2001年2月の感想












F・P・ウィルスン 『神と悪魔の遺産(上・下)』 扶桑社文庫 2001年2月3日 (購入)

マンハッタンの戦慄(上・下)の始末屋ジャックが登場する二作目の短編。ジャックファンとしては外せないと思われる本。恋人ジーアがボランティアをしている病院の女医アリシアは関わり合いを持ちたくない父の遺産相続のために、腹違いの兄のトーマスと揉めていた。アリシアは病院に起きたある事件をジーアの依頼で解決したことから、ジャックに仕事を頼もうとする。

ジャックの心の動きをもう少し詳しく書いて欲しかったなという部分もあるけれど、喜びで目が眩んでいる私には嬉しいだけの本であった。蛇足だが、義雄とかいう日本人が妙ちきりんで笑えた。義雄関連の寒いギャグにはさすがに沈黙した。(しゃべりながら本は読まないけど)





戸梶圭太 『闇の楽園』 新潮社 2001年2月5日 (図書館)

町おこしと新興宗教の思惑が、小さな町で衝突する。プロになる前の作品だとのことで、巻末の批評はかなり厳しいものだったけれど、私には十分面白かった。唐突なところとか、不自然な登場人物の心の動きとか、あまりにもそれは倫理的にいけない表現じゃないか?とか、読んでいる間気づかないのが、この人の不思議な魅力なのかも。





エイドリアン・マシューズ 『ウィーンの血』 ハヤカワ文庫 2001年2月10日 (古本)

どうやら近未来ミステリというジャンルらしい。新聞記者である主人公が、飲み会で一度同席しただけの男の死の謎について調べていくうちに、とんでもない計画を知ることになるという筋書きなのだが、このとんでもないことがとんでもなさすぎて、妙に陳腐に感じるのだ。SFって嘘ってわかっていても何も気にせず楽しめるのと、ついつい「それは違うだろ?」と突っ込みをいれたくなるのとに分かれるのだけれど、両者のどこがどう違うのだろうか?SF者でもないのに思わず考えてしまった。





ブリジット・オベール 『闇が噛む』 ハヤカワ文庫 2001年2月10日 (古本)

ジャクソンヴィルの闇の続きだということで、興味があったので読んでみた。前半はハラハラドキドキで本当に面白かっただけに後半半分では「何これ?ふざけんな。」という印象であった。あの話をこういう展開にしたのは想像がつかなかったので、すごいなあとは思わないわけじゃない。でも、怖くないといまいちつまらないような気がしてしまうのだ。ただ、ゾンビ一家が団らんめいてきた描写はお茶目でよかった。(あくまで個人的には)





アンドリュー・クラヴァン 『真夜中の死線』 創元推理文庫 2001年2月14日 (古本)

わっちょさんのレビューを見て、興味を持ったら、ちょうど古本屋で100円だったので買ってみました。

下半身に節操はないけど腕利きの記者である主人公が、後輩の記者から死刑囚のインタビューの仕事を受け継ぎ、その資料から事件に疑問を持つ。そして、限られた時間で彼の無実を証明しようとする。

久しぶりに飽きないで最後まで読み切れた。本筋の事件もさることながら、主人公の駄目さ加減と立場が崩壊していく様子といい、他の登場人物との関わりといい、隙間なく面白さが詰め込まれている感じがした。今まで読んだクラヴァンの作品は面白いけど、陳腐という感じが拭えなかったけれど、これはそれを感じる隙がなかったような気がした。





田口ランディ 『縁切り神社』 幻冬舎文庫 2001年2月15日 (購入)

ふみあきさんのサイトを見て、なんとなく気になったので買ってきました。
途中まで読んでから就寝したら、この人の小説を読んで腑に落ちた気がしたというようなことを日記に書いていたMKさんが夢に出てきた。それはともかく、この本は短編集で元はウェブマガジンだったようなので、私にとっては非常に読みやすい。読みやすい上に、すっきり理解できる文章と言葉で、しかも考えさせられる。それだけに嫌な部分がものすごく鼻につく。大切に思う心の箇所が著者と違うのだろう。そして、もう一つ感じた疑問。強い心と弱い心って区別が本当にできるの?自分勝手な感想だとは思うのだけれど、あなたは強い人だからと、円の外に追い出されていることに少しずつ傷ついていることが思い出されて心が痛い。





メアリー・ゲイツキル 『太った女、やせた女』 早川書房 2001年2月19日 (図書館)

育った環境も容姿も異なる二人の女性の共通点は幼い頃の歪んだ性体験であった。彼女たち二人の成長過程と、かぼそい友情で結ばれていく様子が描かれた小説。どちらも平凡ではない女性であって、かといって彼女たちの中庸が平凡というわけではない。自分と重ねられる断片と、拒否する帯のような感情が交差して、現実を舞台としているのに、読んでいると不思議な感覚に捕らわれた。





中村うさぎ 『パリのトイレでシルブプレ〜〜!』 角川文庫 2001年2月24日 (購入)

だって、欲しいんだもん」が面白かったので、新聞広告を見て狙い買い。ブランド品には興味がなくても、彼女が世間に感じる怒りとか失敗は妙に共感できるのだ。「そうそうそれなのよ!」と馬鹿笑いしたり、しんみりしたりする。それにしても、禁止用語のところは私も納得いかない。なんと私は、女性の局部をなんと表現するのかを、社会人になって間違ってフ○○○○院の本を買ってしまうまで知らなかったんだもんね。。。。。「○ん○」って何?とか口走る前に知ってよかった。。。。(そういう失敗をしたことがあるんだもん)





E・アニー・プルー 『港湾ニュース』 集英社 2001年2月24日 (いただきもの)

RE−QUINさんのところの記念品として頂きました。ありがとうございました。
アメリカを離れ、一族の出身地ニューファンドランドで生活を始めた妻と父を亡くした男とその娘たちと、なぞめいた彼の伯母の何気ない生活風景を描いた小説。日常が通り過ぎていく様子(事件は多いけれど)と、新しい生活の中で心も再構築されていく描写が、なんとも快くて心が安らぐ。主人公のクオイルが中年という年齢にも関わらず、シャワーを浴びる自分に男盛りを感じる様子と、ウェイビイとバニイの死についてのやり取りが印象深い。





カレル・チャペック 『ダーシェンカ』 新潮文庫 2001年2月25日 (購入)
カレル・チャペック 『ダーシェンカ 子犬の生活』 新潮文庫 2001年2月25日 (購入)

どんな時代にだって、正しくて(?)豊かな愛情を持った人がいる。
本の中から、時間を超えて、愛情をわけてもらえるほど。

杏さんところのプレゼント本になった頃、子犬の生活の方が文庫化されて気になっていたので、両方買ってきました。

可愛がっていたテリアが産んだ子犬ダーシェンカに聞かせた物語と、ダーシェンカと暮らした日常を描いた本。二次大戦前の作品だけど、全然古さを感じなかった。犬派でも猫派でもないけれど、十分に楽しめた。ただ、あとがきで時代背景のことを知ったら、著者とイリス、ダーシェンカのこの後はどうだったんだろうと、何もわからないのに泣けてきてしまった。★の評価はややえこひいき気味。





リリアン・J・ブラウン 『猫はシェイクスピアを知っている』 早川文庫 2001年2月26日 (図書館)

ココ・シリーズ5(?)作目で、クィラランが親類の財産を相続して大金持ちになり田舎に引っ込んでからの1作目。
本筋はいまいち掴めないし、ジュニアの新聞が一体どうなったのか疑問が残るところなのだけれど、謎のシェフが作る贅沢であやしいキャットフード、ワゴンを押したり、エレベーターに自力で乗れちゃうココ、指輪やタバコを隠すヤムヤムなど、とりあえず二匹の猫にはがっかりさせられることはありません。ハーブのワゴンがとても欲しくなりました。うちには置く場所ないけど。。。