2000/09/02 (Sat) ザ・キッチン
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アーノルド・ウェスカー作の戯曲「調理場」のミュージカル化作品で、これが世界初演だそうです。
舞台はロンドンにある忙しいレストランの大きな調理場で、当然そこに出入りするのはコックとウェイトレス、それから経営者だけ(一度だけ浮浪者が迷い込んできたか)。
その調理場の朝から夕方までのドラマです。
そこには、夫婦や恋人がいて、様々な人種間の潜在的な軋轢があり、今日から加わる新人コックとウェイトレスがいる。
おや?なんだか「オケピ!」とよく似ていませんか?

ミュージカルは大好きだけど、歌や踊りのない舞台は年に一本見るか見ないかのわたしなので、「調理場」という作品は知りません。
そんなわけでわたしは、幸か不幸か純粋に初めて見るミュージカルとして捉え、なおかつ「オケピ」と比較してしまいました。

まず、ミュージカルという点について
「オケピ」の感想でわたしは、これはミュージカルじゃなくてもきっと面白いから、ミュージカルである必然性はない脚本だと書きました。ミュージカルじゃなくても楽しいけど、今回はミュージカルにしてくれたのね。という感覚です。
それに対してこの「キッチン」は、ミュージカルになっていませんでした。
原作者は、この作品はミュージカルになり得る」と言っていて、またそれを実現したかったのだそうです。
でもこれ、ミュージカルじゃない。音楽劇ですよ。
台詞を歌に置き換えてはいるんだけど、ただそれだけ。
役者がつったったまま歌っている場面が多いんですよ。
ミュージカルでの歌って、芝居とダンスが内包されているものだと思うんです。
歌に説得力があるというのは、同時に語りかける芝居になっているからだと思う。
「レ・ミゼラブル」や「エリザベート」での群衆コーラスは、大して動きもないんだけど、身体全体で表現しようとしている。でも「キッチン」では歌詞にとらわれて動けないように見えました。
いや、動いてはいるんだけど、歌詞が伝える感情の表現としての動きになっていることが少ない。
だから、動きは振り付けられたままとしか見えないし、歌も台詞をオタマジャクシににふっただけにしか聞こえない。
宮本亜門の言葉で「芝居の台詞から歌や踊りにいく瞬間が一番美味しい」「台詞言っててふっとそれ以上の気持ちを言葉で伝えられないから踊りにはいったり、歌にはいった時にグッと鳥肌立つんであって」というのがありますがって、たしかにいいミュージカルって歌、踊り、芝居が自然に共存しているものです。
ぶち切れて独立した存在じゃないの。
それに、ミュージカルの歌詞なら、言いたいことは一度で伝わってくるものなんです。同じことを2番、3番と繰り返すなんて歌謡曲じゃないんだからさ。
基本的に歌は一語にかかる時間が長いので、一瞬で通り過ぎてしまう芝居での台詞と違うのです。
饒舌という点ではミュージカル座の作品に近いようだけど、でもあれともまた質が違うなぁ。ミュージカル座のは同じ「長いなぁ、しつこいなぁ」でも、まだを聞いている感じだものな。
単に好みの音楽じゃなかっただけなのでしょうか?
これを確認するために、わたしはソンドハイム作品を見に行く必要を感じています。

ちなみに、役者の熱演はよく伝わってきましたし、歌ってる、踊ってる、と思いました。でも作品の作りが中途半端だったですね。
ミュージカルだと思わなければいいんでしょうけど。

訳・演出:木村光一、振付・演出:前田清実、作曲:デレック・バーンズ、作詞:ナイジェル・フォート、原作・台本:アーノルド・ウェスカー
<世田谷パブリックシアター PM2:00〜4:20 休憩15分>
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