カネから経験点 ◇

RPGに当たり前のように存在している、経験点 とはいったいなんなのでしょうか。

これだけRPGやコンピュータRPGが認知されて広まっていれば、経験点とは そのキャラクターの成長の度合いを数値化したもの ととらえても違和感ないでしょう。

だから、RPGの現場において、キャラクターが障害を乗り越えたときに、「そのPCがそこから何かを学んだので」経験点をもらうことができる、という処理に異を唱える人はいないと思います。

そこで疑問におもうわけです。

「経験はたまる一方なのか?
現実の我々は、確かに過去の体験を経験値としてもっているかもしれないが、
10年も前に習ったことを、いまは覚えていないぞ?
RPG的にはそれでも、経験点をもっていることになるのだろうか?
あるいは端的に、レベルをキープできているのか?」


これをうまく再現できていない点で、RPGにおける経験点というものは、キャラクターの経験や成長の度合いを一元的にあらわすもの、という定義ではうまくいかないようです。

特にDnDゲームの場合、キャラクターが発見して持ち帰ってきた宝物(の価値)1GPにつき、パーティで1xpもらえるというのは、彼らキャラクターたちは、金貨や銀貨からいったい何を見いだしたんでしょうか。


経験点というものを、「キャラクターの経験の度合いをあらわすもの」ととらえていたんでは、財布の中身と訓練や練習が等価であることに納得いかないですよね。


そこでまず、経験点というものが生まれた背景を想像してみることにしましょう。

D&D ゲームは、CHAINMAIL という SLG から派生したものであることは多くの人が知っている通りです。 SLG を遊んだことがない私は、何をしたら勝ちになるのかはわかりませんが、おそらくは、ある行為に対してある得点が定められているのではないかなと思っています。
人生ゲームではゴールした時点で資産額の多いプレイヤーが勝利しますしね。

つまり、RPG が生まれる前のゲームというのは、必ず勝敗を決するものだったわけです。そこに得点という数値化された概念を持ち込み、その数値の高低で勝敗を決める訳です。

RPG が SLG から派生したばかりのころ、『RPGには勝敗を決するという概念がない』という概念はまだ出来上がっていなかったと思われます。
従って人々は、RPG でも、SLG やほかのボドゲのように、「得点を競い合っていた」と想像される訳です。


「…ということで、敵駐留部隊を撃破した君たちは、戦利品として彼らの装備を手に入れることができた。隊長のテントからはなんと、輸送中の食料のほかに財宝もあったとさ!」

「嗚呼、崖の下から急襲しようという私の提案が役に立ったんだね!」
「そうさ!そして私の弓が、敵の指揮官を射抜いたことも忘れちゃいけない!」

「戦利品をカウントしてみよう。金が100ポイント、銀が1,000ポイント、剣が…鎧が…」

「それだけあれば、失われた軍備を取り戻すことは問題なさそうだな。こんどは弓兵を増やそう。街で部隊の招集といくか」

「砦の兵士はよく訓練された優秀な一軍だったのだ。1ユニットあたり、55点が加算されるよ」

「ふーん。ということは、我々が獲得した点数は、合計で2345ポイントってことだ」
「前は1500ポイントもいかなかったのにな」
「私たちがゲームに慣れてきたってことだよ!」


とか遊ばれていたかどうかはわかりませんが、とにかく、高得点を目指していたんだと思います。
なぜって、勝つために、ですよ。

そんなこんなで、あるとき誰かが、
「なあ、得点をたくさん集めることに何か意味はあるのか?ゲームをやり直したらまた新兵を集めるんだぞ?最初からなんだぞ?」
とか言い出したんだと思います。


「そうだね。紙の上の金銀なんて、ゲームを離れりゃ無価値だもんな。そうだ。こうしよう。君たちが敵兵を討ち滅ぼしたときの勇敢なる兵たちを、そのまま次のゲームでも繰り越して使えることにしよう。戦利品の多さは、君たちの軍隊の強さの証だ。だから、戦利品から得られる得点で君たちの軍隊の強度を上げよう」

「兵隊が強くなっていくってことかい?」

「違うよ、撃破数が多い兵隊ってのは、強いから撃破数が多いんだよ」

「具体的にはどう処理するのさ?」

「戦利品から得点がもらえるだろう?その得点がある一定の基準を満たしていくごとに、君たちのもっている部隊の兵力スコアに+1づつしていくのさ」

「ってことは、撃破数が多ければ多いほど、我々の部隊はより強い部隊ということなんだね?」

「そうさ。学徒兵とは訳がちがう、歴戦の勇士なんだよ!」

「そりゃいいや!紙の上の無価値な金銀を集めることが、我々の部隊の強さを証明するなんて!」


…などというやりとりがあったかどうかは全くの不明ですが、こんなようなことを思いついた人がいたことは間違いないはずです。

戦利品は、軍備を増強するリソースとしてのほかに、プレイヤーたちの部隊の強度の目安、という新しい尺度ももたされることになったわけです。


「…というわけで君たちは、ニャホトカ砦を攻略した」

「やった!難攻不落といわれたニャホトカ砦を、農民だったオレの兵士が討ち滅ぼしたんだ!なんて出世したんだ、コイツ!!」

「そうさ。そして君の農民はいまや、ニャホトカ砦攻略の英雄だ!もう小麦をあらすカラスをススキで追い払ったり、肉がはいってるスープにありがたがることは無いんだ。君の農民はこれからは、肉しか入ってないスープと、カラスを追いやる農夫の主人になるんだ」

「いやあ。思い起こせば数奇な運命だった、オレの農民。はじめに招集されたときは槍しかもってなかったのに…」
「そんなことより、オレの靴屋のせがれも大出世だぜ。もう親方にどやされることなんかないんだ、靴なんて、カネだして買えばいいのさ。こわれたら新しいのをかえばいい」
「私の代筆屋だって…」
「いいや、僕の狩人だって…」


「なあ。ところでさ。戦利品戦利品って、いつまでも せんりひん、じゃあ、やりにくくないか?」
「じゃあ、兵隊の強度を示すこのポイントを、なんて呼べばいいのさ?」
「そうだなぁ…。数々の訓練や実戦で培われた体験がもとになってのことだからなぁ…」
「経験点って呼ぶのはどうだい?」



つまり、経験点とは、RPG以外のゲームでいうところの得点だ、ととらえるわけです。

インベーダーゲームのUFOが200点だとか、合体前のラザロを16連射で撃破したときの80,000点だとか、そういったものに相当している訳です。

DnDゲームでいうところの財宝とは、プレイヤー(キャラクターではない!)が獲得する得点なのです。

得点が多いキャラクターとはすなわち、歴戦の勇者なのです。
だから、レベルを示す尺度として用いられているのです。

経験点とは、キャラクターの経験だけをあらわすものなんかではなく、それは、ゲームを楽しんでいるプレイヤー本人が狙う、HI-SCOREなのです。
ハイスコアを目指すことそのものに、ルール的な意義(経験レベルのことです)をあとから取り付けられたもの、それが経験点なのではないでしょうか。


…とか、想像してみるのはいかが?


***
良い例かどうかはわかりませんが、ゲーセンにあった、
 Tower of Doom
 Shadow over Mystara
なんかでは、スコアの単位が xp でしたよね。あれと同じ感覚なんです。

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