2003年4月の感想






岡本綺堂 『中国怪奇小説集』 光文社文庫  2003年4月4日 (購入)

中国の民話などを岡本綺堂が集めて文章化したものらしい。日本昔話で親しんだ話と違って起承転結が曖昧だったり、わからないものがわからないまま平気で終わったり、悪霊と神様にもあまり違いがなかったりしていて、大らかでかわいいお話が多くて楽しめた。文章もなかなか美しい。一話がとても短いので長い間通勤本として持つのにちょうどいい一かもしれない。



岡本綺堂 『半七捕物帳』 光文社文庫  2003年4月10日 (購入)

幕末に十手持ちとして活躍した半七老人の話を聞いて、小説に書いているという形式の時代物であり探偵小説でもある短編集。謎解きはかなり無理矢理なのだけど、風景や心理描写が美しく、なんとも風流で絵画的だ。こういう言い方は嫌いだけど、日本という国の文化を見直したくなるような本だと思う。キャラ萌えに依存する今風の日本のミステリと違って安心して読める。



五條瑛 『君の夢はもう見ない』 集英社  2003年4月12日 (購入)

仲上を主人公にすえた連作短編集。足を洗った上に妻を奪われた人間の話なのだけど負け犬という感じがまったくしない。むしろ奪った側の方に悲哀を感じてしまう(そういうかかれ方はしてないけれど)。ラリー・チャンは同じいらいらする登場人物でも葉山くんに比べるとかなり健全な精神構造だなと改めて思った。



パトリシア・カーロン 『ささやく壁』 扶桑社文庫  2003年4月14日 (古本)

動けず、しゃべれない老女サラのささやかな楽しみは壁を通して、友人や医師たちの話を聞くことだった。しかし、勝手に彼女の家には間借り人が置かれることになり、壁は間借り人の恐ろしい企みをささやきはじめる。老女を主人公とした出来がよいロマンチック・サスペンスという趣だと思う。

ちょっとだけブリジット・オベールの
森の死神を思い出すのだけど、主人公が年輪を重ねていることがいい方向に作用している。サラとロデリック・パーマーが惹かれあうところは十代の美男美女の恋愛よりもロマンチックに感じられる。私が年をとってきたせいだろうか。。。オベールやジョイ・フィールディング、メアリ・H・クラークが好きな人にお奨めできそうな一冊だ。



東野圭吾 『白夜行』 集英社文庫  2003年4月17日 (古本)

先が気になる面白い小説なのだけど、暗くて重いテーマのわりに読後感に非常に俗っぽいにおいを感じてしまう。ノワールに真珠夫人が混じっているような不思議な感覚だ。ただ義妹の美佳さんが○られ損に思えてならない。あの展開は男で人気作家だから平気でできるんじゃないかと思ってしまう。



エミリー・ロッダ 『ローワンと魔法の地図』 あすなろ書房  2003年4月19日 (購入)

なぜか英語版のペーパーバックがあるのだけど、それを読みこなすのは不可能なので日本語版を買ってみた。オーストラリアで人気のファンタジーとのことで、もろ古典的なファンタジーだと思う。紹介文には、ひ弱な男の子が主人公であることと、登場人物の性別にこだわらないところが新しいと書いてあった。いわれてみればそうかもしれない。適度にシビアで適度に夢があって安心して読める。特にのめりこんでないのに続きが読みたくなるのも不思議だ。



横山秀夫 『顔』 徳間書店  2003年4月20日 (購入)

ドラマ化されたのを見て、興味を持ったので買ってみた。似顔絵が得意な婦警の成長物語で連作短編集だと思う。全体的に地味だけど、組織の中で苦しんだりするヒロインとその同僚の姿の様子が感覚的に理解できる気がする。これを書いたのが本当に男性ならすごいと思う。逆のことを男性読者は女流作家に感じることはあるのだろうか。



桐野夏生 『ファイアボール・ブルース2』 文春文庫  2003年4月21日 (古本)

ファイアボール・ブルースの完結編で、女子プロレス界きっての強者火渡抄子の付き人兼レスラーの近田が引き続き主人公の連作短編集。最初から予測していた結末なのだけど、けじめをつけるきっかけとなる出来事、近田の仲間たちのその後が上手に書かれていてなんだかとてもせつない。平凡な能力の人間の夢は100%挫折するのだと思う。ちゃんとけじめをつけたかつけないかが社会人としてやっていけるいけないを決めるのだとも思う。私のいくつかの夢は近田よりも小さかったけど、それでも彼女の気持ちがものすごくよくわかって、古傷が少しだけ疼いた。



光原百合 『遠い約束』 創元推理文庫  2003年4月22日 (古本)

三十過ぎのおばさんが読む本ではありませんでした。なんか高校生の文芸部員が会誌に書いた途方もなく上手な小説といった雰囲気でところどころが恥ずかしくて読んでて気が狂いそうでした。もてそうな男の先輩が三人もいるミステリ研の紅一点とか、紳士で孤独な叔父との交流とか、とにかくものすごーーーーーく不自然なシチュエーションだらけで、登場人物の誰にも魅力を感じませんでした。でも、絶対にあと5年も若かったらはまっていたと思います。あのころはまだロマンチストだったし、恥ずかしいほど少女っぽい志向でしたから。なぜなら、時々無性に悪態をつきたくなるし、ミステリ部分は私でもかなり見え見えで面白くないのに、つまらないと言い切るのにはものすごく無理があるからです。



佐藤和歌子 『間取りの手帖』 リトル・モア  2003年4月28日 (購入)

朝日新聞の書評欄で見つけて、どうにも我慢できなくなって購入しました。著者が集めた妙な間取り図とその一言解説、そして勝手に作った物語、知人との対談で構成されていて、カバーがものすごく可愛いです。これ、間取り図を見て笑うことがある人には超お奨めです。