思い出〜月ミューつれづれ(1)
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「月刊ミュージカル」という雑誌があります。
出会ったのは書店だったでしょうか?10年以上前のことで、どうしても思い出せません。
とにかく当時、ミュージカルは演劇雑誌でも劇評に取り上げられていることだけでも珍しいくらいだったのに、専門誌があるのに驚きました。
(多少世慣れた今となれば、実は世の中には少数の愛好者を固定購買層とする様々な雑誌があるのだと知っていますが、当時は世間知らずの学生でしたから)
今、手元にないので確かめられないのですが、それでも創刊されて3,4年たった頃に出会ったのではないかと思います。
東宝、劇団四季、宝塚のミュージカル大手はもちろんのこと、薔薇座やフォーリーズ、サムシングなどの小劇団の公演も取り上げてくれて、今も昔も見る目を広げてくれる雑誌だとわたしは思っています。この雑誌の記事がもとで知った劇団、作品、役者は数え切れません。現在はその気があればインターネットで情報収集が出来ますが、当時はなによりのガイドでした。
今もそうなのですが、この雑誌は一般書店には置いていなくて、限られた大型書店でしか買えませんでした。幸い東京在住のわたしは毎月、紀伊国屋で買っていました。就職して何年かたつと自分で確実に毎月買い続けるのがちょっと大変になり、定期購読で送ってもらうようになりましたが、これが郵便局のナントカ対象になっていなくて、送料が一般郵便物と同じ扱いだったので高かったものです。学生じゃとてもできませんでしたね。ハッキリ言って手間暇をお金で買った形です。社会人じゃなきゃできないと、申込書を書きながら思った覚えがあります。数年後にナントカ対象になった時は、もちろんお財布的にも嬉しかったのですが、「(郵便局に)認められておめでとう!」という喜びも感じました。
さて内容の方ですが、今と比べると、昔はある種マニアックな内容だったような気がします。記事としての取り上げ方や批評の内容がではなく、対象(ミュージカル)にたいする眼差しが“熱い”ものだという意味です。
この雑誌が、実は個人の方が情熱を傾けて発行していらしたと知ったのはかなり後のことです。
それを知った時に、対象への熱さはその個人の方の情熱でもあったのかと腑に落ちました。
とにかく創刊されたのはミュージカルブームの前なのですから、本当にお好きだったのだと思います。(考えてみると、現在同人誌で好きなことを熱く語るようなものかもしれません)
個人で出されていましたが、主筆ご本人の眼差しは特別何かに偏っていることがなく、また執筆陣も豪華でした。正確に言うと当時は豪華だなんて知りませんでしたが。
ミュージカル好きな方が、主筆の情熱のもとに集まっていたのかな?と想像します。
この雑誌の劇評や記事などは何人かで分担して書かれています。ほとんどの記事は記名なので、劇評にしても「○○さんの好み・書き方」というのがなんとなくわかってくるものです。投稿者として感想を書いている内に、そのしっかりした書き方を認められて、劇評コーナーにひっぱられていった方もいます(今も活躍中の大和さんが確かそうだと…)。
それもまた、大衆誌ではなく趣味を同じくする者達のコミュニティという感じでした。ある意味、プロが作っている感じではないとも言えます。
この“あまりプロっぽくない”というのは、後発誌の“ソワレ(現在はレプリーク)”と比較するとわかりやすいと思います。
ソワレは、レイアウトと言い、写真と言い、インタビューと言い、書店で一般雑誌と並べても遜色がない質でした。
一方の月刊ミュージカルは残念ながらと言うべきか、愛好者達が熱意(だけ)で作っていることが見るからにわかる出来でした。
でもね、読んでいてタメになるのは月ミューだったんです。やはりマニアックさの違いなんでしょうか?月ミューに慣れた身には、ソワレは物足りなさを感じることが多かった。ただ、グラビアは段違いの出来だったので、好きな役者さんのインタビューがカラー写真付きで載っている時などは、ソワレに感謝していましたけど。
今思うとこれは、プロの編集者がいるかどうかの違いなのかもしれません。
出版業界で生きてきた雑誌編集の職人というプロ達が、誌面造りに参加しているかどうか。職人としての仕事で、手際よく、見栄えよく誌面を作っているけれど、彼ら彼女らの作品や役者や舞台への愛着の薄さが、自然とすけて見えてきていたののかもしれません。
考えてみると、月刊ミュージカルの写真は、昔はモノクロだけでしたっけ。しかも専属アマチュア(?)のカメラマンが撮った写真なので、素人目にもあまり構図が良くなかったような……。いつだったか、写真がだいぶ良くなってきたと思うがどうでしょうか?というようなコメントがあった気もします。
今はカラーグラビアが数ページあるし、劇団からの写真提供もあるんだからやはり認知度があがったのでしょう。
そういえばこの雑誌は、一時期“ヒモ付き”になったことがありました。
ヒモって、東宝です。資金援助が入ったんですよね。なにせ個人の持ち出し出版だったから赤字続きとのことで、援助はありがたかったようです。
それによって、東宝(含む宝塚)提供の写真が使えるようになったらしいのですが、記事も東宝偏重になってしまいました。つまり東宝ミュージカルについては資料もインタビューも豊富なんですが、劇団四季などの記事が掲載されなくなってしまったのです。
しかし結局、ヒモ付きだったのは1年前後だったように記憶しています。
好きでこんな雑誌を発行してしまうような(<推測)主筆が、提灯持ちもような状況に甘んじられるはずもなく(<これも推測)、ある号で再びフリーとなったことを高らかに書かれていました。
それ以降はまた四季の記事なども読めるようになって、とても嬉しかったです。個人的にも、バイブルはこの雑誌だけとはいえ、ヒモ付きになってからは以前ほど役に立たず、勉強にもならなくて、購読を続けなくてもいいかも……と思い始めていたのです。
主筆の好感度が一気にアップした、潔い出来事でした。

いずれバックナンバーを引っぱり出して何年の出来事なのか調べておきたいなぁ


2001.03.17