『肉刑の書』(手塚正夫著)に「かちん染」なるものが出てくる。これは、人間の血を混ぜて染め上げた織物だそうで、何でも姫路城下では大変な評判になったそうだ。若い娘の血だと最も良いらしく、下女たちが犠牲になったようだが、結局のところ加害者は打ち首になったとのこと。まさにこれなどは、『神州纐纈城』(国枝史郎著)、そのものの話。真実は小説よりも奇なりとは、よくいったものだ。



『奇・珍・怪』(田中香涯著)に、「油を舐める女」という話がある。それによると、昔の貧しい人々の中には、平素の食事が粗食であったため、脂肪分の不足を補うために、その生理的欲求から油(燈油)を舐めることを好むようになったものも多かっただろうとしている。油に関する妖怪も数多く伝承するが、こんなところにも妖怪を生む要因があるようだ。



『異人と妖怪』(「自然と文化」1987春季号)で特に興味深く感じられたのが、柿色に込められた象徴的意味を取り上げている箇所。これによると、黒田日出男氏の著『姿としぐさの中世史』を取り上げ、物ぐさ太郎などで取り扱われる服装が一貫して柿色で描かれていることに注目し、乞食や非人、山伏などと関連が深いことを言及している。つまり柿色の服装をしている人は、潜在的に異人として認識されていたのではないかとし、芸能者と異人の接点の場(遊女屋の暖簾や歌舞伎の幕など)においても多用されていることを解き明かしている。



『神霊まじなひ秘法傳』
(昭和34年、日本仏教普及会)には、多様なまじないが明記されている。本著によれば、呪詛(まじない)の秘法霊術は、人間の中に宿す霊と、神仏とが互いに相感応して、神仏から一種の黙示をあたえられることにほかならない、としている。精神や霊魂や空気の存在と同様に神仏の存在に疑問を持つようでは、まじないを信じることなど出来ないようだ。

役に立つかどうかは分かりませんが、夏の時期にこんなまじないは如何?

●蠅を家に入れない呪詛

陰暦5月5日の午の刻に「儀方」の二字を白紙に書き、戸口、門などに貼ると、その年内は蠅が入ってくることはないらしい。

●蚊を駆除する呪詛

次の文字を暗記し、暗いところにて七度唱念するときは、屋内の蚊、悉く逃亡するとのこと。

天地太晴、日月太明、陰陽太和、急々如律令