2001年11月の感想






アーミステッド・モーピン 『バーバリー・レーン28番地』 ソニー・マガジンズ
             『ロシアン・ヒルの子供たち』 ソニー・マガジンズ
             『ゴールデンゲート・パーク』 ソニー・マガジンズ
   2001年11月05日 (図書館)

メリー・アン・シングルトンの物語全六巻のうちの一〜三巻。田舎から都会に移り住み、仕事や友達を得ていくメリー・アンの成長物語と、彼女が住むバーバリー・レーン28番地のアパートの住人たちの話が平行して語られる。住人たちのただならぬ謎が少しずつ解明されていったり、恐ろしい事件がいくつか起こったりして、ストーリーの流れ自体も早く飽きない作りの娯楽小説だと思う。現実味のなさを、住人たちを自分の子供たちと考える謎の大家マドリガル夫人の暖かさで更に煽っているところが潔い感じがする。面白いのだけど、いくつかのお話が平行して進んでいくので、一気読みじゃなかったら辛いかもしれない。図書館で借りている身としては残り3冊を読むのはちょっと迷うところかも。買いたいほどは夢中になれないし。


ジェニー・コルガン 『アマンダズ・ウェディング』 アーティスト・ハウス 2001年11月06日 (図書館)

映画化も予定されている(されたのかも)スタンダップ・コメディーだとのこと。主人公が悪い男にはまっている様子はなんだかすごくよくわかるけど、それがわかるだけに結末が納得いかない。わけがわからないので、くだらねーの一言で片づけたくなる。もしも買って読んだのなら暴れたくなるかも。


桐野夏生 『柔らかな頬』 講談社 2001年11月07日 (図書館)

トラウマがない人なんていない。
心に傷がない人なんていない。
だから、自分に優しくしたとしても、甘やかしたくはない。

とにかくヒロインに腹が立って仕方なかった。不倫にのめりこんで子供を捨ててもいいと思い、ちょうどその時に可愛がっていた上の娘が行方不明になる。そこまでは普通に読んだのだけど、「上の娘が帰ってくるかもしれないし、下の娘がいるから、死ねない。」とか、「みんな事件を忘れてしまうのよ!」と周囲を責める思考回路にむかついて仕方がなかった。どうして忘れちゃいけないの?忘れるどころか関わった人々全員が傷を負っているのに、何も目に入ってないヒロインがむかついて仕方ない。自分は死んでいるようなもので、子供のためにただ存在しているけど自分のためには死んでしまいたいというような生き方も腹が立つ。もしも、私がヒロインのような立場に置かれたら、ここまで周囲をぼろぼろにしてしまうのだろうか。誰でもそういう風になるのが普通なのだろうか。そう考えるとすごく怖い。


恩田 陸 『月の裏側』 幻冬社 2001年11月08日 (図書館)

水郷と呼ばれそうな街で起きた行方不明事件を描く。ミステリというよりはホラーに近い小説。登場人物のある意味の完全さが漫画チックで、情景描写が美しいという二点に集約される恩田陸の魅力が十分生かされていて、今まで読んだこの著者の作品では一番満足した。小粒さをあらのなさでカバーしている感じだ。白雨という不思議な猫の存在もいいアクセントになっている。でも、多聞という登場人物があまりにも漫画チックなので、藍子や眞弓といった女性たちの情念が空回りしている印象が惜しい。


ジョージ・リッツア 『マクドナルド化する社会』 早稲田大学出版部 2001年11月11日 (図書館)

ファストフードが世界を食いつくすと内容が比較されることが多いとのことなので、早速読んでみた。経済活動のある種の合理化について、いくつかの例をあげて述べてある本で、前者よりはやや客観論を意識している気がする。ただ、何がマクドナルド化なのか馬鹿な頭にはさっぱり理解できなかった。最後のマクドナルド化をゆっくりさせたい人へのアドバイスみたいなところを読んでわかった気になっていたようだ。しかも、そのアドバイスは「もしあんたがそうしているなら、自力でやってるのかい?」と言わせたくなるような内容で、虫が好かないところが多かったため、本の内容自体を理解していないことを怒りで忘れてしまったようだ。


中村方子 『ヒトとミミズの生活誌』 吉川弘文館 2001年11月13日 (購入)

ミミズに魅せられて半世紀を読んで、ミミズのことがどうしても知りたくなった。いろいろ本を探したのだけど、マイナーな生物らしく行動範囲内の本屋と図書館にはその手の本がなかった。仕方なく著者紹介のところに書いてあった本を通販で購入した。字も行間も大きいゆったりした本で内容もわかりやすいと思う。ミミズに関する内容は素人からするとあんまり目新しくないけれど、農業や人の生活とミミズの関係については若干詳しい感じがした。ミミズは雌雄同体なのだけれど、処女生殖をするものと別の個体と精子を交換し合うものがいて、処女生殖をするある種のミミズは土を自分たちしか住めないものに作り替えてしまうらしい。このミミズと人の生活圏との関わりが大きいという。ちょっとセイタカアワダチソウのことを思い出してしまった。それと、土に投棄された毒物をミミズに食べさせて浄化した話や、直接それとは関係はないけれどミミズを餌とする鳥が死んでしまう話などを読むと、人の手による環境保護っていうのは非常に無力だと思い知らされる。文明は否定しないし私自身ないところでは生活できないけれど、文明が何をしているかを正確に知ることは必要じゃないだろうか。


アン・ライス 『トニオ、天使の歌声(上・下)』 扶桑社文庫 2001年11月15日 (購入)

暇つぶしに買ったわりにはかなり楽しめた。

ベネツィアの名家に生まれ、その家の相続権を持っていたはずのトニオ・トレスキは、兄の差し金でカストラートにされてしまう。男であった自分を諦めきれず、そういう目に遭わせた兄(?)の復讐心にのめり込んでいくトニオの危険な心を、恋人たちが音楽と今ある幸福の方へ引き戻そうとしていく。小説などで、男性や女性としての機能を奪うようなシーンがあるとやりきれない気持ちになるのだけど、このトニオに関しては「そんなに男にこだわらなくてもいいじゃん」と思ってしまうところが非常に不思議だ。何をしてもうっとおしくて仕方ない。だけど、最後の方の枢機卿に告解をするところや復讐の相手と対決するシーンは印象深かった。皮肉な結末がちょっと切ない。


ペニー・ジョーダン 『シルバー』 MIRA文庫 2001年11月18日 (購入)

ハーレクインの復讐ものです。女性誌に漫画化して連載されていたらしいです。なんか入れなくてはいけないキーワードとかがあって、それを無理矢理繋げたような感じです。これをしたから、これが起きたという繋がりがすごく不自然で笑えます。特に男の人を夢中にさせるためにヒロインが受けるレッスンはとほほでした。


エリカ・スピンドラー 『レッド(上・下)』 MIRA文庫 2001年11月21日 (購入)

ハーレクインの復讐ものです。女性誌に漫画化して連載され、かつ無理矢理な設定変更で昼メロになってます。これもやっぱりかなり無理矢理なお話なのですが、意外と情景描写や心理描写に不自然さを感じないので、シルバーよりは面白かったです。それにしても、モデルが美形なのはわかるけど、カメラマンやデザイナーまで全て美形だったり、ヒロインが初めてアパートを借りた時に「これでちゃんとした料理が作れるわ」とかいうセリフがいかにもハーレクインのヒロインで笑えます。ハーレクインのヒロインは途中で美形またはセクシーに大変身するけど、もともと地味で女らしい女性だから料理なんかも出来るというのが私が思う定石です。


ジェイムズ・スターツ 『洞窟』 早川文庫 2001年11月23日 (購入)

イタリアの田舎町に残るサッシと呼ばれる洞窟住居で、少年少女の全裸死体が発見される。その事件に巻き込まれた主人公が故国で待つ恋人への手紙を綴った形式で書かれたホラー(?)小説。身重の恋人にそんな手紙を普通書くのだろうかという疑問は湧いてくるし、サッシの洞窟壁画の調査に来ている仲間たちの壊れっぷりと閉鎖的だけでなく何やら不思議な精神世界を持っている町の人々が理解不能だしで、途中まで読むのが苦痛になるほどさっぱりわからない小説だった。しかし、結末があまりにもあっけらかんとしていて、お洒落っぽかったので、つまらないとも言い切れない。
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山本文緒 『プラナリア』 文芸春秋 2001年11月25日 (図書館)

「プラナリア」「ネイキッド」「どこかではないここ」
「囚われ人のジレンマ」「あいある明日」
の5篇からなる短編集。
とにかく絶品ってくらいイライラさせられう話ばかりなのだけれど、読んでいてキレそうになったのが「ネイキッド」で、ヒロインが離婚された理由だ。
さもしい生き方って何?
と、さもしい生き方をしているらしい私は思った。
そして、一番身につまされたのは「囚われ人のジレンマ」。私事なので詳しく書かないけれど、ショックでぼーっとしてしまった。
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夏石鈴子 『バイブを買いに』 リトルモア 2001年11月26日 (図書館)

「バイブを買いに」「やっとおわかれ」「ばかおんな、ばかおとこ」
「心から」「ママ」「虫の女」「白い花、そして赤い実」「おはようっていうために」
の8篇からなる短編集。そのうち何作かは話が同じ登場人物だと思われるが、 全部同じと考えると時間が合わないような感じがする。 恋愛小説界に革命が云々と新聞の書評欄に紹介されていたけれど、 ショッキングというよりはちょっと不思議な雰囲気だった。 どちらかというと固い方の道徳観や価値観で育てられた私には相容れないはずの言動の登場人物なのに、それほど不快感を感じなかったし、時には妙に納得してしまった。なんだか悔しいけれど、連作と思われるいくつかの話に出てきた母と娘の関係は、ストレートに心を鷲掴みされた感じだったし、「白い花、赤い実」と「おはようっていうために」のヒロインの男の惚れ方は妙に身につまされた。
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トマス・ハリス 『ハンニバル(上・下)』 新潮文庫 2001年11月30日 (図書館)

レッド・ドラゴン(上・下)羊たちの沈黙から続くレクター三部作だとのこと。前二作で期待しすぎてがっかりしていたので、思ったよりは面白かった。でも、レクターやクラリスという登場人物が大好きな人を満足させるための読み物でしかないなと思ってしまった。途方もなくできのいいハーレクインロマンスというか、おとぎ話としか受け止められなくて、陳腐という印象が強かった。
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