2002年3月の感想






岩井志麻子 『邪悪な花鳥風月』 集英社 2002年3月05日 (図書館)

自分に都合のいい幻のフィルターを通してしか、
現実は見たくないっていうの?

執筆のためにウイークリーマンションで暮らす女性作家が、窓から見えるアパートの住民をモデルに描く作品が連作となったような本と思って読み始めると、だんだん何が現実で何が嘘なのかわからなくなってくる。その気持ち悪さと、血なまぐさい表現の気持ち悪さが相乗効果をあげているかもしれない。

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J・R・R・トールキン 『シルマリルの物語(上・下)』 評論社 2002年3月07日 (図書館)

すっかり指輪物語がマイブームなので(というよりは映画「ロード・オブ・ザ・リング」のオーランド・ブルームがといった方が正しいかも)、図書館で借りてみました。物語というよりは、設定書といった感じで読みづらかったです。エルフ族の祖先の名前と神様の一族が誰が何の神様だったか覚えられなくて、書いてあることの何割を理解したか我ながら不明です。だって、フィンゴルフィンとかフィナルフィンとかフィンゴンですよー。どこの最初の祖先の名前はわかるけど、二代目以降はもうわかりません。でも、指輪物語での謎がいくつか解けました。私は人間っつーのは生きてもせいぜい百年だと思っていたので、アラゴルンやファラミアとボロミアの父親とかの年齢を考えるとどうしても時間軸が合わなくなるなあと思っていたのですが、この物語では人間でも500年くらい生きる人がいるとわかってすっきりしました。あと、指輪物語のエルフはかなり威張り腐っているのにガンダルフにはやけにへりくだるのがおかしいなあと思っていたら、魔法使いっていうのは人間とかエルフじゃなくて、ランクは低くとも神様の一族だと聞いてちょっと納得しました。あとガンダルフが妙に怒ってばかりだった理由もわかりました。ただ、それでも気になる点がいくつか残ります。指輪物語のラストです。ホビットも西方に旅立ってよかったのでしょうか?指輪に関わればOKっつーと神話と矛盾するんじゃないかとどうしても考えてしまいます。もう一回読めば謎は解けるんでしょうかねえ。。。。。。

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J・R・R・トールキン 『ホビットの冒険(上・下)』 岩波少年文庫 2002年3月10日 (購入)

通だかファンによると、どうやら指輪物語を読む前に絶対にこれを読まなければいけないらしいので仕方なく買ってきました。これはこれで可愛いお話ですし、ここから指輪物語とかの世界が膨らんでくることはわかりますけれど、私にとっては「子供の本」であって、対象年齢からすっかり外れているという気持ちは拭いきれませんでした。理由は文章がいかにも昔の子供の本だからです。でも、よく考えると内容は大人が読んでも満足できるだけのものがありました。高潔とか高尚にはほど遠い部分も持ち合わせている主人公と仲間たちは全然強くないし、途中で仲間内で揉めたり、欲の皮を突っ張らせて判断を誤ったり、冒険の結果周囲の人(エルフと人間と鷲と熊?)には迷惑をかけまくります。そういうシビアな点はものすごく面白いし、嘘っぽくない感情の流れがあるから最期にトーリンとビルボが仲直りするところは不覚にもほろっときてしまいました。してやられたけど、二回読むのはつらいなあというのが正直な気持ちです。

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ジョー・R・ランズデール 『ボトムズ』 早川書房 2002年3月14日 (図書館)

読み始めたら、どうにも話を知っていて変だなと思っていたら、「999 狂犬の夏」というアンソロジーに収録された表題作の長編版だそうだ。大きなエピソードはほぼ同じで、登場人物も舞台も全て一緒で、たぶん提起される問題も同じはずなのに、私はこの「ボトムズ」の方がものすごく好きだ。狂犬の夏を読んだ時は、大人になりかけた少年が森で死体を発見するという始まり方など、まるでスタンド・バイ・ミーだという印象しか受けなかった。生々しくて痛々しいくらいな人種差別問題や小さな町の閉鎖的な人間関係、荒々しい自然の描写などは、せっかく書かれていたのに全部心を素通りしてしまったのだけれど、ボトムズでは物語の背景が立体的に感じられて、何もかもがふに落ちるのだ。残念ながら結末を途中で思い出してしまったから、スリルやミステリっぽい要素はあまり楽しめなかったのだけれど、それだけに登場人物のいろいろな気持ちが心に沁みた。

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ダン・シモンズ 『ダーウィンの剃刀』 早川書房 2002年3月25日 (図書館)

ベトナム帰りの事故復元調査員ダーウィン・マイナーを主人公とするアクション。前半でのメルセデスからMSXを狙撃されて起こるカーチェイス、中盤でのグライダー対ヘリコプターの対決、銃が苦手になってしまった原因となる凄惨な過去の狙撃、終盤の狙撃手との最期の対決など、見せ場がたくさんあるにも関わらず、いまいち物語のテンポに乗れなかったので、読むのにものすごく時間がかかってしまいました。でも、ゆっくり読んだためか一つ一つの場面の印象も強く、物語自体を堪能できました。脇役として、サマー・オブ・ナイトに登場したローレンス(作家希望のデールの弟)が登場したのも嬉しかったです。もちろん私が大好きだったローレンスの兄デールの消息も少し語られています。

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アニータ・シュリーヴ 『パイロットの妻』 新潮社 2002年3月26日 (図書館)

突然、夫を飛行機事故で亡くした妻が、自分の知らなかった夫の姿に直面する様子を淡々と描いた小説。地味な内容で決してテンポのよい展開でもないのだけれど、夫の過去や現在が明かされていく部分はスリリングでさえある。そして、いかにも秀作というイメージだけど、この夫が自分を偽る言動も、偽らない言動も、十代の鋭い感性をまともにぶつけてくる娘の言動も、結婚したことがなくこんな気持ちに直面したことがあるわけのない私の心にも痛すぎる。

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