目玉







本のデータ
年月日 1998年02月05日
書店 新潮社
著者 吉行淳之介
ジャンル 短編集
本の出所 図書館






吉行エイスケ作品集の隣にちょうど置いてあったので、何かの縁かと思って借りてみた。「目玉」という題名から、気持ちの悪い系統の小説を期待したのだが、私小説だった。よく吉行淳之介はすごく病弱だったと聞くのだが、ここまですごいとは知らなかった。

「大きい荷物」、「鋸山心中」、「鳩の糞」、「百聞の喘息」、「いのししの肉」、「葛飾」の6編からなる私小説の短編集です。作品より、人となりが知りたいと思っていた邪道読者の私には大変ためになる本でした。ドラマのあぐりでは、母の目から描かれた淳之介像だったのが、本人の文章で修正されたといったところでしょうか?自身の病気のことにも淡々としていて、ちょっと具合が悪いだけですぐ悲観的になってしまう自分と比較すると、いろんな意味でため息が出ます。あと、当たり前のようにさらっと書かれている(その時代に生きていたから当然だけど)戦前戦中戦後の生活描写も興味深かったです。私小説なのに虚飾が少しも感じられないところに、作者の価値の高さを感じました。

おお、こ、これは読んでいて楽しい!ってタイプではなくて、地味だし娯楽性には欠ける短編集ですが、私小説の姿勢に感心してしまったという意味で久しぶりのお薦めです。





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