2002年6月の感想
ジェフリー・ディーヴァー 『エンプティー・チェア』 文藝春秋 2002年6月1日 (図書館)
ボーン・コレクター、コフィン・ダンサーに続く、リンカーン・ライムもの第三作目。ハラハラドキドキする場面が多すぎて、最後の方には危機感を感じなくなってしまった。好みもあると思うけれど、街の真相が明かされるところが小出しなのが鬱陶しい気がする。ルーシー・カーがダヴェッドの車を止めたところまではよかったのだけれど。
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五條 瑛 『紫嵐』 双葉社 2002年6月3日 (購入)
R/EVOLUTINシリーズの2作目。1作目の断鎖とはかなり濃い繋がりなので、細部を忘れているとわかりづらい部分が多いと思う。ストーリーがわかりづらくても、亮司や、サーシャが拾った少年すみれ、今回は主人公的な立場にいる鳩など、サーシャの手駒になる登場人物たちが魅力的でなんとなく読めてしまう。最後に明かされる鳩の出生の謎が詩的でとてもせつない。でも、の断鎖を読み返してみてから、もう一度読み返すことを検討中だ。このシリーズは全部で7作なのだそうだけれど、ストーリーを最後まで追いきれるかちょっと心配だ。その手強さと緻密さが長所なのかもしれないけれど。
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ジョゼ・サラマーゴ 『白の闇』 日本放送出版協会 2002年6月6日 (図書館)
視界が突然真っ白になる伝染病でパニックになった人々を描く。前半は普通に怖いと思ったのだけど、後半の不潔な街の描写と不潔な人たちの描写が強烈でそっちのが怖かった。食事のあとに読んだら一気に食欲がなくなるくらい気持ち悪い。パニックの中で最低限(と文中の人たちは言っているかも)人間の尊厳を守る一部の人たちを中心に据えている。リアルな心の動きとも感じるのだけど、彼らの言動が時々なんとも嘘臭い。でも、嘘っぽい部分もあるし、とても臭そうなのに不思議な格調高さがある。
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板東眞砂子 『旅涯ての地』 角川書店 2002年6月13日 (図書館)
こだわるからこそ、かえって囚われる。
マルコ・ポーロの時代のイタリアを舞台にした宗教的な主題を含む歴史小説。どこにも根を下ろさず信仰を持たない男夏桂と、信仰に全てを捧げようとする女マッダレーナが求めるものが実は同じだったり、異端者を追いつめる立場のヴィットリオよりも異端者であるエンリコの方がまだ欲がなかったり、なんとも皮肉な話なのに雰囲気が美しい。宗教談義も興味深いけれど、最後に夏桂がイコンをなでるシーンは特に印象的だった。途中だれた感じもあったけれど、個人的にはすごく好きな小説だ。
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嶽本野ばら 『鱗姫』 小学館 2002年6月13日 (図書館)
耽美でやや妖しい感じのするホラーなのかもしれないけれど、怖いというよりも可愛い感じがする。もしも自分に鱗が生えてきたら絶対に怖いと思うけど、そういう切迫感よりも、文中に現れる著者の美学が楽しい小説だ。(う、汚れた大人の感想かも。)
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舞城王太郎 『暗闇の中で子供』 講談社 2002年6月18日 (図書館)
奈津川家シリーズ(サーガ?)の二作目。一作目から読むべきだった。奈津川家の三男三郎(そのまんまじゃん)の一人称で語られるミステリ。とはいえ、謎を解くのは途中までは主人公の三郎ではなく弟の四郎だ。ミステリとしてはどんなものかわからないし、正直結末は荒唐無稽すぎるかもしれないと思ったけれど、三郎という男の破綻ぶり(ほんの少しだけトンプスンの主人公みたい)が存分に生かされている一人称は悪くないかも。あと、オースターやらラフマニノフなど出てくる小物(?)がお洒落(?)なのはかなり気に入った。事件がシリアスに感じられたらいいんだけど、残酷すぎるのか語りのせいなのか私には冗談に思えてしまうのが少し残念。
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ドナルド・E・ウェストレイク 『骨まで盗んで』 早川文庫 2002年6月20日 (購入)
ドートマンダー・シリーズの邦訳8作目だけれど、順番的には最高の悪運の前のお話らしい。これもオールスター総出演という感じの大がかりな感じの作品で、盗むものは最近分裂した二つの小国の独立の鍵を握る聖フェルガーナの骨だ。この作品もドートマンダーが捕虜になってしまったり、盗み出した骨がまた盗み返されたり、一筋縄ではいかない。個人的にはドートマンダーが仕事でいろいろな人に会う時に、悲しそうな目をしているとか陰気な顔とかいう印象を相手が持つのがいかにも運が悪い泥棒といった感じで笑いのツボだった。あと、どの作品か忘れたけれど、ドートマンダーとケルプが以前購入したセンスの悪いスキーマスク(ドートマンダーの所有物である紫の地に緑色の雪模様のマスクが病気の茄子なんて書いてあるし)が何度も出てきて大笑いだった。まあ、個人的には逃げ出した財宝とかの方が作品としては好きだけど、このシリーズが読めるってこと自体が幸せかもしれない。
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トマス・H・クック 『だれも知らない女』 文春文庫 2002年6月22日 (図書館)
クレモンズ・シリーズの一作目。殺された少女に殺された自分の娘をだぶらせるクレモンズは、みんなが知らないという少女の生活を少しずつ知り、父の死に対面し、自分と似た女に惹かれていく。それが静かでなんとも格調高いような文章で語られる。格調高さを際だたせるのがケーレブがクレモンズに残した言葉だと思う。状況からすれば、わざとらしいくらい美しい言葉なのにいやらしくない。二作目からはクレモンズはニューヨークで私立探偵となるらしいのだけれど、一作目の出来事が彼にどういう影響を及ぼしていくのか興味深い。
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ジョゼー・サラマーゴ 『修道院回想録』 而立書房 2002年6月27日 (図書館)
なんとなく借りてきてみたのだけど、難しすぎて意味がわかりませんでした。でも、バルタザルとプリムンダというカップルの生き方やお互いへの思いやりや信頼は、泥臭いけれど素朴で心惹かれました。今よくいる「私は特別」と勘違いしている人々に、プリムンダやバルタザルのような判断ができたら、もっと平和に暮らせるのにとも思った。
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