2003年12月の感想
舞城王太郎 『熊の場所』 講談社 2003年12月31日 (図書館)
- 「熊の場所」「バット男」「ピコーン!」の三篇からなる中編集。古文のように○が少ないとても読みづらい上ずった文章なのだけど「熊の場所」と「バット男」の方はなかなか真理をついている気がしてうなづけて面白かった。でも、ピコーン!はおばさんには意味不明だった。部分的にはいいところがないでもないんだけど。
三浦しをん 『ロマンス小説の七日間』 角川文庫 2003年12月29日 (購入)
- ヒロインのあかりが翻訳する(暴走するともいう)ロマンス小説と、あかりの恋の現実が交互に描かれる恋愛小説。特に甘いムードというものもなく、それほど面白いとも思わないのだけどこの著者の文章や感覚が好きかもしれない。特にあかりが編集の人から体毛の表現について指導されるところなどは大笑いしてしまった。ロマンス小説の暴走のさせ方も興味深い。エッセイも出しているとのことなので読んでみたいと思う。
藤本ひとみ 『変態』 文藝春秋 2003年12月27日 (図書館)
- 母親のいいなりになって生きてきた美貌の翻訳家奈子が、ナポレオンの妻ジョゼフィーヌの生涯について本を書きたいと願ったことから耽美な事件に巻き込まれていくというような話。自立と性生活のつながりという視点は面白いかもしれないけど、可もなく不可もなく、いまいち印象が薄い本だと思う。
萱野 葵 『ダイナマイト・ビンボー』 角川文庫 2003年12月26日 (購入)
- 弟と暮らす姉が倹約に頭を絞ったあげく、生活保護などで暮らしていこうと企む表題作と、ストーカーに悩まされるぐみの周囲で摩訶不思議な異変が次々に起きていき更にわけがわからない結末をむかえるMerci la vieの二編が収録された中編集。嫌いな性格の登場人物が、どうしてそういう風になってしまうのとむかつく思うような行動ばかりするという普通だったら読んだらすぐ捨てたくなるような小説にも関わらず、読んでいる間はすんなりと入り込めるのが非常に不思議だ。ダイナマイト・ビンボーの主人公の鏡が、テレビを見ながら「売春だってカツアゲだって食ってくためなら云々」と言ってる女優に対してもつ意見などはなかなかハンサムな気がしてきてしまうし、もう一つの中篇のグミのだらしない生活態度も食べ物の後始末だけはきちんとしたらいいよと突っ込む気にはならないのだ。
パトリシア・カーロン 『走り去った女』 扶桑社文庫 2003年12月18日 (図書館)
- 小さな町の噂に追い詰められていく未亡人ガブリエルがヒロインのサスペンス。ガブリエルや幼馴染のフィルなどが動き回るたびに少しずつ町の人々の人物像が明らかになっていくのが面白い。結論は案外単純なのだけど、結構はらはらどきどきして楽しく読める。ジョイ・フィールディングやメアリ・H・クラークが好きな方にはこの著者はお薦め。
若竹七海 『閉ざされた夏』 講談社 2003年12月11日 (図書館)
- 一見おっとりしたイメージのある文学館を舞台にしたなんとも後味の悪いミステリ。たぶん本格の系統で、読む前に見つけただけで気のめいる見取り図がついていたのですが、最後までなんとかついていけました。古い建物や庭園の描写も悪くなかったです。ただ、一つ嫌な意味で気になるのが、楓さんは若竹さん自身の投影ってことですかという疑問です。
戸梶圭太 『トカジノフ』 角川書店 2003年12月09日 (図書館)
- たぶん、トカジャンゴと同じ系列の短編集。Jの利用法が特に悪のりしすぎに感じて、大笑いしてしまった。短編の方が心置きなく笑えるかもしれない。いや、本当は笑っちゃいけない内容だと思うけど。
戸梶圭太 『牛乳アンタッチャブル』 双葉社 2003年12月08日 (図書館)
- 某乳業会社の事件を下地にしたなんとも罰当たりなパロディ小説だと思います。装丁や口絵もお茶目で楽しい余すところなく馬鹿笑いできる一冊でした。四字熟語ばかりいう人の設定は嫌いですが、ある人の不倫シーンまで馬鹿笑いしてしまいました。ものすごく罰当たりな内容が多いのに読んでいる時まったく後ろめたさを感じないのが戸梶圭太という著者のすごいところだと勝手に思っています。
恩田陸 『ドミノ』 角川書店 2003年12月07日 (図書館)
- 東京駅周辺を舞台に、いかにも漫画チックで現実味のない設定(に私には感じる)の登場人物が大暴れするドタバタコメディと思います。安心して読めました。族関連の人々の設定には趣味的なものを感じて意味もなくむかつきましたが、面白かったので満足です。(う、偉そう)
恩田陸 『ライオンハート』 新潮社 2003年12月06日 (図書館)
- 個人的にとても苦手な某アイドルグループのヒット曲と同じ題名なので買うのも嫌だと思って読まなかったのですが図書館にあったので借りてきました。しかし、ライオンハートとはいっても、ケイト・ブッシュの曲のイメージだそうで大きな誤解でした。風呂敷ががーーーーっと好きな方向に広がった挙句、どうしてそう終わるのっ!と毎回むかついてる恩田陸さんの本ですが今回もまったくその通りでした。ハンカチが結ぶ時を越えた一瞬の濃密な恋の逢瀬というなんともロマンチックな設定で楽しく読み始めたのですが、途中からわけもなくいらだち、結末にも理由のない怒りを感じました。面白いかつまらないかと聞かれれば面白いんですけど。。。。。。
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