2001年8月の感想
向山貴彦 『童話物語』 幻冬社 2001年8月02日 (図書館)
- あれほど泣かされても、泣かされることに疑問を持ってしまう。
ここまで悲しくする必要があるんだろうか。
たぶん面白い小説なのだと思う。憎しみの描き方はかなり好きだ。理屈ではやめるべきだとわかっていても、どうしても憎んでしまうというところは納得できる。そして、読んでいる時は何の疑いも挟まずにぼろぼろ泣いた。でも、ふと我に返ると、女の子の描き方や親子の描き方になんとなく不快感を持ってしまう。そういう母性を持っている女の子にしか価値ってないの?と思ってしまう。これは被害妄想だろうか?
マイクル・Z・リューイン 『そして赤ん坊が落ちる』 早川文庫 2001年8月04日 (図書館)
- サムソンのガールフレンド(?)で、ソシアルワーカーのアデルを主人公に据えた、なんとも穏やかなミステリ。内容はそれほど穏やかでもないし、むごい問題も登場するのだけれど、胸がしめつけられるような苦しさも感動の涙というも付属品なしである。なのに、とにかく面白い。アデルという主人公も真面目で地味といえば地味なんだけど、けっこうモテモテで、長所も短所もちゃんと持っていて、憧れはしないけど魅力的だ。あとがきもリューインの作品をそこそこ読んできた人にはすごく楽しめる。アデルは何気なく、パウダーシリーズにもサムソンシリーズにも登場しているのだけれど、それの解説なのである。リューインのファンで、未読の方には超お薦め。って私が薦めるまでのことはないか。。。
ロバート・R・マキャモン 『ブルー・ワールド』 文春文庫 2001年8月11日 (図書館)
- 中編である表題作と、12のホラー短編からなる本。短編はほとんどが求めていたものと違いすぎていまいちな感じだったけど、グリーン・ファルコンとミミズ小隊のお話はなんとか希望通りだった。表題作のブルー・ワールドはあまり大きな広がりがあるわけじゃないけど気に入った。ブルー・ワールドについてデビーが墓地で語るシーンはファンタジーでもないのにものすごくファンタジックだ。あと、最後にランカスター神父が空港で思ったことの書き方もなんか好きだ。こういう結末を書く人だから、子育てのために断筆しちゃうのかも。
ポール・オースター 『リヴァイアサン』 新潮社 2001年8月20日 (図書館)
- 歯車のずれを修正不可能にするのは、知性と思いやり。
幻獣の名前が題名なので幻想的な小説かと思ったのだけれど、しみじみとした雰囲気だけれど激しく転落していく恋愛小説だったと思う。希望なんか何もないはずなのに、絶望感や悲しみや運命の皮肉を感じるでもなく、読み進めると物語そのものが心に深く埋まっていくような感じがした。
マイクル・Z・リューイン 『のら犬ローヴァー町を行く』 早川書房 2001年8月22日 (図書館)
- 擬人化(?)された野良犬ローヴァーが主人公の短編集。ローヴァーという犬は流れ者で一応ハンサムで男盛りという設定らしいのだけど、あまりにも説教くさくて、どうしてもてるのか非常に謎である。なんかその説教臭さになじめなくて、とっつきにくかったのだけど、中盤以降それに慣れてくるとリューイン特有のぼんやりとした雰囲気の鋭さがよく見えてくる。読後感もなかなかいい。ただ猫好きで犬嫌いの人には辛い作品かも。あとがきに、猫みたいな女性を愛人にして、犬みたいな女性を妻にするのが男の理想って書いてあったのはちょっと気に入らない。別にフェミニストでもないからうるさく言うつもりはないし、わからないでもないけれど、著者ではない人のせいで作品全体が汚れたような気がしてしまった。
村上春樹
『ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編』 新潮社 2001年8月25日 (図書館)
『ねじまき鳥クロニクル 第2部 予言する鳥編』 新潮文庫 2001年8月27日 (購入)
『ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編』 新潮文庫 2001年8月28日 (購入)- 汚されるという言葉は、性的な要素を必ず含むのだろうか。
そういう疑問を遊戯的な思考の中で持つにしろ、
自分の中にはそういう価値観がどうしようもなく存在している。
ハードカバーの装丁の重厚さにびびって、長いこと読まないでいたのだけれど、思い切って読むことにしました。でも、いざ読み始めてみたら、取っつきにくくもなく読みやすくて面白かったです。その面白さは、羊をめぐる冒険の三部作や、世界の終わりとハードボイルドワンダーランドと似ていて、初めてというより久しぶりという感じでした。ただ、結末が思ったより悲しくなかったことに少し驚きました。
デイヴィッド・ピース 『1974 ジョーカー』 早川文庫 2001年8月29日 (購入)
- エルロイに対抗するイギリスの暗黒年代記とか、馳星周氏絶賛とか書いてあったので、とりあえず読んでみることにした。確かに暗くて救いがなくてスピード感があってロックな感じでつまらなくはない。でも、私的にはエルロイの対抗馬にはとても思えない。物語を物語として書いているのと、自分の暗部を力任せにぐいぐい叩きつけるような書き方との違いを感じてしまうのだ。つまり、デイヴィッド・ピースって人には物語を物語として書くだけの余裕があると感じるのだ。それがプラスになるのか、エルロイのおままごとに終わるのかは四部作の次回作以降にかかっているんじゃないかなあと生意気なことを考えてしまった。せっかくだから、イギリスにしかあり得ない暗さというのを書いて欲しいなあ。(げ、生意気すぎ。。。)
山下柚実 『美容整形』 文春文庫PLUS 2001年8月29日 (購入)
- 読みかけの本を忘れてきたので、なんとなく買ってしまいました。
美容整形をしようと思ったことは一度もない。顔やスタイルがよくなっても自分の問題が絶対に解決しなさそうだったので、さしあたって危険を冒す必要性を感じなかったのだ。これから絶対にやらないとは言い切れないけど、本の中に登場している軽い気持ちで整形する人の気持ちは当分理解不能かもしれない。そういう人や一部のクリニックへのインタビューは読んでいてもやもやとした不快感があったのだけれど、シリコンとか整形に用いる素材についての話は面白かった。パラフィンの注入とか、象牙を埋め込むとか、ホラー小説より怖い話もあったけれど。
ジミー・マクガヴァーン 『司祭』 徳間書店 2001年8月30日 (図書館)
- 真相は当事者にすら知られることは少ない。
リヴァプールを舞台にカトリックの性的なタブーである近親相姦と同性愛の二つを絡ませた物語。映画やドラマ化されたものをノヴェライズ化されたらしい。
特に何の信仰も持たず、神社で結婚して葬式はお寺で行いクリスマスを楽しむ日本人として産まれ育ったせいか、同性愛者であることが明るみになってしまったグレッグという司祭への周囲の仕打ちに怒りを感じてしまった。でも、物語の中での大衆に自分がならない可能性は全くないのだ。
イヴァン・ツルゲーネフ 『はつ恋』 新潮文庫 2001年8月30日 (古本)
- 文学作品を大人になってから読む動機は、しょっちゅう読んでいるいわゆるエンターテイメント小説に登場したか、テレビドラマやテレビ番組でとりあげられたか、漫画に出てきたかどれかである。非常に情けないけど、私の教養の程度なんてそんなもんだ。で、ロシアの文豪の作品をなぜ読むかというと、梶原一騎原作の「愛と誠」という漫画に出てきたからなのである。登場人物の一人がナイフ入れに使っている本なのだけど、私の記憶では非常に薄いはずの本が漫画の中では妙に分厚い。自分の記憶を確かめるために探したら、やっぱり薄い本だった。早乙女愛という人は読んだことがある本を見て、やけに分厚いことを怪しいと思わなかったんだろうか(この一文は私の感想じゃないっす)。それはともかく、一見ありがちでつまらないあらすじのこの小説には変な迫力がある。もしかしたら書かれた当時は斬新な内容だったのかもしれないが21世紀生まれで妙なドラマや漫画ばかり読んで育った私にはありがちとしか思えない。だけど、この変な迫力に押されて、はつ恋だけで自分の人生が呪われるなんて馬鹿みたいという私本来の思考パターンが読書中には働かない。たぶん、こういう迫力が、すごい文豪が書いた後生まで残る文学にはあるのだろう。
斎藤綾子 『愛より速く』 新潮文庫 2001年8月31日 (購入)
- ちょっと興味があったのと、どうしても新潮文庫の100冊の帯が欲しかったので購入しました。23才の女子大生のラブ&ポップがうんぬんと書いてある、たぶんエッセイなのだと思います。ドキュメンタリーやノンフィクションというには軽い気がするので、違うと思うけどエッセイということにしておきます。男性に対する観察力はなかなか鋭いと思うし、私なんかは思いもよらないショッキングな体験をテンポよく書いているのだけど、書いた時期が女子大生だったということもあって、なんとなくガキ臭いという印象を受けてしまいます。ガキ臭いので、すごいことも書いてあるのに全くエロティシズムを感じません。でも、ガキ臭さがなかったら、不愉快で読めなかったでしょう。なんだかキャリアウーマンみたいな職業に就いてるけど、根本は23才の彼女が気持ち悪いと言い切る女ですから。(大笑)
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