーパーダッシュ小説新人賞、大賞受賞作。
2巻「(Vol.2)フリープログラム:Winner takes all?」 面白かったです。文字なのに、フィギュアスケートのスピード感と緊張感をこうまで表現できるとは、すごいと思う。ヒロインが強烈なせいか幽霊少年のインパクトがどうも薄くて、これだけがほんのちょっと残念。しかし、これはこれでいいようにも思えるし、ともあれ大した新人さんです

「マルドゥック・スクランブル 全3巻」冲方丁/ハヤカワ文庫JA(6月〜8月)
「マルドゥック・スクランブル The First Compression-圧縮」
「マルドゥック・スクランブル The Second Combustion-燃焼」
「マルドゥック・スクランブル The Third Exhaust-排気」
天国への階段という意味を持つ都市・マルクドゥック。カジノ経営者で腕利きの賭博師・シェルに飼われていた少女娼婦のルーン・バロットは、自分の存在の意味を知ろうとしたために、車ごと焼き殺されかける。瀕死の彼女を救ったのは、事件屋のドクター・イースターと委任事件担当官ウフコック。バロットは人命保護の名目で禁じられた科学技術の使用を許す特別法令「マルドゥックス・スクランブル−09」により体を改造されて、あらゆる電子器機に干渉して自在に操る能力を得て生まれ変わった。彼女はウフコックとドクターの協力を得て、自分を殺そうとし たシェルの犯罪を追うことになる。そのウフコックもまた「マルドゥック・スクランブル-09」によって存在が許可されているネズミ型万能兵器だった。そんな彼らの前に前に立ちふさがったのは以前ウフコックのパートナーで、今はシェルのボディガードを勤めるボイルドだった……。
SFハードボイルドというくくりもあるようで、読む前は無敵のサイボーグ少女のアクションものかと思っていたのですが、結構違いました。わたしの感覚だとこれはハードボイルドではないです。目的をやり遂げようという意志は貫いているけど、少女は悩んだり怯えたり逃避したりしているし、味方も色々迷っています。なんと言っても彼女の相棒は“ウフコック=煮え切らない”という名前(でもこの金色の鼠が素敵なのだ)
一度決めたスタイルを、突っ張ってやり通そうとしているのは、むしろ敵方。目的達成よりも、意地を張ってスタイルを崩さない事が重要というのがハードボイルド、と、わたしは歪んだ認識をしているのです。3分冊の1冊目ですので、まだまだわかりませんが、色々楽しめるお話です。
2巻でのナイス・キャラクターは、いるかとスピナー(ルーレットの回転盤にボールを入れるディーラー)の老婦人ですね。そして復活のウフコックもやっぱりいい。ヒロイン・バロットの命を狙うボイルドはウフコックのかつての相棒なのだけど、彼の動機はボスの命令というより、ウフコックを取り戻そうとしているようにしか見えないんだよなー。金色のネズミを巡る三角関係?
3巻楽しく読了。前半は2巻目後半から続くカジノシーン。今回はブラックジャックです。ゲームの展開が緻密に描写されているのですが、読者がルールを知らなくても十分スリルを味わえるというのがなんとも凄いと思います。例えばわたしはメカの起動手順描写などがあれば斜め読みして、その動作を頭で再現するなんてことは決してしません。だってわたしにとってそれはつまらないことでしかないから。そんなタイプのわたしは、カードゲームのルールも手札の意味も理解しようとはしませんが、それでもハラハラしたのでした。心理戦として読ませてしまうところが技なんでしょうね。前回の女性スピナー・ベルに続き、今回の天才ディーラー・アシュレイもゲームになると俄然魅力倍増でした。後半はシェルやボイルドとの決着戦。ボイルドはともかく、シェルの印象は弱いなあ。そもそものきっかけとなる悪役なのにね。結局この作品の最大の山場はカジノ勝負を通じてのバロットの成長だったのかな。

「象と耳鳴り」恩田陸/祥伝社文庫(6月)
六番目の小夜子に登場した関根秋の父・関根多佳雄、兄・春、姉・夏が登場する短編集です。基本的には元判事の父の周辺で起きる様々な事件が主。関根家は、いずれも印象的な性格の持ち主達ですね

「ドゥームズデイ・ブック 上下巻」コニー・ウィリス/ハヤカワSF文庫(4月)
タイムトラベル事故もので、疫病が出てきます。中世史学専攻のオックスフォード女子学生キブリンが実習で14世紀に送られるが、彼女は到着するなり病に倒れてしまう。一方、送り出した側でも、キブリンが無事に目的地にたどりついたか確認する前に、タイムトラベルの技術者が正体不明のウィルスで倒れてしまった。キブリンを回収するために、彼女の非公式の指導教授が東奔西走するが、ウィルスによる病人が増加していき、研究室は閉ざされてしまう。キブリンは現地で快復するが、到着した時代が予定とずれており、ペスト流行のまっただ中に放り出されたと知ります。
キブリンと教授、ふたつの時代での事件を交互に描いているのですが、そのどちらでもバタバタと人が病に倒れていき、そしてTVをつければ連日SARSのニュースです。なんだか現実と物語の世界がシンクロして、双方の恐怖感倍増です

「微睡みのセフィロト」冲方丁(うぶかたとう)/徳間デュアル文庫(4月)
舞台は近未来。感応者(フォース)(超能力者)と感覚者(サード)(一般人)との戦いによって地球はいちど滅びかけ、現在は感応者と感覚者との共存の方法を探っている。かつて感応者に妻子を殺され、その憎しみを押さえるため電子的トランスで脳内にロックをかけている保安機構の男パットと、卓越した感応力を持つ娘ラファエルが戦闘犬ヘミングウェイを 共に超次元的能力者によって引き起こされた事件を追うSFハードボイルド。
面白かったです。えーと、印象としては重鋼業。だけど、うんざりするようなハードボイルドにはなっていません。古橋秀之の「ブラックロッド」シリーズを思い出させる“とくとくと設定を語るようなださいことするか!”的な部分がステキ。(または「タツモリ家の食卓」のバルシシア皇女の戦闘シーン的重量感)

「霊玉伝」バリー・ヒューガート/ハヤカワ文庫FT(2月)
「鳥姫伝」の続刊。今回も面白かったですよ。750年前に死んだはずの悪名高き暴君、笑君が復活して仲間の法師を惨殺したという事件の解決を、哀谷にある寺の管長に依頼され、老賢者李高と、元依頼人にして現在は助手の十牛が、笑君の墓へと向かいます。司馬遷の手記の贋作と「悪の石」というネタで転がり始めた話が、どこへ行くのやら?です。
李高老師と十牛コンビに、心やさしい妓女の暁愁、鬼をも誘惑してのける絶世の美青年月童が同行して、地獄巡りや、インディー・ジョーンズばりの地下迷宮行で大騒ぎ。悪名高い先祖を持ったばかりに農民に脅されている(?)哀谷領主の劉宝王もいいキャラクターです。
途中で謎の一つがなんとなくわかったものの、そうでないことを望みながら読んでいました。ううう、あの人が〜〜
ミステリーに時々ありますが、翻訳モノは、珍妙な訳文のせいで哲学的な(つまりなんだかよくわからない)作品になってしまうことがあります。アメリカ人が書いた中華モノという、この手強そうな作品を見事に訳している和爾桃子さんに拍手を送りたいと思います。このシリーズはどうやら全3巻らしい。楽しみです

「12月のベロニカ」貴子潤一郎(たかねじゅんいちろう)/富士見ファンタジア文庫(2月)
8年ぶりのファンタジア長編大賞の大賞受賞作。ラブ・ファンタジーと言っていいんだろうな。好みの部分でどのキャラクターにも肩入れできなかったのですが、何よりも構成にやられました。半ばを過ぎたあたりで「えっ?」と思って前を確認してしまいましたし、読み終わったら、やはり前を読み直さずにはいられませんでした。

☆注目シリーズ☆
「空ノ鐘の響く惑星で」渡瀬草一郎/電撃文庫(12月)
『御柱』と呼ばれる宙に浮く巨大な柱があり、毎年、ある季節になると、空から鐘に似た音が降ってくる世界。アルセイフ王家の第四王子・フェリオは妾腹ということもあって王位から遠く、閑職であるフォルナム神殿の親善大使としてのんびりと過ごしていた。しかし、異世界の少女・リセリナの『御柱』からの出現と、出会いによって、彼の生きる世界は変わっていく……
物語はプロローグですが、期待できるシリーズの予感。「パラサイト・ムーン」シリーズと違って、挿絵も作品の足を引っ張っていないし!(どこかで見たことが、と思ったら足のない獅子シリーズの岩崎美奈子さんでした)。「陰陽の京」シリーズの刊行ペースがますます遅くなるのは残念だけど、このレベルの作品を書いてくれるならば諦めて、それぞれを楽しみましょう

「バッカーノ! 」成田良悟/電撃文庫(10〜11月)
一作目の「バッカーノ! The Rollong Bootlegs」は様子見というところ。
二、三作目は「バッカーノ!1931 鈍行編 The Grand Punk Railroad」と「バッカーノ!1931 特急編 The Grand Punk Railroad」で、この2作は大陸横断特急「フライング・プーシーフット」号で起きたクレイジーな夜の惨劇を、同時間軸・別視点で描いています。
四作目は、「バッカーノ!1932 Drug & The Dominos」。一作目、二作目のキャラクターが入り乱れて大騒ぎです。一作目で人物紹介のエピソードとして扱われていた(と思われる)できごとが、今回のメインキャストの一人イブ・ジェノアードを支えるものとなっているように、とにかく事件や人物の関係性が非常に緊密です。とても面白いんですけど、これは、出版ペースがあいたらもうついていけないかも。不死の錬金術師達や情報屋の設定も面白いですね。
一応、錬金術師もののようですが、テイストは“脳天気なクレイジー”。ただしバイオレンスシーンは容赦なくて「ああ、男性作家だな」と感じます

「フルメタル・パニック!」賀東招二/富士見ファンタジア文庫(8〜9月)
富士見ファンタジア文庫のパターン、基本的にシリアスな長編とコメディに徹した短編集で構成されているシリーズ。
長編は、パラレルワールド現代(ソ連がまだある)で、シリアスな戦闘と、かなりコメディ色の強いボーイ・ミーツ・ア・ガールが並行して描かれているシリーズ。全体的なノリは軽いですが、世界観がしっかりしているので安心して読めます。短編は、男性主人公・宗介の陣代高校での日常生活を描いています。日常生活というか、平和な日本の高校で戦争ボケ男の宗介が認識のズレから巻き起こす騒動としてのコメディ。
長編…世界最強のハイテク傭兵集団ミスリルに所属する、十代のエリート戦士・相良宗介に授けられた新たな任務は、日本の高校に潜入し、一人の少女・千鳥かなめを守り抜くというもの。しかし宗介は幼い頃から戦争漬けだったので、平和な日本での一般常識がまったくなく、空回りと暴走を繰り返す……だが修学旅行でハイジャックを装ったかなめ誘拐の事態に、宗介の実力が発揮される。
戦闘では宗介がAS(アーム・スレイブ)という、パトレイバーというかマジンガーZというか、なシロモノに乗って戦います。今のところ、パトレイバーが主体な世界にライディーンが登場して……とでも言えばいい状態なのだろうか?汎用型ではなく特定の操縦者でしか動かない、超技術ラムダ・ドライバを搭載したタイプが出てきていますね。その超技術の裏にウィスパードという存在があり、こちらはダブルヒロインのかなめとテッサに係わる要素です。

「トリニティ・ブラッド」吉田直/角川スニーカー文庫(5〜6月)
大災厄で文明が滅んだ遠未来。忽然と現れた異種知性体・吸血鬼たちと人類は争いを繰り返す。汎人類機関ヴァチカンを中心に人類は西にまとまり、吸血鬼たちは東に帝国を築き上げ、危ういバランスをとっていた。また、そんなヴァチカン内部にも権力闘争があり、さらに国家間の思惑もある。
そんな中、超然として人間の側で戦う、だけど吸血鬼の女帝とも深いつながりがあるらしい、心優しい神父アベル。
なにはともあれ、戦う神父、戦うシスターがてんこ盛りです。なるほど某所で評されていたように「ヘルシング」で「トライガン」で、おやこれは「D」?ってな風ではあるのですが、そんな既視感をあらかじめ承知で読んでいくと、それ以外の部分を十分楽しめるというあたりは不思議です。
数年のずれがある2シリーズの形を取っていて、トリニティ・ブラッドROMは長編、RAMは連作短編集です。たぶん、いずれ統合していくんだと思いますが

「ケータリング探偵マデリンシリーズ」ジェリリン・ファーマー/早川ミステリ文庫(4〜5月)
シリアスとコメディのバランスが、個人的にほどよくて好きです。ヒロインがどつきたくなるようなでしゃばり素人探偵になっていないのも○。今回は、朝食会の準備と妨害、過去の告白の謎への好奇心、心揺れる元婚約者の存在といった要素で進んでいきます。今だからこその感想かもしれませんが、わたしだったらこんなに仕事が押し迫っていて寝不足の時に、謎を追って人を訪ねたりできないわ〜マデリンはタフだ

「葉緑宇宙鑑テラリウム」夏緑/MF文庫(4〜5月)
夏緑さんには前回肩すかしをくらったので恐る恐る手を出してみたのですが、これはアタリでした。スペオペ・コメディというところかな。
太陽連盟を脱退して鎖国支配を目論む火星陸軍の強制労働所から脱走したハイラインは、宇宙造園業者ヒースの宇宙船テラリウムに転がり込む。性格のねじれた植物型コンピューター、珪素ゼリー生物、美貌の宇宙軍女性士官、ネコ耳メイド型ロボットが入り乱れる中、彼女は冥王星に向かう……。そんなお話。話も面白いし、キャラクターもいいんです。でもなーー。男の子向けのサービスと思われる部分は、どうにもあざとくてな〜〜結構不愉快と言えば不愉快。
3巻でも相変わらずの萌え要素は苦手ですが、惑星・衛星開発やロボット、サイボーグの扱いは硬派です。脳天気なキャラクター達の騒動の裏でうごめく千人委員会の存在には、ダースベイダーのテーマ曲を進呈したいですね。船長ヒースの設定に深みをそえるだけかと思ったら、軽さの裏に重いものが見え隠れし始めています

☆様子見シリーズ☆
「ストーム・ブリング・ワールド」冲方丁/MF文庫(5月)
偉大な〈駆使者(セプター)〉である父に愛されたい一心で、大きな嘘をつきセプター候補となった少女アーティ。彼女は涙を封じることを誓った。父であるエルライ公が治めていた故国を「黒のセプター」に滅ぼされ、一人生き延びた少年リェロン。絵筆を捨ててセプターとなった彼は微笑を失った。それから4年。アーティが学ぶ風の神殿にリェロンはやってきた。アーティの周囲で起こるはずの「嵐」から、彼女を守るために……。
ゲーム『カルドセプト』の世界観を使ったファンタジーだそうな。元ネタ(ゲーム)を知らないので、どのくらいオリジナルなのかわからないけど、ジュブナイル小説として十分に面白いと思いました。正統派ファンタジーで、ボーイ・ミーツ・ガールな物語。
二巻では、「嵐」から少女・アーティを守るため、風の神殿にやってきたリェロン。だが、リェロンは〈黒のセプター〉だとされて、王宮から派遣されてきた騎士団に捉えられてしまう。騎士団の横暴に耐え兼ねたアーティ達は反撃を開始する

「ルーク&レイリア」葉山透/富士見ミステリー文庫
舞台はファンタジー風ですが魔法等は一切出てこない、立派な(?)「法王密室殺人未遂事件」です。ルークとレイリアは凄腕の(トレジャー)ハンターですが、別に超人的能力があるわけではないし、なかなか等身大の造形で好感が持てました。第1回ヤングミステリー大賞最終選考作とのことです
決して上手いとは思わないのですが、ルークとレイリアの関係がどことなくツボです。でもわたし好みのワイヤーロープ製絆のカップルではなく、どちらかと言えば……夫婦漫才コンビ風?すごくいいコンビネーションなのですが、恋愛要素が微塵もないのが面白いと言うか、妙と言うか。しかし年齢設定はもうちょっと上にしておいた方がよかったのではないかな。

==マンガ==

「笑う犬の世界」入江紀子/白泉社Lady'sComics(11月)
犬が取り持つほのぼのマイペースな恋愛もの。いい感じです

「魔法使いの娘」那洲雪絵/新書館WINGS COMICS(9月)
陰陽師としては日本一であるが生活能力0の父親を抱える鈴の木初音は、生活感の染み込み過ぎた女子高生。 父親の跡など継がない!と言っているのに、ある日父親が二人の男を家に送り込んで来た。なんと、どちらが『鬼』かを見分ける試験だと言う……
自分の道を突っ走るタイプの容赦のない主人公といい、振り回される脇役と言い、那洲さんらしいある種の爽快感があります

「あの山越えて」夢路行/秋田書店ALC SELECTION(6月)
夫が実家の農業を継ぐことになった小学校教師のヒロインが、希望かなって田舎へ転勤が決まったところからはじまります。すばらしき田舎ライフ!という感じでしょうか。夫:農業、妻:都会育ちで望んで田舎へ、というシチュエーションがちょっと「GREEN」に似ていますね。「GREEN」は若いカップルが結婚するまでだったので、こちらの方が雰囲気はまったりしています。舅姑(嫁との仲はいい)、親戚などとのやりとりの現実感はこちらが上かな。ほのぼのとマイペース。
(2巻)

「王国の鍵」紫堂恭子/角川あすかコミックスデラックス(6月)
戦争によって王と王太子を失ったランドール王国は、幻の秘宝「王国の鍵」を探し出した者を正式な王とすることを発表した。争い事が嫌いな第二王子アーシャも兄の親友だったバドと共に探索の旅に出る。行く先で出会う竜人とはいったい……。
秘宝探索の発表に、一番に名乗りを上げた公爵令嬢レティシア姫が元気でかわいいわ

「緋色の椅子」緑川ゆき/白泉社花とゆめCOMICS(3月)
貧しい村ニオルズの少女セツは、5年前に王位を継ぐべく旅立っていった幼なじみのルカの姿を一目見るため王都を訪れた。しかしそこで目にしたのはルカではなかった。「誰だてめえ〜」と叫び、セツは真相を探るために王宮に乗り込む。そこで対面したのは、旅の途中で急襲されて行方不明になったルカのために、玉座を守る少年と従者だった……。
なんだか妙に切ないお話なんです。絵は相変わらずヘロヘロ系かなあ。ちょっと好みとは違うんだけど、ストーリーが良いからいいや。

「コスメの魔法」あいかわももこ/講談社KCキス(2月)
噂には聞いていたマンガ。店頭で美容部員のお姉さんに言われる様なことがネタになっています。女性雑誌を買わないわたしには、いいお化粧ワンポイントメモかもしれない

「のだめカンタービレ」二ノ宮知子/講談社KCキス
指揮者を目指す千秋くんが挫折しかけたときに出会った野田恵こと”のだめ”は、ピアノはうまいがなんとも不思議な奇行少女だった。音楽(学校)マンガで、実はこのジャンルって結構好きなのですが、この作品は今までにはないタイプです(ちなみにバレエものも好きだが、クラシック以外の音楽マンガは可もなく不可もなく)
(2巻)バイオリニスト峰龍太郎が出てきて、ティンパニ奏者奥山真澄(♂)が出てきて。世界的に有名な指揮者シュトレーゼマン(セクハラオヤジ)が、落ちこぼれ達集めたSオケを編成する
(3巻)Sオケの副指揮者になった千秋だが、彼のモテモテぶりにムカついたシュトレーゼマンがSオケを脱退宣言。学園の公式オケであるAオケを指揮して、定期公演で千秋指揮のSオケと対決する羽目になってしまう
(4巻)長野の音楽祭のセミナーに参加する千秋、のだめ、峰、真澄。のだめがピアノ教室に通う小学生時代の番外編つき
(5巻)学園祭にて。千秋はシュトレーゼマン指揮でラフマニノフPコンNo.2のピアノを弾くことになり、一方のだめや峰たちはSオケ有志で仮装オケ公演を行う。千秋の元カノジョ彩子はふっきれ、シュトレーゼマンは帰国。千秋の少年時代の番外編も収録
(6巻)卒業、進級シーズン。のだめは、千秋の祖父の家を訪れる
(7巻)千秋のオーケストラが稼働。一方、のだめの担当教官が交替し、のだめは幼稚園の先生ではなく演奏者への道を望まれる

「GREEN〜農家のヨメになりたい 全4巻」二ノ宮知子/講談社KCキス
amazonにおすすめされた漫画。調理師修行中の都会っ子ワコが、農村の王子様マコトさんにひとめぼれして、週末ごとにお手伝いと称して押し掛ける農村ラブコメディ。可愛くて、笑えて、楽しいわ
淡々とした誠さんも好きですが、清和観光農園の親子が楽しいです。農村に住みついたドロボウのエピソードがおかしい。確かに田舎は家に鍵をかけないし、畑から作物を1〜2本盗んだ程度じゃ「おかしいな?」で流してしまいますね。
最終話は結婚式(家婚)でした。ハッピーエンドですが、ワコちゃんは一筋縄ではいかないので、ハラハラもののお式となるのでした

「姫君の条件」朔野安子/白泉社花とゆめCOMICS(1月)
家の末姫ダリアン姫は、次の王になるべく強い精霊の守護を得るために奮闘中。彼女には頼りになるけど口うるさくて説教好きな護衛官キールがいて、日夜振り回している。実はキールは世界最強の闇の精霊で、彼が側にいるせいでダリアンは他の精霊の守護を得られないでいるのだが……。強気・前向きな姫と従者モノです。ツボだ。男が魔法属性を持っているのもツボだ。お互いはっきり言わないけど両思いなのもツボだ!思えば、遠藤淑子のエヴァンジェリン姫やぐーたら姫や、現代物だと「マダムとミスター」や「狼には気をつけて」もそうなのだが、わたしはマイペースで突っ走るヒロインと従者のカップルが好きなせいで、遠藤淑子ひいきなのかもしれない。最近ツボにはまった「トッペンカムデン」も、姫と魔法使い(擬似従者)だったしなあ。
二巻ではダリアン姫の男前度がますます高くなって好感度も上がると同時に、精霊の守護を得るとその精霊の姿を二度と見ることが出来なくなるというお約束事が明らかになって、じゃあキールどうするつもり?とのハラハラ度も上がります。
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