ルイセンコ学説というのは、スターリン時代にソ連でもてはやされた生物学である。 伝統生物学 (メンデル、モルガン) での命題「獲得形質は遺伝しない」を批判し、 獲得形質の遺伝と環境による進化を唱えた。
ナチスが遺伝による人種の優劣を唱えたことに対して、 遺伝による素質の差を認めないこと、 ルイセンコ学説の応用である「ヤロビ農法」により収穫が増えると期待されたこと、 などによってスターリンの信頼をかち取り、 ルイセンコは科学分野一般で権力を持った。 ヴァヴィロフなど正統派遺伝学者は収容所に送られて非業の死を遂げたという。
日本でも、ソ連がやることはなんでも正しいとする進歩的科学者が信奉した。 ヤロビ農法も大きく期待された。
しかし、ヤロビ農法では収穫が増えない、という事実の前にまずヤロビ農法が敗退した。 遺伝学におけるルイセンコ学説も旗色が悪くなり、 スターリン死去後のルイセンコの失脚により世界的に支持者がいなくなった。
この著書は日本でのルイセンコ学説の受容と消滅について述べている。
特に、進歩的科学者が実験を行わずにイデオロギーとして正しいと受け入れたことを、
失敗の原因として指摘する。
不思議なことに、ルイセンコ学説の一つの根拠である「栄養雑種」について、
日本での代表的な伝統派の学者が実験を行い支持する結果を得ているが、
ルイセンコ学派は実験による支持をしなかったことは、私にとって不思議であった。
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First Written June 30, 2004
Last Update March 16, 2007
© Yasuaki Nakano 2004-2007