頭を使う、力を使う ◇

「頭を使ったゲーム」「頭脳派」「戦略・戦術的展開」…。
なかなかいい響きをもったプレイスタイルですよね。
うまい策略を思いつき、強大な敵を、hp の損失無しにうち負かす。
これを見事にやってのけたプレイヤーは得意に思うことでしょうし、
DM だって、そんな策を思いついて実行した策士には、
褒美のxp を与えてもよいと考えることでしょう。

逆に、「力押し」「腕力」「突撃」。
これらのコトバは、あんまりいいイメージないですよね。
どうも新しい世代のロールプレイヤーの間にははやってないみたいです。
敵が強力な奴だと分かっているにもかかわらず突っ込んでいくのは無謀なことですし、
それによってPC たちが返り討ちにあったとしても、
DM のほうも救ってやろうという気にはならず、
むしろ「自業自得」と考え、厳しいペナルティを与えさえするでしょう。
例えば、全滅とか…

パワーゲームというのは、
今の日本ではあまりはやらなさそうなプレイスタイルなのかもしれません。

確かにPC のスキル自体が低い時は、戦術の幅が狭く、
従って選択肢の数もそう多くないでしょうから、
どうしてもプレイヤー自身の頭の回転の良さに頼らざるを得なくなります。
そしてPC のレベルよりも高度なレベルのアドベンチャーを成功させた時の達成感というのも、
ゲームを興味深いものにする一つの要素です。

一見不可能な事柄でも、冴えたプレイングによりこれらを見事にクリアーする。
低レベルで生き残ろうとするのなら、誰もがこれを行なわなければならないでしょう。


レベルであれば、です。
全員が5 レベルの、ファイター二人、クレリック、MU、シーフ、エルフの6 人パーティでは、
MU がとっておきのファイアボール一発をどこでぶっぱなすか、
エルフがいつたった一回のフライで空を飛ぶかは、
実に頭を悩ませるところです。
頭を使ったゲームプレイングというのは、
全てのキャラクターレベルで要求されるプレイングスタイルです。

それとは逆に、力を使ったプレイングというのは、
一部の高レベルに達したキャラクターのみに与えられた特権のようなものです。
20 レベルの、ロード、パラディン、パトリアーク、マスターシーフ、
ウィザード、アタックランクK のエルフの6 人パーティなら、
一つの城を落せという使命をいとも簡単にやってのけるでしょう。

ウィザードは、昔はやっとの思いで一発しか放てなかったファイアボールを、
今では自作のワンドから大量に放てますし、スクロールをこさえておけば、
隣にいるマスターシーフに読ませることも可能です。
エルフが、自分とロード、パラディンを同時にヘイストすれば、
1 ラウンドに3 人合わせて最大6 回の攻撃が可能となります。
そんなことせずとも、ロードが武装招集して軍隊で城を落すことだって考えられるのです!


&D のようなロールプレイングゲームは、
たしかに、一人の別個の人生を演じるという楽しみもありますが、
その前に、D&D ゲームなのであります。
人生の精密な(?)シミュレーションではないのです。

常識では不可能とも思えることでも、高レベルのキャラクターたちにとっては、
別段不可能なことには見えていないはずです。
「ここはゲームらしく」と割り切って、ひとつ、
高レベルキャラクターでなければできない派手なパワープレイに走るというのも、
ゲームを楽しむ上で必要ではないかと思います。

考えてみて下さい。
ネームレベルに達したそこそこ強力なパーティが、
たかだか8 匹程度のトロールの一団をやり過ごすのに、セコい作戦を議論しているサマを!
なんともみみっちいではありませんか!!
こんなときは、堂々とトロールの前に出て、
MU 自作のファイアボールワンドをエルフと一緒に使ってごらんなさい。
トロールの平均hp とセーヴ、MU とエルフの炎のダメージの期待値を考えれば、
トロールたちは士気判定に失敗してとっととその場から立ち去りますよ。
仮に向かってきたところで、前衛のロードとパラディンがけちらしてくれます。
5 レベルだったころの、
一匹のブラックドラゴンにおびえていたパーティとはワケが違うのです。
みなぎるパワーをちらりと見せつけてやるだけで、
相手はビビって逃げ出すのです。

では、相手がモラルの高い、高レベルのNPC パーティだったなら…?
こんなときにも、ウィザードとエルフのワンド攻撃と、
ロードとパラディンの突撃を敢行しますか?
それで相手がビビって降伏してくれますか?
おそらくしないでしょう。
ましてDM がクライマックスに持ってきたシチュエーションなら、なおさらないでしょう。
こういう時こそ「作戦会議」です。
にもかかわらず、愚かにも突撃してしまったなら、それを「力押し」と人は言い、
後に「あの選択はマズかったなぁ」などといいながら、
キャラクターシートを白紙に返すのです。

先にもふれたとおり、己の知力に頼るのは、全てのキャラクターレベルで必要なことです。
どの場面でなら、豪快なパワーゲームが有効かというのを決定するのも、
プレイヤーの頭なのです。頭と力をうまく使い分けてこそ、
ロールプレイとしてもゲームとしても、盛り上がるのではないでしょうか。


なたがレッドドラゴンと1 対1 で戦う必要はなく、
あなたのキャラクターならばそれも可能だ、ということです。
D&D というゲームは、
知恵を絞らなければとても生き抜くことなどできない小さな存在から、
巨大な竜とタメを張る偉大な存在まで、
幅の広いレベルで遊べる素晴らしいゲームです。
低レベルキャンペーンに染まり切ってしまっている人々には、
パワーゲームなんぞは数字の暴走くらいにしか映っていないのでしょう。
しかし、腕の立つ冒険者あるいは高みを目指し続ける英雄であるのなら、
時には派手に、突撃を敢行してみるのはどうでしょうか。


1999.5 初
2003.9.21 一部表現変更