2003年11月の感想
身延典子 『家なんか建てなきゃよかった』 講談社 2003年11月01日 (購入)
- 北海道新聞に連載されていた建築家庭小説集だとか。ちゃんと調べてあるというか真に迫る内容もあり甘くないはずなのに、おちにちゃんと希望が潜んでいるせいなのか軽いタッチだからなのかわからないけれど甘い感じがする。勝手な推測だけれど、著者は文章が上手で、まともな社会的感覚を持つ人なのではないだろうか。
ロバート・R・マキャモン 『魔女は夜ささやく(上・下)』 文芸春秋 2003年11月07日 (購入)
- 17世紀にアメリカ南部を舞台に、魔女裁判と町そのものの謎を描く小説。男性の登場人物が町の人々だけでなく主人公である若き書記官マシューにも大人が当たり前のように持っている閉塞感やこずるさや自己保身の心理が色濃く描かれていてなんともやりきれない。女性の登場人物は悪い女も含めてかなり魅力的だったし、よく練られた感じのするいい小説だと思う。クマのくだりはとてもうそ臭くて嫌いだけど、マシューの恋の結末の描写が素晴らしかった。マキャモンの小説じゃなければ満点かも。
クライブ・バーカー 『冷たい心の谷(上・下)』 ソニーマガジンズ 2003年11月10日 (購入)
- エロティックホラーだというのだけれど、エロティシズムはほとんど感じなかった。読んでいて心を惹かれるのは、なんといっても、馬鹿で嫌な女として登場するヒロインが次第にある意味カッコいい女になっていく様子だ。まさか本の世界でもブスは三日で慣れるものだとは知らなかった。あと、存在するわけのないタイルの部屋がとても美しく(実は気持ち悪いのかも)思えて、すごく見たくてたまらなくなる。
ベルナール・ウェルベル 『蟻の革命』 角川文庫 2003年11月17日 (購入)
- 蟻、蟻の時代の続編で完結編。話を広げすぎたかもという感じはするけれど、蟻の視点だけでなく、ジュリーという少女の視点もスパイシーで読んでいると思わずにやっとしてしまう。よく考えると怖い話で、決して軽い口調で書かれているわけではないのに、物語を純粋に楽しめる。タナトノート とも実はつながりがあるのがなんとも面白い。
ドナルド・E・ウェストレイク 『鉤』 文春文庫 2003年11月21日 (購入)
- ユーモアというにはちょっとブラックが過ぎるような気もする悪い脱皮のような物語でした。他のウェストレイク作品からの引用なども多く、通には楽しめる一冊だとのことですが、普通の私には普通に面白かったです。殺人を依頼された方よりも、依頼した方の心のダメージが大きい理由を、記憶は薄れるけれど想像は膨らむからと登場人物が言ったくだりには、皮肉かつ妙に納得させられてしまいました。
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