2003年1月の感想






ピーター・ストラウブ 『シャドウランド(上・下)』 創元文庫  2003年1月03日 (購入)

語り手の同級生であり彼が認識する中で最高のマジシャンであるトム・フラナガンと彼の親友デルが経験した夏の出来事を小説化していくという形のファンタジー(?)。グリム童話がモチーフの一部として使われていたり、小説中で語られる寓話が物語の筋を暗示したりと面白いつくりになっていて楽しめたけれど、この物語で定義されるマジックの定義と、デルの伯父の企みとその正体が明かされていくミステリ部分とファンタジーの要素が融合しているせいか、何度行きつ戻りつして読んでも、私には手ごわすぎるような気がした。もうちょっと話がすっきりしている方がいいなあと思うのは単に読解力がないせいでしょうか?



京極夏彦 『百鬼夜行〜陰〜』 講談社ノベルス  2003年1月06日 (図書館)

京極堂シリーズの番外編である妖怪小説らしい。姑獲鳥の夏しか読んでいなくても、けっこう楽しめた。「小袖の手」は特に面白かった。塗仏の宴まで全部読んでから、もう一度読みたい。



乙一 『さみしさの周波数』 角川スニーカー文庫  2003年1月10日 (購入)

信兵衛さんのサイトで出てるのを知って慌てて買ってきました。なんともせつなくて爽やかな短編集です。表題作が個人的には一番気に入りました。お話というよりも、背景として描かれる給食とかパンを届けるとかそんなことがいちいち郷愁なのです。あと、乙一さんご本人に興味があるなら、あとがきもかわいくていいです。若いっていいですね。(馬鹿)



ジェームス・ハーバート 『奇跡の聖堂(上・下)』 早川文庫  2003年1月14日 (図書館)

ルルドの泉と、中世の魔女狩りを組み合わせたモダン・ホラー。基本的に利己的で自分勝手な主人公と、リアルかつ利己的な村人たちの描写と、いかにもホラーとなる後半のミスマッチが面白い。後半はかなり展開が早いし、全体的にB級映画っぽくて楽しめた。ただ、アリスとアリスの母親が場合によってはかなりかわいそうな気がする。



岩井志麻子 『楽園』 角川ホラー文庫  2003年1月15日 (購入)

ベトナムを舞台にしたホラーのような官能小説のような気がする。何かで女性のエロティシズムはこうなのだろうかと言ってるのを聞いたのだけど、生きているのに死んでいるヒロインの業の深さの方が印象深い。何も予想していたわけでもないのに、結末を読んだとき、「やっぱりそうだったのか」と思ったのが不思議だ。



ジェイムズ・エルロイ 『ハリウッド・ノクターン』 文春文庫  2003年1月20日 (購入)

ブラック・ダリアのリー・ブランチャードなども登場する短編集。ブランチャードものも楽しかったけれど一番のお気に入りは「甘い汁」。エルロイらしからぬものすごく可愛い(でも下品)お話で、ブルテリアと主人公のコンビがよい。あとがきによると犬のモデルはエルロイ自身の飼い犬だとか。やっぱりエルロイという作家が大好きだ。



大石 圭 『呪怨』 角川ホラー文庫  2003年1月23日 (購入)

このお話のビデオは怖くて発禁になったとか腰巻に書いてあったし、結末もものすごく後味悪いんだけど、本は全然怖くなかった。あえて言うなら、ビジュアル的にはちゃちいものでだまされるので表紙は怖い。でも、視野の狭い人間の恨みはより深いというようなことが書かれていて、それはものすごくよくわかるような気がする。自分の逆恨みの数々を少し反省したかも。



出久根達郎 『おんな飛脚人』 講談社文庫  2003年1月23日 (購入)

NHKで本上まなみちゃん主演でドラマ化しているのを見たら、どうしても読みたくなって買ってきてしまった。

母を捜すために江戸に出てきて、飛脚になったまどかが主人公の連作短編集。だんだん、まどかや、まどかの同僚の生い立ちや江戸で飛脚になった理由が明らかになり、左前だった十六屋が立ち直っていく様子が特に甘口でもないのにものすごーーーーーくうそ臭く甘く感じてそれが心地よい。このお話が終わった後も、時代的にまどかたちには平穏な日々はあり得ないのに、それでもハッピーエンドと思えるところがすごいかも。続きが書かれたらちょっと読みたい。