2002年12月の感想
倉橋由美子 『妖女のように』 新潮文庫 2002年12月02日 (いただきもの)
- 雫君のたぶり本をいただくことができました。ありがとうございます。
小説を書く女と、結婚のいずれかまたは両方がテーマになっている「妖女のように」「結婚」「共棲」の三つの短編が収録されています。いずれも人物は小説の中でK、L、Sと呼ばれ、人格、性別もだいたいその呼び方が示すとおりのものとなっています。KやLといった主人公(?)たちの方が、軽蔑する常識的な人間Sより更に馬鹿だと思われるのは、育った時代の違いなのか自分が愚鈍なのかどうかはわからないのですが、病的なぐらい皮肉の効いた表現の中に時々驚くほど素直でなるほどという部分があるのが不思議で楽しめます。というより、この著者の小説の楽しみ方は病に浸るところにあるのかもしれません。
宮部みゆき 『クロスファイア(上・下)』 光文社カッパノベルス 2002年12月03日 (図書館)
- 先に鳩笛草を読まなくちゃいけないってことで、ずっと読まないでいたはずなのに、うっかり先にこっちを読んでしまいました。
念力放火能力者である青木淳子が主人公の超能力もの。最近ないぐらい夢中になって読んだ自分がとても悔しい。頭がすっかり固くなったおばさんの私には、登場人物も文中で起こる事件も何もかもが作りものっぽい上に無機質に感じられたのだけれど、中年の女性刑事石津ちか子は魅力的だった。石津ちか子はきっと私がなりたい理想のおばさん像なのだろうと思う。
福井晴敏 『亡国のイージス』 講談社 2002年12月05日 (図書館)
- 北朝鮮のテロリストに占拠された自衛隊のイージス艦における(いやめぐるか?)男くさい冒険活劇(なんて言い切ったら怒られちゃうかも)。日本が平和だから起きるわけがないというよりは、あらゆるところでつめが甘くて嘘くさい上に見え見えで下品に思えてしまう。だけど、妙に魅力的で夜更かしして読んでしまった。特にありえる要素とありえない要素がうまく融合した仙石という登場人物が魅力的だった。
室井佑月 『ドラゴンフライ』 集英社 2002年12月07日 (図書館)
- 失恋をきっかけに銀座の夜の世界に入ったOLを描く小説。著者の経験を生かしたものなのか、自伝的な小説なのかはわからない。とりあえず、主人公であるリュウの思考回路がまるで読めず、そのおかげで予想通りの展開というわけにはいかないため、感覚的にはものすごく嫌いだけどかなり楽しめた。どうして、そんなに自分を粗末にできるのだろう。もしも、こういう感覚が今の世代では共感できるというのなら、私はおばさんと言われるほうがずっといい。
京極夏彦 『巷説百物語』 中央公論社 2002年12月09日 (図書館)
- 必殺仕事人チックな短編集。途中で百介が集めたり語る話と、真相のギャップが洒落ている。どすこい(安)のウロボロスがなんとかという話なんかにもちらっと出てくる著者の趣味が色濃く反映されているような気がして微笑ましいと感じてしまった。
麻生幾 『ZERO(上・下)』 幻冬舎 2002年12月15日 (図書館)
- 日本、ロンドン、中国を駆け巡る壮大かつ壮絶な警察小説なんでしょうね。きっと。世間の評価はどうかわかりませんが、作品としていい悪いはわからないけど、私ははっきり嫌いです。最初に三十近くなってもキラキラするグロスを塗りたくってまだ色気があるというような警察に勤める女性の描写で、異常に頭にきた後は、もう何を読んでも馬鹿馬鹿しく感じられてしまいました。確かに、峰岸を強くてすきがない男として描かなかったり、警察のお偉方や政治家の汚れ具合なんかは、さぞや頑張っているのでしょう。それに峰岸の家庭問題は部分的にリアリティがあって悪くないと思います。でも、最初に著者の人格に勝手な偏見を持った私には、いいところがあっても作為的でいやらしいとしか映らないのです。
レナード・チャン 『夜明けの挽歌』 角川書店 2002年12月18日 (図書館)
- 家族の絆について考えさせられるアジアン・ノワールと紹介されていた。ノワールと紹介されているわりには凄惨なシーンはほとんどないし、ディラントやTJ以外には頭がおかしい人も出てこない。裏切りばかり繰り返されるところが救いがなくてノワールなんだろうか?ノワールの定義というのがどうしてもわからない。
いまいちソフトで物足りない気もするけれど、主人公がアメリカ人でしかないのに見た目はどうしてもアジア系という韓国系アメリカ人というところが新鮮に感じられて面白かった。主人公のアレンが、伯母にとって身内は父だけだったのだと悟ったシーンがなんとも悲しすぎる。確かに自分のことを考えれば無理もないと思うのだけど、アメリカにいる血のつながる人間はインスクにとってもアレンにとっても今は2人だけなのだ。あ、これがノワールなのか?????
マイケル・ガーバー 『バリー・トロッターと愚者のパロディ』 アップルリンク 2002年12月26日 (購入)
- ハリーポッターシリーズのパロディ。かなり酷いお話になっているけどこれを書いた人はハリーポッターがかなり好きで読み込んでいるんじゃないかと思います。私としてはマクゴガナル先生とロンの扱いがとても切なかったのですが、全体的には楽しめました。ハリーという主人公が巻を追うごとに嫌いになっているこの頃なんですけど、その理由が思った通りに盛り込まれてるところが結構あって、なかなか鋭いなあと個人的には思いました。結末がものすごく陳腐で尻つぼみなのが残念です。
戸梶圭太 『トカジャンゴ』 角川書店 2002年12月26日 (図書館)
- 短編集。特にダジャレ連発のスーパー・クール・ランニングという話が気に入りました。あとの話はあんまり面白くなかったのですけど、装丁や短編ごとの表紙が楽しくて、視覚的にも楽しめるので悪くないと思います。落書きされた邪悪なロディが可愛いです。
近藤史恵 『遥かなる夢ものがたり』 光栄 2002年12月29日 (図書館)
- ゲームの登場人物や設定を生かした短編集で、商業誌を読んでいるような気はしなかったのですが、まあまあ面白かったです。特に「六道を閉ざされた男」ってお話は好きです。元のシナリオに興味が湧いてきたのですけれど、ゲームをやるのは正直面倒くさいのでちょっと残念です。
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