2002年1月の感想






ボストン・テラン 『神の銃弾』 文春文庫 2002年1月4日 (購入)

殺人や暴力は正当化できない。
そう決めつけるのは簡単だけれど。。。
自分の一生が、憂いなく正当化していられるものであることを祈るばかりだ。

元妻を殺され娘を誘拐された内勤の警官ボブは、元いたカルト集団に復讐を誓う麻薬漬けだったケイスと、娘を取り戻そうとする。ストーリーはわりと単純なのだけれど、ボブが持つ価値観が覆されていく様子の描き方や、ケイスの持つあらがいがたい魅力が素晴らしい。神は銃弾という題名が示すやりきれなさで途中は打ちのめされるけれど、結末はそれなりのハッピーエンドなので、いわゆるノワールは読みたいけど読後感で暗くなりたくないという人にもお薦めできる。

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デニス・レヘイン 『闇よ、我が手を取りたまえ』 角川文庫 2002年1月10日 (図書館)

パトリック&アンジーシリーズの第二作。うっかり二作目から読んでしまった。そのせいか人間関係については唐突に思える部分もあったけれど十分楽しめた。パトリックとアンジーという幼なじみの二人の探偵も登場人物としてはかなり魅力を感じる。ただ、全体的に華やかで美しい文章のせいか、読んでいる時は詩的な表現に「おお!」と思ったり、「うんうん、その通り。いいこと書いてあるじゃない。」なんて思うのだけれど、読後に何に感動したのか全然覚えていない。エルロイとかのファンとしては、もっと泥臭かったり感情的じゃない文章の方が心に入りやすいのかもしれない。それでも、シリーズの他の作品もできるだけ読みたい!と思った。

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ダン・シモンズ 『重力から逃れて』 早川書房 2002年1月13日 (図書館)

元宇宙飛行士で月面探索を行ったパイロット。中年になってからは、離婚し、会社でも必要とされなくなり、たった一人の息子に会いにインドまで行っても拒絶される。そんな中、息子のガールフレンドに振り回されつつ、かつての仲間を訪ねることを決める。そして、死んだ仲間の一人の意志を継ぎ、自分たちの話を本にまとめ上げることになった。

自分の限界や衰え、時間の流れから取り残されたような気持ち、息子との冷え切った関係、年月によって好ましくない方向に進んでいく仲間。そういう心情を全部理解することはできない。わかるとしたら自分の限界を認めざるを得ない気持ちや、世間的な問題と自分のやろうとする仕事とのギャップくらいだ。だから、はっきりいってこの本の内容は難しくて、全部理解できたわけではない。それでも、ぺデカーと息子スコットが和解していく様子、事故で亡くなった友人の事故の理由などには胸を打たれた。年を取ったら、もう一度読みたいと思う。
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L・M・モンゴメリ 『赤毛のアン』 集英社 2002年1月15日 (図書館)

小学生の頃、何度も読み返した赤毛のアンを、随分前に話題になっていた松本侑子さんの新訳で読んでみました。脚注の多さと、村岡花子さんの訳では省略されていたところも訳されているのが特徴だそうです。言葉も今風になっていました。読んだ年齢もだいぶ違うので本当のところはそんなに変わらないのかもしれないのですが、「確かにアンだけど、私が読んだアンとは違う!」という印象が強かったです。好きか嫌いかを聞かれたら、 全体的にはあんまり好きじゃないです。でも、読んでよかったと思いました。大きな理由は二つあります。一つはマリラやリンド夫人やジョセフィンおばさんといったちょっとくせのある大人の登場人物たちのユーモアのセンスや愛情が魅力的に描かれていていとおしく感じられたこと。もう一つは、子供のころには理解しがたかった死生観や親子や肉親の情に関する部分が丁寧に訳してあるので何度も読んだ本のはずなのですが、かなりの読み応えを感じることもできたことです。残念ながら一番大きな特徴である脚注にはかなり微妙な気持ちです。うろ覚えで覚えていた名前や言葉の意味を、他の本や他の本の脚注、学校の授業の内容などから知った時の喜びが忘れられないからです。記憶力が凡人以下に成り下がった今の私には非常にありがたいのですけれどね。

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L・M・モンゴメリ 『アンの青春』 集英社 2002年1月16日 (図書館)

この本も松本侑子さんの新訳での再読(村岡花子さんの訳で十回以上は読んでいるはずだけど)です。大人になってから、友人にアン・ブックスは「赤毛のアン」だけが面白いと言われて内心むっとしたことがあるのですが、今読むと本当にそうかもしれません。彼女曰く「アンがあんなに普通になっていくなんて」ということなんですが、私はその普通の人生と折り合いをつけきれていないアンの気持ちが生々しくて辛くなってしまいました。特に、ミス・ラヴェンダーが暗くなってきてからの気持ちを語るセリフや、アンが大学に行くことになった時のジェーンの母の嫉妬を含んだ辛辣な言葉は胸が痛くなります。大人になれば、確かに諦めなくちゃいけないことはたくさん出てくるし、自分の夢の形だって将来の予定だって変えていかなくてはいけないし、不安やら責任やらで憂鬱になりがちかもしれないけれど、それを異常に忌避するような気持ちが見え隠れして、精神的に消耗してしまいました。あと、突飛な想像に偏見を持つ人はもちろん嫌なのだけれど、この本での想像力がない人に対する描写も非常に不愉快でした。突飛な想像はできないかもしれないけれど、シャーロッタ4世やマリラやハリソンさんの思いやりは想像力の賜ではないでしょうか?

そういう痛い生々しさを味わっても、やっぱり好きな本には違いないってのはすごい本かも。

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メアリ・H・クラーク 『月夜に墓地でベルが鳴る』 新潮文庫 2002年1月18日 (もらう)

Hちゃんよりいただきました。ありがとう〜。(ここ見られないけど)

絵に描いたような結末のスピーディーなサスペンス。冒頭を含めた生き埋め状態のシーンの描写は差込方がいいのかなかなか臨場感もあります。女性たちの描写や悪役の描写はなかなかいいのに、ヒロインの本命の男性が時々都合よすぎてアホっぽく見えるところが残念。たまにはこういうのも嫌いじゃないです。

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マイケル・ボンド 『パンプルムース氏のおすすめ料理』 東京創元社 2002年1月21日 (図書館)

クマのパディントンの作者が、大人向けに書いたミステリ。ミステリ部分はあんまり面白くなかったけれど、ブラッドハウンドのポムフリットはとにかく可愛い(個性的だけど)し、際どくて馬鹿しい話がところどころに出てきて笑える。特にパンプルムース氏とレストランのオーナー夫人のアバンチュール(?)には我ながら下品だなと思いつつ、にやにやしてしまった。どうして気づかないかなあ(爆笑)。

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マイケル・ボンド 『パンプルムース氏の秘密任務』 東京創元社 2002年1月22日 (図書館)

グルメ・ミステリ・コメディだそうだが、まずい食べ物の描写と媚薬がらみの大騒動がたまらなく笑えるシリーズ二作め。一作目と同様ミステリとしてはどうかと思うし、いまいち下品なのだけど、私は可愛いお話だと思います。媚薬がらみの騒動だけではなく、最初の方の編集長の家でのお食事会中の足遊び(?)によって生じたさまざまな誤解や当事者たちのノリのいい行動もなんとも言えません。現実にこういう人がいたら、「げ、エロおやじにエロばばあ。」って思うのだろうけれど、さらっと読めちゃうところが不思議です。

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篠田節子 『第4の神話』 角川書店 2002年1月23日 (図書館)

5年も経てば忘れられてしまう作品を量産し続けた女性作家についての仕事を引き受けた売れないライターである主人公が、彼女の人生を解き明かすだけでなく、結果的に彼女の残した「私を忘れないで」という遺言をかなえようとしていく。ライターや出版業界がどういうところかは知らないけれど、30才の半ばを過ぎるとよほどの才能がない限り仕事がなくなっていってしまう様子やクライアントや肉親との人間関係は自分と重なるところがあって、すっかりのめり込んでしまった。違う業界のフリーランスの話だったのがよかったのかもしれないし100%素晴らしい小説だとは思わないし、題名が大袈裟すぎるような気がして気に入らないのだけれど、かっこよくもなく美しくもなく時にはお金に汚いところも出てくるヒロイン像と妙に波長が合う。題名とかいろんなところの紹介を読んだ時は全然読む気が起きなかったけど、これは今の私にとっては非常に面白い本だ。

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マーク・ティムリン 『黒く塗れ!』 講談社文庫 2002年1月24日 (購入)

英国ではテレビシリーズにもなったという人気のパルプノワール、ニック・シャーマン・シリーズの翻訳一作目。ノワールというよりは、スピーディーかつ残酷なアクションだと思う。単発小説ならともかく、シリーズものになるにしてはものすごい過激さで、一体どういう風に話を区切ったり繋げていくのか、この小説のどの部分が読者の心をつかんだのかとても興味深い。ランキンと並ぶ書き手だというけれど、今のところはあんまり同列に並べたくない。

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ウォーリー・ラム 『人生におけるいくつかの過ちと選択』 講談社文庫 2002年1月25日 (購入)

どうして幸せになろうとしてくれないの?
どうして不幸になる材料ばかり一生懸命上手に探すの?
どうして自分のために生きようとしないの?

両親の離婚、虐め、レイプ。そして引きこもり。物語の中盤までヒロインのドロレスはどんどん壊れ続けていく。レイプの後は幸せになろうとする努力は一切できなくなり、自分だけでなく自分を気遣う人を傷つけようとする。幸せになろうとしていても、どうしても不幸のカードばかり選択してしまう。本当に頭がおかしくなりそうだった。だけど、離婚を経験するところから彼女はなんとか違う方向に歩き始める。「人間はきっちり白黒に分類できない」と彼女は夫に言うのだ。

現代人の癒しの書だそうだ。で、私はこういう売り込み文句は、どうしても好きになれない。しかも、ヒロインが立ち直っていく様子を読み進めていても、心の琴線に何か触れるわけじゃない。だけど、後半で彼女を愛するロバータやミスター・プーチ、セアとジェイマル父子の存在は、おとぎ話みたいだけど現実的な部分もあって魅力的だと思った。

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松本侑子 『赤毛のアンに隠されたシェイクスピア』 集英社 2002年1月27日 (図書館)

この本を読んで、平和に脳天気に大好きな本の中にいろいろな発見をして楽しむ自分と、彼女の一生となぜか平安の女流作家たちの一生を重ねてすっかり悲しい気分になってしまう自分がいる。まあ、それはともかく、モンゴメリやアンを取り巻く教育や親しんだ本というのがおぼろげにわかるのが楽しい本でもある。ただ世界史や伝説みたいなものには興味があっても、詩には興味が全くない私にはかなーり手強い内容ではあった。珍しい訳詩がたくさんあったのだけれど、一つ一つを読解するのがものすごい拷問だった。こういうことでもないと読まないからよい機会をもらったと感謝すべきなのだけど。。。。

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篠田節子 『百年の恋』 朝日新聞社 2002年1月27日 (図書館)

この本の感想は私には非常に難しい。男の人が育児や家事をした体験の本にはなんだか食傷気味だったのだけど、きれい事じゃない自然な視点に思えて楽しく読めた。でも、仕事を一生続けた上で、結婚して子供を産むのは、私には不可能なことなんじゃないかなという認識が深まった。仕事が中途半端じゃなくできる妻と時間に融通が利く夫って組み合わせは世間的に見て少ないと思うので、育児日記の部分は現実らしいのだけど遠い世界の出来事にしか思えなかった。遠い世界の出来事だから、書かれている本音の部分を素直に受け止められたのかも。

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中村うさぎ 『人生張ってます』 小学館文庫 2002年1月27日 (購入)

立ち読みしていたのですが笑わずに読めなかったので仕方なく買ってきました。(本好きの人ごめんなさい。)感想は箇条書きにしてみました。

・西原夫婦の喧嘩すごすぎ。。。。。月収を一瞬で使うって。。とほほ。
・花井愛子さんの自己破産の本もぜひ読みたい。
・岩井志麻子さんの小説を読もう。
・岩井さんのインタビュー中に登場する宮部みゆきさんがとても可愛い。
・斎藤綾子さんの欠陥住宅はとっても怖い。
・マツコデラックスさんのお話の総武線の描写には妙に共感した。

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ジェフリー・ディーヴァー 『コフィン・ダンサー』 文藝春秋 2002年1月29日 (図書館)

リンカーン・ライムものの二作目。コフィン・ダンサーとスティーヴン・ケイルとの関係に攪乱されつつ読む楽しさもさることながら、夫を残した会社を守ろうとするパーシー・クレイが殺し屋に狙われながらフライトをするシーンには特に夢中になった。ライムとアメリアのロマンスには今回は全く興味は惹かれなかったけれど、彼らと事実上チームを組むことになり前作にも登場するデルレイやセリットーといった脇役たちの姿が魅力的だった。不満ゼロではないけれど、評判に違わず面白い本だ。

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