海岸道路







本のデータ
年月日 1997年9月9日
書店 角川文庫
著者 立原正秋
ジャンル 小説
本の出所 古本屋で購入








椎名誠倶楽部のお友達のポチさんが、人生の師と仰ぐ立川さんの小説です。すっかり耽美と退廃を描く作家というイメージを持ってしまっていたので、「辻が花」を一回読んだ後ご無沙汰でしたが、自分自身の年齢や精神状態も変わったことなので再挑戦しました。

舞台は戦後の鎌倉。もしかしたら、母が暮らしていたころと時代が近いかも知れません(でも家の母は本当に品行方正な女子校の優等生だったのでこの小説の世界の人とは関係ないと思います)。文無しで仕事も持たない主人公道雄と、彼を取り巻く女性の物語で、結果的には喜劇です。女性はそれぞれ個性的です。まず、公式の場専用の妻として年老いた夫に迎えられていていつも満たされない心と暇を持て余している郁子、道雄の従兄妹で少々高慢ちきで遊び人の勢津子、退屈でかつ外国に留学中の夫を持つ鶴子、議員の囲われ者で人のいいみどり、そして、おとなしくて古風だが何をしでかすかわからない勢津子の姉明子。誰が好きと聞かれれば、個人的にはみどりと答えます。でも、明子も捨てがたいです。って私は女か。あと、道雄の弟の女性関係や、友人の生臭坊主の弓削など、退廃色が濃いのですが、読後感は爽やかです。ねっとりした濃厚な雰囲気ではありません。

作者の、日本的なものへこだわりや、芸術に対する姿勢などが随所にちりばめられ(一部は解説を読んでから気づいたのですが)、ただの恋愛青春ものではないという雰囲気です。さらに鎌倉はすごく好きな街なので、街のイメージが自分のものとかけ離れていないのが嬉しいです。





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